ホアズブレスの龍追い人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2008年8月24日発売)
3.20
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Amazon.co.jp ・本 (442ページ) / ISBN・EAN: 9784488520083

みんなの感想まとめ

異世界ファンタジーと昔話を巧みに融合させた短編集で、物語の中に漂う独特の雰囲気が魅力です。著者の作品は、空の色や風の感触といった細やかな描写を大切にしながら、登場人物たちをユーモラスに描いています。シ...

感想・レビュー・書評

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  • 異世界ファンタジーと童話や昔話の語り直しの短編集。
    マキリップという作者にとっては、空の色や、遠くに嵐がある時の空気の湿り具合や、ちょっとした風のけはいのようなものが重要であって、弁証法的だったり実存的だったりする筋書きはどうでもいいのだと思う。いや、勿論彼女の作品は隙のない、丁寧な構成で組み上げられているけれども、それゆえに一層登場人物たちは操り人形めいて、シニカルに笑い飛ばされる。登場人物たちが、ではなく登場人物たちをヒーローに仕立て上げたがるある種の視点が。短編集である本書においてその傾向はきわだっている。一方、作者はどうやら人と人との関わりあいを信じているらしく、語り口はユーモアたっぷりで、結末は楽天的だ。その軽みにまた微風がそよいで来る。

  •  聞いたことのない作者だったが設定が綿密で密度の濃いファンタジーを多くみれてとても良かった。他にも多くの作品があるようなので機会があればそれらも読んでみたい。

     ホアズブレスの龍追い人はドラゴン退治人のお話であった。彼の語る世界の様々な龍の美しい描写と島の娘の島の中の親しい生活の対比が印象的でどちらの力強い。
     音楽の問題はこの中だとかなり長い作品だ。詩人が歌う場面の真の迫る描写。民族同士の諍いとそこにある音楽的な儀式の壮麗さ。不思議な楽器コトホーンの物語に絡む数々の興味深い特徴があり面白い。
     トロールとふたつのバラはその名通り醜いけども美しいものが好きなトロールが姫の変身させられたバラを求める話。ひょうきんで臆病で一途で美にしか興味のないトロールのキャラクターが印象的だ。
     バーバ・ヤーガと魔法使いの息子。地下の様々な童話めいた光景の鮮やかさと、乳鉢で空を飛び恩人である息子を助けるバーバヤーガの醜く壮麗な姿!最後の最後ににっこり笑うバーバヤーガのツンデレ仕草。
     ドラゴンの仲間は女王の命令で攫われたハープ弾きを助けに行く5人の良いお年の女戦士の話。5人が個性的であり、最後に人に化けたドラゴンを仲間にして立ち去る終わり方が印象的だ。
     どくろの君は塔の中の様々な宝物と由来が想像を掻き立てて楽しかった。どくろの君の名前と花を準えて攫っていく騎士の一人勝ちである。
     雪の女王はもっとも印象的なお話だ。かつて氷の女王から幼馴染を奪い返した女の子ゲルダは成長した男の子を再び人間に化けた女王に奪われるが、自ら行動して変わることで再び男を取り戻して見せる。一番好きなのは思い切りの良すぎるゲルダがコートを脱ぎ捨て渡したことにビビり逆に制止してコートをかけ嘘の経歴をついてまで人生相談して励ましまでしちゃう良心を隠せない女泥棒のシーンだ。たまたま出会ったウエートレスと一緒にゲルダの事業まで手伝い最後までゲルダの新しい相棒になってくれて嬉しかった。
     灰、木、火は過剰なまでの擬人化でものすごく騒がしい台所の神秘的で俗物的な光景である。最後に春の中に火が歩み出ていく姿!
     よそ者で印象的なのはもちろん主人公の女性だ。自ら恐るべき空の魔物を美しい音楽と共に編みあげるよそ者の魔術師と編み物を得意とする彼女が美について触れ合い刺激し合い、宣戦布告とも言える魔物の美を造らんとするラスト。略奪者である魔術師が怪物のスケッチを丁寧に見て、女に対してある意味の敬意を払い村から去っていく姿に並々ならぬ背景と感情を感じてしまう。
     錬金術は解脱的な方法を探る錬金術に対して、一人は詩と人生を変えるために学ぶ女、一人は消えた錬金術師の父の行方を追う男が現れる。二人の会話と師匠が消え去り再び嫌悪感を持つ日常に帰る女の姿が心に残る。
     ライオンとひばりは、美女と野獣を元ネタとしたある女の冒険譚だ。ライオン、鳩と姿を変えていく夫を追いすがりついに魔女となってしまった女性ヒバリ。中の良い正反対の姉二人。最後の最後で話を聞かず強引に王子を攫ってしまった王女が真実がわかるやいなやキチンと謝って友好的に接してくれたところが好き。傲慢ながらも善人なのが伺える。
     ジャンキットの魔女達は、この中でも音楽の問題と共に長めの作品だ。村に住まう様々な魔女達が復活する古代の危険に立ち向かう話である。彼女らはおどろおどろしくはなく夫やあるいは死んだ夫、そして家族と共に村で生活しているという庶民感が印象的だ。わちゃわちゃと動く魔女達の姿。最後の最後に夫の釣竿を持ち3人の孫にサポートされながら、今は亡き娘の魔女ストームを助けた時を思い起こしながら脅威に立ち向かう主人公の魔女の勇姿!もはや生い先短く諦めムードだった彼女が自らの趣味の釣りで相手を打ちまかし、新たなる生の希望を手に入れるラストはとても爽やか。
     悪い星のもとに生まれて、はロミオとジュリエットの後日談であり周囲の人間が二人の死の真相に迫っていくサスペンス風の物語である。最後に主人公は開悟する。二人の死が二つの家の諍いを終わらせ平和をもたらしたと同時に二人が死なずに住む道は少なくあっても自分たちが潰したのである。
     心の中への旅はユニコーンと少女を用いて角を狙う大公お抱えの魔法使いの視点。短く難解ではあったが、ファンタジーの源流を見た気がする。
     最後のヒキガエルはヒキガエルとお姫様の考えてみると理不尽な童話に対する一種の解答のような面白い作品。お姫様は自分自身の完璧な一日を保つためにヒキガエルの話を聞き、そしてそれを夢と思ったから無視した。王様はヒキガエルを単なる教訓用教材としていた。お姫様の嫌悪自身は割とわからなくもないが、最後まで拒絶しようとしていたのは本能的にヒキガエルの正体がわかっていたから。などとヒキガエル本人から解説が入ってくるが、なるほど、と思わせてくれるような不思議な説得力がある。

  • 終わり方があっさり、と書くと良い印象に思えるが個人的にはぶつ切り感に呆然とさせられる短編ばかり

  •  ファンタジー!! って空気にどっぷり浸かりました。児童文学や日本のファンタジーとはまた違った、本場のハイ・ファンタジー。
     世界観(設定)とかをことさらに説明しようとはせず、ただ絵画の世界のような美しい世界を物語るのは理想のスタンスなんだけど、想像力が追いつかなくてちょっと話の展開や心理描写についていけないとこがあったのが残念。
    「ドラゴンの仲間」がお約束に乗っ取ったストーリー展開でわかりやすくて面白かったかな。ドラゴンとの二人旅を是非もう少し。世界の美しさは表題作が一番良かった。雪の女王はイマイチだったかな。雰囲気は文句なしに良かったので、また別の作品を読んでみようと思います。

  • 短編集。一つ一つの世界観がしっかりとした、大人向けなファンタジー。

  • 2010年1月17日読了♪

  • 短編集なんですが、かなり独特なんでちょっと読みづらかったかなー。良いのもありましたが。
    なんていうか、すごく幻想的なこと表現してるんだろうけど今あたし想像できないや、という感じになってしまって。
    でもどっぷり嵌りこんで読めば、完全に違う世界にいけそうな気がします。
    もう一冊長編を読めばなんとなく満足できそうな気がする……。

    カバーイラスト / Kinuko Y. Craft
    カバーデザイン / 東京創元社装幀室
    原題 / "HARROWING THE DRAGON"(2005)

  • 短編集。
    様々なタイプの作品で粒そろい、贅沢な内容です。
    中身が濃すぎて、字も小さめで、読みやすくはないのが、何だかちょっともったいない…
    紹介するにもまとめにくかったので、再読中。

  • 短編集なので、何か物足りないまま。終了。

    内容(「BOOK」データベースより)
    龍が生み出す冬に封じ込められた、黄金と氷の街にやってきた龍追い人。古い血を誇る大領主のもとに派遣された、若き吟唱詩人がくだした決断。きれいなものに目がない醜いトロールが出合った、世にも美しいバラ。ドラゴンにさらわれた、女王お気に入りのハープ奏者を捜す、五人の女戦士の冒険…。ファンタジーの名手マキリップの、綺羅星のごとき15の物語を収めた贅沢な短編集。

  • 硬いかみごたえの短編集。ボーっとして読んでるとすぐわからなくなる。

  • 「妖女サイベルの呼び声」以外に果たして自分はマキリップを理解しているのだろうか・・・と思う今日この頃。その雰囲気はわかります。でも読み返さないと難しく感じてしまいます。お気に入りは「ライオンとひばり」。でも切ないなぁ。

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