淑やかな悪夢 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 245
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488507022

作品紹介・あらすじ

神経の不調に悩む女にあてがわれた古い子供部屋。そこには、異様な模様の壁紙が貼られていた…。"書かれるべきではなかった、読む者の正気を失わせる小説"と評された、狂気と超自然の間に滲み出る恐怖「黄色い壁紙」ほか、デモーニッシュな読後感に震撼すること必至の「宿無しサンディ」等、英米の淑女たちが練達の手で織りなす、本邦初訳の恐怖譚12篇を収めた一冊、文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。筆者は大体19世紀後半から20世紀前半の作家さん。面白かった作品もあれば、ふーんで終わってしまう作品と色々でしたが、再読のギルマン『黄色い壁紙』が断トツで、これが収録されているだけで読む価値があると思う。忘れた頃に読むと、怖さが増す。他にはブラッドン『冷たい抱擁』の、捨てた恋人の幻覚と、マンスフィールド『郊外の妖精物語』の、日常にするりと滑り込んだ異界の結末が、印象に残った。

  •  英米女流作家による12編の怪談が収録されたアンソロジー。中には、いかにも古めかしい怪奇談も収録されていたけれど、現代人の私が読んでも「怖っ!」震え上がるような普遍的な怖さをたたえた作品が多々あって、本当に怖かった、、、ぶるぶるぶる。  評判には聞いていたけど、『黄色い壁紙』がダントツで怖い。次第に神経を病んでいくヒロインと同じく、じわじわくる〜。ぞわぞわぞわ。背筋がぞわっ。巻末の鼎談を読むと、翻訳でなく原文で読んでみたかったととても悔しく残念に思えてくる(そしたら怖さ、100倍になりそうだけど/汗)。 私自身がさほど因果応報のホラーに心惹かれないせいもあってか、冒頭のシンシア・アスキス「追われる女」には背筋が凍りそうに。どんな結末を迎えることになるのか、ちょっと読んだだけで判っちゃうんだけど、スピーディかつスリリングな展開&文章で、最後まで飽きさせず読ませてしまう筆力がお見事です。 ここまで愛ゆえの女の執念というか嫉妬というか恐ろしさを描かれるとお手上げだわねなゴーストストーリがメイ・シンクレア「証拠の性質」。子を持つ母親としては短いながらもぞっとしてしまう話、マンスフィールドの「郊外の妖精物語」もインパクト強し。行間が深いんですよねー。恐ろしく思いながらも小説の上手さに唸りました。 このアンソロジーを編んだのは、古今東西の怪奇小説に精通している3人だから、個人的合う合わないはあるでしょうが、収録された作品が面白くないわけがない! 女性ならではの優美かつ繊細な描写が、読む人間を震え上がらせてくれる、本当に本当に怖くて恐ろしい怪談話アンソロジーでした。

  • 目次

    1 追われる女 シンシア・アスキス
    2 空地 メアリ・E.ウィルキンズ‐フリーマン
    3 告解室にて アメリア・B.エドワーズ
    4 黄色い壁紙 シャーロット・パーキンズ・ギルマン
    5 名誉の幽霊 パメラ・ハンスフォード・ジョンソン
    6 証拠の性質 メイ・シンクレア
    7 蛇岩 ディルク夫人
    8 冷たい抱擁 メアリ・E.ブラッドン
    9 荒地道の事件 E.ヘロン
    10 故障 マージョリー・ボウエン
    11 郊外の妖精物語 キャサリン・マンスフィールド
    12 宿無しサンディ リデル夫人

  • 英米女性作家12人による怪奇短篇集。19世紀後半に書かれた作品が多く、古色がかった優雅な雰囲気が魅力。やはり「黄色い壁紙」(シャーロット・パーキンス・ギルマン)は強烈。知的で冷静な女性の一人称が禍々しくねじれてゆく異様な光景に、何度も変な声が出そうになる。この西崎憲訳は一読の価値があります(正直、原文で読むより怖い気がする)。荒れる海辺の城で母と娘が相食む「蛇の岩」(ディルク夫人)の猛々しく陰鬱な世界や、心霊探偵が登場する「荒地道の事件」(E&H・ヘロン母子)も良かった。表紙がまた怖い(「悪しき母親たち」部分)。目を凝らして見てはいけない感じ。

  • 桜庭一樹読書日記で「黄色い壁紙」について触れられていて、興味を持って購入した。
    当たり外れのばらつきがかなりあるが、怖い作品はかなり怖い。

    正直「黄色い壁紙」は期待していたほど怖くは無かったが、読後殺伐としたものを感じる。
    予備知識なくこれを読んだら相当怖いと思う、悪夢を見るほどに。
    主人公の女(名前も出てこない)は神経を失調しており、夫は彼女を過保護に扱うのだが、それに反比例して彼女はどんどん病んでいく。
    原因は夫婦の寝室の黄色い壁紙。
    まずこの壁紙の描写が怖い。
    「球根のように垂れた眼球」とか「延々と続く毒茸の列」とか、想像しただけで発狂しそう。
    だがそれより怖いのは、日記形式で語られる淡々とした描写。
    主人公は夫に感謝しつつも一方で不満を抱き、自分を仕事に復帰させてくれない夫を呪う。
    どうもこの日記の記述が矛盾しており、錯乱した箇所も見受けられる。最初はこう言ってたのに、次の行では全く違うことを言ってるとか、それが殆ど地続きなのでもやりとした違和感が残る。
    彼女には産まれたばかりの男の子がいるのだが、夫や義妹についてはしつこいほど語られてる反面子供の事は数行しか出てこず、それもお義理で触れられてる程度。
    日記形式で綴られているだけに、黄色い壁紙以上に主人公の心理に冷え冷えしたものを感じる。

    「蛇岩」も面白かった。こちらは母娘二代にわたるどろどろ愛憎もの。一族にかけられた呪い、岸壁の古城、蛇の形をした奇岩をめぐるゴシックホラー。「です・ます」調の訳が奇怪な雰囲気を出すのに一役買っている。母親が泳ぎに興じる娘を古城の窓から常に監視してるのが怖い。

    「名誉の幽霊」のユーモラスな雰囲気も気に入った。こんな楽しい幽霊なら家にいてもいいなあ。

  • こちらで知り興味を持ち、早速購入してみた。
    一言で感想を述べると、ちょっと物足りない。

    12篇の恐怖小説短編集。
    作者は全て別の人物で、全て女性。
    物足りなさを感じたのは、19世紀に活躍した作家さんの作品だからなのか。
    ゴシックホラーといった少し古い作品は、独特の雰囲気がジワジワとした恐怖を引き出すものも多いのだけれど。
    恐怖小説に長さは寧ろ邪魔になるとも思えるので、短編ならもっと楽しめると思ったのだが少し残念。

    「追われる女」
    10ページない短い作品。
    見知らぬ男に追われる女性の恐怖。
    こういう理由も目的もわからない人物につけ狙われるという不条理な恐怖というのは、考えると何よりも怖ろしいかもしれない。

    「告解室にて」
    海外翻訳にありがちなキリスト教の知識不足のやっつけ翻訳。
    カトリックとプロテスタントをごっちゃにされるのは、キリスト教徒としては地味に不愉快。

    「証拠の性質」
    亡くなった前妻の亡霊が、再婚した夫の前に現れる。ラストが少し変わっていた。
    自分が先に死んだら、ひとりで背中を丸めて寂しく暮らす夫は見たくないので、いいひとがいたら再婚して欲しいとわたしは思っている。この作品の妻も同じように思っていたのに亡霊となって現れる。
    実際亡くなって夫が再婚すると、気になってしまうものなのだろうか。わたしも出てきちゃうのかな。恐怖とは違う感想になった。

    「故障」
    鉄道の故障のため歩いて友人に会いに行くことにした男は、途中の古びた宿に泊まることになった。
    恐怖小説には珍しいハッピーエンドと言える終わり方。

    小説各篇に、作家の紹介と作品についての記述がある。
    知らない作家が多かったので、助かった。
    また、最後に翻訳者であり選者でもある三氏の恐怖小説についての語りが載っており楽しめる。

  • 女流作家の作品集めたホラーアンソロジー。
    ジメジメっとした陰鬱な作品が多め。
    特に「黄色い壁紙」は何度読んでも気味が悪くて、あとを引きます。

  • 英米女流怪談集・・・
    そこそこ古めの怪談話12篇からなるアンソロジー・・・

    悪魔がどうのこうの、というのではなく・・・
    ちゃんと怪談話ではあるのだけど、ちょっとモノ足りない・・・

    たぶんこんなんだろうな、と展開丸見えだったり・・・
    そもそもあまり怖くなかったり・・・
    ジワーっと来る厭な感じもあんまし・・・
    うーむ・・・

    ただし・・・
    前に違うとこで読んだシャーロット・パーキンズ・ギルマンの「黄色い壁紙」は圧倒的・・・
    これは本当に厭な話・・・
    2度目でも、読み進めていくと見事に厭な気分にしてくれる・・・
    文章に飲み込まれていく・・・
    秀作過ぎる・・・
    これだけは是非読んでみてもらいたい・・・

    それ以外は・・・
    そんなにだけど・・・
    うーむ・・・

  • 女流作家の怪談ばかりを集めたアンソロジー。1篇が文庫本で20ページ前後と、さほど長くないもので纏められている。
    『黄色い壁紙』って最近読んだな……と思っていたら、『もっと厭な物語』にも収録されていた。『恐怖』と『厭』の絶妙なバランスが何度読んでも面白い。『黄色い壁紙』だけ、他作品と『恐怖』のテイストが異なっているのも興味深いところ。

    他作品では『告解室にて』『蛇岩』『冷たい抱擁』『故障』が面白かった。特に『故障』の、不穏な空気のまま途切れるようなラストがいい。

  • 「黄色い壁紙」が文句無しに恐ろしかった。他は割と平凡な恐さなんだけど、田舎の夕焼とか荒地とかの乾いた不安感が、子供の頃唐突に襲われていた正体不明の恐怖の発作を思い出させてくれた。唯一温かい気持ちになれたのはマジョリー・ボウエンの「故障」。

    あと巻末のお三方の対談が面白かったのでもっと読みたいです。

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