- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488472023
感想・レビュー・書評
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これは…すごくよかった。すごくおもしろかった。
鳥取の旧家に生きる3代の女性たちとその一族、そして彼らを取り巻く日本という国の物語だ。
1つの家族、個人を通して時代を読むということ。歴史という時代のうねりの中で必死に生きる個人を見るということ。どちらも同じようでいて、しかしたとえば民俗学においてこの2つは決して同じ手法ではない。たぶん。それが、物語の中では平然と両立するから不思議だ。ここには、3人の女性の人生と、戦後の日本が歩んできためまぐるしい歴史が所狭しと描かれている。
そして、冒頭で提示され、最後の最後で鮮やかに明かされるひとつの謎。わくわくして、悲しくて、寂しい。この本からは、「書物の力」みたいなものを感じる。そんなものがあればの話だけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山陰の旧家を舞台に、祖母、母、娘の三代にわたる物語。
面白かった。
続きが気になって気になって、手をとめることができなかった。
祖母は千里眼、母は漫画家、そして何者でもない孫、と孫は語るが、ようするに時代がそういう人物を望んでいたのだろうと、感じた。
そう、ただ女たちの三代を描いたのではなく、そこ根底には戦後から現代にいたるまでの社会があり、山陰の旧家であってもその荒波は容赦なく押し寄せてくるのだ。
と、同時に、祖母の悲しいまでに純粋な心の物語なのだと思った。
飛ぶ男を幻視したのが始まりで、結局は物語はそこに着地していく。
自分の気持ちも、相手の気持ちにも、気づくことも察することもできない程に純粋だった恋だったからこそ、祖母は孫娘にその結末を託したのだろう。
孫娘が自分で歩き始められるように…。
薄ら怖くて、優しくて、美しい物語だった。 -
終戦後から平成の中頃までを、実際の出来事にも触れながら紡がれる女三代記でした。
語り部である三代目、瞳子が私と同じ頃の生まれで、誰か人伝に聞いた話のように読むことができ、社会情勢や価値観、暮らしなど移ろう時代を登場人物に想いを馳せて読んでいました。
特に一代目万葉の時代の話が、実家に伝わる古い話とどこか似ていて、お気に入りです。 -
あとがきで「全体小説」という表現が使われているが、その名に負けない、色々な要素の詰まった作品。たくさんの要素の中で個人的に注目したいのは万葉の健気さと律儀さ、そして時代という名の大きく加速するエントロピー。
ただ、ミステリーではないので出版レーベルの選択は間違えだと思う。また瞳子につけようとタツが考えていた名前が「自由」というのにも違和感を禁じえず (どうせなら「転機」とか...)、また万葉の一代記 (を瞳子が語るの) でも良かったと思う。 -
何度目かの再読!
桜庭一樹さんの長篇、いつも前半部の面白さがとてつもない。後半になって減速する印象は否めないが、それでも最後まで面白い。 -
鳥取の旧家での女三代の物語。戦後日本史、家族、青春、恋愛、いろんな側面から楽しめる。
一部ごとに主人公がかわる三部構成になっていて、特に第一部の万葉の話と第二部の毛毬の話は濃い。第二部のまででだいぶお腹いっぱいになった。 -
単行本刊行時からタイトルがアッシャー家みたいなのと、確か売り出しのコピーが「百年の孤独云々」だったので何だかんだ気になってたものの、あまり読まない分野の本なので手を出さずにずーっと生きてきましたが、満を持して読んで見ました。なにが満ちたのかはさっぱり分からないですが…
女系三代記、時々マジックリアリズムand幽霊、でもそこそこ前向きなエンディングという全体的には割と朝の連ドラに近い感じだったので、思ってたん(赤児蟻に喰われたり、家という軛から逃れられない絶望感)とは違いましたが、面白く読めましたし、気になってた本が読めたのでだいぶすっきりしました。本当に相当すっきりしました。
というわけで、トータルの感想としては生きているとまあまあいいこともあるよね。
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amazonでも評価がとても高いので図書館で借りてみた。なんという壮大なストーリー!あとがきにもあったが第一部は歴史小説、第二部は少女漫画、第三部は青春ミステリー‥どれも時代や世相を鏡のように忠実に写し取り主人公に反映させていく作者の筆致に圧倒される。私も赤朽葉家の一員となって大きな戦艦に乗って荒波を進むような読み心地だった。未来視ができる赤朽葉万葉、レディースの総長、赤朽葉毛鞠‥どの人物も惹かれ、ミステリーを終盤に持ってくる構成も良かった。
日本推理作家協会賞受賞。 -
女三代の話。
朝ドラにもありましたね、そういうの。
毛鞠と青春時代が重なり、懐かしく読みました。
面白かったけど、結局万葉はなぜ、誰から捨てられたのか、そこが気になった。