怪奇小説傑作集 (1) (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (1969年2月19日発売)
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感想 : 8
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  • 本 ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488501013

感想・レビュー・書評

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  • 違うところでも書いたが、怪奇小説は国産に限りますな。
    訳のせいかもしれないが、読みづらい作品が多く、話がよく見えないものも多かった。

    とりあえずのお気に入りは、「エドマンド・オーム卿」かな。これはちょっといじれば、現代でも通用しそうな話しになりそう。

  • 小説は自分の想像力によって解像度が変わること、現代では使われていない言葉が多いためスラスラ読めないことから、そんなに怖くない。結末に至る直前が恐怖のピークになるため「さんざん煽った割にあっさり終わった」印象のものが多い。

    ◆幽霊屋敷 【!】犬が無事じゃない
    地の文の一人称が「余」でびっくりした。
    友人から聞いた幽霊屋敷に滞在して怪異に遭遇する話。途中で「いまも覚えている」とあるので、どうやら後から書いたもの=手記のテイらしい。ということは主人公は無事なんだな。
    ホラーでは通常、一人称視点だと主人公が実況しなくちゃいけないからずっと冷静でいる必要があるんだけど、ホラーなのにビビらないのは疑問になってしまうところ。だけど、この主人公は「過去にもホラー体験をしてる」と冷静になれる理由がちゃんとあるのがよかった。
    人物名がアルファベットなのも、かえって覚えやすかった…というか区別がつけやすかった。

    ◆エドマンド・オーム卿
    つまり美人親子の母親が若い頃に婚約破棄したら死んだ婚約者の幽霊につきまとわれていて、娘に本気の恋をする男が現れると母親とその男にだけ幽霊が見えるシステムで、男の恋が成就したら母親が幽霊に何かされて死んだ…という話?
    冒頭の「結婚1年後に難産で亡くなった婦人」は娘のこと? 「恋愛成就したら幽霊は見なくなった」で終わってるけど、消えたわけではなさそうだな。「物の所有権が移る」で《わたし》まで死んだっぽく感じる。
    母親が同じことを2回言うのがウケた。

    ◆ポインター氏の日録 【!】犬は無事
    語り口がちょっと落語っぽいところがある。
    イギリスでも髪の毛ホラーはあるんだな、と思ったら髪の主は男だった。ヨーロッパは美髪王とかいるから、長髪でも男性を連想できるものなのかな。
    怪異が起きたらすぐ原因がわかっておしまいなので、めちゃくちゃ短い。どう対処したとか、ないんか。

    ◆猿の手
    3つの願いを叶える《猿の手》に200ポンドを願ったら、息子の死によって手に入るというとんでもない形で叶ってしまう。200ポンドの価値がわからないけど、そんなに大金ではない…? 息子は会社で死んだのに会社は責任放棄&賠償なし(200ポンドはこれまでよく働いたで賞)って、かなりふざけた対応だと思うし。はした金のために息子が死んだほうが絶望感も増すし。
    妻に頼まれて「息子を生き返らせて」と願った後に現れた来訪者と3度目の願いの内容をはっきりと描かなかったのが余韻を生む。
    いちばん怖いのはヒステリーを起こす妻。

    ◆パンの大神
    ちょいちょい挟まれる情景描写が綺麗。
    長すぎて登場人物が多いしラストが手紙のやり取りみたいな感じ=回想だしで、結局よくわからなかった。「死の影にいる女がみんな同じ」なのはドラマティックな気はした。

    ◆いも虫
    鋏の足と横に裂けた口といういも虫の描写がやばすぎる割に、尻すぼみ。

    ◆秘書奇譚 【!】過去に犬が無事じゃなかった
    不気味な主従の家に泊まることになってしまった主人公の一夜の攻防の話。屋敷の主人が生肉を食らうヤバい奴と描写しておいて、主人公が寝室に案内してもらってからずっと張り詰めていて少し寝て起きてから異常に気づいて…まではよかったものの、こちらもやはり尻すぼみ。
    鞄がなくなってることは重要じゃないんかい! 中身は偽物だからいいのか? 取り戻すまでやるとストレスがかかりまくるから、この程度でいいのかも?
    主人公が屋敷に来てから感じていた「監視されている気がする」の正体にウケた。コントじゃん。

    ◆炎天
    「今日はすごいことがあったから、それを書き記す」で始まるから主人公は無事なんだと思って読み進めたけど、そうでもない…?
    主人公が描いた絵にそっくりな男と出会い、その男が墓に彫っていたのは自分の名前で死亡日が今日になっている…という話。《今日》が終わるのはあと1時間というところで手記が終了=主人公の安否が不明なまま終わってしまうから消化不良。無事に《今日》を過ごせたのか、それとも男に殺されるのか、ハッキリして!

    ◆緑茶
    幻覚に悩む牧師が医師に相談したけど、自殺した姿で発見される話。「私は治療を失敗したことがない。牧師については治療はまだ始めてなかったから自分の患者じゃないけどね? あー、でも自分が治療してたら確実に治せたのになー」という医師の言い訳で終わるのがヤダ。そもそも本当に緑茶が原因なのか? タイトルにするほど?
    「人の顔に獣を幻視する」共通点があるから、『秘書奇譚』と合わせて楽しむのがいいかも?

  • 面白かったのは「猿の手」、怖いのは「炎天」。

  • 別名、海外版・世にも奇妙な物語。読んだのは53版である1988年版。「あそこ」が「あすこ」になっていたり、簡易な漢字もひらがなになっていたりと訳がわかりづらいことこの上ないが、慣れてくればそれなりに読めるようになる。翻訳ものは20年に一度のアップデートが必要であることを教えてくれるだろう。
    さて各話について。

    「幽霊屋敷」
    後日談が本編。

    「エドマンド・オーム卿」
    チャラ男が美人な娘の母親と共通の秘密を共有することになり、役得でお近づきになる。

    「ポインター氏の目録」
    解説にあるように、得体の知れない毛むくじゃらに触れた瞬間のシーンでぞわっとした。

    「猿の手」
    xxxHolicや化物語で登場した猿の手の元ネタ。発想は秀逸だが話自体はもう少し面白くできたように思う。

    「パンの大神」
    本命。ラヴクラフトが影響を受けた作品と聞いて、これ目的でこの本を読んだ。なぜ彼女は自殺したのか、いったい全体何だったのか、よくわからないまま終わる。

    「いも虫」
    あれは夢かうつつか。千匹以上の30cm前後のいも虫とか怖すぎる。

    「秘書奇譚」
    スタイリッシュ秘書。2階から逃げて終了とかクトゥルフ神話TRPGの跳躍卓すか。猶太人=ユダヤ人。最初からユダヤ人と表記してくれたらいいのに! 結局主従は何で争っていたのか。下男はなぜ隠れていたのか。隠れ場所はなぜ「真空」と呼称されていたのか。すべてが謎である。

    「炎天」
    この暑さじゃ、人間の頭だってたいがい変になる(原作より)。

    「緑茶」
    猿である。他人には見えない猿がまとわり付く。果たしてこの猿は何だったのだろう。

    総評。
    全体的に、突出して面白い作品はなかったかなと。

  • 全5巻からなる「怪奇小説」アンソロジーシリーズの第1巻。解説によれば国内で最初の本格的なホラー・アンソロジーだとか。

    初版発売が'69年と、30年以上前ということからもわかるように、収録されている作品は言うなれば「古典」。英米編ということで、ジェイコブズ「猿の手」やマッケン「パンの大神」などの作品が収録されている。少々時代がかってもいる(そこがまたいいのだが)平井呈一氏による訳・解説も含め、じっくりと雰囲気を堪能したい一冊。おすすめは上記2作の他、TVの「世にも奇妙な物語」に出そうな掌編「炎天」。

  • 全5巻の古典怪奇小説のアンソロジー。英米を中心に、仏独露を満遍なく網羅。
    幻想文学への入り口としてもいいんではないでしょうか。

  • 所有しているのは言うまでもなく文庫版の旧版。

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