ポオ小説全集 2 (創元推理文庫 522-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488522025

感想・レビュー・書評

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  • チャトウィンの『パタゴニア』を読んでからポーの「アーサー・ゴードン・ピム」を読みたくて収録されてる文庫を探してみたのだけれど、ポーの文庫自体はいろんな出版社から出ているものの収録作品はだいたいメジャーな黒猫、黄金虫、アッシャー家などに限られていて、意外にもアーサー・ゴードン・ピムを収録しているものはこれだけしか見つけられませんでした(まあこちらは全集だし)そして意外にも長編(270頁くらいある)だったことにビックリ。どうやらポーの作品中最長編らしい。

    1827年6月、冒険好きの若者アーサー・ゴードン・ピムは親友のオーガスタスと共謀してオーガスタスの父親の捕鯨船に密航するが、彼が隠れているあいだに一部の乗組員の叛乱が起こり、多くの船員が殺されてしまう。運よく殺されなかったオーガスタスは、船倉に隠れて餓死しかかっていたアーサーをなんとか助け出し、アーサーの愛犬タイガーと共に匿うが、やがて叛乱一派が仲間割れをし、ピーターズというインディアンとの混血の乗組員を味方につけたアーサーたちは船を奪い返すことに成功する。

    アーサー、オーガスタス、ピーターズ、さらに叛乱メンバーの中で生き残ったパーカーの4人はしかし嵐に襲われ漂流、食糧危機に陥る。飢餓から正常な判断力を失った彼らは、一人が犠牲になれば他の3人は生き残れるというパーカーの発案に流されクジを引くが・・・。こういう状況でカニバリズムが起こるのはおそらく当時は珍しいことではなかったのだと思うけれど、やはり想像するだにエグイ。

    比較的序盤でのこの展開にドン引きしているヒマもなく、生き残りはアーサーとピーターズだけになり(ていうか犬どこいった?)、漂流50日、ようやくジェイン・ガイ号という船が彼らを発見、二人は救出される。そのまま乗組員となって数か月、いろんな島を巡っていたところ、ある未開の島に辿り着いた一行は、海産物豊富なその島に上陸、土人(って今は差別用語だから変換もすぐ出ない)たちの村に案内され親交を結ぶが実は彼らがとんだ食わせ物。騙し討ちでまたしてもアーサーとピーターズ以外は殺されてしまい、生き残った二人は脱出を試みる。

    なんとかカヌーを奪い島を逃げ出した二人が見たものは・・・。ここでこの回想録の筆記者であるアーサーが亡くなり物語は中断する(二人が無事戻っていることは回想なので確実)。結局何が起こったのか(彼らが見たものはなんだったのか)は読者の想像力に委ねられ、ラブクラフトのような作家がそれを物語にしたりしているわけですね。正直、海洋冒険ものだからか雑学というか本筋と関係ない話にページを取りすぎていてなかなか本筋がすすまないのが読んでいてしんどかった。冒険ものとしては前半の遭難のほうが怖すぎて、土人はそうでもない。

    他の収録作品は同じく冒険ものの「ジューリアス・ロドマンの日記」も100頁くらいあったからポーにしては長編だけれど、これは抄訳じゃなくて中断している・・・?カヌーで冒険に出かけて途中でいろんな部族に襲われたり友好を結んだりしつつ川を遡航してロッキー山脈へ・・・という話なのだけど特になんの怪異も起こらないまま唐突に終わっている。謎。

    あとは短編がいくつか。シニカルなものがほとんどだったけれど、唯一掌編ながら「沈黙」は美しかった。サフラン色の川、沼に降る血の雨、青白い蓮の花。雰囲気的に乱歩の「火星の運河」を思い出した。

    ※収録
    ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語/沈黙/ジューリアス・ロドマンの日記/群集の人/煙に巻く/チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?/エドガー・ポオ その生涯と作品(シャルル・ボオドレエル)

  • 『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』
    船の冒険譚だと思って読み進めたのですが、大変怖かったです。そりゃそうか、ポオだものね…
    子どもの頃テレビで見て怖かった「トワイライト・ゾーン」って、やっぱりポオの系譜なんだろうね…

    個人的には、
    『ジュリーアス・ロドマンの日記』
    こちらの方が船の冒険譚て感じでした。

  • ポオの全小説作品を四分冊で――その2。
    「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」が
    圧巻。
    しかし、最初は海洋冒険小説だったのに……
    終盤、突然ホラーに(!)

  • ピムの話は終わり方が尻切れトンボでうわあああああってなる。遭難して水も食べ物もなくて…ってとこの描写もリアルな上長くてうわあああああああってなる。

  • 谷川渥の『幻想の地誌学』で「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」が取り上げられいたので再読。前半のワクワク冒険活劇譚から一転してのラストの幽玄な不気味さはこれぞポオ。テケリ・リ!
    巻末に収録されているボオドレエルのポオ解説も再読、実質「ポオえぇでヤバすぎ、最高やんけ、ポオ分からんやつはクソ」しか言ってなくて面白いです。

  • ヴェルヌの「氷のスフィンクス」はこれの続編と聞いたので。先に読もうと。図書館で探したら全集しかなかったので、重いから図書館で読んじゃった。

    ポーとヴェルヌって、どの辺に接点があるんだかよくわかんなかったんですが。読んでもよくわかりませんでした。きっと。「氷のスフィンクス」も読むとわかるに違いない。わかるんでしょう。わかるかもしれない。

    割とまっとうな冒険譚です。
    今時このくらいはグロテスクとは言わないだろうし。

  • 「狂気の山脈にて」で出てたアーサーゴードンピムの物語を読もうとしたが単なる冒険談くさくて読むの辞めた

  • ポー唯一の長編であり、諸星大二郎等の作品の元ネタにもなっている『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』を収録。

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    知ってる人からすれば超有名どころだろうけど、ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』。原初のPDFは無料で読める。http://pinkmonkey.com/dl/library1/pym.pdf

    諸星大二郎の『栞と紙魚子』の元ネタがちょこちょここの話から出てることでも知られるようになった。航海に関するあらゆるモチーフ(反乱、嵐、難破、漂流、飢餓、幽霊船、人喰い、etc)がつめ込まれていると言われる大長編冒険小説。船に4人だけが残って漂流して、くじで負けた奴が他の人間の食料になろうって提案した人間が真っ先に当たりくじを引いて食べられる辺りからだんだん読んでて気持ち悪くなってきた。ガストン・バシュラールが『水と夢』の中で、ピムの冒険は無意識の冒険で、水は血で、水脈は血管と解説している。あとラブクラフトの『狂気の山脈にて』が、この話を下敷きにしていることでも有名。ちなみにラブクラフトの話は、南極に旧支配者が造った迷宮のような巨石のネクロポリスがが広がっていて、6フィートのペンギンがいて、旧支配者を滅ぼしたショゴスがいて、みたいな話。

  • 『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』
    ピム氏の物語。酔った友人のオーガスタスと乗り込んだヨットでの漂流。その後のオーガスタスの父親が船長を勤める船に密航したピム。オーガスタスからの援助が突如切れる。血で書かれた警告文。船員たちの反乱。反撃。4人での漂流。死んだ人間を食べる。死んだオーガスタス。ピーターズと共に助けらた船での冒険。

    『沈黙』

    『ジュリーアス・ロドマンの日記』
    誰にも知られていないロドマン氏のロッキー山脈横断の記録。

    『群衆の人』
    何もすることがなくただカフェから通りすがる人々を見つめる男。男が見つけた謎の老人。老人が気になり彼の跡をつける男。

  • 日本の江戸時代の作品(1840年代)というのが、ビックリちょんまげ。

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