製鉄天使 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.47
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本棚登録 : 445
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488472030

作品紹介・あらすじ

東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース"製鉄天使"の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す-一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける。伝説の少女の唖然呆然の一代記。

感想・レビュー・書評

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  • 赤朽葉家を崇拝する者としては読んでおかなきゃかな、作品誕生の経緯からしてライトな少女小説かな……と、やはりライトな気持ちで読み始めたらとんでもないことになりました。歴代号泣小説ランキングにインしてきそう。

    主人公の小豆がレディース「製鉄天使」の総長になり、中国地方の、つまりはせかいの制覇を目指す物語。
    赤朽葉家が精緻にして荘厳な和製マジックリアリズムの極致ならば、製鉄天使は「やりすぎ(笑)」。それは当然で、だって完璧に作り込むのもそれに感心するのも、大人の仕事だからです。小豆達が住む世界では、そんなのきっとしゃばいしゃばい。
    とはいえ、虚無僧乙女連との対決で月に飛ぶのも、小豆が背負う鉄の翼も、そしてクライマックスの鉄vs紙も――実に美しくも、あります。象徴的なのがハイウェイダンサーで、肥溜めのをインク替わりにタイヤで路上にアジテーションを書き刻んでいく文学少女だったりする。山頭火なんかも面白いのですが「センコー が うざいの」なども、なんだか妙に詩的だなと感じ入ってしまう。

    スミレっ子の行く末は、赤朽葉家を読んでいたし存在自体がフラグみたいな子なので分かってはいたものの、やはり哀しい。併走しながらの小豆の涙が印象的でした。
    しかし実は、私はスミレに対してまったく良い感情を抱けずにいた。大和イチと同じ見方しか出来なかった。
    でも、庭での伯父と小豆の単純な会話が、単純だからこそ素直に納得できて良かったです。

    スミレの事件性と対象的に、タケルは小豆の世界から静かにスーッと消えていき、これもまた哀しい。
    タケルが選んだのは、こちらでも一本物語が出来るだろうと思われる成長の道であり、たぶん私も含め多くの人が共感できるはず。しかし同時に、小豆にとっては抗えない別れでしかありませんでした。

    最後の闘いでは、もう涙腺崩壊でした。
    大人になるのは原則十九歳であったのに、喪いすぎて悲しみを知りすぎて、より早く大人になってしまった小豆。それを仲間にもひた隠しに隠しつつ、夢であった中国地方制圧の最終仕上げに向かいます。魂が燃え尽きる寸前にのみ許された輝きに、感動が止まりませんでした。

    ――で、顔面ぐちゃっとしながらエピローグに突入し、はじめはかなり混乱しました。
    わりと何事もなかったように仲間たちと集まり、走り出して、なんか埋蔵金探して掘り当ててるし。
    え、この涙どうしてくれるの。みたいな。
    しかし、呆然としている間にじわじわと理解が追いついたように感じました。もしかしてここ一番大事なところなのかもしれない。
    魔術的リアリズムをむしろ蹴散らさんばかりの勢いで走ってきた物語において、時空を粉砕するエピローグは、小豆達への鎮魂歌であるとともに私達へのエールでもあるのかもしれない、と。「えいえん」なんてね、と悟りきった顔を晒してい生きている私に向かって、最後小豆は振り返ってああ言うのですから。
    ちょっとまだうまく纏められませんが、このエピローグによって「製鉄天使」の存在は、小豆にとっての真っ赤なボーイさながらに私に寄り添ってくれるものになりました。

  • 祝文庫化

    東京創元社のPR
    「一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける――中国地方にその名を轟かせた伝説の少女・赤緑豆小豆の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』姉妹編、仰天の快作文庫化。 」

    • kuroayameさん
      これは是非読んでみたいです!!
      これは是非読んでみたいです!!
      2012/10/10
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「赤朽葉家の伝説」は読まれましたか?
      「赤朽葉家の伝説」は読まれましたか?
      2012/10/11
  • 長らく楽しみました。
    なんせ358ページもある。

    これがスピンオフだという事を後半まで読み進めるまで知らなかったのですが、何の問題もなく楽しめました。
    製鉄天使以前に読んだ、砂糖菓子、少女七竈、赤×ピンク、少女には向かない職業の四作品よりもずっとフィクション的な要素(漫画みたいな設定)が多かったです。
    時はケータイ電話すらまだない、族が普通に走り回っていた頃。鉄を自在に操る能力のある、製鉄工場の「バカお嬢」小豆が、レディースの初代総長になって伝説になるお話。

    ぶっ飛んだ描写や異能が普通に飛び交うストーリーが特に失速する事無く最後まで綺麗に書き切られていて、レディース「製鉄天使」の少女たちが青春を突っ走っていく、スピード感そのまま、という感じでした。
    エピローグで綺麗にまとめられていて良かったです。あと、エピローグが個人的には可愛かったです。
    小豆の最後の台詞を、この物語の最後に見る為にここまで読んだようなものでした。
    台詞と共に、小豆の綺麗な顔に浮かぶその表情まで、ちゃんと見えた気がしました。

    「ぱらりらぱらりら!」がひらがななの、子供!って感じがあり、読み終えたあとになんか好きだなぁってなってます。

    桜庭一樹さん5作品目でした。

  • 再読。『赤朽葉家の伝説』のスピンオフと呼んでいいのかな。大筋はわかっているのに、ワクワク読める。中国地方のレディース族の制覇なんて、実は小さな世界かもしれない。それでも世界を制覇したという実感なんてそんなに持てるものじゃない。それを清々しく描き切っているのが面白い。

  • 2019/1/18購入
    2019/12/16読了

  • 「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ。
    丙午(ひのえうま)生まれの赤緑豆小豆がレディース暴走族「製鉄天使」の総長となり世界(中国地方)を統一するという喧嘩上等の暴走族ファンタジー。

    アニメっぽい仕上がりを見事に文章だけで表現しているのは本当に素晴らしいし、散りばめられた伏線(いかにもなヒントではなく、あーそういえば的な伏線)や起承転結まとめかたがさすが桜庭一樹。完璧過ぎる。

    そして、1980年代の昭和の田舎の暴走族臭プンプン。
    「〜してちょ」「〜ぜよ」とか気恥ずかしくなるような懐かしい昭和ワードの連発。
    その時代を生きていても、なかなか「やめちくりっ」はさすがに出てこない。これには本当にやられた感。

    小豆がスミレっ子の存在を2度も失ったくだりは、私もかなり切なくなった。

  • 超名作”赤朽葉家”のスピンオフ。当然、名前もそのままだと思っていたし、あれと同様の重厚感を期待もしていた。その予想は軽く裏切られました。あえて名前も変えられているし、文体もえらく軽い調子にされている。前作二代目の、中でも不良時代を中心に描かれた物語だから、こういう書き方になったのはいわば必然か。気負わずサクサクッと読めてしまうけど、その分、本編と比べて満足度は劣ると思ってしまいました。

  • 東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース〈製鉄天使〉の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出すーー一九八X年、灼熱の魂が駆け抜ける。伝説の少女の唖然呆然の一代記。

  •  『赤朽葉家の伝説』の姉妹編で、毛毬が書いた漫画のような世界観。硬派な不良ものが好きな私にとってはときめきが沢山の楽しい作品。
     19歳になると大人の体臭がして子供ではいられなくなるというのは比喩的だけど、確かにいつまでも突っ張っていられないのが現実で、だからこそ現役で突っ走る小豆たちが眩しく儚く見えるのだと思う。怖いものなしの小豆が初めて傷つき、心に穴が空く経験をしたことで大人になっていってしまう気持ちと、族の頭を張る責任感と仲間から集まる期待との間で小豆が抱えるジレンマが最も切なくときめいた。

  • 女たちの戦国時代。
    赤緑豆小豆は製鉄天使を率いて中国地方制圧を目論んでいた。
    鉄に懐かれ、バイクに愛され、夜をひた走りながら永い一瞬を生きている。
    フィクションの世界で子供にしか見えない確かなものを探してる。
    えいえんの国は"どこ"じゃなくて"いつ"にあるのサ。

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著者プロフィール

1999年デビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞、08年『私の男』で第138回直木賞を受賞。21年2月、小説『火の鳥』刊行予定。

「2021年 『東京ディストピア日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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