晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 5-2 成風堂書店事件メモ 出張編)

著者 :
  • 東京創元社
3.35
  • (57)
  • (181)
  • (319)
  • (60)
  • (9)
本棚登録 : 1789
感想 : 202
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488487027

作品紹介・あらすじ

駅ビルの書店で働く杏子のもとに、長野に住む元同僚・美保から手紙が届いた。彼女の勤める地元の老舗書店に幽霊が出るようになり、おかげで店が存亡の危機にあると知らされた杏子は、アルバイトの多絵と共に信州へ赴いた。だが幽霊騒ぎだけでなく、二十七年前に老大作家が弟子に殺された事件をめぐる謎までもが二人を待っていて…。人気の本格書店ミステリ、シリーズ初長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは、”幽霊”を見たことがありますか?

    という質問は微妙感に溢れています。”いいえ”と答える相手は、恐らくそんな質問を唐突にしたあなたのことを”変な人”と位置づけるでしょう。一方で”はい”と答えられても、その先に続く話に、今度は聞いているあなたがどんな顔をしたら良いか分からなくもなります。真面目に考えれば考えるほどに怖くなり、でも一方で真面目に考えていること自体、”変な人”に見られる可能性がある。”幽霊”というのもなんとも厄介な存在です。

    しかし、大人から子供まで、そして国内外問わず”幽霊”は話題としては成り立つ存在でもあります。もしかしたら、本当にいるのかもしれない、もしかしたら、自分も見ることになるかもしれない。本当にいるのかいないのかは別にして、ある意味で”幽霊”とは身近な存在である、とは言えると思います。そして、ここにそんな”幽霊”が話の起点になる物語があります。親しくしていた元同僚から一通の手紙を受け取った主人公。そこには、『単刀直入に言います。幽霊が、出るの』と書かれていました。『青白い人影がボーッと通路に浮かんでいた』というその手紙。『おそるおそる階段を上がってみると、人文書の棚の前に青白い人影がふらり』というその手紙。そして、そんな手紙の主は懇願します。『可哀想でしょ、心配でしょ。一大事でしょ。早くまるう堂に来て。なんとかしてよ』と悲痛な叫びを上げます。さらに、手紙はこんな風にも語ります。

    『幽霊の正体ならばだいたいわかっている。それは、二十七年前に起きた殺人事件に絡んでいる』。

    この作品は、そんな元同僚からの手紙を読んで『本屋に現れる幽霊の正体を、本屋でなくて誰が暴くんですか』と、事件の解決へと立ち上がる二人の物語。『行けば、地方書店の見学もできますよ』と、老舗書店見学という別の目的にも意義を見出す二人の書店員の物語。そして、それは『まるう堂存続の危機』という老舗書店を救うために立ち上がった二人の”探偵”の活躍を描く物語です。

    『本屋は、警察と無縁の職場ではない。万引きが多いからだ』と『これまでも何度か地元の警察官』と話をしたことがあるというのは、『駅ビル六階の書店「成風堂」』で働く主人公の木下杏子。『店に現れたふたり連れ』に警察手帳を見せられ、『店長さんはいますか?』と聞かれた杏子は、店長は閉店まで戻らないと首を振ります。『でしたら』と話を切り出した男は『先週の水曜日、午前十時から正午までの二時間』、『成風堂をよく利用しているという人物』のAさんが、『たしかにこの店にいた』ことを第三者が証言すれば、ある事件の容疑がかかっているAさんのアリバイが証明できる、と説明します。『その日に購入したのは新刊コミックと雑学本、合わせて二冊』で、レシートも存在するが、それだけではアリバイにはならないという警察官。『こちらの店員さんが覚えているという可能性はあるでしょうか』と訊かれるも『正直、先週のこととなると…。まして、限られた時間ずっとこのフロアにいたかなんて』と、戸惑う杏子。電話で店長に連絡を取るも『適当に頼むよ』の一点張り。『憂鬱な気持ちで刑事たちの前に舞い戻り、どう切り出そうかためらっていると』、アルバイトの西巻多絵が現れました。『お客さんが丸二時間、うちのフロアにいたことを証言してあげれば、アリバイが成立する』ということを理解した多恵のことを『賢いだけでなく勘も鋭』い、これまで『何度も多絵の機転に助けられてきた』と頼りにする杏子。そんな中『そのレシートが見たいです。コピーでいいので、刑事さん、見せてもらえますか?』と切り出した多恵は、『そこにお客さんの手がかりがあるかもしれません』と続けます。『レジで精算したのは十二時五分となってますね』とレシートの記載を確認した多恵は、Aさんが買った書籍とレシートの内容からまさかの推理を繰り広げます。『では、Aさんのことはよく覚えているんだね?』、『もちろん』というまさかの推理により、Aさんのアリバイが証明されました。そして、そんなことがあった三日後、『杏子宛に一通の封書』が届きました。『差出人を見ると「有田美保」』とあるその手紙は、『二年前まで成風堂で働いていた元同僚』からのものでした。手紙を開いた杏子はそこに書かれている内容に驚きます。『今、私の働いている「まるう堂」、杏ちゃんの大好きな老舗の本屋は、大変な事態に追いこまれています』と始まるその手紙。そこには、『幽霊が、出るの。もちろん店に』と、怪しい記述が続きます。そして、『なんと私まで、ついにそれを見ちゃったのよ!』という決定的な記述と、『早くまるう堂に来て。なんとかしてよ』と助けを求める記述がなされていました。『杏ちゃんご自慢のバイトちゃんにも』一緒に来て欲しいというその手紙。早速、多恵に話をすると『本屋に現れる幽霊の正体を、本屋でなくて誰が暴くんですか』と極めて前向きな様子。そして、杏子と多恵は三泊四日で、そんな事件の解決へ向けて信州にある老舗本屋へと向かうのでした。

    「晩夏に捧ぐ」と、季節感のある書名を冠したこの作品。大崎梢さんの代表的シリーズである「成風堂書店事件メモ」の二冊目に当たります。このシリーズでは、『駅ビル六階の書店「成風堂」』を舞台に、店員の木下杏子と、学生アルバイトの西巻多恵が”日常の謎”を解き明かしていく様が柔らかい筆致で描かれていきます。このシリーズ刊行の直前まで実際に書店員として働かれていた大崎さんが、そんな本屋さんを舞台に描くこの作品では、本屋さんに対する様々な視点からの記述も見所の一つです。この作品では『幽霊が、出るの』という元成風堂店員からの手紙が起点となって、信州の老舗本屋へと杏子と多恵が赴きます。そこで地方の本屋の窮状を目にする二人。一方でそんな老舗本屋のことを『これといった派手な演出はなかった。けれど、初めて訪れた杏子たちでもすぐになじんでしまうような和やかさがあった』と感じる二人は『なぜだろう』と理由を考えます。そして、『丁寧にフロアをまわる店主の目が、実に細かく本を見ているのだ』と気づく二人は『棚を見ている。そして訪れた客を見ている』と感じます。そして、そこに登場するのが『本屋ではよく、「生きている棚、死んでいる棚」という言い方をする』という言葉でした。日々の忙しさの中で『具体的に何が売れ何が売れていないのか、把握するのがつい後まわしになってしまう』ことで『見向きもされない本ばかりが棚を占めるようになる』現状があると書く大崎さんは、『棚を管理する者は出版社や著者に惑わされず、返本するものと残すものとを冷静に見極めなくてはいけない』と鋭く指摘します。そして『早々に売り切れた本はすかさず追加発注をかけ、動きの鈍い本は思い切りよく売り場から外す』、このことによって『棚は生きて売り上げは伸びていく』とまとめます。だからこそ『やればやるほど本屋って面白いよね』という本屋の側の思いを宇都木店主に語らせる大崎さんは、そんな店主の力によって隅々まで行き届いた老舗本屋を『世の中に贅沢はいろいろあるが、これはまちがいなくある種の人間にとって、途方もない贅沢だ』と杏子に語らせます。『時間も場所も飛び越えて、無限の世界に繋がっている』とまとめるそのくだり。そして、極め付きの言葉が杏子から飛び出します。『棚が話しかけてきますね』というその言葉に『そう言ってもらうと、本屋冥利に尽きるよ』と返す店主。このあたりのリアルなやり取り含め、本を愛し、本屋を愛してやまない大崎さんの愛情を物語の中に強く感じました。

    そんなこの作品は”日常の謎”を解き明かしていくシリーズの一冊です。しかし、信州へと杏子と多恵が”出張”して推理に当たるこの作品では、『幽霊が、出るの』という起点が、『嘉多山の死因は病気でも事故でもない。殺されたのだ。自宅の離れで滅多刺しにされ、出血多量で亡くなった』と、なんと27年前に起こった殺人事件の真犯人究明に取り組むという予想外な大ごとに展開していきます。しかも、警察が犯人として逮捕した人物は『当時住みこみで作家修業をしていた青年』であり、『犯行のあった翌朝、彼は現場で逮捕され、裁判を経て刑に服した』ものの『わずか二年後、刑務所内で病死した』となんとも後味の悪い展開を辿ります。そこから、『まるう堂に現れる幽霊はこの青年 - 小松秋郎であると、まことしやかな噂が流れていた』と老舗本屋に現れた”幽霊”と過去の痛ましい事件が結びついていきます。そこには警察でさえ解決できなかった謎が残されていました。そして、そんな事件を当時担当した刑事まで登場するという物々しい事態…と、前作「配達赤ずきん」の雰囲気感からは別物の本格的なミステリーの様相さえ漂わせながら物語は大胆に展開していきます。大崎さんが上手いと思うのは、そこに『あさってには帰っちゃうのに。延ばしたとしても、しあさっての朝まで。それで、何がわかるのよ』と、三泊四日という限られた時間、推理のタイムリミットを読者にさらっと提示することで緊張感を上手く作り出しているところです。そんな中で亡くなった嘉多山の遺産相続の観点から犯行に及んだかもしれない人物、結婚を迫られ思い余って犯行に及んだかもしれない人物、そして作家としての将来の道を断たれたと嘉多山を恨む人物など、事件の真犯人と思われる人物に聞き取りを繰り返す杏子と多恵。『本屋にまつわる謎なら、なんでもきれいさっぱり解いてくれる探偵さんです』と紹介されるそんな二人がミステリーに挑むこの物語は、多恵の大胆な推理によって読者を極めてスッキリ、後味さっぱりな中に幕を下ろします。しかし、殺人事件の真犯人を探すミステリーにも関わらず、終始漂うのはどこかほのぼのとした雰囲気感。それでいて、本格的なミステリーを読み終わったような読後感の共存。これは面白い!、と満足の中に本を閉じました。

    『がんばります。本屋を踏みにじるような幽霊、思いっきりどついていいんですよね?』と、杏子と多恵の”探偵コンビ”が、信州の老舗本屋の幽霊事件を鮮やかに解決していくこの作品。そこには、27年前に未解決な部分を残したままの殺人事件の真犯人に繋がるまさかのドラマが隠されていました。『幽霊にお引き取り願うなら、事件を解決するのが一番』と、三泊四日の限られた時間の中で、『二十七年前に、警察だってわからなかったことだよ』という事件に取り組む二人の物語は、一方で本を愛し、本棚を愛し、そして本屋を愛する元書店員・大崎梢さんの本への並々ならぬ思いをそこかしこに感じるものでした。

    「晩夏に捧ぐ」と名付けられたこの作品。”日常の謎”の延長線上に、本格的なミステリーが違和感なく展開する、とても読み応えのある作品でした。

  • 「成風堂書店事件メモ」の2冊目。
    今回は〈出張編〉とあるように(実際は出張ではなく休暇なのだが)、元同僚から頼まれた杏子さんが多絵ちゃんを伴ってとある老舗書店の幽霊騒ぎを解決するために赴いた信州でのお話。

    幽霊騒ぎは27年前に老作家が弟子に殺された事件につながっているようで、且つ最近その関係者の近辺で小火や空き巣が起こっているよう。
    いわくありげな人たちが次々と登場し、そこから話を聞いて回る二人の様子を読むのは楽しいが、27年前の話にも関わらずちょっと段取りが良すぎる感はあり。
    合間には老店主のこだわりが詰まった老舗書店やその息子が開いたメディアミックス書店の描写があって、このシリーズには欠かせない本屋愛にも溢れているが、長編の推理ものとしてはちょっと間延びした印象も。
    聞き回っていく過程で『私にとっても本屋は特別な場所なんですよ』と言う多絵ちゃんの意外な一面が見られたのは良かったが、謎解きについては彼女が犯人に気付いた理由や幽霊の手口がよく分からず、動機や幻の原稿を巡って明かされた真実にもあまりスッキリしなかった。

    『本屋の店員たぶらかして、ただですむと思うなよ』って、なかなかの決め台詞だわ。

  • 私の中ではこのシリーズは、単行本ではなくて文庫本で読みたいと決めている。その理由は、表紙に杏子と多絵が描かれているので、二人をより近くに感じることができるからだ。
    が、本作は最後に「杏子さんた多絵ちゃんと私」の4コマ漫画が挿入されていた。『ちょっと、待ってー』表紙の杏子と多絵をイメージしながらずっと読んでいたのだが、この漫画のふたりが意外と私のイメージからは遠く…漫画の多絵の方が隙がなさそうに見える?杏子は、黒髪なのだが、眼鏡をかけている?、すでに出来上がっていた私のイメージを崩そうとする…
    こうして考えると、表紙絵の重要さってあるんだなぁと、「クローバー・レイン」の工藤彰彦の表紙絵決定の描写が私にとっては、とてもインパクトが大きかったことを考察する。

    駅ビルの書店「清風堂」では、またもや書店のアルバイト学生・西巻多絵が雑誌『パレード』をめぐる刑事事件で見事に容疑者扱いをされていた篠塚のアリバイを証明した。そのことを書店員・杏子は、かつての同僚・有田美保に電話で話をしたところ、美保から多絵目当ての手紙が杏子の元に届く。
    美保は、二年前まで清風堂で働いていたが長野に戻り、地元の老舗書店「宇津木堂書店」に勤めている。
    「宇津木堂」から通称「まるう堂」と呼ばれるこの書店で、最近、幽霊が出るようになり、「まるう堂存続の危機」をアルバイト名探偵の多絵を連れて助けに来て欲しいというものであった。老舗書店を救うべく二人は信州へ行く。
    二十七年前に弟子の小松秋郎に老大作家・嘉多山成治が殺害された。その殺人事件に繋がる幽霊の謎を4人の関係者との会話をもとに多絵が見事に解き明かしていく。いつもの清風堂を飛び出し、信州で事件を解決していくので、(出張編)となっているが、出張ではなく(旅行編)でしょう?突っ込んでしまった。

    今回は短編集ではなく長編であった。短編集より長編物が好きなので、期待大で読み始めた。本作は獄中で病死した小松秋郎が犯人ではないということを匂わせた展開で物語が進んでいく。(このシリーズの展開として、幽霊が出たと言っても、「それはやっぱり幽霊でした」で終わるはずがないのだから!)

    美保のセッティングで杏子と多絵が会話をした人物は4人。この中に犯人がいるはず!

    嘉多山久嗣:本宅を相続した甥。事件当時は22歳の画学生だった。現在はプロの画家として、すぐ隣に別棟を立て住んでいる。嘉多山成治の遺志を尊重し庭ごとそっくり屋敷を残していたが、今回、売却をする。

    壱橋亜矢子: 旧家のお嬢様で、小説家を夢見る小松秋郎と付き合っていたが、嘉多山成治との結婚話が進んでいた女性。事件から五年後、秋郎の病死から三年後に再婚している。

    野沢裕一: 嘉多山邸に住み込んでいた、書生のひとりで、現在は地元公立中学の教頭である。事件当時は29歳で、作家の道を断念し教職に就いた。

    根本佳江: 事件当時は住み込みのお手伝いであったが、事件から三年後、地元の男性と結婚して現在は夫婦で蕎麦屋を営んでいる。8月11日夜中に店で大きな音がしたので、夫婦と子供たちとで店に駆けつけた。その間に母屋に人が入ったが、荒っぽく引っかき回されてはいたが何も盗まれていなかった。

    スペシャルゲストとして、美保が面会を設定していた事件担当の刑事・加藤浩伸。現在は、県警の警部。いかつい風貌の、迫力ある中年男性。髪の毛をオールバックしにて撫でつけている。ぎょろりとした目の上に分厚い眉がのっかっている。笑うと目尻に皺がよりひとなつこい顔になる。清風堂にアリバイを調べに来た刑事たちの知り合いで、先日の多絵のアリバイ事件の解決に関心を持っていた。
     
    まず、今回、犯人として獄中病死した小松秋郎は、犯人ではないということ。そうなると、犯人は別にいるのであれば、現在も作家である石丸多遜は、犯人ではないだろうと推測した。では、なぜ秋郎は犯人ではないと主張しなかったかのか?誰が嘉多山成治を殺害したのか?と気になる。
    まず、秋郎が犯人であることを受け入れる理由を考える。
    1.誰かをかばっている(ドラマにありがちな展開。例えば、恋人、家族、秋郎を慕っていた子供たち)
    2.誰かに脅されている
    3.何かの罪の償いをしている

    そこに秋郎の兄の死の事実飛び込んできた。少々鈍い私でも『もしかして!』と、考えるが、秋郎が黙っている理由の意味が今ひとつしっくりこない。
    最後はあっけなく犯人がわかるのだが、正直な感想を言えば、いつものテンポで事件が解決していく方が、読みやすくて、記憶に残りやすいなぁと思った。

    そしてなんと言っても、多絵が清風堂でアルバイトをするきっかけは、たまたま塾のバイト帰り、清風堂に寄ったところ、お客相手に当時の多絵が気にしていたキーワードを杏子が口にしたという。
    その杏子の言葉「自分の歩いている道がね、死ぬほどつまんない一本にら思たんですよ。そしたら杏子さん、お客さん相手に言いました。『どんな道でも、ほんとうは横道や脇道だらけ』って。『たまにはそっちを歩いてみればいいのに』って」それって、、清風堂で働くことが脇道っていうこと?と、思った私はひねくれているのだろうか??
    そして、その言葉に救われた多絵はどれほど精神的に病んでいたのだろう…まだ若いのに…

  • シリーズ2作目の長編。
    成風堂で働く杏子の元に、元の同僚で現在は長野の書店で働く美保から、美保の勤務先や周囲で起きる不可思議な事件を解決して欲しいという旨の手紙が届く。
    乗り気ではない杏子だったが、アルバイトの多絵に押され、休暇を利用して、長野へ。
    長野で起きていたのは、美保の勤めている書店での幽霊騒動や、27年前の作家の殺害事件の関係者の周辺で起きた空き巣被害など。
    どうやら、全ては27年前の殺人事件に繋がっていると思われることから、関係者に話を聞いて回る杏子と多絵。
    すでに犯人は捕まり、判決から2年後には犯人の獄死と言う形で事件は解決しているはずだったが、隠された真実が明らかになっていく。
    うーん、事件の動機も真実も何だかモヤモヤしている感じで、短編集の印象が強い作家さんのせいか、無理に長編にしている感じ。
    解決しても、何だか納得しない部分も多く、通常の駅ビル版の話の方が面白い。
    何が一番、モヤモヤするかって、3泊4日で長野に行って、2泊は美保の家に泊まって、3泊目は食事の美味しい宿に泊まる。
    4日目と思われる朝8時に宿で朝食を楽しんで、そのあと、関係者を集めて、解決編。
    で、9時台の特急に乗って、帰京、4時からシフト。
    時間軸がおかしいと思うのは、私だけ??
    この謎を解明したく、もう一度該当箇所を読み返したが、謎が解けず、すごいモヤモヤ・・・

  • 成風堂書店シリーズ第2弾。
    駅ビルにある成風堂。
    そこで働く木下杏子、アルバイトの西巻多絵。
    杏子のもとに元同僚が務める老舗書店が巻き込まれた事件解決依頼の手紙が届く。
    杏子と、多絵は事件の謎を解くため長野へ向かう。

    大崎梢さん自身、元書店員。
    書店員ならではの視点が面白い!

  • 長野にある老舗書店の幽霊騒動の謎を解くため、東京にある成風堂書店の杏子とバイトの多絵が出張する。
    ってか、休暇だけどさ。

    事件そのものの謎や推理やその結末に文句はないんだけど、設定にもやもやしてしまう。
    「うちの店に幽霊が出たの。それはどうも27年前の解決済み殺人事件に関係がありそうなの。だから謎解きに来て。2泊はうちに泊まってもらって、残り一泊は温泉に泊まるようにするから」っていうのは、随分と自分勝手な要求と思うのだ。
    だって、3泊4日の長野行なら、社員は有給を取るとしても、バイトの多絵は無給の上に諸経費自腹?
    なんかいろいろリアリティがない。

    でも、本屋の幽霊はさておき、作家殺人事件については、作家の業と向き合える人だけが作家になるのかなあ、なんて思いましたよ。
    人としてよりも作家として生きざるを得ないものなの?
    小手先の文章の上手さだけで作家になれないのはもちろん理解しているけれど、あとは何があればいいんだろう。
    上手く利用されながら才能を褒められなかった彼と、才能を認められながら褒められることのなかった彼。

    そんな葛藤など知らん顔をして、読者は作品を楽しむのである。
    無情だなあ。

  • シリーズものとは知らず、でも違和感なく読めました。次回作も読みたいです。

  • 本屋さん、謎解きという組み合わせが好きで前作から読んでいますが…
    引き続き主人公が好きになれず…言動が少しずつ引っかかる感じ。キャラクターの設定とセリフにぶれがあるように感じる。
    全体の話し自体は嫌いじゃないので、次作も読むか悩み中。

  •  仕事中におきた謎を多絵ちゃんが解いてくれる「本屋さんの裏話」みたいな雰囲気が気にいっていたので、場所も変わって殺人事件までいっちゃうと、ちょっと似合わない気がしました。
     そして、登場人物がたくさんいるせいか、それぞれのキャラクターが薄く感じました。1冊目は短編だから登場人物について深く知りたくなる前に話が終わるから良いのだけど、長編はキャラクターもしっかり書いて欲しかったです。

     主人公たちのキャラに頼りっぱなしのような気がするので、もうちょっと冊数を出してからの方が良かったんじゃないかなぁ・・・2冊目では早い気がします。
     なんだか全体的にがっかり感が強かったですが、シリーズ自体は好きなのでこれから読むシリーズ3冊目は楽しみです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「本屋さんの裏話」と言うフレーズに惹かれました。
      「本屋さんの裏話」と言うフレーズに惹かれました。
      2012/02/27
  • これはこれで楽しめたけど,短編の方が好み。

    シリーズ1作目はKindle読み放題で読めた。面白かったので次作も読みたいと思ったのだが,読み放題になかったので,図書館から借用。

全202件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大崎梢の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×