ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488522049

感想・レビュー・書評

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  • この全集ほぼ年代順に収録されているのだけれど、最終巻にしてようやく「黄金虫」「黒猫」が。ここまで読んできて結構ポーの守備範囲の広さは意外なくらいだったけれど、探偵要素のあるものは後期に多くなっている印象。ゴシック系は初期のほうが多かったのかな。

    「黄金虫」「お前が犯人だ」とデュパンくんもの3作目「盗まれた手紙」は丸谷才一訳。「黒猫」は何度も読んでいるけれど、今回はじめて、主人公クズすぎない?と強く思った(苦笑)オチのインパクトが強烈すぎてつい経過を流しがちだけど、アル中で酔っぱらって動物虐待、あげく猫を庇った奥さん殺害とかどう考えても擁護の余地ない。「長方形の箱」あたりも、主人公の性格の悪さがちょっと気に障る。

    「不条理の天使」は自称天使がゆるキャラぽくてなんか可愛い。チェコアニメに出てきそう。夢野久作もこんなの書いてそうな精神病院ものの「タール博士とフェザー教授の療法」、死ぬ間際の病人に催眠術をかけたらどうなるか実験する「ヴァルドマアル氏の病症の真相」は怖いけど面白い。どちらも文体次第でもっとおどろおどろしくなりそうなのに、なぜかちょっとユーモラスに仕上っている。

    千夜一夜の後日譚「シェヘラザーデの千二夜の物語」や蘇ったミイラとマウンティング合戦になっちゃう「ミイラとの論争」あたりになると完全に笑わせにきている気がする(笑)「メロンタ・タウタ」は近未来SF?巨大軽気球で旅行している主人公の手紙形式で過去のあれこれについて触れているけれどほとんどパロディみたいなノリ。未来を語るシェヘラザーデの話と一対で読むと面白い。

    「アルンハイムの地所」は読みながら、あれ?つい最近これと同じもの読んだ気が・・・3巻に収録されていた「庭園」かな?(どうやら「庭園」の完全版がこの「アルンハイム~」らしい)これの続編にあたる「ランダーの別荘」や「ウィサヒコンの朝」なども含め、どうやらポーには造園趣味(というか夢想)があったのかしら。

    「天邪鬼」「アモンティリャアドの酒樽」はポーの王道的な犯罪ものだけど、~酒樽の犯人はちゃんと黙秘を貫いて完全犯罪成し遂げたあたりが、わりと自分からボロだしがちなポーの他の犯罪ものとは趣向が違う。復讐の完遂という意味では「跳び蛙」も共通しているかも。こちらはどことも知れない宮廷で道化役の小人=通称・跳び蛙が、同じく小人の美少女トリペッタを侮辱した傲慢な王様と大臣たちに復讐を果たす。童話的な設定なのに復讐の方法がなかなか苛烈。

    そういえばもうかなり昔だけれど、この「跳び蛙(Hopfrog)」が映画化されたものを見たっけ。ツインピークスが流行った直後で、ツインピークスに踊る小人役で出ていた俳優マイケル・J・アンダーソン主演、彼とトリペッタ役だけが本物の人間(小人)で、それ以外の役はすべて等身大パペットという斬新な映画『フールズ・ファイア(FOOL'S FIRE)』探したけどDVDはおろかビデオ化もされてないっぽい。ちなみに調べたら1992年の映画でした。

    掌編ながら「スフィンクス」は、「黄金虫」とワンセットで読むと面白い。最後に乱歩によるポオ論も収録。

    ※収録
    黄金虫/黒猫/長方形の箱/不条理の天使/「お前が犯人だ」/ウィサヒコンの朝/シェヘラザーデの千二夜の物語/ミイラとの論争/天邪鬼/タール博士とフェザー教授の療法/ヴァルドマアル氏の病症の真相/盗まれた手紙/アモンティリャアドの酒樽/アルンハイムの地所/メロンタ・タウタ/跳び蛙/×だらけの社説/フォン・ケンペレンと彼の発見/ランダーの別荘/スフィンクス/暗号論/探偵作家としてのエドガー・ポオ(江戸川乱歩)

  • 原点にして、ほぼ頂点。読みやすい。

  • 『モルグ街の殺人』は、推理小説(探偵小説)の指導書のように感じました。
    エドガー・アラン・ポオが、どういう人物なのか分からずに読むと何だか小難しい小説かもしれませんね。でも、数々の小説家に影響を与えたという意味で、探偵小説の緻密で繊細な指導者なのだと思いました。
     この作品の過程は、印象に残らないかもしれません。
     何故なら、事件に対する議論の披瀝であって、エンターテイメント性を度外視している作品ではないかと思うからです。ポオ本人も、新たな作品の境地を切り開く賭けとして発表したのではないかと想像しています。
     勿論、探偵小説の真価を見抜いた江戸川乱歩先生の功績が大きいかと思いますが、先駆者ポオの挑戦として成功したのではないかと思います。

  •  名作『黒猫』が収録されていると聞いて即買いした。

     ミステリーとしても充分に読めうる本作だけれど、登場人物、いや登場猫の「黒猫」の不気味さは秀逸。もんもんと語られる主人公の独白の果て、ラストシーンでの黒猫が不気味さはもう……。

     悪いことしちゃダメです。
     黒猫が見てます。

  • エドガー・アラン・ポオの「探美作品」とこの全集で呼ばれている作品群にはいたく影響を受けています。この本に収められている「アルンハイムの領土」との出会いはそもそもは野阿梓経由だと思うのですが、それをネタに大長編を書こうとしてしまうくらいで、それはやはり、造園というものが持つ美学要素によるのだと思う。完全な美は自然のうちには出来上がらず、人間が造形して初めて完全な美となる。これは風景画がそもそも持っていた命題で、それをカンバスではなく実際の造園で目指そうとしたエリスンの大望はすさまじい。18世紀のイギリスなんかでは造園で身を持ち崩す人が続出したということを考えると、エリスンが一度の造園で完全なアルンハイムを出現させたのはラッキーだったとしか言いようがないんですが。しかしだからこそ、エリスンその人が『天才』だったことを意味するのかもしれないと思う。エリスンがなにを考えてアルンハイムを造園したかは理論の部分は細かく書かれているんだけれど、なぜ彼がそれを望んだのかは説明されていなくて、それがこの作品の深遠さを生んでいる。

  • スフィンクス なぁんだ、この怪物ってさうだったのかぁ、


     て実在してんぢゃねえか!!

     飛び蛙 ちんばの飛び蛙(侏儒の人)が、アルハラ受けた麗しの君で同業者の復讐をする。かっこいい。

  • 2018.5.5一箱古本市で購入。

  • ようやく全巻読破! 好きだと思ってたわりには案外と読んでいない作品が多かったなあ(苦笑)。
    お気に入りはやはり「黒猫」。代表的な恐怖小説ではあるし、主人公の立場で読んでみればたしかに怖いだろうけど。猫好きからすれば素敵な物語に思えてしまうのは私だけ? 自業自得ですよねえ。
    未読作品では「ちんば蛙」が面白かったです。なんとまあとんでもない話なんだろう。あまりにシュールです。「スフィンクス」も凄いなあ。まさかあのオチ!

  • 杉田英明「アラビアンナイトと日本人」つながりで。シェへラザーデの千二夜の物語、のみ読了。千一夜を生き抜いたシェヘラザードが、余計なことをして、結局殺される、というあらすじだけ見かけて、原作が気になり。平穏な生活を送っていたのに、どうしても、シンドバッドの冒険の物語を、当時は眠くてはしょって語ってしまったことが気になって、寝ている王を叩き起こしてまで語り始める。が、女たちとヒトコブラクダの見分けがつかない話をしたところで、バカにしてるのかと逆鱗にふれることになり、絞首台に送られてしまうことに。もっと荒唐無稽な話は千一夜のあいだにもあっただろうし、なぜに今回だけ、という思いと、最後に思ったことはいささか溜飲をさげたとは思うが、王には届かなかっただろうな、という思いと。

  • 読みやすいものとなんだか読みにくいと感じるものが半々くらいだった。
    有名な『黒猫』『盗まれた手紙』はやはり面白かった。
    『「お前が犯人だ」』『タール博士とフェザー教授の療法』も好き。

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