完全犯罪 加田伶太郎全集 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.39
  • (3)
  • (2)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 79
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488478117

作品紹介・あらすじ

資産家が住まう洋館に届いた英文の脅迫状と、奇怪な密室殺人――迷宮入りとなった十数年前の事件に四人の男が推理を競う傑作短編「完全犯罪」。著者である加田伶太郎は、日本推理小説の爛熟期に突如として登場、本作を始めとする幾編かの短編小説をして斯界に名を知らしめた――。その謎に包まれた正体は、文学者・福永武彦が創りだした別の顔であった。精緻な論理と遊戯性を共存させ、日本推理小説史上でも最重要短編集のひとつに数えられる、文学全集の体裁を模した推理小説集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 『完全犯罪』
    毒チョコ風の多重解決、好きや(毒チョコ程に問題提起はしてないけれども)。
    過不足なく丁寧に描かれていて、また文体も美しく分かりやすかったが、この点は蛇足があっても味になったのではと思った。

  • 【物語】★★★☆☆ 9
    【整合】★★★★☆ 12
    『意外』★★★★☆ 8
    「人物」★★★★☆ 4
    「可読」★★★☆☆ 3
    『作家』★★★★☆ 8
    【尖鋭】★★★★★ 15
    『奥行』★★★☆☆ 6
    「構成」★★★★☆ 4
    『印象』★★★★☆ 8

    《総合》77 B+

  • ミステリ短編集。適度に古めかしい雰囲気と、今読んでもなお魅力的なきっちりとした論理の楽しめる作品ばかりです。難を言えば、いくつか「もうちょっとタイトルどうにかならなかったのか?」と思うものがあるけれど(笑)。ストーリーは問題なく楽しめました。
    お気に入りは「眠りの誘惑」。夢遊病や催眠術といった道具立てが魅力的で、その部分に気を取られていたらこの真相がまったく見抜けませんでした。
    「赤い靴」もインパクトのあった作品。歩く赤い靴、分かってみれば単純だけれどこれは怖い。そりゃあこれだけいろいろ追い込まれたら……怖かったろうな、とひたすらに思います。

  • 『「完全犯罪」序』

    『完全犯罪』再読★★★
    やっぱり説明されてもトリックがよく分からない
    『幽霊事件』★★
    殺された人が玄関から入ってくる事件
    『温室事件』★★
    密室殺人
    幽霊〜もだが一つ計算違うと成立しなくなるようだ
    『失踪事件』★★★
    大学生が旅行中行方不明
    『電話事件』★★
    脅迫電話
    『眠りの誘惑』★★★
    催眠術
    電話〜ともに子供に甘過ぎでは
    『湖畔事件』再読★★★
    『赤い靴』★★★

  • 伊丹英典という探偵が冴えてるのにお茶目で楽しかった。半世紀以上前の良書を読める幸せ。

  • 【収録作品】「完全犯罪」序/完全犯罪/幽霊事件/温室事件/失踪事件/電話事件/眠りの誘惑/湖畔事件/赤い靴
    素人探偵誕生記/「加田伶太郎全集」を語る 都筑道夫・福永武彦・結城昌治

  • 〇 総合評価 
     草の花,死の鳥などの作品で有名な文学者「福永武彦」が「だれだろうか」のアナグラムである「加田怜太郎」という名義で残したミステリの全集。鼎談や序論なども掲載されている。時代を考えるとそれなりのクオリティの作品がそろっているともいえる。しかし,有名作家が残したミステリだという付加価値があるから古典として評価されている程度の平凡な短編集ともいえる。
     標題作の「完全犯罪」は,船上で4人がそれぞれ推理を披露するという多重解決モノ。無駄な描写がなく事件について描かれ,4人が推理をする。トリックがチープであり意外性もそれほどでもないが,無駄のない構成と分かりやすい構成なのでそれなりに楽しめる。しかし,メイントリックがチープなだけでなく分かりにくい。
     そのほかの作品は,短編ながら無駄なやり取りもあってますます完成度が下がる。さすがに文章は上手く,作品の雰囲気は風格があるのだが,いかんせんミステリとしてさほど面白くない。それぞれの時代を反映した描写になっていて古臭い。作品の雰囲気の良さを最大限評価しておまけの★3といったところか。

    〇 完全犯罪
     船の上で,迷宮入りになった10年以上前の事件を巡って4人の男が推理を競う「多重解決」モノ。事件は,雁金家という資産家の家に脅迫状が届く。そして,犯行予告があった日に雁金玄吉が殺害される。容疑者は妻の雁金弓子,社長秘書の別府正夫,居候の安原清,別府正夫の養母である雁金梅子,弓子の元恋人の本山太郎。この4人には,別府正夫を殺害する一応の動機はあった。別府正夫は密室で死体で発見される。捜査の中,別府正夫が妻の弓子を殺害しようとしていることが書かれているメモが発見される。
     この事件についての4人の推理。まずは船長。船長は犯人は中学生の居候だという。凶器は机の引き出し。合鍵で鍵を開けて殺害。合鍵を取りに行き,最初からそこにあったと見せ掛けたというもの。しかし,もと船乗りの別府正夫を中学生が殺害することは不可能ではないかと論破される。
     事務長の推理。秘書の別府正夫が犯人だという。ロープを使って3階の窓からぶら下がり,首を絞める。ロープは腹に巻き付けた。しかし,そもそも3階からロープでぶら下がるという犯行は見つかる危険が大きすぎると論破される。
     船医の推理。弓子と本山の共犯。本山への手紙は2通出されたというもの。夫人は夫の殺害計画を知らないはずであり,殺害されると思っても,危険を冒してまで夫を殺害するのは不自然と論破される。
     伊丹英典の推理。合鍵と焚火と殺人メモをベースに消去法で犯人を推理する。
     焚火の関係で,弓子夫人と中学生を消去
     合鍵の関係で,秘書が消去
     すると犯人はおばあさんしかいないことになる。おばあさんは編み物を利用して殺害をした。秘書の靴を履いて外に出る。焚火は本山への警告,雁金氏に窓から首を出させるという目的で焚いた。編み物の毛糸を使って殺害。たまにして凶器を隠した。
     小説というか,推理クイズという感じの作品。毛糸を使ったトリック部分が分かりにくいのが難点だが,無駄な描写がなく,こじんまりとまとまった秀作だと言える。

    〇 幽霊事件 ★★☆☆☆
     久木助手が登場。英文科の大山ひとみという女性の父親が,自分を陥れた元職場の上司に復讐に行くのではないかと伊丹に相談に来る。伊丹と久木が「黒田作兵衛」というその上司の家に向かう。黒田作兵衛の家では吉備弁護士が殺害されている。大山ひとみの父親が容疑者。黒田家の家政婦は黒田の幽霊を見たという。
     真相は殺害されたはずの吉備が黒田のふりをしていたうもの。死体は実は黒田の死体だった。
     いかにもひと昔前の短編ミステリという感じの作品。人物入れ替えトリックだが,特徴的なハゲ頭でごましているだけで,瓜二つでもない二人が入れ替わるというところがミソになっている。これは凡作

    〇 温室事件 ★★★☆☆
     久木助手の友人が家庭教師をしている伊豆の休暇で殺人事件が起こる。密室である温室での殺人。トリックはアキレスという訓練された犬を使って密室を作るというもの。犯人は香代子という女性で,久木と一緒にミステリを読み,久木が夢中になっているときに殺人。久木を自身のアリバイに使っていた。
     犬を使った密室トリックで,昔,藤原宰太郎か誰かが紹介していたような気がする。まさに古典。香代子がミステリをどのくらいまで読んでいたかをさりげなく確認するなど,伊丹の探偵ぶりがスマートで面白い。


    〇 失踪事件 ★★☆☆☆
     瀬戸という学生が伊豆に一人旅に行ったまま失踪してしまったという。瀬戸の兄が久木を通じ,伊丹に捜査を依頼する。伊丹は,瀬戸が焼き殺される寸前で犯人を見つけ出す。真相は,生命保険を得るために瀬戸を殺害しようとしたというもの。伊丹は,歯の治療により身元をごまかし得る歯医者に目を付け,久木の父が警察の偉いさんであることを利用して,生命保険に最近加入した歯医者を見つけ出し,犯人を特定した。
     ・・・なんというか。古典としてもややミステリとしては苦しい。バカミスを作ろうとはしていなかったがバカミスになってしまったパターンの作品か。時代と短編であることでなんとか作品として成立しているという作品か。

    〇 電話事件 ★★☆☆☆
     遠藤という人物が電話で,謎の人物から脅される。遠藤は子どもが通う学校の校長の妻と不倫をしていた。相談を受けた警察から,さらに伊丹に依頼があり,伊丹が捜査をする。妻が不倫をしていた校長が犯人かと疑うが校長も同様の脅しを受けていた。最終的に遠藤氏は自殺する。真相は遠藤の子どもが犯人だというもの。遠藤の子どもは父と校長を脅し,遠藤はそのことを知って責任を感じたせいか,自殺をした。
     安楽椅子探偵というよりちょっとしたハードボイルド。伊丹は皮肉な結末を前に探偵趣味を廃業するつもりと言う。
     ミステリ的には凡作。子どもが犯人というのは少し意外性はあるが,ミスディレクションらしいミスディレクションもなく,こいつが犯人かもと推測できてしまう。凡作だろう。

    〇 眠りの誘惑 ★★☆☆☆
     鳥飼元子という女性が住み込みで家庭教師をした家の主人(赤沼)が殺害される。鳥飼が手紙を書いて,その手紙を読んだ伊丹が推理をするという趣向。真相は,その家の中2年生の娘のユリ子が犯人というもの。鳥飼自身の推理なども披露されておりちょっとした多重解決風の味付けがされている。水道の蛇口に付けたホースが凶器。トリックらしいトリックもなく,伊丹の推理も手紙形式で箇条書きで語られている。作品の幻想的な雰囲気だけはそこそこだが,ミステリとしては凡作

    〇 湖畔事件 ★★★☆☆
     伊丹が旅先の湖畔の近くのホテルで事件に巻き込まれる。ホテルで事件が起こるが,「死体」が消失する。真相はそもそも事件はなかったとうもの。「死体」のふりをした宮本小次郎という作家が,新聞記者のふりをしてホテルを脱出していたというもの。動機はかつての恋人への復讐と伊丹をからかうため。ミステリのパロディというイメージの作品。そもそも事件が起きていない。起きていない事件について子どもがいろいろと推理するという趣向。プロットはそこそこに面白い。趣向の面白さと文章の雰囲気の良さで★3か。しかし,トリックもそれほどでもなく,ミステリとしては及第点ギリギリ程度


    〇 赤い靴 ★★★☆☆
     伊丹の知り合いの医者が務める病院で葛野洋子という女優が死ぬ。伊丹は捜査の依頼を受ける。犯人は新人女優の葉山茂子。心理的に脅かしてから,姿を見せて脅して殺害した。葛野洋子の姉が幽霊として出ていたという部分があるが,幽霊は歳を取っていたことから,若い状態で出ると葉山茂子が葛野洋子に似ていることからばれると思い,あえて歳をとらせたというところから推理した。細かい部分の推理はスマート。しかし,全体的にリアリティに乏しく,事件としては平凡。作品の雰囲気は悪くない。おまけで★3

  • 純文学作家福永武彦の手による「探偵小説」と聞いて興味津々で手に取った。
    探偵小説をものするときのペンネーム「加田伶太郎(Kada Reitaro)」は「誰だろうか?(daredaroka)」のアナグラムだし、探偵役の助教授「伊丹英典(Itami Eiten)」は「名探偵(meitantei)」のアナグラムというからその遊び心たるや相当なもの。
    標題作「完全犯罪」を始めとする8つの短編は、トリックだけにとどまらず、考え得る様々なバリエーションを提示する。文中に純文学作家らしい言葉遣いが現れるところもいい。
    加田伶太郎全集として文庫本で刊行されるにあたって、探偵作家加田伶太郎誕生に至る経緯を書いた随筆や、都筑道夫、結城昌治との鼎談、そして法月綸太郎氏による解説までついたお得感のある一冊。

    順番が逆かもしれないけど、これをきっかけに、福永氏の純文学もちゃんと読んでみようと思った次第。

  • 福永武彦先生はずっと好きでいて読んだつもりになってましたが、なぜ、これは未読だったのか・・・。
    中・短編集でとれも「今」を感じさせる内容で「純」でした。どうしても純文学の作家さんというイメージで捉えてしまうせいか点が甘くなりそうな気持を抑えても素晴らしいミステリーの一冊でした。
    「湖畔事件」の最後のシーンが自分の解釈の中ではぞっとする内容だけどその解釈でいいのか悪いのか、もやもやが残ります。「素人探偵誕生記」も内容が面白く学生時代に出会っていたのなら今と違う読書傾向に進んでいたんだろうな~などと今更ながらに。

  • 専ら福永武彦という純文学者の顔しか存じ上げなかった所為もあり、また著者の純文学でお腹いっぱいだった為に別ペンネームしかも氾濫しきっているミステリを態々手に取ろうとは露程も思わなかったが為に未読でいました加田伶太郎。
    探偵と刑事はあらゆる年齢・性別・職業の人が個性的な活躍見せ続けるジャンルなので、伊丹英典という名探偵が没個性に見えてきてしまうかなとも思いましたが、やはり端正で読みやすい文章は福永武彦らしくもあり、「ホワイダニット」「ハウダニット」に傾倒していく「端正なミステリ」でした。ごちそうさまでした。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1918-79。福岡県生まれ。54年、長編『草の花』により作家としての地位を確立。『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、『死の鳥』で日本文学大賞を受賞。著書に『風土』『冥府』『廃市』『海市』他多数。

「2015年 『日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

福永武彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
米澤 穂信
今村 昌弘
有栖川 有栖
恩田 陸
麻耶 雄嵩
有効な右矢印 無効な右矢印

完全犯罪 加田伶太郎全集 (創元推理文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする