昨日まで不思議の校舎 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488473068

作品紹介・あらすじ

超研の〈エリア51〉で特集した「市立七不思議」が何かを呼んだのか? 突如そのうち3つの事件が巻き起こり、葉山君はおおわらわ。コミカルな学園ミステリ・シリーズ第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ5作目。今回は市立に伝わる都市伝説「市立三怪」(花子さん、カシマレイコ、口裂け女)の話。
    相変わらず葉山くんとミノと柳瀬さんが一生懸命謎を解明しようと頑張っているのだが、結局行き詰まり伊神さんを呼ぶというパターン。市立三怪それぞれに纏わる三つの事件を解決する楽しさに加え、その三つの共通点が出てきた所も、ただの学園物の謎解きを超える面白さがあった。

    一旦、今出ているシリーズは終わり。続編に期待!
    …と思いきや、まだ読んでいないものがあった。
    文中に映研のVHSが入れ替えられていたのを伊神さんが解決して~云々の記述があり、そんなのあったかなぁ?と何度も前作5冊を捲ったのだが思い出せず…よくよく調べたら、どうやら『放課後探偵団』というアンソロジーに入っている「お届け先には不思議を沿えて」という話だそうだ。これは読まなければ~!

  • 今回は学園七不思議を題材としたミステリー。有りがちなテーマだなあと思いましたが、流石似鳥鶏さんの作品ということでライトなミステリーにはなりません。特に今回は中々に重厚な非日常でした。

    3つの事件の犯人の最後の独白では、最初はちょっとした悪戯心、魔が差した感じでやってしまった様でしたが内情の描写が深く、特に花子さんの話では用務員さんの恋心がグッときました。
    枯れと呼ばれる年代でもそんな溌剌とした気持ちが甦るのだろうかと、もう初老でもある自分にも重ねてみてドキドキしながら読み進めました。

    そして今回は原点に戻り、あの事件の解決篇といったところでした。完全にスッキリした燃焼感はありませんでしたが確かに今までの鬱蒼とした学校とは違う雰囲気を、葉山くんと共に感じ取れた気がします。

  • 面白かった!原稿を読んだ担当編集者の方が「これでシリーズ終わりですか?」と尋ねたそうだが、それも無理はないと思う。だって、一作目のアノ件にもきれいに決着をつける形なんだものね。これ、当初から構想されていたんだろうか。そうであるにしろ、違うにしろ、非常に鮮やかに決まっていると思った。

    このシリーズは、軽快な青春ミステリという点でも出色だけど、それに哀切な痛みが加えられていて、そこがとても好きだ。それに、今回は(遅ればせの)シリーズファンとしても見逃せない、おおーっという展開もあったし、いや大満足。

  • 事件にまきこまれすぎというフィクションにありがちな設定を謎につなげてる。面白かった。

  • 葉山君シリーズ五作目。
    葉山の通う市立高校で、「学校七不思議」になぞらえた事件が次々と校内で起きる。
    例によって事件に巻き込まれた葉山と友人たちは共に捜査に乗り出すが、一向に解決の糸口は見えず、卒業生の伊神さんを頼るが、意外な真相が明らかになる―。

    細かい事件がいくつかあり、ちょっと要素が多すぎるかなという気はするのですが、手堅くまとまってます。
    第一作からの謎が解決されるという怒涛の集大成となった今作はシリーズ一区切りって感じですね。

    日常ミステリだけでなく、発展途上な主人公の成長物語というところにも本シリーズの楽しみがあるわけですが、主人公以外の面々の成長も窺えて感慨深いです。

    葉山君とミノは事件にも変に慣れちゃってしっかりしてきた気がするし、伊神さんも事件当事者や葉山君に対しての配慮を見せてくれるようになったし。
    何より、葉山君がヒロインに対しての思いを今作ではっきりさせてくれたのが親戚の子が成長したような感じで嬉しかったです。

    シリーズに区切りがついただけでこれで完結じゃないそうなので、次のステージが楽しみです。

  • どんどんうまくなってる気がする。前半は注に笑わせられ、後半はぞくぞく。悩む探偵(伊神さんじゃなくて葉山君ね)ってのも味があるんだよね。伏線回収しまくったから、そろそろ完結かと思ったけど、まだまだ続きそうでよかった。あと、柳瀬さんがかわいい。(これ毎回言ってるわ)

  • シリーズ第5巻にして、1巻からの集大成。

    今までと違って少し血の匂いがします。そのせいか、コミカル度が少し落ちていますが、青春度が濃いと思いました。小林君が愛おしい……!

    そして、傘立てに傘を投げ入れて相合い傘を求める柳瀬さん
    のかわいらしさも素晴らしい。謎解きのシーンよりもインパクトがありました。

    今回は葉山君の気持ちがわかるシーンもありました。さらっとしていて男の子らしい。良いシーンでした。これを踏まえても集大成だと思います。

    まだまだ続いてほしいなぁ。柳瀬さん卒業したら終わっちゃうのかな。

  • 中年のおっさんが似合わない若者向けの学園ミステリーをシリーズの最初から読んでたのは、この作品を読みたかったから。なのにシリーズ番外編がアンソロジーに収録されてて未読。その話が結構登場するは残念だったぞ…

    さて、シリーズここまでの総集編的な本作品、作者もあとがきで書いているようにシリーズ最終作を思わせる、せわしない風呂敷の畳み方をするのだけど、その慌ただしさがちょっともったいない感じ。それこそ、上下巻にしてでも良いからもうちょっと丁寧に畳んでほしかった。

    それでも、「始末はつけときましょう」という締め方は読む側としては爽快。学園もののミステリーシリーズなんてのはあるところで完結させた方が潔くてケツの座りも良いと思う。…まぁ、続くと作者は言うておるのだけど。

    どうせ続くなら、ミステリー部分は並みでいいので、葉山君と綾瀬さんの恋の行方を(できればハッピーエンドで)書いて欲しいと、ほんで、出来ればその話にはご隠居にはかなりエエ役を与えてやって欲しいと、伊神君にはコメディリリーフの役を与えてやって欲しいと、おっさんファンは思うのであった。

  • “僕は思わず後じさりそうになった。この人の視線には、人を内面ごと刺し貫くような鋭さがあるのだ。その場に踏ん張れたのは僕が強かったからでも、強い意志を持っていたからでもなく、たんに伊神さんが僕を咎める表情でなく、昆虫並みに完全な無表情だったからである。
    「どうしても、そこが気になるようだね」
    「それは……」
    僕は黙って頷いた。
    本の山の間に立って、伊神さんと向きあう。どうして自分はここで、伊神さんと対峙しているのだろう、と思った。僕は自力でどうしようもなくなった事件の解決を頼みにきたのだ。伊神さんの言うことに異を唱える理由はないはずだし、そういう立場でもないはずなのに。
    だが、伊神さんはちょっと肩をすくめるようにして視線を外した。
    「もちろん、いま言ったのは僕の考えだよ。君は僕とは違って、弱い人間に重心を置く」
    伊神さんは無表情のまま歩き、僕の横を抜けて居室のドアを開け、そこで言った。「そういうところを悪いとは思わないし、嫌いでもない。それが君なんだろう」”[P.167]

    6巻目。
    確かにこれで終わりですよーと言われても何の違和感もない感じの締まり。
    まだ続くというのは嬉しいけれど次はいつ頃に出るのかなそわりそわり。
    柳瀬さんが傘を投げ入れて「傘忘れた!」って言うシーンの可愛さたるや。
    葉山くんの気持ちは固まったみたいだけれど、柳瀬さんは、確かにどうにも掴みきれないなぁ。

    “そこまで言って、柳瀬さんが何やら探りを入れるような視線をこちらに向けていることに気付いた。
    「……どうしました?」
    「別に」柳瀬さんは目をそらした。「男の子ってどうしてこう、女に頼られると舞い上がっちゃうのかなって思って。まあ、麻衣ちゃん可愛いもんね」
    「うっ。……いえ」これは女の勘だな、と思う。が、よくよく考えればさっきは単に感謝されていただけだ。後ろめたく考えることもないだろう。
    「あーあ。私ももっとこう、男にうまく甘えられればもてるのかな」柳瀬さんは溜め息をついて伸びをすると、ぐるん、と肩を回して両拳をぱきぱき鳴らした。「よーし。じゃ今期の私のイメージは『か弱さ』と『はかなさ』ってことでよろしく」
    拳を鳴らしながら言われても困る。”[P.108]

  • 面白かった。
    日常の謎系なはずなのに終盤は怖かった。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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