怪奇クラブ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.54
  • (7)
  • (8)
  • (18)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 163
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488510015

作品紹介・あらすじ

罪とエクスタシーの作家アーサー・マッケン。イギリス怪奇小説の黄金期を代表する彼の作品は、いずれも妖しいまでの白光に包まれている。本書には、白い粉薬を飲んだがために肉体が溶けてしまう青年を描いた「白い粉薬のはなし」をはじめ、円環をなす一連の奇譚を集めた表題作に、"聖杯"をテーマにすえ、怪奇小説のひとつの終点をも暗示する「大いなる来復」を併せて収録した。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【怪奇クラブ】と【大いなる来復】が収録されている。
    全体的に土着した人間とは違う世界の物が現れて、けっこう気持ちの悪い怪奇起こるというような。

    【怪奇クラブ】※※ネタバレしています。でも冒頭で作者によるネタバレから本編始まるんだよー※※

    ロンドンの廃屋にいる三人。のっぺり顔のデイヴィス、鬚モジャのリッチモンド、そして粋っぽいヘレン。彼らは何かの悪事を企んでいる、または悪事を仕遂げたようだ。三人は「メガネを掛けて神経質そうな若い男」のことを口にしながら廃屋から出ていく。

    彼らが出て行って数分後、三文文士のダイスンとフィリップスが廃屋の前を通りかかる。

    話は二人が出会った頃に戻る。
    つむじまがり文士のダイスンと、元物理学者のフィリップスは、そこそこの財産を受け継いだので、働きもせず科学だとか文学だとか人生論理だかを論じている。良いご身分だ。
    ある時ダイスン(彼のほうが年配らしい)がフィリップスに「ある廃屋の前で慌てて出てくる男と、その男を追う男を見て、落としていったものを拾ったんだ」という話をした。ダイスンが拾ったのは伝説の「ティペリウス金貨」だった。
    それ以降、この二人は、通りすがりの人に怪奇な話を聞くという経験をしていた。

    『暗黒の谷』の恐怖譚
    ダイスンはヘンリー・ウィルキンズ(リッチモンドの変名)という男と知り合う。
    ウィルキンズは以前体験した怖ろしい出来事を語る。彼はスミス氏に雇われてアメリカに渡った。だがスミス氏は現地を荒らしまわり、殺人も行う犯罪集団の首領だったのだ。ウィルキンズはスミスと間違われて(おそらくスミスは身代わりとして雇わりた)処刑されそうになったところを危うく助かり、ロンドンに戻って来た。そしてつい先ほど、「メガネを掛けて神経質そうな若い男」である怖ろしいスミス氏の姿を見たという。

    『兄の失踪』の怪奇譚
    今度はフィリップスが公園で出会ったミス・ラリーという女性(ヘレンの変名)から話を聞くことになる。
    なんでも待ち合わせしていた兄、特徴は「メガネを掛けて神経質そうな若い男」のその兄が、片手が萎びれた男に連れられて行方不明になってしまったんだそうだ。
    疑うフィリップスに、ラリーはさらに過去の話をする。
    『黒い石印』の怪奇譚
    彼女はロンドンに出てきて、人種学の権威であるグレッグ教授に子供たちの家庭教師兼秘書として雇われた。ある時グレッグ氏は、イギリスで起きた行方不明や殺人事件の記事を見せて「これらには秘密のつながりがあるんだよ」と言って、なにやら秘術?を仄めかす。そして息子たちと使用人たちを連れて田舎に移動する。さらにグレッグ教授は奇妙な印のついた石印を手に入れた。これこそ「けっして記されることのない言葉なのだ」という。
    田舎では、知的障害のある青年を雇い入れる。この青年の父は行方不明となり、妻は気が狂って数カ月後に青年を産んだらしい。
    ある日グレッグ教授は散歩に出たまま行方不明になる。ミス・ラリーは残された文章を読むと…、えーーとですね、このグレッグ教授の謎の文章がカタカナと漢字として翻訳されているんですよ。私は平井呈一先生の翻訳は好きなんですけど、この漢字カタカナ文章が読みづらい!全く頭に入らない!(><)
    よくわからんがとにかく「悪い妖精みたいなものがいて、悪さをしている」とかそんなことです。
    ここでいう「妖精」は、キラキラした可愛いものや美しい見かけではない。本来は見るもおぞましい姿と生態で、たまに人間界に現れておぞましい悪さをする。それがあまりにも奇っ怪なので、キラキラ美しい姿で覆い隠しているという。
    まあとにかく、グレッグ博士は、いくつかの行方不明や殺人が妖精に寄るものだと思っている。そこで妖精と相対するためにでかけたのだがそのまま戻ってこなかった、ということらしい。

    『小さな酒場での出来事』
    ダイスンは酒場で「メガネを掛けて神経質そうな若い男」を探している骨董商のバートン(デイヴィスの変名)と知り合う。
    バートンは良い商品を安く手に入れたんだが、助手のロビンスに横取りされてしまった。そこでそのロビンスを探しているんだそうだ。
    『装飾的妄想』の恐怖譚
    バートンは、「血腥い拷問道具コレクターの知人が、自分が買った拷問用具で死んでしまったんだ」という話をする。
    そのうちバートンは姿を消したので、ダイスンは「彼の話もみんな装飾的妄想だろ、プンプン」となる。

    『ベイズウォーターの市隠』
    友達を尋ねたダイスンは、そのアパートに隠れ住むヘレン・ライセスター(変名すら使わなくなった!)から「話を聞いて助けて欲しい」と招き入れられる。
    『白い粉薬のはなし』の怪奇譚
    なんでもヘレンの弟が、病気を治すために手に入れたらしい白い粉薬を飲んでからどんどんおかしくなっていったらしい。弟は片手を包帯で隠し、部屋に閉じこもった。その部屋からは黒いタールのようなものが漏れ出していて…。ある時異変を感じたヘレンは、知人の老医師を頼り弟の部屋のドアを壊して入り込む。そこにあったのは、黒いタールのような塊だが、それは生きているかのようなものだった。老医師はそのタールの塊を叩きのめして、ヘレンに手紙を残して姿を消した。手紙によると、弟が飲んでいたのは昔悪魔がサバトを開くために使っていた酒の材料なんだとか。それを新入りの男に飲ませると、彼を夢のような快感に導く相手が現れるという。だがその相手というのは、酒を飲んだ男の体が溶けて中から抜け出した堕落の分身みたいなものなんだそうだ。

    『クラークンウェルの不思議な出来事』
    ダイスンは酒屋でいままで話だけは繰り返し聞いた「神経質な若い男」らしき相手を見かける。彼の名前はジョゼフ・ウォルターズ。
    『メガネをかけた若い男の話』による真相
    ダイソンは彼が落とした手帳を読む。
    若きウォルターズは、この先の人生を考えていたところにドクター・リプシウスと知り合いなんか冒険心をくすぐる言葉を言われてある屋敷に行く。
    その屋敷でウォルターズは「ティペリウス金貨」を横取りする計画に協力させられる。だが自分のせいでその持ち主が殺されたと知ったウォルターズはティペリウス金貨を手に屋敷から飛び出す。
    冒頭でダイスンが見かけた「逃げる男と追う男」はウォルターズと悪人たちであり、拾ったティペリウス金貨はウォルターズが咄嗟に投げ捨てたものだった。
    その後悪人たちは執拗に「メガネを掛けた若くて神経質そうな」ウォルターズを追い、ウォルターズは彼らをからかうようにして逃げ続けていた。手記には「だがついに彼らに追いつかれてしまった。自分は彼らに酷い拷問を受けて殺されるだろう。恐ろしい。」と言う記述で終わっていた。

    そして実は冒頭の場面に戻るっている。冒頭で三悪人が出て行った5分後に、ダイスンとフィリップスが通りかかり、廃屋にはいり、出来事の週末を見届けるのだった。


    …いや、面白いんだけどね、うーん、小説内で書かれている怪奇譚がどんなつもりで語られたのかがわからん(ーー?)
    冒頭で、三悪人のデイヴィス、リッチモンド、ヘレンは「”眼鏡を掛けた若い男”を探す必要がなくなったからこの屋敷を出よう、そのために今まで使ってきた変名ももう必要ない」という話をしている。
    つまり、三悪人は、ウォルターズを探すためにヘンリー・ウィルキンズ(リッチモンド)だとかミス・ラリー(ヘレン)だとかバートン(デイヴィス)という変名で、ロンドンの人々に「眼鏡を掛けた若く神経質な男を知らないか」と訪ねていた。
    それならこの本で書かれた怪奇譚は全て作り話だよ、ということが最初から明かされていて、読みながらも「これって作り話だよね?」という疑問が離れず…(ーー?)
    そもそも「眼鏡を掛けた神経質そうな若い男(ウォルターズ)」を探すためになんだってこんな怪奇譚をこしらえたんだ、ふつーに「兄が行方不明で」でいいじゃん、わざわざ「片手が黒く萎びれた男に連れ去られて」なんてドラマチックにする必要あったのか?そんな話し方をしたほうがダイスンやフィリップスの興味を引けるから??それでわざわざこんな作り話したならけっこうお茶目じゃないかこの三悪人。…かと思ったら、ラストでは相当グロテスクな結末が待っていて、やっぱり極悪人なので、この温度感がよくわからない。
    この三悪人が話したことは、全て彼らが体験したこと、つまり彼らは悪の妖精の力を利用して金儲けしている連中なのか??

    面白くない訳ではないが、なんのために読者に「これから出てくる話は作り話ですよ」と明かしたうえで怪奇譚を並べていったのかがよくわからん…


    【大いなる来復】
    イギリスの田舎町ラントルサントで、次々に起こる不思議な現象が語られる。
    キリスト教ではやらないはずのミサが行われ、それに関わった人たちは妙に若返り変な力を感じるようになったこと。その教会から夜中に海に向かって妙な光が発せられていること。死病を患った娘が聖杯の夢を見て回復する話。聞こえる人と聞こえない人のいる鐘の音。
    これらは集団幻影なのか、それとも何か太古のものがこの地にはいるのか…?

    ❐読書会メモ『怪奇クラブ』
    ●ダイスンは神秘、フィリップスは科学を象徴。
    ●ダイスンはアーサー・マッケン自身だろう。「つむじまがりの三文文士」という自虐。
    ●ロンドンの街を書いている小説
    ●三悪人は、ウォルターズを探すためになぜこんな凝った神秘的な話をしたのか?
    ⇒アーサー・マッケンは、その前に発表した小説で神秘主義やグロテスク描写を批判されていた。そこで「これはあくまでも作り話です」ということを批判者に示した。
    ⇒そもそも彼らは自分たちがしていることを悪いことだとは思っていない。
    結論?:枠物語の外枠は読者としてはあまりこだわらん方が良いのかな 笑
    ●ドクター・リプシウスや、三悪人の悪の結社?はどのようなものだろう?
    ⇒神秘主義?カルト組織?宗教を装った現実的な犯罪集団?
    ⇒もしかしたら彼らの作り話のなかに、彼らの実際の活動が語られている?
    ⇒運命や神秘は信じている?
    ●なぜティベリウス金貨?
    ⇒表記されているティベリウス金貨と、実際のティベリウスは違う。なぜ?
    ⇒ローマ皇帝のティベリウスは、経済対策として節制を強いたので非常に評判が悪かった。退位後は悪い噂が多い。配下に悪の結社がいたなど。そこで読者としてはティベリウスの名前が出てきたら「縁起が悪い。悪いことが起きる」と予測する。
    ●ウォルターズはなぜもっと必死に逃げなかった?
    ⇒神秘主義として、運命は運命と受け入れていた。将来自分が彼らに殺されることは決定しているので避けられない。それまでは逃げ回ろう。だからロンドンから離れても無駄だとわかっていて、留まっていた。
    ●アーサー・マッケンの死生観、神秘、運命への考え方。
    ●アーサー・マッケンはアイルランド系なので、キリスト教により追い出されたケルト古来の存在や神々の姿を神秘怪奇として書いたのではないか。追い出したことへの罪悪感もあった?これは『大いなる来復』で聖杯伝説が出てくることからも想像される。
    ●アーサー・マッケンは怖いんだけど笑える。『黒い石印』で不気味な触手が石像を丁寧に下ろしたとか、なんかおかしいよね。

  • イギリスの小説家Arthur Machenが1895年に発表した"怪奇クラブ"と1915年に発表した"大いなる来復"の2作品が収録されてます。発表当時、ロンドンでは彼の作品は不道徳であるとして激しい批判を受けましたが、アメリカを中心に怪奇小説の古典として評価されています。特にクトゥルフ神話で有名なラヴクラフトは彼を高く評価しています。どちらも連作形式で書かれた作品で、始めのうちは話のテンポについていきにくかったのですが、バラバラの怪奇譚が徐々に集まり、最後に一本に繋がった時には時に思わずゾクリとしました。

  • 何と言うか、魅力的な世界でした
    様々な色のグラレーションが重なり合って初めてこの本の世界に生存が赦されているというか…

    最後まで読んで思わず最初の部分を読み返してしまいました
    何と言うかそっちの方が怪奇的な部分がより楽しめるかも?

    そういえば、私って翻訳というと文学作品とSF位しか縁がなかったんですけど、海外の労働者、その日暮らしをしている彼らの言葉を表すには所謂今使っている言葉ではなく何とも蓮っ葉?要するにそっちの生活の雰囲気を表すには江戸っ子でぃ!みたいな翻訳しかないのかなーとふと考えました

  • ラヴクラフトが賞賛していただけあって、マッケンのこの「怪奇クラブ」には異次元恐怖の描き方が素晴らしく、これが後にクトゥルー神話の発想へ繋がる種となったんだろうな、というテイスト満載。
    また、マッケンがスティーブンソンの作品(おそらく「新アラビア夜話」)からインスパイアされて本作の構成を考えたのもとてもよくその影響度合いが分かる……。
    小さな物語の連なりが最後に見事な円環になっておりました。

    同時収録の「大いなる来復」は第一次大戦中の頃に書かれた作品で、「怪奇クラブ」とはまたテイストの変わった作品。聖杯の奇跡をモチーフにしたもの。

  • 「怪奇クラブ」、いまいち。「黒い石印」はタネ明かしの部分がカタカナ表記になっているので(一部候文)読みづらかった。解説にもあるが、マッケンの小説は古代の神々や精霊は今も森や山奥に存在していて人間を弄び、好奇心からその正体を知ろうとする者を破滅させる、そういう話ばかりという印象。「大いなる来復」は私小説風というかルポ風というか、こちらの方が小説よりよりリアルに怪奇を感じられるように思ったが話自体が面白くない。平井訳、読むの結構骨が折れる。

  • 読みづらさが先行してしまったのでこの評価。
    まさにロンドンで起きる不思議物語というのが
    しっくりくると思います。

    表題作がこの作品のメインで
    もう1つの作品は怖いというよりも
    なんかいろいろ起きるな、という印象でした。

    表題作はね…
    「関わっちゃいけないもの」に
    関わってしまったがゆえに破滅した人も出てきます。

    一応真相部分は神秘的な何か、ですが
    多分ドラッグの類なのでしょうね。
    なんとなくハッピーホワイトパウダーに
    似ているんですよ、作用が。

    ただし…読みづらかった!!

  •  物書きのダイスンが夜中の散歩中、出くわした男が投げ捨てた珍奇な金貨を拾ったことが発端だった。その夜を境に、ダイスンと友人のフィリップスの元に男または女が現れては、不気味な話をして去っていく。彼らに不信感を抱くダイスンだったが、居酒屋で拾った手帳から真相を知り、フィリップスを連れて郊外の荒屋敷に赴くのだった。はたして不気味な話をする男女の目的とは――?
     ラヴクラフトが讚仰し、後にクトゥルフ神話と呼ばれるようになる創作に影響を与えたマッケンの作品集。複数の短編で構成された表題作の他、イギリスはウェールズにある田舎町で起きた奇跡の物語『大いなる来復』を収録。

     以下、ちょっとだけネタバレありの各話感想。
    ---------------------------------------------------------
    『暗黒の谷』
     職を求めてロンドンを訪れたウィルキンズは、そこで秘書の求人に応募して採用される。雇い主のスミスは彼を連れてアメリカ西部の田舎町に赴く。はたしてスミス氏の目的は――。
    (「うまい話には裏があるぞ」という話。しかしながら「貧すれば鈍する」という言葉があるように、追い詰められている時には気づき難いものでもある。)

    『黒い石印』
     職を求めてロンドンを訪れたラリーは、そこで幸運にも大学の教授に拾われて秘書に採用される。ある日、雇い主のグレッグ教授は突然にイギリス西部の片田舎に居を移す。そこで新たなお手伝いとして雇われたのは、どこか異質な所がある少年だった――。
    (太古から山奥に隠れ棲む妖精族と、その血をひく子に隠された悍ましい真性を描いた怪奇短編。直接的な描写はせず仄めかしに徹しているが、それでも当時の人々からすれば相当なショックを受けたであろう、独特の妖しい仕上がりになっている。恐らくだが、ラヴクラフトの『ダニッチの怪』には本作の影響もあるだろう。)

    『装飾的妄想(または鉄の乙女のはなし)』
     反物屋のバートンはその日、最終の汽車に乗りそこねてしまい、真っ暗な通りを歩いていると、顔見知りのメシアスに出くわす。メシアスの温情から彼の家に泊まることになったバートンだったが、彼の家には如何わしいコレクションで溢れていた。そこで目についたのは、青銅でできた見事な裸婦像だった――。
    (いわゆる「自業自得」な話。注意書説明書の類はきちんと読みましょう。)

    『白い粉薬のはなし』
     ライセスターの元に、弟で大学を卒業したばかりのフランシスが帰ってくる。弁護士を目指して勉強に励んでいたがフランシスだが風邪をひいてしまい、医者の処方を近所の薬屋で調合してもらって服用する。しかし、それを期にフランシスの様相が一変してしまう。一体彼の身に何が起きたのか――。
    (薬剤師のミスにより出来上がった退廃の薬に耽溺した者の末路を書いた短編。その結末はLSDの幻覚作用を彷彿とさせ、また映画好きが読めば『吐きだめの悪魔』を思い出すだろう。)

    <総括>
     訳者の平井氏は解説で「(本作でマッケンは)怪奇小説というよりはミステリ小説を書きたかったのでは」と私見を述べているが、私は真逆の私見で、本来は怪奇小説の短編集を構想していたが、前作『パンの大神』への酷評を受けて、本作で語られる物語は詐欺師の作り話であるというミステリ風仕立てに変更したのだろう、と考えている(結局これも非難轟々だったが)。さて、あなたの私見は?

    『大いなる来復』
     イギリスはウェールズにある田舎町ラントルサント。そこで「いちじるしい出来事」が起きたという記事が新聞に載る。興味を持ったわたしが現地に赴くと、そこで見聞きしたのは住人に起きた奇跡の数々だった――。
    (どこにでもあるような田舎町で突然奇跡が起き始め、突然と鎮静していった事態を、第三者視点から描写した中編。これを反転させればまんま同作者の作品『恐怖』になる。何も解決しないまま終わるのがなんとも実話風。)

  •  物語の構造がややこしく、たくさんの名前が出てくるため混乱してしまった。
     冒頭に男女の三人組が出てくるが、三人組はとある秘密結社(おそらくそれがタイトルになっている「怪奇クラブ」なのだろう。ちなみに原題を訳すと三人の詐欺師となり、三人組のことを指していると思われる)に所属しており、秘密結社を抜けた眼鏡の男を探している。
     売れない小説家ダイスンは眼鏡の男が逃げているところを目撃し、眼鏡の男が落とした貴重な金貨も拾った。
     男女三人組は眼鏡の男を追うために、ダイスンとその友人チャールズそれぞれと偽名を使って接触し、眼鏡の男を探す理由をでっちあげて話す。
     つまり物語に出てくるたくさんの名前の殆どは三人の詐欺師のでっちあげた名前のためにほとんど覚える必要は無いということだった。
     そのでっちあげの話がこの話のメインとも言える。幽霊のように消えてしまった弟とか、弟がサバトに使われた薬を間違って飲んでしまったため溶けてしまったが自分が殺したと疑われており、眼鏡の男は自分を狙っている探偵だ、など、作り話なのにとても奇妙である。
     ダイスンは最後にメガネの男が連れ去られるのを見てしまい、眼鏡の男が落とした手帳により真実を知る。
     そして物語は冒頭に戻り、眼鏡の男を見つけ出し人仕事終えた三人の詐欺師の会話シーンに戻ってくる。

  • 怪奇な要素はあるけれど。ホラーというよりは幻想小説。なんともいえず不気味な雰囲気が漂う作品です。
    各登場人物によって語られる奇妙な話。それが次々と連なり繋がっていくように思えるのだけれど、その結末は……というと、ここで終わりなのっ!? という印象でした。ある意味ぜんぜん解決していないし、いったいどういうことだったのかがとっても大きな謎なのですが。それがこの作品の読み口なのでしょうか。

  • ・怪奇クラブ
     ・プロローグ
     ・金貨奇譚
     ・街上の邂逅
     ・暗黒の谷
     ・兄の失踪
     ・黒い石印
     ・小さな酒場での出来事
     ・装飾的妄想
     ・ベイズウォーターの市隠
     ・白い粉薬のはなし
     ・クラークンウェルの不思議な出来事
     ・眼鏡をかけた若い男のはなし
     ・荒れ屋敷の怪事

    ・大いなる来復
     1怪異の流言
     2天国のかおり
     3秘境の秘
     4鐘の声
     5火の薔薇
     6オーエンの夢
     7聖杯の弥撤

全16件中 1 - 10件を表示

アーサー・マッケンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジョン・ミルトン
ジャック ケッチ...
ジョリ=カルル・...
谷崎潤一郎
シンシア・アスキ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×