魔都 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.42
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本棚登録 : 194
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488471118

作品紹介・あらすじ

日比谷公園の鶴の噴水が歌を唄うということですが一体それは真実でしょうか――昭和九年の大晦日、バーの片隅で交わされる噂話を端緒に、帝都・東京を震撼せしめる一大事件の幕が開く。安南国皇帝の失踪と愛人の墜死に巻き込まれた新聞記者・古市加十と捜査に臨む眞名古明警視、二人を待つ運命や如何に。「小説の魔術師」久生十蘭の代表長編にして、探偵小説史に燦然と屹立する金字塔的作品。新改訂版で、創元推理文庫に遂に登場。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和9年の大晦日、東京。新聞記者の古市加十は顔なじみの女に誘われたバーで安南国の皇帝と知り合う。連れられるまま皇帝の愛人・松谷鶴子の住まう有明荘を訪ねたのが運の尽き、加十は思いもよらぬ大事件に巻き込まれ、皇帝の影武者をやることに。松谷鶴子の他殺疑惑、公園の噴水の鶴が歌う珍騒動、300カラットのダイヤモンド盗難、有明荘住人たちの痴情などがもつれにもつれて絡み合い、警視庁の切れ者・真名古の捜査は難航する。東京という〈魔都〉だからこそ24時間中に起こりうる出来事をこれでもかと詰め込んだ、豪華絢爛なエンターテイメント。


    十蘭は洒脱。十蘭はドライ。死体がゴロゴロ出てくるのに徹頭徹尾カラッとしている。十蘭の小説のスタイル自体が、この小説における皇帝のキャラクターのようにすっとぼけていると言えばいいのか。
    講談調のリズミカルな語り口と映像喚起力の高い描写でするすると読める。誇張された登場人物たちも、十蘭の手にかかれば類型的でお人形のようであること自体が魅力になる。インヴァネスを翻しながら孤高に捜査する真名古警視と、人をカマかけるのが群を抜いてうまいダンサーの川俣踏絵が好き。会話のうまさは一級品。女同士の啖呵の切り合いは痺れるカッコよさ。
    昭和初期の都市伝説などを知ることで、当時の東京の空気が知れるのも勿論楽しい。建築中のNHK東京放送会館の工事現場から江戸時代に掘られた大伏樋へ通じる暗道を見つけた加十の目に、皇帝が着ている服ボタンから落ちたカーネーションの赤が飛び込んでくるところなど、十蘭の「絵力」を感じる。かつて東京という都市がもっていた煌びやかなダンディズムと軽やかな喜劇の精神をパッケージした、説教も耽美趣味もない痛快な娯楽作。その軽さの裏には豊かさがある。

  • ――

     いやー驚いた。
     怪奇系ミステリかと思って読み始めたので、びっくり。
     げにおそろしきエンタメ小説である…! ん? 誤用か? まぁいいやまさか昭和初期の探偵小説で上質な入れ替わりコメディ読まされることになるとは思いもしなかったし驚きのあまり誤用くらいすらぁな。所謂十人十色の推理合戦、がこういうふうに使われるとは。脱帽。
     そしてその中に溢れる機智と諧謔と。あとはもう、なんと云ってもことばの、台詞の、筆致のセンス。そのセンスを、これでもかと緻密な文章で描き出している。絢爛、とはこういうことを云うんだろうな、という文章。だから、そんなはずはないのに読み易い。たまらん。

     昭和初期の東京は三歩歩けば奇書に当たると聞いたけど、果たして。☆4待ったなし!

  • 昭和九年の大晦日から元日にかけて、帝都・東京を舞台に巻き起こる数々の事件。歌う噴水、墜死する美女、皇帝の失踪、という盛りだくさんな事件に巻き込まれる新聞記者と刑事。レトロな雰囲気が満載の冒険活劇ミステリ。
    もとが連載小説だからか、気を持たせるような言い回しが多くて引っ張られます。でもあの人の末路が早々に明かされてしまったのはショック……! 頑張ってるのに、死ぬんだねえ(涙)。
    眞名古のキャラがいいなあ。後になるほど人間味が深くなって、可愛くすらあるし。ラストの一文はあまりに切ない。

  • 初十蘭。ミステリィではなく探偵、小説。内容云々ではなく(昭和の)雰囲気を楽しむ作品のようだ —— 私はあまり楽しめなかったが… (^^;; 星二つ半。

  • 2017-5-2

  • 津原奏水『玻璃玉の耳輪』のようなミステリ仕立ての冒険小説
    のようなが逆でこちらが先だろうけれど
    ミステリとしても警察ものとしても中途半端だが
    昭和9年の時代ものとして充分な筆力
    登場人物たちにも十二分の説得力があり良い意味で辟易させてくれる佳品

  • 2018.07.01

  • Dr. Strangeloveみたいなかんじ。
    きな臭い雰囲気のなかの、コメディ。

    作者の眞名古警視への同情と愛情が溢れてて、小説は自由なんだなあと。あと、それぞれの章の始まりの枕がいい。リズムの美しい日本語。

  • 戦前戦後あたりの東京ってもう、何でもありな感じで結構好き。雰囲気を楽しむという点では大満足。しかしまあ癖のある人物が多すぎて結局のところ何がどうなったのやら。日比谷公園の鶴の像はちょっと前の寒波到来時に何度もTVで観たので容易にイメージができたけどね。

  • 思ったよりも面白かったです。にぎやかなお話でした。

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著者プロフィール

1902-1957。作家。雑誌『新青年』などで活躍。「鈴木主水」で直木賞受賞、「母子像」で国際短編小説コンクール第一席。

「2015年 『内地へよろしく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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