ポオ小説全集 (1) (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (1974年6月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (424ページ) / ISBN・EAN: 9784488522018

感想・レビュー・書評

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  • アーサーゴードンピムを読みたくて全集2巻を読んだのだけどもうせっかくだからこれを機に全4冊読んでおくことに。

    こちら1巻の収録作は既読のものが3分の1くらい。おなじみ「アッシャー家の崩壊」「ウィリアム・ウィルソン」あたりがやはり安定の面白さ。

    好きなのは女性の名前シリーズ「ベレニス」「モレラ」「リジイア」いずれも妻の死後にいろいろ怖いことが起こる系、いかにもポーらしいゴシックホラー。「約束ごと」もこの系列に入れてもいいのかな。何が起こったのかもっと具体的にはっきり書いてよ、とつい思ってしまうこともあるけれど、この、読者の想像力を刺激する余白がたぶん大事なんだなあ。

    哲学者にして料理人のピエール・ボンボンが悪魔と酒盛りする「ボンボン」、やはり悪魔が出てくる「オムレット公爵」、ある日自分が息をしていないことに気づいた男「息の喪失」、食い逃げの二人組が逃げ込んだ廃墟で化け物たちと遭遇する「ペスト王」等は、怖いことが起こっているけれどどちらかというとユーモラス。

    「メッツェンガーシュタイン」は1967年のオムニバス映画『世にも怪奇な物語』でロジェ・ヴァディムが「黒馬の哭く館」として映画化しているのだけれど、あれは大胆にも主人公を女性に変えてしまってジェーン・フォンダが演じていたっけ。倒錯的で耽美でした。

    異色なのは「ハンス・プファアルの無類の冒険」借金取りから逃げるために気球を作ったハンス・プファアルという男がその気球でなんと月まで行ってしまうという奇想天外な冒険もの手記。とはいえ、作中でどうも眉唾らしいと匂わされている。「壜の中の手記」もある意味冒険もので、個人的に推理小説、怪奇幻想幻想小説のイメージの強いポーが、先に読んだ2巻の「アーサー・ゴードン・ピム」他も含め、冒険・探検小説を沢山書いていたことは意外だった。

    あと「メルツェルの将棋差し」は、18世紀に実在したオートマタ(からくり)のチェス人形が、実は巧妙に中に人が隠れていただけだったという実話の考察。翻訳はもともと小林秀雄が抄訳したものを大岡昇平が補完。事実は小説よりも奇なりの典型のようなエピソードでとても面白い。小川洋子さんの『猫を抱いて象と泳ぐ』は確かこのチェス人形から着想を得て書かれたのじゃなかったっけな。

    ※収録
    壜の中の手記/ベレニス/モレラ/ハンス・プファアルの無類の冒険/約束ごと/ボンボン/影/ペスト王/息の喪失/名士の群れ/オムレット公爵/四獣一体/エルサレムの物語/メルツェルの将棋差し/メッツェンガーシュタイン/リジイア/鐘楼の悪魔/使いきった男/アッシャー家の崩壊/ウィリアム・ウィルソン/実業家/解説:佐伯彰一

  • 再読。阿部知二訳が割と好きなこともあり、『リジイア』似た雰囲気の『モレラ』『約束ごと』が好み。特に『リジイア』に出てくる詩はよかった。ポーがこれらの詩も創作したのだろうか。この全集の古めかしい訳が好きだけど、新訳が文庫で色々読めるので、機会があればそちらも読んでみたい。

  • ポオはいままでアンソロジー(コレクション?)を中心に読んできましたが、そういうのに載らないようなマイナーな小品を拾う目的で全集に手を出しました。しかし、アンソロに載らないということにはやはりそれに値する理由があるはずで、まあ端的に言えばつまらんのが多いということです。あと古すぎて社会風刺的なお話が刺さらないことや、当時の流行文学に対する当て擦り(例:『ハンス・プファアルの無類の冒険』『エルサレムの物語』)も上手く馴染めないという欠点があります。
    怪奇小説、SF風の冒険譚、ジョーク系などが幅広く収録されていますが、やはり純粋に楽しめるのはアンソロ常連の『ベレニス』『リジイア』『使い切った男』『アッシャー家の崩壊』『ウィリアム・ウィルソン』。ちなみに、『アッシャー家の崩壊』が好きな方にぜひぜひ読んでいただきたいのが平石貴樹の『だれもがポオを愛していた』。おすすめです。
    『メルツェル家の将棋指し』は特に評価は変わらずイマイチ。まあ小説ではないしな。
    初読で良かったのはポオお得意の美女病蘇生ものの『モレラ』、比較対象は土俵にも上がらなければ勝てるという謎の教訓を含んだジョーク小説の『名士の群れ』、対立する名家の破滅、馬と人間の主従の逆転を描いた怪奇小説の『メッツェンガーシュタイン』、誰もが一度は考える金儲け、世の中を賢く生き抜く術の詰まった『実業家』などなど。

  • 「アッシャー家の崩壊」と「ウィリアム・ウィルソン」のみ読了。他の作品は、他のタイミングで読みたい。

    『ドリアン・グレイの肖像』の解説や、SFのどっかの本で書かれていたW•Wと、ブラッドベリでも出てきたアッシャー家だけはなんとか目を通しました...WWは面白いけど精緻な工作物感があってノレなかったのですが、アッシャー家の方は、おどろおどろしさの中に見える美しさが好きで、ポーの作品に対する興味を失わずに済みそう笑

  • 「ベレニス」
    収録作品の中では特にお気に入り。
    今のベレニスの中に唯一残っていた「昔のベレニス」であるといえる要素がたまたま彼女の歯であったために、主人公はそれに異常なほどの執着を見せた、という見方もあるのではないかと思った。
    また時間を開けて再読予定。

  • 有名どころの話が多かったし面白かった。

    特に好きなのは、『ベレニス』『モレラ』『約束ごと』『ボンボン』『メッツェンガーシュタイン』『アッシャー家の崩壊』『ウィリアム・ウィルソン』あたりかな。

  • カニバリズムの描写めっちゃ惹きつけられた

  • 有名な『アッシャー家の崩壊』を読んでみようと手に取った一冊。美とグロテスクが紙一重のような雰囲気はあまり得意ではないのですが、それでも引き込まれてしまうあたり、アメリカ最大の文豪というのは怖いですね。目的の短篇以外では、『メルツェルの将棋差し』、『使い切った男』あたりが興味深かったです。(知りたくてたまらないことを誰かに聞こうとするたび、いいところで邪魔が入る展開はちょっと笑えました)

  • ポオにとって、なんらかの「死」はピリオドなのかもしれない。
    「死」というピリオドによって、個人が定義され、個人に帰る。
    正真正銘の個人主義。

  • 古本屋へ

  • (108)

  • やっと読み終わりました。
    文字が小さくて読みにくいけど面白かったです。
    お気に入りは「息の喪失」「ボンボン」「アッシャー家の崩壊」かな。
    どの話も完璧でオチが突然なのが、読み手の好奇心をくすぐります。
    引き続きIIを読みます。

  • 『影』
    僅か4ページの物語だが、十分雰囲気を伝え、不気味なラスト。
    流石は、ポオ‼︎
    「息の喪失」
    巻き込まれ型の典型が、既に形成されている。
    「名士の群れ」
    寓話のよう。鼻は、文学者にとって特別な思い入れがあるのだろうか。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。

    ゲスト藤野可織さんの人生を変えた一冊。

    「小学校の学級文庫に1つだけ誰も手に取らない黒い本があって、それがポオの短編集だったんですけど、この本に出会わなかったら、今はまた別の感じの作品を書いていたかもしれません。この本の前に少年探偵シリーズを読んだ事があって、でもそれは子供に言い聞かせるような口調で書かれているというか、せっかく一歩この世界の中に踏み込んだのに『ここまでよ』って言われたような気がしていたんですね。」(藤野可織さん)



    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe

  • 宇多田ヒカルが中学生の時に恋した作家・詩人であるということを知って詩集まで全部読んだ。文中に出てくる詩の和訳が岩波のポー詩集よりだんぜんこっちのが雰囲気出ててよい。

  • アッシャー家の崩壊 のみ読了。

    追記:ウィリアム ウィルソン 読了。

  • 「ベレニス」「モレラ」「アッシャー家の崩壊」が好き。

  • 怪奇・幻想・SF・ユーモア、といろんなテイストの短編集が集められた第一巻。意外と「アッシャー家の崩壊」も「ウィリアム・ウィルソン」も初読でした。
    やはり「アッシャー家の崩壊」は凄いなあ。タイトルでラストがどうなるかは分かっているのに、それでもあのシーンのインパクトは凄絶でした。
    「モレラ」も好きだなあ。王道的な怪奇幻想小説。

  • 『壜のなかの手記』
    壜の中に残された手記。嵐の夜に漂流した船。船員たちが見つけた難破船。難破船の乾板に浮かぶ光る人影。

    『ベニレス』
    病気にかかった従姉妹であるベニレスと結婚した男。彼女の死後に彼女の歯を奪うが・・・・。

    『モレラ』
    同じ学問に興味を持つモレラと結婚した男。モレラの知識に恐れを抱く男。モレラの死。モレラが転生した娘の死。

    『ハンス・プファルの無類の冒険』
    3人の債権者を爆殺し気球にのって消えたハンシ・プファル氏。5年後町の上空にあらわれ気球から落とされた彼の手記。月で出会った小人たち。

    『約束ごと』
    メントーニ公爵の息子を助けた「見知らぬ男」。彼をのせたゴンドラの舵を取る男。「見知らぬ男」の死と公爵夫人の末路。

    『ボンボン』
    哲学者にして料理店経営者のボンボン氏。哲学者としては個性的で評価も高いボンボン氏。彼の前にあらわれた悪魔。ボンボン氏と契約を結ぼうとする悪魔との哲学論争。

    『影』
    プトレマイオスという小さな町でゾライオスという男の死体と共に一夜を過ごす7人の男たちにせまる影。

    『ペスト王』
    エドワード三世の治世。港町に上陸したレッグスとターポリンの二人の船乗り。酒場での食い逃げ葬儀屋の地下室に逃げ込んだはずが見知らぬ男女が。「ペスト王」と名乗る男とそれぞれ病気の名前を持つ男女。

    『息の喪失』
    妻を罵ろうとしたとき息を失ってしまった男。乗り合い馬車に乗るが息をしていないことから死体として捨てられる。病院での解剖、処刑上での絞首刑、埋葬された墓地での復活

    『名士の群れ』
    鼻理学を納める男。見事な花に1000ポンドの値段をつけられ町の名士から人気者になるが・・。

    『オムレット公爵』
    女王から贈られた小鳥を料理されたショックで死んだオムレット公爵。死後の悪魔とのカード勝負。

    『四獣一体』
    過去のシリアの都アンティオキアにやってきた主人公たちがみた光景。

    『エルサレムの物語』
    エルサレムの供物徴収係の3人の男たち。ローマの政治家ポンペイウスから配られる供物の肉の秘密。

    『メッツェルの将棋指し』
    不思議なからくり人形メッツェルの将棋指しの構造についての研究。

    『メッツェンガーシュタイン』
    メッツェンガーシュタイン家とベルリフッツリング家の対立。メッツェンガーシュタイン家の若き党首フレデリックがみたタペストリーの馬の動き。ベルリフッツリング家の馬小屋が火事にあった日に捕まったタペストリーの馬にそっくりな謎の馬。

    『リジイア』
    美しい妻リジーア。死の前に「死を克服する」と言い残す。再婚した妻ロウィーナ。彼女の死の瞬間に垣間見たリジーアの姿。

    『鐘楼の悪魔』
    時間に正確な生活を送るオランダの村ナンジカシラ。すべての時計の源になる村の中心の鐘楼に突然住み着いた悪魔。気ままに鐘を打ち鳴らし村人の生活を乱す。

    『使いきった男』
    戦争の英雄ジョンA・B・C・スミス将軍。誰に聞いてもいい評判しか聞こえてこない彼の体に隠された秘密。

    『アッシャー家の崩壊』
    沼地に立つアッシャー家。友人であるロデリック・アッシャーを訪ねた男。ロデリックの変貌に驚く男。ロデリックの妹マデリン姫の病。死んだマデリン姫。生きかえったマデリン姫と沼地に沈むアッシャー家。

    『ウィリアム・ウィルソン』
    自分とそっくりな同姓同名の男ウィリアム・ウィルソンに悩まされる男。学校時代の対立から社会人になってからも彼の影に付きまとわれついにウィリアム・ウィルソンを殺害してしまう。

    『実業家』
    幼いころに乳母に頭を叩きつけられ額に瘤を作った男。自分の才能を信じ次々と事業を起こしていく。

    『』

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著者プロフィール

(1809年〜1849年)アメリカの作家、詩人。推理小説の祖とも言われる。主な作品に「アッシャー家の崩壊」、「黄金虫」、詩集『大鴉』など。

「2020年 『【新編エドガー・アラン・ポー評論集】 ゴッサムの街と人々 他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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