源氏供養 草子地宇治十帖 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2024年7月19日発売)
3.50
  • (1)
  • (6)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 94
感想 : 6
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784488482060

作品紹介・あらすじ

藤原道長の別荘で毒殺未遂!?
都を離れ、宇治の庵にて紫式部最後の謎解き
『宇治十帖』の秘密に迫る、王朝推理絵巻 完結編
東京創元社創立70周年記念文庫書き下ろし

西国でのちに「刀伊の入寇」と呼ばれる騒乱が起こり、それを発端としたはやり病の広がりが都でも噂された寛仁三年。紫式部(香子)は出家し、宇治の庵で一人で暮らしている。小一条院妃延子より『源氏物語』の続きを促す便りをもらうも、手指の痛みで筆をとることができずにいた。そんなある日、庵のそばで毒を盛られたとみられる猫の死体が見つかり……。王朝推理絵巻、完結篇。著者あとがき=森谷明子

■目次
序章
第一章『その頃』
第二章 刀伊の夏
第三章『その頃、藤壺と聞こゆるは』
第四章『その頃、横川に』
第五章『とぞ本にはべめる』
第六章『その頃、按察使(あぜち)大納言と聞こゆるは』
終章

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  デビュー作の『千年の黙』、『白の祝宴』、そして『望月のあと』と続いた平安王朝推理絵巻の完結編。ストーリー的には、第1巻の『千年の黙』のエピローグに繋がっている。

     紫式部(香子)は既に出家し、宇治にある寺の庵で暮らしていた。そして、すぐ近くには藤原道長の別荘があり、その近辺で事件(?)が起こるのだが…
     
     本作は香子が宇治十帖を書き上げる話と、彼女に以前仕えていた阿手木が遭遇した刀伊の入寇の話がメインとなっている。この時、阿手木は太宰府の権帥となった藤原隆家の家人源義清の妻として、九州へ共に赴いている。
     
     本作では、源氏物語の中でも作者別人説が強い「匂宮」、「紅梅」と「竹河」の三帖についての作者なりの「解答」が示されており興味深い。また、以前の三作に登場したした人物も幾人かでてくる。しかし、これら三作にある彼ら彼女らのエピソードを読んでいないと分かりにくいと思える。三作を読むことをおすすめする。

     また、香子の娘賢子も彰子太皇太后の女房として出仕しており、その後もかなりの出世をすることになる。その処世術の片鱗が伺えて面白い。

  • このシリーズの前巻を読んでから随分時間が経っていたのでキャラクターの設定などだいぶ忘れているところはあったものの、読み進めるうちにあーそうだったそうだった!と懐かしさを感じた。
    紫式部は変わらず慎ましく。でも思考がキレキレ。
    そして母と異なり明るく朗らか、宮仕えを全力で楽しんでいる賢子が好き。
    宇治十帖って暗くて煮え切らない登場人物が多く個人的にはあまり惹かれない物語だが、それを執筆する過程を面白く描いている小説だと思う。

    太宰府の描写もたくさんあり。

  • 紫式部の最晩年の源氏物語宇治十帖にまつわるお話。幻のかかやく日の宮も出てきます。ミステリと史実でうまく構成されていて引き込まれました。
    瑠璃姫って誰だっけ?と前の巻を思い出しつつ、今までの人々のその後も収まり大団円な終わりに満足。もう一度通しで読んでみたい。

  • 『千年の黙』『白の祝宴』『望月のあと』に続く、シリーズの最新刊にして完結編
    こちらのシリーズ作品を読むのは久しぶりですが、香子(紫式部)の万事控え目で悩みが多く、しかし周りの人への細やかな気遣いをし、己の書くものに情熱を密やかに燃やす姿が変わらずとても好ましいし、紫式部として想像する人柄にすごく馴染む造形が相変わらず好みです
    1019年頃の、すでに出家をし宇治の庵で暮らす彼女が“宇治十帖”を書き上げるまでの話と、香子の元女房で太宰府の帥(長官)となった藤原隆家の家人の妻となっている阿手木から見た“刀伊の入寇”への防衛戦の物語
    『小右記』に実際に記載されている文と宮中での出来事を合わせて語る藤原実資の幕間
    源氏物語の本編と宇治への合間の章である“匂宮” “竹河” “橋姫” の別人執筆説への本書ならではの異説の提示
    宇治の作中の大君と中君の姉妹が別の道をたどる物語や異母妹の浮舟の登場まで、香子が得た執筆の元となる事件なども、要素が実に多岐にわたり、そんな情報量の多さを端正に語って紡いでくれる巧みさに惚れ惚れします

    すでに『源氏物語』の作者として高名な名声を得ている香子だけど、物語が人に与える影響に幾度も悩み、それと同時に所詮は絵空事の読物などとるに足らない物である視点も示されるし、またこの時代の末法思想では、人の心を捉えて惑わす物語を書くことは罪深い行為であるとする価値観とも接することになる
    でも、物語の持つ力を、それを愛してやまない心を、何よりも“書きたい”っていう意志を抱いて綴るその姿がたまらなく素晴らしい
    既出のこれまでの三作品を読んでいると嬉しい人物の再登場もあるし、何より源氏物語好きにはたまらない読み解きが平安時代の推理ものとして昇華されてるから凄く好きなシリーズです
    その一方、源氏物語と既刊三冊を読んでないと分かりにくいことは多々ある話なので人にオススメするのはハードルが高いです
    そしてガチのミステリマニアにしてみたらミステリ要素は弱めなところは頂けないと思われる
    でも『源氏物語』のファンからすると、こういうのが読みたかったんだよ! が凄く叶えられている作品シリーズだから大好きなんです

    細かい話ですが、香子の娘の賢子がその名の通りの賢さと(おそらく実父似の)朗らかで仕事のできる宮廷人ぶりで微笑ましいし、シリーズを通じて時折ちょっとずつ登場する清少納言の消息も面白いです
    香子と絶対に気が合わん感じがひしひしと伝わります その度にニヤニヤしてまう
    あと余談ですが、この本の前に読んだ作品でも、書いたものが現実にあったことや実在の人物を参照しているのではないか? と推測される(時に非難をうける)場面があったのですが、舞台も作風も年代すら飛び越えて、文章と現実の因果関係は切り離せないし相互に干渉しあうことも多々あるのだと改めて感じました

  •  これで終わりかと思うと、四部作では少なかったと改めて思う。五十四巻では、多過ぎるが。

  • 2024年7月23日購入。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1969年静岡県生まれ。日本画家・屏風作家。筑波大学大学院芸術研究科美術専攻日本画分野修了。渦巻きをモチーフにした屏風制作を行う傍ら、神社、寺院,協会への奉納絵画をライフワークとして続ける。 主な奉納・収蔵作品大徳寺聚光院伊東別院 墨筆による「千利休座像」軸一幅/駿河総社静岡浅間神社四曲一双屏風「神富士と山桜」。主な出版物 絵本『おかあさんはね、』(ポプラ社)/絵本『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)/絵本『サクラの絵本』(農文協)/詩画集『国褒めの歌巻一』(牧羊舎) 
自身の日本画制作に加え、寺社奉納絵画、絵本制作、コラム等の執筆、講演会等を行う。人と人、人と自然、人と宇宙が穏やかに調和する日本文化の特質を生かし、新しい世界に向けたパラダイムシフトを呼びかけている。静岡ユネスコ協会常任理事。

「2020年 『ジャポニスム ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森谷明子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×