事件 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 209
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (550ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488481117

作品紹介・あらすじ

1961年7月2日、神奈川県の山林から女性の刺殺体が発見される。被害者は地元で飲食店を経営していた若い女性。翌日、警察は自動車工場で働く19歳の少年を殺人及び死体遺棄の容疑で逮捕する。――最初はどこにでもある、ありふれた殺人のように思われた。しかし、公判が進むにつれて、意外な事実が明らかになっていく。果たして、人々は唯一の真実に到達できるのか? 戦後日本文学の重鎮が圧倒的な筆致で描破した不朽の裁判小説。第31回日本推理作家協会賞に輝く名作が、最終稿を元に校訂を施した決定版にて甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 丹念に書かれた物語はそれ自体に力がある
    裁判という制度を小説としてなりたつぎりぎりまで丁寧に描かれている

    裁判制度というのが、絶対的なものでは全然なくて社会制度であり、日本独特の進化をしたものと思う

    しかし白黒が完全には明瞭ではないものを判断するのが裁判官の仕事とすれば、裁判員制度はやっぱりどうかと思う

  • 普通の推理小説と思って読んでたら、全然違っていた。
    オビにもあるように裁判小説。
    裁判がどのように進んでいくのか淡々と描かれている。
    判決後の主人公の心のうちに興味を惹かれた。

    時間をおいて再読したいと思う。

  • 本作に登場する人物および事件はすべて、いわゆるフィクションであると「あとがき」で知って、とにかく驚愕、マジか。。。と独り言。

    本書で取り扱われる「事件」は、特に複雑なものではない。被告人は19歳の少年上田宏。これから横浜にて同棲をしようとともに駆け落ちを画策していた恋人ヨシ子(宏の子を身ごもっている)の姉ハツ子から、計画を互いの親にバラすと脅され、彼女を刺し殺した。

    (こういってよければ)この単純な事件に、500ページ以上が割かれる。しかも、主に、弁護士と検事、裁判官の三者の、私生活および法廷でのやりとりがひたすら描写されるのだ。おそらくそう聞いただけで「退屈」と思う人がほとんどではないか。読み始めたときは私もそうだった。

    ところが。一見単純な事件が、複数の証人の証言を通じて、また菊池弁護士の(形式的すぎるきらいさえある)弁論を通じて、万華鏡を覗いているような様相を呈してくるから不思議だ。

    本書ではおそらくわざと、文体じたいは深みを見せないよう、淡々とした書き方がしてある。法廷でやりとりされる形式的文書がそもそもそうである。だが、かえってそのような文書に事件が取り囲まれることで、司法という(俗っぽい)制度のむこうに、人間という存在の謎が、はるかむこうに、浮かび上がる。

    新聞連載され(!)たものの、刊行までに十年以上を要したという。今更ながら、本書が無事刊行されたことを祝福したい。

  • 我々の生きる現実は何一つ確かなことはなく、そんな不確かななかでも、それぞれに何らかの決定を下しながら生きるしかないのである。

  • いやいや汗、久しぶりに読むの苦労した笑笑
    でも裁判官、検事、弁護人の役割と裁判という根本を教えてくれる本。この本を読んで途中に思った陪審員制度なんて素人ができるのかと思ったら、昭和18年に陪審員制度は停止されていただけだとはビックリ!
    また世界では人民が裁判に参加していないのは昨今の再開まで日本だけだったとは…世界では昔から当たり前だったみたいです。もう一つ驚いたのは全編通して、裁判での全ての人の表情や態度がかなり重要な要因だとはビックリで‼️
    この本を読むと、とめどなく裁判に対してのコメントを出せるが終止がつかないので!本の分類としてはリアル裁判小説。最後の描写は重い!が、人の記憶何てそんなもんだろう…
    印象に残った言葉「一般人の正義感を馬鹿にしてはいけない」!
    時間がかかったが、なかなか興味深い意味のある本で、読破後はいつもと違う面白さを味わった!満足です!…が人を選ぶだろーなー笑

  • 地味な裁判事件を、作者の筆力で丹念に、丁寧に書き切る。それがとてつもない感動と、冷たい感情を湧き起こす。大きな動きがない裁判。登場人物の証言。揺れ。事実を突きつけられ、事件の流れを緩やかに見せられる読者。静かな物語を、ページが止まることなく先へ先へと引き込まれる。なんとも魅力的な作品であった。
    改めてミステリの奥深さを再認識できるオススメ作品。

  • これはなかなか読むのが大変だった。
    著者の裁判を理解して欲しいという熱が強すぎて脱線しまくる。
    登場人物の発する言葉や事柄について、法曹各自の見解や事例、
    時代などの背景、海外や世代間の比較など
    いちいち付属品がついてくるので読み進めるに困難。
    それだけ裁判というものの奥深さや一筋縄ではいかない問題題など知って欲しいのだろうけど。。。

    比較的単純な事件をモチーフにしているのだけれど、
    色んな人たちの思惑が絡みあって単純と思われた事件が複雑な構造をみせる。
    多くの賢者たちが検証や熟考を費やし慎重に結論を導き出したにしても
    真実にはたどり着けないという最後の虚しさ。
    人を完璧に裁くなんて到底できないことを踏まえても
    前に進まなくてはならない法曹界の人々の悪戦苦闘は生々しかった。

  • 法廷小説。

  • 小説的な面白さにはやや欠けるが、実際の事件や裁判はこんな風に進んでいくのだろうなぁ、というリアルな感じはある。一方で何の変哲も無いありふれた事件であっても、調べていけば、小説の題材になりそうな事実が見えてくるのが裁判なのだと思わされる。裁判のある種の面白さは十分に表現しており、法学部の学生が裁判の雰囲気をつかむにはよい小説だと思う。

  • 初版が司法研修所の教材で「誤りを指摘せよ」という形で使われている、という話に苦笑。ある事件の裁判がどのように進んでいくかをドキュメンタリータッチで描いた作品。証言というものがいかに不確定で脆いものかよくわかる。あやふやな記憶で一人の人間を罪に陥れることへの罪悪感からそうならざる得ない事もあるかと思う。

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著者プロフィール

大岡昇平

明治四十二年(一九〇九)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和七年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和十九年三月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、二十年一月米軍の俘虜となり、十二月復員。昭和二十三年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『将門記』『中原中也』(野間文芸賞)『歴史小説の問題』『事件』(日本推理作家協会賞)『雲の肖像』等を発表、この間、昭和四十七年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和六十三年(一九八八)死去。

「2019年 『成城だよりⅢ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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