千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

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  • 東京創元社
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レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488482015

感想・レビュー・書評

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  • 自分が書いたものが広まっていく怖さ。物語の内容に迷う姿。紫式部が本当にこんなふうに源氏物語を描いていたのかもとうれしくなる。

    「後の世のことは、神仏でもない身にはわからないもの。ただね、自分の心はいつわらないようにしよう。あとは自分に子供が生まれたら、その子にだけは誇ってもらえるようにしよう、と。」

    たわいないような事件が絡み合って、道長の人柄や彰子の人柄がくっきりしてくる。そして、実は!源氏物語に欠巻が?という大事件。
    こんな疑惑を知らなかったので、かなりショック!
    私、源氏やったはずなんだけど。。。こま切れな読み方だったから?

    登場人物が魅力的であっと言う間に読める。あてきの恋。元子女御の恋。それぞれ個性的な女性たち。
    なんとなくもう少し恋バナが濃くてもいいかなー。源氏だしーという気もする。でも、それがないからこそ、式部の事件がくっきりするのかなあ。
    式部が地味にかっこいい。

  • 帝ご寵愛の猫はどこへ消えた? 出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車につないでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていた。帝を慮り左大臣藤原道長は大捜索の指令を出すが――。闇夜に襲われた中納言、消え失せた文箱の中身。縺れ合う謎に挑む紫式部を描いた第一部「上にさぶらふ御猫」。『源氏物語』が千年もの間抱え続ける謎のひとつ、幻の巻「かかやく日の宮」――この巻はなぜ消え去ったのか? 式部を通して著者が壮大な謎に挑む第二部「かかやく日の宮」。紫式部を探偵役に据え、平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた華麗な王朝推理絵巻。

    紫式部を探偵役に据えたミステリーというちょっと珍しい作品。
    個人的に時代物は平安が一番好きだし、古典では源氏物語が一番好きなのでまさにドンピシャだった。時代物だけど文章は堅苦しすぎず、でも砕けすぎてもいないというとてもいいバランス。
    ただ実際にこの時代の女性がおいそれとウロウロ捜査は出来ないので、女童のあてきが実質的な足として色々見聞きしてくる感じ。
    源氏物語を真面目に読んだのは学生時代なので記憶はうろ覚えだったけど、確かに六条御息所や朝顔の君は登場の顛末を覚えてなくて怪訝に思った気はする。特に朝顔の君は印象無さすぎて、誰?と不思議だった。だからこそ今回の二章にはすごく興味が引かれた。調べてみると本当に間にもう一帖あったのではって問題があるらしくてびっくり。この話自体はあくまでも創作だけど、実際こういういざこざがあったのかもと感じられて面白かった。賢子がやったんだろうなって途中から察しはついたので、とても複雑な気持ちになる。
    この一冊で一応綺麗に没後まで描かれていたので、続きは気になるけどひとまずは満足かな。

  • 「桐壺」のあとにもう一帖物語があったと仮定した上で、作者紫式部が当時の事件を解いていくという趣向。側近の女童が活発?過ぎてちょっとどうかと思いますが、それほど崩れてはいない感じ。
    これで出仕前から「雲隠」で下がり、死後の話まで出るので、続編として出ている二冊が不自然に思えてなんとなく手に取る気にならない。

  •  歴史上の人物を探偵役にすえる、という単純な「名探偵○○」かとも思っていまいしたが、なかなかどうして。源氏物語の成立の背景まで組み込む仕掛けが、大したものだと思います。 ホームズのファンが書いた、原作の矛盾とか欠落部分をうまく補完するパスティーシュを読んだ時と似た味わいがありました。

  • 紫式部が主人公、探偵役として出てくるけど、紫式部となる前の段階から始まるのが良かった!
    源氏物語を書き始めたのはまだ紫式部じゃない頃だったんだっけ?と遠い昔の学生時代、古典で習ったうろ覚えもいいところな源氏物語の知識を必死に捻りながら読んだ。

    実資を自信過剰で親馬鹿なちょっと鼻につく奴だなと思って読んでたけど、まさか第1話の最後で源氏物語にハマるとは思わなかった!
    それを見て実資が猛烈に可愛くなった(笑)
    しかも、問題作の“かかやく日の宮”を気に入るとは実資なかなかだな。
    それも恐らく唯一写本を持っている人。
    他に知っているのは紫式部とあてき、道長様なだけに“かかやく日の宮”を知っている実資はスゴイ立ち位置にいるな(苦笑)
    実資が紫式部に“かかやく日の宮”について聞く日が来ると良いなぁ。
    そして、源氏物語の読者であることを伝えられるといいな。

    あてきの成長した姿を見ることが出来るとは。
    岩丸と離ればなれになってしまったときはしんみりとしてしまったけど、無事にくっついて良かった!
    やっぱり岩丸は定子様のことが好きだったんだな。
    それを知っていて受け入れて結婚したあてきはイイ女だなぁ。

    道長様、紫式部のこと好きなんだな。ちょっと複雑な好きではあるけど。
    紫式部自身のことも好きだけれど、それと同じくらい源氏物語が好きなんだな。
    策謀術中を巡らせどんな手段も厭わないところがある道長様が実は雅を愛する人で、それを紫式部にだけは知ってもらいたいところに非常に萌えた…!
    道長様、源氏物語の一部を抜き取ったり、猫騒動とロクな奴じゃないけど、こういうところが人間くさくて憎めない。

    紫式部が紫式部になる経緯を読めて良かった。
    道長様に結局引き摺りだされてしまったな。
    でも、それを逆手にとって彰子様がバックにつけることが出来たのは良かった。
    あれでは道長様ももう抜き取ることは出来ないもんな。

    “かかやく日の宮”を処分してしまったのは、やはり賢子だったか。
    あてきの傍にいて童とくれば賢子しかいないから検討はつけてたけど……。
    それをずっと胸に秘めていた紫式部はなかなかにしんどかっただろうけど、さすが母だな。

    三巻まで今出てるから時間見つけて読もう。

  • 特に感動を狙ったような筋書きではないのですが、読んでいる最中何度も涙があふれそうになりました。
    本音という名の熱いものを必死に秘めて生きている人たちが愛しくおかしく、そのままならなさの中に美しさとか悲しさを感じました。


    また、大きく分けて三部構成となっているのですが、確かな時間の流れがあり、登場人物の成長があり、ため息のようにひそやかに姿を消していくひとがあり…。


    読み終わった時、本当に身近な人たちのありし日の姿を見たような懐かしい寂しさを感じました。

  • わー!面白かった。紫式部の時代の登場人物が、こんなにも身近に思えたのは初めてかも。この時代を描くと、思い切り恋に身を焦がすものか権力闘争かと、似たような感じのが多いなか、これは登場人物それぞれの思いも立場もしっくりと腑に落ち、事件その物も納得の結末。彰子さまの達観した賢さが好印象でした。

  • 紫式部、源氏物語というワードでつい購入。
    2作の中編が入ったもの。
    1つめは、猫探しとあまずっぱい恋物語。
    2つめは、「輝く日宮」巻の行方。

    どっちもおもしろかったー。
    あてきちゃんが可愛い。成長した彼女が出てくる2つめも良い。
    ページを捲るのが止まらなくて、一気に読んでしまった。
    シリーズ物みたいなので、全部買おう。

  • 出産を控えた中宮定子の下から消えた猫、時を同じくして、入内を控えた左大臣の姫、彰子の下からも猫が消えた…。雅だが策謀渦巻く貴族社会に巻き起こる謎を源氏物語を執筆中の紫式部が解き明かす日常の謎系歴史ミステリ。
    ライトノベルっぽい設定のため、正直、期待半分で読み始めたが、丁寧な時代考証と端正な文章が揃うとこうも魅力的な物語になるのだなと感心させられた。
    特に、源氏物語の失われた一帖を巡るストーリーでは、時代の権力者、藤原道長に翻弄されながら、決して、まつろうことのない式部や彰子の姿が美しく描かれている。

  • 初めましての作家さん。
    式部が探偵役というから、何をさせるのかと思っていたけど
    派手に立ち回るわけではなく、日常の謎系です。
    しかも物語の目線は式部に仕える小少将「あてき」。
    大雑把に説明すると、あてきが一人で推理して空回りして最後に
    式部に相談して問題解決という流れなんだけど
    3部構成になっていて、時期が飛んでいる。

    あてきの女としての生涯という見方もできるし、
    式部が作家としての使命に目覚めていくという見方もできる。
    いやぁ~紫式部の印象が随分と変わりました。
    そういう意味でも2部の謎のスケールが大きくて読みごたえありです。
    平安の華美に過ぎない都の様子が楽しかったぁ

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。2003年、『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。図書館を舞台にした『れんげ野原のまんなかで』などの「日常の謎」や、歴史・古典ものなど、幅広い作風で活躍。既刊に『矢上教授の午後』(祥伝社文庫)などがある。

「2018年 『矢上教授の「十二支考」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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