いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488473051

作品紹介・あらすじ

夏休みも終わりに近づいた文化祭目前のある日、準備に熱の入る生徒たちが登校すると、目つきの悪いピンクのペンギンとも天使ともつかないイラストが描かれた貼り紙が目に飛び込んできた。別館中に貼られた、部活にちなんだ様々な怡好の"天使"を不思議に思いつつも、手の込んだ悪戯かと気を抜いていると-。波瀾万丈で事件に満ちた、コミカルな学園ミステリ・シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 文化祭準備の様子などの描写が、自分自身の高校時代の思い出と激しく重なる部分があり、事件以外のところも楽しい。
    世代的には著者よりほどほどに下で、市立高校ではなくて県立高校だったのだが、同じ千葉県の公立高校の雰囲気を共有しているノスタルジー。そうそう、クラス発表で文化部の部員たちが校内を駆け回るこの感じ!
    ちなみに、前々からそうなのだろうとは思っていましたが、本作ではっきりと、作者の母校がわかります。

  • シリーズ4作目。今回は文化祭が間近に迫った“市立”を舞台にした長編。
    今回もまんまと騙された。まさか、二重に騙されていようとは…怪しい人達がたくさん出てくるので、犯人ばかりが気になり騙されている事に全然気付かなかった。私って良い読者だなぁ(笑)
    五分の四辺りまで読んだところで段々謎解きが始まるので、それまでが長く焦らされた感じになり、少しダレてしまう。だが、謎解きが始まってからは「え?え!?」と何度も前のページを捲り出来事を遡り、「そういう事か~!」と頭を抱える…。本当に私って良い読者だなぁ(笑)

  • シリーズ4作目。学生生活の一大イベント
    「学園祭」です。その学祭の準備も大詰めで
    大忙しの中、突如学園内に目つきの悪い
    ペンギンちっくなピンクの「天使」のイラストが
    大量に発生。各部室にそのコスチュームを
    まとった手の込んだイラストが夥しい枚数で
    部室、教室に貼られていた。
    イタズラなのか予告なのか分からぬまま
    なんだか深刻な方向に事件がスライドしていく...。

    例によって周りに振り回されるように
    主人公「葉山」くんの探偵活動が発動。
    事件はさらに妙な方向に進んでいきますが
    読んでいると違和感に気が付きます。
    今作で作者がしかけたトリックですが...
    古典(?)をギミックなしに堂々と晒しているので
    ある意味素直に引っかかってしまいました。

    違和感の正体とともに「天使」のイラストの
    謎やそれが現れた真相...作者らしい可愛い
    罪のないこのシリーズに合った結末でニンマリ。
    なにより...天使がペンギンに似てる...ってのが
    素晴らしいです。ペンギン is ルール!

  • 学園ミステリーの続き。今回は長編で見事に騙された感じです。
    葉山くんの探偵力、発言の内容が上がってきているように感じました。女子も放っておきませんよ。
    柳瀬さんが翠ちゃんを牽制しているようにも見える場面も。
    ニヤニヤ。

    自分の責任でもなく、タイムリミットに迫られて緊迫感が伝わってくるシーンは人命が絡んでいるわけでもないのにかなりハラハラさせられました。
    最後はまた伊神さんに頼ってしまうのだけど、頑張れ葉山くん!と応援したくなります。

    内容については触れませんが、気になるチョイ役の人物が何人か登場。
    「校長先生」遊び心を持っている、というかイカした大人で粋な発言が格好よい。
    「お姉さん」ミカさんの事。どこでも居そうな女子なんだけど、大人になった彼女も魅力的そう。チョイ役ではないけどキーマン。ほとんどでてきませんが。
    そのほか、文化祭を盛り上げようとする各メンバーにも好感が持てました。

    また「ヒロ」がどのようにあのようなキャラになったかのも考察のしがいがあります。う~ん

  • コミカルな学園ミステリ・シリーズ第4弾。
    夏休みも終盤。
    目前に迫った文化祭に向けて、市立の生徒たちは大張り切り。

    美術部の葉山君は、絵が描けるし工作も得意なので何かと引っ張りだこ。
    2年3組の出し物は、女子が民族衣装を着たがったためのペルー屋台。
    飾りに置く巨大なアルパカをみんなで製作中だ。
    早朝、登校した葉山くんは、奇妙なイラストが描かれた貼り紙を見つける。
    演劇部部長の柳瀬沙織が、あちこちの部室に貼られているというので、驚く。
    ピンク色の天使ともペンギンともつかない絵で、各部にちなんだ内容になっているのだが。
    いたずらか愉快犯かと思われたが‥

    吹奏楽部の奏(かなで)という女の子の視点からも、描かれます。
    美人だけどいささか変人の上条先輩に、今日も首筋をなでられる日々。
    2年先輩の智くんは、じつは親戚のお兄さんで、奏のことを心配します。
    好奇心が強い奏は、貼り紙の謎に興味を持ちそうだから。

    奏は葉山君と出会い、謎を解くため、協力することに。
    葉山君は、奏についてきた智くんには、娘の恋人をにらむ父親のように観察され、上条先輩にはなかなか美味しそうと舐めるように観察される羽目に。

    葉山君は、化学準備室で何かしている人影を見かけた。
    そして、文化祭のホームページが改ざんされ、脅迫状が?!
    文化祭2日前まで、つまり4日のうちには犯人を突き止めると校長に宣言する柳瀬さん。
    知恵を絞る葉山君と奏。身近に犯人がいると気づくのですが‥
    深刻さを増した事態に、いよいよ伊神さんも登場。

    高校生活をにぎやかに描き、恋愛色は少ないけど、ちょっとしたシーンが印象的。
    あれ?と思うトリックに~気づくかな?
    文化祭のシーンで、余韻を残します。

  • 夏休みの終盤。
    文化祭に向けての準備を進める市立蘇我高等学校で、
    「ピンクのペンギンのような天使」を描いたポスターが、
    あちこちに貼られるという事件が発生する。
    ただのイタズラかと思われたそれは、次第にエスカレートし
    少しずつ深刻な事件に進んでいく。
      
    この物語を読み終えて、最初に口に出た感想は、
    「見事に騙されました。参りました」
    でした。
    今回は複数の視点を切り替えながら、物語が展開していきます。
    読み進めている内に、なんとなく違和感があったのですが、
    トリックが示唆された瞬間に、全ての謎が氷解。
    見事なほどトリックに引っ掛かっていた自分が悔しくてなりませんでした。
     
    ミステリィのトリックをばらすのはモラルに反すると思いますので、
    シンプルに一言だけ。
    「絶対に2度読んでください!」
    緻密に計算されたトリック。そっと隠された伏線。巧みなミスリード。
    この複雑に練り上げた物語を存分に味わう事ができます!
     
    愛すべきキャラクターも健在。
    葉山くんと柳瀬さんも微妙な距離感を保ったまま。
    素敵な学園ライフを送っています。
    しかし、可愛い葉山くんは、案外モテるんですね
     

  • 文化祭における事件というネタは、個人的にはどうしても相対させちゃう作品があるんだけども、そしてそっちの作品がかなり好きなのだけれど、そういう状況でもこの作品はなかなか秀逸だったと思う。

    どこかに叙述トリックが使われてるかもなぁと感じたのはかなり後半の方だったから、相変わらずの騙されっぷり。時間をずらすという叙述だったことにまでは全く思い至らなかった。

    文化祭となるといろんな人が勢ぞろいするから、それだけで盛り上がるし、お祭り感のちょっと浮ついた感じと変わり者の探偵役とのコントラストが映える、とでも言うんだろうか。そしてそこにいじられ役の主人公がいることで、三点倒立的にバランスが取れてる気がする。

    文化祭的には動機や内容がちょっと重くてバラ色ではないけれど、文化祭は楽しまないといけないから、最後に「文化祭へようこそ」で終われたのはよかった。

  • 読むのがもったいなくてあえて読むのを先送りにしているシリーズ。
    ついに読んだけど、やっぱり読んで良かったと思う。
    しかし、高校生の頃は高校が舞台の小説はあまり読んでいなかった気がするのに、大人になってから読む小説になぜか高校生や大学生を扱ったものが多いような気がするのはなぜなのだろう。小説全体に占める青春ものの割合がやはり高いのだろうか。それとも自分が懐古的になり過ぎている、というか年を取るのが怖いのかもしれない。
    閑話休題、
    今回もトリックは著者の得意のあの手法だった。もしかすると本シリーズで一番うならされたかもしれない…。タイムリミットがある中、葉山さんと柳瀬さんで謎解きをしていく過程は面白かった。本書では、変な嫌味のある人物が誰もいなくて、リラックスして読める。こんなに面白いのに、なんでアニメとかになっていないのかな、と、思ったけれど、トリックというかこのシリーズの特長を考えればそれも難しいのかなと思った。

  • 葉山&伊神シリーズ第4弾。 これで既刊分は終わり。 だんだん葉山くんがたくましくなっている。 トリックもなかなか凝ってて面白かった。まんまとだまされた。 よくわからない柳瀬さんとの関係もにまにま。 1巻はちょっと読みにくかったしあまり期待してなかったけど、続きが楽しみなシリーズになった。

  • 刊行順に読まなかったため前後してますが、文化祭!
    珍しくふたり分できたなーとおもいつつ、油断していてひっくり返った。
    伊神さんの出番が少なかったけど、インパクトですべてもっていく(笑)
    個人的に翠ちゃんがかわいい。
    うーん、さすが。

    しかし葉山くんて(柳瀬さん以外にも)絶対もててると思うんだよなあ。
    本人が知らないだけで。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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