シャドウ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M み 5-1)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 8595
感想 : 792
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488496012

作品紹介・あらすじ

人は、死んだらどうなるの?-いなくなって、それだけなの-。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。本格ミステリ大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;道尾氏は、商社に勤務しつつ、小説を書き、「背の眼」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、小説家デビュー。その後商社を退職。専業作家になった。作家になる前には、太宰治・川端康成・横溝正史等の本を読んだそうです。「向日葵の咲かない夏」は、100万部を超えるベストセラーになり、「月と蟹」で直木賞受賞。賞金全額を東日本大震災の被災者に寄付。他にも、山本周五郎賞・大薮春彦賞などを受賞。音楽活動も行っており、『HYDE AND SECRET』でソニー・ミュージックエンタテインメントからデビュー。
    2.本書;「第一章;五人~終章;三人」の五章構成。主な登場人物は七人(我茂家;夫妻(洋一郎・咲江)と息子(凰介[小学五年生男児])、水城家;夫妻(徹・恵)と娘(亜紀[凰介の同級生])、精神科医(田地)。筋書⇒「①水城恵が徹の勤務する精神科棟から飛び降り自殺 ②亜紀が交通事故で骨折 ③凰介が亜紀から恵の自殺経緯を聞く ④洋一郎が田地を精神科棟から突き落とし殺害」。詳細は本書参照。登場人物が、我茂家と水城家のシャドウ(闇・悩み)を切々と語る。物語が忙しく展開。読者は戸惑いながらも読み続ける。興味津々の小説で、ミステリ大賞を受賞。
    3.私の個別感想(心に残った場面を3点に絞り込み、感想と共に記述);
    (1)『第一章;五人』より、「(母子の会話)(凰介)人は死んだらどうなるの?(咲江)いなくなるのよ。(凰介)いなくなってどうなるの?(咲江)いなくなって、それだけなの。・・(凰介)さっきのあれは訊いてはいけない事だったのかもしれないと考えた。よくない質問だったのだろうと。・・三年た経ち、咲江はいなくなった(癌に侵され余命わずかだった)。
    ●感想⇒私はこの文章を読んでショックでした。母(咲江)の余命は知らなかったとは言え、子供ながらに耐えたと思います。その後、水島恵が建物の屋上から転落死。続いて、亜紀(恵の娘)が交通事故。凰介はまだ小学生なのに、相次ぐ悲劇をどう受け止めたのだろうか。本書のストーリーは別にして、凰介のような子供がいたら、何とか癒してあげたいと思います。しかし、私には術がありません。書物や人に聞いた知識だけでは解決の糸口さえ見いだせず、本人に寄り添えないと思います。同様の体験をした人のみが良き理解者なのかもしれません。
    (2)『第二章;我茂洋一郎』より、「“(洋一郎)水城、例の乏精子症のせいなのか?あれのせいでお前は、亜紀ちゃんが自分の子供じゃないと考えるようになったのか?”、“(水城徹)・・恵は俺じゃない別の男に、身体を許したんだ。保険の仕事をしている時に、自分の体を武器に使ったに違いない。・・亜紀は、恵と保険の客との間に出来た子なんだ”」、「(亜紀)お母さんがわざわざ大学の研究棟(徹の職場)から飛び降りたのは、きっとお父さんへの仕返しの意味があったんだと思う」
    ●感想⇒夫婦は、仲睦まじいように見えても何かしら揉め事を持っているものです。負けるが勝ちと言います。大抵の事は、妻に勝たせれば良いのです。しかし、子供の問題はそうはいかないでしょう。水城は、冷静さを失っています。一方的な思い込みで、妻を疑うのは良くありません。それ以上に、子供が可哀そうです。水城のしなければならないのは、疑心暗鬼の心を捨てて、まず話し合う事でしょう。自分本位の考えでは解決策を見い出せません。話合いにより、互いを尊重する姿勢に勝るものはありません。
    (3)『終章;三人』より、「洋一郎は、亜紀と凰介の会話から、恐ろしい事実を知る事となった。田地は、咲江だけでなく、亜紀までもあの忌まわしい欲望の犠牲にしていたのだ。・・凰介を殺人者にしてはならない。・・洋一郎は、凰介をその場から引き離し、田地の手に自分の拳を振り下ろしたのだ。田地は落下し、死亡した。・・洋一郎は二人に今夜の事は誰にも話してはいけないと告げた。誰に何を聞かれても、家にいたと答えるようにと、研究棟にいた事も、洋一郎に会った事も、絶対に喋ってはならないと」
    ●感想⇒田地は女性を欲望の餌食にした極悪人です。殺したいほど憎むのも当然でしょう。しかし、殺人の隠蔽はフィクションの世界の話です。現実社会での犯罪は法によって裁かれなければなりません 。事実に蓋をするのは、間違った対処です。隠蔽すれば、一生悩まされ続けるでしょう。“事実の前には謙虚”になる事です。事態が発覚した時の苦痛は計り知れません。事実を述べる勇気が将来に禍根を残さない方策だと思います。
    4.まとめ;我茂親子と水城親子の六人は、それぞれの悩みを抱えています。物語が二転三転する中で、読者は推測と憶測を重ねるでしょう。最後に、田地が悪戯の犯人だとわかり、意外な結末と思う人もいるはずです。こうした事件の謎解きが妙味の1つかもしれません。また、本書はミステリーというだけでなく、親子愛・子供の心理・人に対する信頼と失望・・等を考えさせられる小説です。人間は誰しも何かしらのシャドウ(闇・悩み)を抱えているのかも知れません。万一、シャドウがあれば、良い解決の模索を願います。(以上)

    • アールグレイさん
      初めまして♪
      ゆうママと申します!
      フォローを頂きありがとうございます。
      ――ダイちゃんと私の本棚では、少し路線が外れているように感じます。...
      初めまして♪
      ゆうママと申します!
      フォローを頂きありがとうございます。
      ――ダイちゃんと私の本棚では、少し路線が外れているように感じます。ですが、ダイちゃんには様々な分野にトライしては、と思うのです。多分目上の方に失礼かとは思いますが・・・・
      私は、ミステリーと癒される本をひと息入れながら読みたいと思います。
      フォローさせて頂きたいと思います。
      よろしくお願いします。
      読了→レビューUPしています。ダイちゃんのレビューもタイムラインで読みたいと思います!
      ( ^ _ - )=☆
      2021/09/24
    • ダイちゃんさん
      ゆうママさん、今日は。ダイちゃんと言います。フォローして頂き、有難うございます。愛犬が、今年 永眠しました。名前が “ダイ” で、享年1...
      ゆうママさん、今日は。ダイちゃんと言います。フォローして頂き、有難うございます。愛犬が、今年 永眠しました。名前が “ダイ” で、享年14歳でした。その後に、ブクログを始めました。これからも、色々な本に出会いたいと思います。ゆうママさんの本棚も参考にさせて頂たいと思います。よろしくお願い致します。
      2021/09/24
  • 向日葵の咲かない夏以来の道尾秀介作品。向日葵ほどの気持ち悪さはないものの、人間の精神を題材にした作品であった。
    道尾秀介作品はどんでん返しがテーマであるためどんなだまし要素と伏線回収があるのかと思ったが、それを前提に読んでいても予想できずに騙されてしまった。しかし、物語の随所に出てくる伏線とミスリード、そしてその回収がとても気持ちよかった。
    そして作中最大の見せ場である洋一郎が頼りになる大人と見せかけて、ずっと自分が精神科医だと思い込んでいる男であった事が明らかになったところで第1の衝撃を食らい、そしてその精神疾患すらも田地を殺害するための演技であると知ったところで第2の衝撃を食らいとても面白かった。
    そして、前回の向日葵のイメージから嫌ミスのイメージかなと思ったら、親子のこれからの再生を描いたラストはとても良いと思った。
    最後に、この作品からこれからも道尾秀介作品を読んでいきたいです。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    我茂洋一郎:津田健次郎
    我茂凰介:種崎敦美
    水城徹:小西克幸
    水城亜紀:高橋李依
    水城恵:内田真礼
    田地宗平:緒方賢一
    原野房江:日笠陽子
    竹内絵美:中原麻衣

  • 以前から興味はありつつも読んでいなかった本。よく目にするわりにブクログの評価そこまで高くないな〜と不思議でしたが読んで納得。面白いのは間違いないんだけれど、それ以上はない感じ。(といいつつ、最後の方は読むのをやめられず一気読みするくらいにはしっかり惹きつけられました。)

    どんでん返しによる衝撃もあるし、伏線回収も綺麗なんだけれど全体的にちょっと物足りない。種明かしパートが説明感が強くてあんまり好みじゃないのも一因。

    ミステリーの中でも、ごちゃごちゃ色んな要素が複雑に存在して、あれもこれも本当はこうでした、みたいな感じのは個人的にはイマイチですね。
    ひとつひとつひっくり返すよりも、特大のものをグワっとひっくり返す系が好きということがわかりました。

    長々と書きましたがそれでも普通にオススメできる本です。

    期待していただけに辛口コメントとなりました。

  • どんでん返し・叙述を銘打ちハードル上げて
    しっかり読者を驚かす、騙すのは流石。
    2両親の父性を垣間見、子供への愛情とは?を
    考えさえられる


    L字のジェスチャーかっこよろし 私も使おうかな。

  • メディアでは俗にいう「どんでん返しモノ」として紹介されていましたが、散りばめられた伏線を丁寧に回収していき、最後にパチッとパズルのピースが気持ちよくハマるような作品に感じました。ただ、確かに自分もミスリードに引っかかったので、そういった要素も持ち合わせているのかなとは思います。

    さて、登場人物全員が怪しいのがポイントなんですが、そもそも「何が怪しいのか」がわからない。純粋なミステリーというよりは、サスペンスホラーを読んでいる気分に。怖い、不気味、だけどページを捲る手が止まらない。
    鳳介の見た不気味なフラッシュバック・洋一郎の怪しげな動き・亜紀のトラウマ・徹の精神錯乱・恵の突然の死。物語の途中、コイツが犯人か! あれ? 違う!? と何度も首を傾げました。

    しかし、物語としては非常に興味をそそられる内容かつ、終わり方も爽やかなものだっただけに、物語の根幹にあった凄惨な性被害が最後まで頭を離れず、読み終わったあともじくじくと胸が痛かったです(子供っぽいと思われそうですが、苦手なものは仕方がない……)。
    亜紀ちゃんや咲枝さん(鳳介の母)の気持ちを考えるとどうしても心が痛んでしまい、ジャンル的には違うのかもしれないけど、イヤミスを読んだような気持ちになりました。亜紀ちゃんのメンタルケア、しっかりお願いしますね……。

  • 今まで道尾作品を読んだ事なくて、評価の良いやつを手に取ってみました。
    どんでん返しに定評ある方ですが、まんまとミスリードに引っかかってしまった(まぁ今までそういうの看破出来たことないんだけどな!)
    道中散りばめられた伏線が後半次々回収されていくのは読んでいて気持ち良かった。
    登場人物の視点がコロコロ切り替わるが、それにより内面描写がしっかりとされていて、ミステリで良くある「人間が描けてない」ということが無かった。
    他の道尾作品も読んでいこうと思う。

  •  初の道尾秀介作品。

     哀しすぎる展開に、正直先を読もうか戸惑った。「彼の物語は、人によって好みが別れる」とブクログの感想にあった通りだと思った。

     切ない描写ではあるが、先を読みたくてたまらなくなった。

     ラストは家族愛に溢れ、安堵感に包まれた。

    「いつか、いっしょに考えようよ」息子(凰介)の言葉に未来を感じた。

     他の作品も読んでみたくなった。

  • 道尾秀介さんの世界観に引き込まれました。
    見事にいろいろな予想が外れました。
    悲しい事件はありつつも個人的には納得感というかよい読後感です。

  • 5人の視点で描かれたミステリー。
    精神的な病と家族がテーマになっている。
    道尾秀介は、子供の視点が上手だなと感じた。気になる展開が重なって続くので、読む手が止まらない面白さだった。
    また、最後のシーンは「作中に出るある物語」に寄せてるのだとしたら、素敵だなと感じた。

  • 個人的に大好きな道尾秀介の気になっていた名作。
    一発のどんでん返しはよく味合うが、これは小出しに何発も
    味合わされたといった印象だった。
    帯にも書いてあるように、道尾作品を読んだことがない人にはその一作目として読むのに是非オススメしたい。

    道尾作品の特徴というべき、健気さと愛くるしさに溢れ、でも実は周りが思っているより子供ではない現実的な心情と思考を持った少年少女の登場人物が物語の進行とともに私の心を動かし続けてくれた。
    個人的な意見だが、道尾作品に登場する少年達はかわいすぎるからズルい 笑。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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