配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 5-1 成風堂書店事件メモ)

著者 :
  • 東京創元社
3.70
  • (236)
  • (548)
  • (487)
  • (61)
  • (11)
本棚登録 : 3809
感想 : 466
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488487010

作品紹介・あらすじ

「いいよんさんわん」-近所に住む老人から託されたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後失踪した母を捜しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真…。駅ビルの六階にある書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵が、さまざまな謎に取り組んでいく。本邦初の本格書店ミステリ、シリーズ第一弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • “ピアノ”、”コンクール”、”小説”。
    さて、このキーワードでどんな『本』が見つかるでしょうか?

    アイコンにしている私が出題すると、それ自体がヒントになるので検索するまでもないですね。はい、有力候補の一つは恩田陸さん「蜜蜂と遠雷」です。これは、わかりやすいです。でも、もっと漠然とした情報で希望の『本』を見つけるとなるとこれは大変です。そんな大変な側にいるのが本屋の書店員さんです。普段その存在を意識することのない書店員さん。『何かお探しでしょうか?』と声をかけてくれる書店員さん。そこで、上記のようなキーワードを聞けば、恐らくは正しい『本』棚へとあなたを導いてくれるでしょう。私もこの作品であれば書店員さんの代わりをする自信があります。しかし『タイトルも書いた人もわからないの。でね、どういう内容かも、よくわからないのよね』と言われたとしたらどうでしょうか?『それはないだろう』と思ってもそんなことを口にするわけにはいきませんし、お客さんを放り出すわけにもいきません。辛抱強く更なる情報を聞きだし、目当てとする『本』の元へとお客さんをお連れする、書店員さんのお仕事というのも大変なものです。『お客さんの言いたいことを、いくつかの言葉から推察する』というそのお仕事。こういう方がいらっしゃるからこそ頼れる存在としてのリアルな本屋さんの魅力がそこにはあるのだと思います。

    さて、この作品は、そんな書店員さんのお仕事を知りながら私たちが手にする『本』が私たちの手元に届くまでの裏側を見る物語。そこに巻き起こる数々のプチミステリーを巧みに解決していく書店員さんの『神業』を目にする物語です。

    『駅ビルの六階にある本屋、成風堂のフロアで』、『中年の女性客に呼び止められた』のは主人公の杏子。『ほしい本がみつけられなくって』という女性は『タイトルも書いた人もわからないの』、さらには『どういう内容かも、よくわからないのよね』と続けます。『それはないだろう』と言いたくなるも我慢する杏子は『何かヒントはないですか』と少しでも情報を得ようとします。それに対して『かわいそうな話なのよ。女の子がたくさん出てきて、みんなとっても貧しいの』、『なかなか家には帰れないし、病気になったり』とヒントをくれる客は『環境のよくない、すごく悲惨な感じの工場で働いている子たちが主人公』と続けました。『工場で働いていて、女の子ばかりで、悲惨な話』というヒントから杏子は閃きます。『ひょっとして「あゝ野麦峠」では?』と言うと『あっ、それそれ。それだわ!』と満面の笑みを浮かべる女性は、さらにもう一冊の本の話をし出しました。『いい年した男の人の話なのよ。今の世の中にいたらいいな、と言われている』と続けます。『ずっと昔の人』、『やり手の政治家だったみたい。私はそのとき初めて名前を聞いたけれど、有名な人らしい』、『昔の政治家。本にもなっている人。テレビで取り上げられる人』と言う女性の言葉から『もしかしてー上杉鷹山?』と思いついた杏子。そして、上機嫌で帰っていった女性を見送っていると『さすがですねえ、杏子さん、いい勘してますよね』と、『バイトの多絵が話しかけてき』ました。『今年二十四歳になる杏子は』短大時代のバイトも本屋、そして就職先も本屋という今。『三つ年下の多絵は法学部に通う女子大生』という二人。『今のはまぐれよ』と謙遜する杏子に、『でもお客さんの言いたいことを、いくつかの言葉から推察するのって、やっぱりすごいと思います』と褒める多絵。そして別の日、杏子が作業台で仕事をしていると『たしか、あなただったよね?この前、お客さんの探している本をうまく当てていたでしょ』と中年男性が話しかけてきました。『あれはまぐれです。たまたまですよ』と言う杏子に『独特の勘があるんだと、すっかり感心した』と言う男性は『ぼくもちょっと困っていることがあってさ』と話しはじめました。『ぼくの家の近所に、ひとり暮らしのお年寄りがいるんだよ』というその話。『この前のぞいたとき「なんでも差し入れしますよ」と声をかけた』ところ、本をリクエストされたという男性。しかし、『不自由な言葉でリクエストした本については、ぼくも、ぼくの家族もまったくのお手上げだ』と言うと杏子にメモ用紙を差し出しました。『あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに』と書かれているのを見て、『日本語になっていない。というか、そもそもこれはなんだろう』、『寝言よりひどい』と思う杏子に『どうやらこれで三冊の本を指しているらしいんだ』と言う男性は『一冊でもいい。なんとかならないだろうか』と懇願します。そんな暗号のような文字の羅列から老人が希望する本を突き止めていく杏子と多絵。そこには、まさかの真実が隠されていました…という短編〈パンダは囁く〉。これから始まる物語の一編目として杏子と多絵の存在を印象付けながら、二人が鮮やかに謎を解き明かしていく様が見事に描かれた好編でした。

    成風堂書店で働く杏子と多絵を中心に、五つの短編が連作短編の形式を取るこの作品。元々書店員をされていた作者の大崎梢さんの言わば元職場を舞台に繰り広げられる物語、ということで書店員の仕事、そして本屋さんに関して、部外者には知りえないその舞台裏がとても興味深く描かれていきます。そんな本屋さんの裏側を描写したシーンから二つをご紹介したいと思います。ひとつ目は『今日発売になった文庫は三十点近い』と入荷した本を並べていく作業の描写です。『この「並べる」という作業がけっこう難題だ』というその裏側には『はじから順に置けばいいというものではなく、微妙に法則があ』りました。『タイトルと作者名、入り数を考慮しながら、売れ筋は取りやすい場所に目立つように積み上げて、それとなく男性向け、女性向け、小説、蘊蓄本とエリアを分けていく』というその『並べ方』。それは読者の年齢層、嗜好も考え『時代小説は年輩客が多いので、そういった人たちが探しやすい場所というのも配慮しなくてはならない』という工夫が入っていきます。本屋さんによって本の並べ方にはずいぶんと違いがあるとは、いつも思うことですが、このような配慮の仕方、書店員さんの考え方の差異があの違いを生んでいる、なるほどと思いました。そしてもう一つは書店員さんでなければ知らないイベントの記述、『ディスプレイコンテスト』です。『出版社の販促活動のひとつ』とされるそのコンテストは『春の新入学フェアや夏のコミック祭り、秋のファッション特集、といった定番はもとより、新刊雑誌を盛り上げるために』出版社が『本屋向けにコンテスト形式の賞を設定する』というものです。『本屋がその企画に乗り、店頭にきれいに飾り付けて様子をレポートし、出版社に送る』というその内容。確かに派手なディスプレイがなされたコーナーを私もよく目にしますし、思わず立ち止まってそこに置かれている本を手に取ったこともあります。なるほど、これはそういう経緯で催されていたものなんだと、こちらも、なるほど、と知識がひとつ増えました。出版社は売り上げを期待し、本屋さんはコンテスト入賞を目指し、そして『華やかな飾り付けで売り場を盛り上げれば、お客さんの目を楽しませることもできる』と客にもメリットがあるこのような企画、リアルな本屋さんはやはり必要だな、と改めて感じました。

    そして、そんな五つの物語は、杏子と多絵という二人の書店員を中心に展開していきます。『アルバイトの多絵ちゃんが探偵役で、年上で正社員の杏子ちゃんが助手のワトソン役で、杏子ちゃんの語りで話が進んでいくという形は当初から決めていました』と語る大崎さん。小説にはミステリーというジャンルがあります。私もこの言葉自体には惹かれるものがありますが、一方で血生臭い、人が残酷な形で殺されていくような話は大の苦手です。私は、湊かなえさんの作品も大好きですが、一般に思われているイメージに反して湊さんの作品では思ったほどには人は亡くなりません。一方で、私は、辻村深月さんの作品も大好きですが、こちらは逆に予想に反して、特に「子供たちは夜と遊ぶ」が頂点だと思いますが、残酷な殺害場面の描写が山のように登場します。作家さんの漠然としたイメージだけでは、なかなかにその作品の内容を予測することは困難です。大崎梢さんは私にとっては初めて読む作家さん。Wikipediaの”推理作家”という記述に若干の緊張感を持って手に取ったのが、このデビュー作でした。そんな大崎梢さんのこの作品は間違いなくミステリーです。しかし、そのどこにも殺人は起きませんし、全体としてほっこりとした物語で構成されています。この作品でも『寝言よりひどい』という文字の羅列から老人が希望する本を探し出す〈パンダは囁く〉。配達した『月刊誌「彩苑」』に挟まっていた写真について『誰が、どうやって仕組んだの』と犯人を探し出す表題作〈配達あかずきん〉。そして、せっかくコンテストのために準備したディスプレイが一夜にして『黒いスプレーでめちゃめちゃにされていた』という事件の犯人を探し出す〈ディスプレイコンテスト〉と、いずれも本屋さんの日常を舞台とした、言わばプチミステリーが展開していきます。そこには、人が殺されたり…といった残酷な描写が入る余地はなく最後まで安心して読んでいけます。そして、逆にそこに浮かび上がるのは、普段私たちが意識することのない書店員さんの姿でした。『すみませんが、携帯に入れるのはご遠慮ください』と、『バイト口の電話番号を携帯に入力する』行為を『見かけたら声をかけてやめさせる』という厳しい一面を見せる一方で『お客さんの言いたいことを、いくつかの言葉から推察』して、お客さんと『本』を繋ぐ役割を果たしていく書店員さん。『やっぱり書店員は大変な仕事なんですよね。それでも本屋さんっていいな、書店で働いてみたいなと思ってもらえたら嬉しいです』と語る元書店員の大崎さん。そんな大崎さんだからこそ描けるそのリアルな舞台裏は、書店員さんを、そして本屋さんをとても身近なものとしてくれたように思います。そして、それは改めてネットにはないリアルな本屋さんの魅力を改めて感じる機会ともなりました。

    『本にかこまれた仕事に携わり、かれこれ六年が経とうとしていた』という杏子が、大学生アルバイトの多絵とともに、『本』にまつまるミステリーに向き合っていくこの作品。そこには、『「並べる」という作業がけっこう難題』と、毎日入荷する『本』の山と格闘し、『原則として雨の日も風の日も、猛暑の日も酷寒の日も欠かすことはできない』と、届くのを待つ人の元へと大切に『本』を配達していく書店員さんの姿がありました。『本』が扱われる舞台裏を知って、『本』を扱う書店員さんを知る、それは、私たちの中で『だいじな本』となるかもしれない『本』を、それを待つお客さんの元へと心を込めて届けたいと願う書店員さんの熱い想いを見るものでもありました。

    サクッと切れ味鋭く解決されていくプチミステリーを見る物語。読後には『本』と『本屋さん』に一層の愛着が沸くことになる、そんな作品でした。

    • さてさてさん
      マミさん、こんにちは。
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      おっしゃる通り、活字離れの流れが変わることはないと思いますし、ネット書...
      マミさん、こんにちは。
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      おっしゃる通り、活字離れの流れが変わることはないと思いますし、ネット書店、そして電子書籍の隆盛という状況を考えてもリアルな本屋さんはピンチにあるのだろうなと思います。この作品でもそんな本屋の書店員さんの舞台裏が垣間見れてとても興味深いものを感じました。
      マミさんにご紹介いただいた「御書印」という発想はとても興味深いです。確かに「御朱印」ブームというのはありますし、言葉を記入するというのがいかにもリアルな本屋さんという気がします。ただ、気の利いた言葉を考えるのはとても大変そうな気がしますね。私の場合、長くなるだけで気の利いた言葉は浮かびそうにないので不適マークを押されそうです(笑)。
      本屋さん、特に地元の本屋さんを応援したい、改めてそう思いました。
      今後ともよろしくお願いします。
      2021/07/13
    • アーニャさん
      はじめまして。
      私は冒頭の“ピアノ”“コンクール”“小説”で中山七里さんの岬先生シリーズが思い浮かびました。
      正解は「蜜蜂と遠雷」だったので...
      はじめまして。
      私は冒頭の“ピアノ”“コンクール”“小説”で中山七里さんの岬先生シリーズが思い浮かびました。
      正解は「蜜蜂と遠雷」だったのですね。アイコンを見て納得しました。
      感想楽しく読ませて頂きありがとうございました!
      2021/08/30
    • さてさてさん
      アーニャさん、はじめまして。
      コメントありがとうございました。
      私の場合、「蜜蜂と遠雷」が原点なので答えありきで問題としてしまいました。...
      アーニャさん、はじめまして。
      コメントありがとうございました。
      私の場合、「蜜蜂と遠雷」が原点なので答えありきで問題としてしまいました。でも、これだと確かに答えがたくさんありそうですね(笑)
      どうもありがとうございました!
      2021/08/30
  • 「クローバー・レイン」が面白かったので、もう少し作者を知りたくて、読んでみた。久しぶりにミステリと言われる類の作品を読んだ。
    本格的なミステリーではなく、成風堂という駅ビル6階にある書店を舞台としたミステリで、正社員・木下杏子をストーリーの進行役として、アルバイトとして働く西巻多絵が、あのコナン君に匹敵する推理力で難題を解決していく。コナン君顔負けの洞察力を持つ多絵は、法学部の大学三年生で、性格は快活で負けず嫌い。頭の良さとは反対に手先が不器用でそのバランスに親近感を持ってしまう。
    そこに杏子の書店員ならではの視点が絡む。そのため、書店での仕事内容、販売員としてのカスタマーファーストの対応などとても参考になる。

    いわゆる「本格」、「新本格」派でもなく、私たちの日常にごく近いところで怒っているミステリであることも本作の読みやすさに繋がっている。
    さらに物語は犯罪的なもの、恋愛的なものが取り混ぜられていて、飽きがこない。

    パンダは囁く
    Hondaパンダ!言われれば、『ああ』とそこまでは、おそらく一般人でもわかるであろう。でも「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに」の謎は、たぶん書店員かあるいは司書しか絶対にわからないと思う。
    解答は、新潮文庫、「あ」の三十六番目の作家の二番目の本。と、言われても残念ながらあまり実感がない…
    でも、多絵が見事に謎を説いたというこのストーリーが痛快であった。

    標野にて 君が袖振る
    言わずと知れた、額田王の「茜さす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る」の歌である。大海人皇子の恋人であった額田王が、皇子の実兄である中大兄皇子に取られてしまう。時の権力者である中大兄皇子は残虐な性格であったこと、額田王が次第に惹かれていく。実を言うと、大和和紀さんの「天の果て 地の限り」で勉強した。
    そして、この章のキーワードである「あさきゆめみし」ももちろん全巻持っている(しかも初版)。何回読んだことか…
    と、言うことで心が躍りまくる章であった!

    学校きってのアイドル的な存在の高校生男子と教師との秘密の恋愛。女性教師・上田美香子先生が六条の御息所のごとく年下の恋人・沢松貴史に読んだこの額田王の歌は、額田王の歌であって意味は全く異なる。きっと上田先生は、周りにわかって欲しかったのであろう。そう思えて切なくなる恋愛物語であった。

    配達あかずきん
    配達赤ずきんとは、ヒロちゃんこと吉川博美のこと。美少女という言葉が自然に浮かぶ美人でありながら、おっとりしている。ポカ、うっかり、とんちんかんが多いとのことだが、美人でおっとりしているからきっと、愛嬌の範囲でそれも許されるのかなぁと、考える。そんな彼女が、配達途中に狼に襲われる。
    襲われた意味を最後まで理解することなく、あくまでもマイペースで、半年前に自分のうっかりでお客様に破れた本しか渡せなかったことをずっと思い続けている一途な美女であった。

    六冊目のメッセージ
    これはラブストーリーだったんだと、読んで理解するほど嫌味のない、自然な物語であった。
    書店に
    河田菜穂子と名乗る女性が自分の入院中に母親が成風堂の書店員から紹介された五冊の本により、退屈な病院暮らしの気が紛れ、さらには読書の楽しみまでも教えられてと、この五冊の本を紹介してくれた書店員にお礼を言いたいとやってきた。
    紹介したのは、書店員ではなかった。一般人の私は、ここで『えー誰だ?』と、思うのであるが、出版社の島村であった。この出版社の人が出入りしているということは、「クローバー・レイン」で、出版社側の社員の行動を読んでいたので、理解はしやすかった。
    でも、さすが多絵さん!すんなりと回答を導き出す!!

    ディスプレイ・リプレイ
    書店行くとたまに特設コーナーがある。これって、こういうことだったのか、と、今更ながらその理解をする。
    ファン読者の大好きな作品に対する愛情、執着は、私では考えることもできないくらい、自分のことのように考えているのであろうというのがわかる。
    成風堂で出版社主催の超人気コミック「トロピカル」のディスプレイコンテストに参加するアルバイト店員・角倉夕紀と同級生・渡辺紗弥加と後輩の佐野佳彦。3人で共同制作した「トロピカル」の特設コーナーが一夜にして荒らさる。
    『トロピカル』の主人公と瓜二つでパクリ漫画としての『ツンドラ』。人気漫画をめぐるファンの思いは時に社会的問題に発展するのも理解できる。

    書店での謎解きというこじんまりとした世界でもミステリと思って読み始めたのであるが、なかなか、どうして、面白くてハマってしまう。

    追伸: 表紙絵は、文庫本の本が断然いいと、思いながら読んだ 笑

  • 〈井辻くん〉の2冊を読み終えたので、今度はそこによく登場していた〈成風堂〉のシリーズに行ってみる。

    駅ビル内にある中規模書店・成風堂で働くしっかり者の店員・杏子さんと大学生アルバイトの多絵ちゃんが、身近に起きる謎に対し『書店の謎は書店員が解かなきゃ!』ということで展開するお話。
    サラサラと読みやすく、杏子さんも多絵ちゃんも本のことなら何でも知っているというわけではないところもこちらとしてはついて行きやすい。
    謎を解くのは勘のいい多絵ちゃんの役割だが、謎が解けた後にもうひと転がりする筋書きもなかなか良い。
    日常の謎とは言え、結構ぞっとしなかったりムムッとなったりする内容が多く、その点、分かり易くほっこりした「六冊目のメッセージ」が一番。

  • 書店で起こる様々な謎を解き明かすミステリー。
    読みやすくて話の先が知りたくてどんどん読む。
    謎解きは「なるほど」
    本好き、書店好きにはたまらない本。
    そして本屋さんのお仕事もよく分かる。
    成風堂書店に行ってみたい。

  • '23年8月20日、audiobookで、聴き終えました。この小説、何回目だっけな…?

    大好きな小説なので、紙の本で何度も読み返してましたが、新しく入会したaudiobookで見つけたので、早速トライ。

    やはり、良かったです!ナレーションも、イメージ通りでした。樂しく、聴き終えました。

  • 本好きな人は絶対に読んでいると思われる今作。
    以前から存在は知っていたし、作者の他の本にまつわる作品は何作か読んでいるのに、何となく、表紙が子供向けな気がして、ずっとスルーしてきたけど、本屋にまつわる作品はふとした瞬間に読みたくなるもので、私もついに読んでみた。
    舞台は駅ビルの6階にある成風堂書店。
    しっかり者の書店員・杏子と勘の鋭いバイトの多絵多絵が本にまつわる様々な謎を解き明かしていく。
    本格的なミステリーな「パンダは囁く」から、配達員のヒロちゃんが巻き込まれた事件を描く表題作「配達あかずきん」まで、同じ本を扱っていながら、内容が全て違う視点からの謎を扱っているのが面白かった。
    「あさきゆめみし」が流行っていた頃に、まさに学生だった自分には「標野にて君が袖振る」は10代の頃を懐かしく思える作品だった。
    残念ながら、漫画が苦手なので、友人が皆「あさきゆめみし」で源氏物語を読んでいる中、確か瀬戸内寂聴訳の「源氏物語」を小説で読み切ったので、30年近くたった今、改めて「あさきゆめみし」を読んでみたくなった。
    でも、一番好きな作品は「六冊目のメッセージ」。
    本を通じて、誰かと思いを寄せられるって素敵なことだなぁ、と改めて思わせてくれた作品だった。
    この作品も、学生時代におすすめ本を教え合ったクラスメイトの存在を思い出させてくれた個人的に胸キュンな作品。
    他の方の感想は杏子や多絵に関することが多いのだけれど、登場する本自体に思い入れがあり過ぎて、登場人物はそっちのけで読んでしまったかも…

  • 積読の中からやっと読み終えた。
    ミステリーだけれど、ハラハラ、ドキドキと心臓に悪い?ということは無く、日常的なミステリー。
    書店員の杏子と大学生アルバイトの多絵が謎解きをする。
    面白かったので、是非、続編を読みたい。

  • ホームズとワトソンみたいな二人。とにかくチームワークがいい。杏子の本の知識、多絵の推理力。お互いにない能力で問題を解決してくのが面白かったです。

    私は「六冊目のメッセージ」が好きです。ハッピーエンドで終ってますように。

    本屋さんの仕事は大変というのがわかりました。店の奥では、想像以上に色んな事を店員さんがやってたんだと感動してしまいました。

  • 大崎梢さんとの出会いは【平台がおまちかね】でした。
    それまで、本屋さんを舞台にした本があるなんて知らなくて…
    そして、本屋さんの大変さをちょこっと垣間見て…
    興味深く思っていました。

    先日、大崎さんセレクトの【本屋さんのアンソロジー】で久々に大崎さんの作品を読みました。
    そして、古本屋さんで探してみると、この【配達あかずきん】を発見!
    これは大崎さんのデビュー作なんですね!

    駅近くのビル内にある書店『成風堂』。
    書店員の木下杏子と大学生アルバイトの西巻多絵。
    二人が書店を舞台に繰り広げられるミステリーを解決していく。
    5編の連作短編集。

    自身が本屋さんで働いていた経験のある大崎さんならではの視点がとても面白い!
    成風堂シリーズ、読まなくちゃ!!

  • 本屋さんが舞台のミステリーというだけで、
    ★一つプラスでしょう。
    ブクログにいる方たちにとっては、
    「猫にまたたび」みたいなもんですよね。
    その上、主人公二人のキャラが立っていて
    ふたり揃ってチャーミング!
    本当にこんな本屋さんがあったら
    毎日、通っちゃいそうです。
    ストーリーはしっかりミステリーしていて、
    その点でもポイント高い。
    騙されたと思ってこの本屋さんを
    一回訪ねてみませんか?

全466件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大崎梢の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×