アーサー王ここに眠る (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2021年8月12日発売)
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感想 : 5
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488516024

作品紹介・あらすじ

荒々しい騎馬の男たちの集団が館を襲い火を放った。燃えさかる館から逃れたみなしごの少女グウィナは、奇妙な風体の男に救われる。その男の名はミルディン。ブリテン島の統一を目指す司令官、アーサーに仕える吟遊詩人だった。言葉を操り人々の心を手玉に取る不思議な男。グウィナはミルディンの企みに手をかすことになる。カーネギー賞受賞。『移動都市』の著者がアーサー王伝説を新たな視点から語り直した傑作ファンタジイ、文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • とある少女と詩人が協力してアーサー像を作り上げる話。彼女から見たアーサーはとても傲慢で欲深。なにかを成し遂げるなど期待は出来なそうで実際できない。
    少女もなかなか幸せになれず波瀾万丈。詩人に巻き込まれてハードな人生を歩むことになります。夢見るだけじゃなく、ちょっとくらい恋愛とかそういう時間くらいあってもと思うくらい、なかなかかわいそうでした。

  • 騎馬軍団の襲撃を逃れた主人公グウィナは吟遊詩人ミルディンに助けられる。ミルディンから剣を持って湖にもぐり、それを入ってきた男に渡すということを頼まれ、そこからグウィナの運命は大きく動きだす。

    物語の持つ力、それがどのように語られ、どのように広まり伝わっていくのか、そういったことを考える材料になるかなと。

    https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2021/08/15/121653

  • ・フィリップ・リーヴ 「アーサー王ここに眠る」(創元推理文庫)は新たなるアーサー王の物語である。時と場 所は500年頃のブリテン島南西部、「お互いが小競り合いをくりかえして(中略)丘陵地帯の小さな王に仕えてい」(28頁)たり、「大王に仕えているものもある。または自分らの長にしか忠誠を誓わず、土地を持たない小さい集団もあって、そいつらはど こでも略奪し、土地を荒らす。」(同前)そんな時代のアーサー王の物語である。これを語るのは吟遊詩人のミルディン、聞き手は主人公の少女グウィナである。ミルディンに言はせれば「アーサーの一団もそんなやつらだ。」(同前)といふわけで、アーサー王がアー サー王伝説の王となる前の物語である。ミルディンは例の魔法使ひマーリンに当たるらしき人物である。
    ・アーサー王には聖剣がある。それをいかにして手に入れたか。ミルディンの指示によつて水に入つたグウィナは、「剣をくるん でいる油布を引き裂くと(中略)空いた手で剣をさしあげた。剣が水面を割って宙に出るのがわかった。(中略)剣はあまりにも重い。 (中略)なぜ、取ってくれないの。(原文改行)男は取った。」(39頁)アーサーは聖剣を手に入れたのである。その名をカリバー ンといふ。ミルディンは、「こっちの仲間もアイルランド人の家来どもも口にしてる。湖の底に住む妖精の貴婦人が、アーサーに魔法 の剣をさずけたとか……」(42頁)かくしてミルデインの「神神は別世界からこの剣をアーサーにさずけることで、かつてアル トリアスを愛していたように、アーサーを愛しているあかしとするわけだ」(32頁)といふ計画がうまくいき、アーサー王は伝説を歩き始める。以下の物語でも同様のことが行はれるらしいが、別に行はれなくともかまはない。ミルデインの竪琴と歌によつてアー サーは伝説となつていくのである。訳者井辻朱美はこの物語を端的に、「吟遊詩人ミルディンという男が、アーサーという小族長の人生を、 夢と魔法にまぶしてゆく過程を描いたものです。」(「訳者あとがき」343頁)と書く。さう、正にかういふ物語である。アー サーの死の場面、伝説のカムランの戦ひである。モルドレッド卿は出てこない。アーサーの甥のメドロートとの戦ひである。その最期はアーサーとグウィナ、といつてもミルディンにまちがへられてゐるのだが、の2人だけである。ここで例の剣をグウィナは水に返 した。「わたしはずっと後悔している。」(326頁)といふのがグウィンの偽らざる気持ち、なぜなら「この剣に使われた黄金があれ ば、一年は暮らせた。」(同前)本当はかういふ調子なのである。「夢と魔法」を取り払へば何が残るか。現実であらう。小族長の現 実、吟遊詩人の現実、いろいろあつても現実は現実である。現実は現実でしかない。「死の瞬間が終わったとき、その指輪とベルトと長靴と、首にかけていた古い黄金の十字架を外したのは、このわたしの手だ。わたしはそれをもらうだけの働きをした」(328 頁) といふのである。アーサーは彼女によつて葬られ、以後、彼女によつてアーサーは語られてゆく。「アーサー殿の名が物語にしかすぎ ない土地へ馬を進めていった。」(331頁)「手品と物語ばかりかな」(同前)、彼女の言葉はこの物語をよく表してゐる。「小族 長の人生を、夢と魔法にまぶしてゆく」のである。神話、伝説にはその物語の核とになる何らかの出来事がある。この物語はその核とその成長過程を描いたものである。個人的にはこの野卑で荒々しいアーサーより語り手グウィナの方が魅力的であつた。訳者曰く、「本書は素敵な少女小説の一面」を持つ。納得である。

  • イギリスのカーネギー賞を受賞した作品ということで、小学生の時に読んでとても感動したのを覚えている。主人公がアーサーではなく孤児の少女グウィナであり、新しい視点でかかれている。彼女の心情が美しい文章の中で伝わってきた。少女はパッとしないし、ハッピーエンド!!!という感じでもないが、吟遊詩人とグウィナのなんとも言えないキズナに感動せざるを得なかった。
    また、日本では絶版になっていたが、文庫版が最近発売された。是非読んでみてほしい本である。

  • ??( ゚Д゚)sビックリ
    初めて彼の伝説の片鱗に触れたのは子供向けアニメの『王様の剣』や『燃えろアーサー』辺りだったりしたし、その後読んだり観たりしたものなんかの中で美化された偶像のイメージが強かったのよ…( ゚Д゚)

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