ラヴクラフト全集 (3) (創元推理文庫 (523‐3)) (創元推理文庫 523-3)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523039

作品紹介・あらすじ

アーカムやアヴドゥル・アルハザードが初めて言及される初期の作品や、ロバート・ブロックに捧げた作者最後の作品をはじめ、時空を超えた存在〈大いなる種族〉を描く、ラヴクラフト宇宙観の総決算ともいうべき「時間からの影」など全8編を収録。

収録作品
「ダゴン」 「家の中の絵」 「無名都市」 「潜み棲む恐怖」 「アウトサイダー」 「戸口にあらわれたもの」 「闇をさまようもの」 「時間からの影」 「資料:履歴書」

感想・レビュー・書評

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  • 「ダゴン」
     ある船員が海の真ん中で体験した恐怖の記録。
     海上の不気味な島も良いんですが、オチが非常にいい味を出してました。
    「家のなかの絵」
     雨宿りに入った不気味な家で出会った本の挿絵、そして白痴めいた老人の語り。
     ラヴクラフトらしく、婉曲な表現で想像を掻き立てる手法が怖さを引き立ててます。
    「無名都市」
     無名都市に辿り着いた探検家の物語。ごめん、イマイチ伝えたいことがわからなかった。
    「潜み棲む恐怖」
     薄気味悪い山に館をかまえていた呪われた血統という、いかにもな舞台設定。
     オチも含めて非常にラヴクラフトらしい作品でした。
    「アウトサイダー」
     自分の正体は実は…な、お話。オチも含めて雰囲気がよい。
    「戸口にあらわれたもの」
     精神交換・精神乗っ取りなお話。「インスマウスの影」とシンクロする部分もありなかなか面白かった。
    「闇をさまようもの」
     地元の人ですら避けるとある黒々とした廃墟のような教会から、壮大な狂気が迫ってくる話。
    「時間からの影」
     大学教授ナサニエル・ピースリーが体験する奇妙な二重人格と幻覚症状、そしてその真相。
     非常にスケールの大きな話でコズミックホラーに相応しい内容でした。

  • “ダゴン“は〆の「ああ!窓に!窓に!」が印象的だが、話としては微妙だった。
    今作では、アウトサイダーの言い回しや話の落ちが1番好みであったが、時間からの影も読みやすく、<大いなる種族>に関する夢日記が具体的であったため、恐怖小説らしい場面もあるがそれよりもSFとして面白かった。落ちとして、密閉文書の端くれであるとか、少しでも証拠の一端が残ったらより面白かったのだが、何も持ち帰ることができず真実かどうかは神のみぞ知るというのもクトゥルフらしいといえばらしい。


    ↓↓↓超ネタバレ


    爺さんの秘密・食人による生命の延長“家の中の絵“、洞窟探検“無名都市“、地下トンネルを探索する“潜み棲む恐怖“、余はおのれが局外者(この言い回しが好き)/ナサニエル・ホーソンの孤独な男の日誌/ポオの赤死病の仮面/の影響を受けた“アウトサイダー“、中身の入れ替え・4日で書き上げた“戸口に現れた者“、教会で宇宙の秘密をはらむ輝く石“闇をさまようもの“、<大いなる種族>との精神交換による双方の学習旅行“時間からの影“。

  • ①ダゴン
     船乗りのわたしは運悪くドイツ軍に拿捕された後、すきを見て逃げ出す。漂流の後に小島に漂着したわたしは、丘の頂上を目指すことにしたのだが――。
    ●「窓に!窓に!」で有名な、クトゥルフ神話の原型とも指摘されている短編。

    ②家の中の絵
     道中で雨宿りのために家屋に入ったわたしは、そこでテーブルに置かれた古書に目を奪われて――。
    ●夢幻的なホラー。そこにいたのははたして死者だったのか生者だったのか。
    現場がアーカムの近くなので、食屍鬼をゲストにした物語やTRPGシナリオがありそう。

    ③無名都市
     アラビアの砂漠で伝説の古代都市を見つけたわたし。探究心から内部に侵入したわたしが目にしたものは――。
    ●初めて"アブドル・アルハズラット""アブドゥル・アルハザード"の名が出た作品かな?
    恐怖よりも強く感じたのは偽史的な面白さ。

    ④潜み棲む恐怖
     とある地方で起きた大量殺人。探究心からわたしは仲間とともに元凶と噂される館に乗り込むことに――。
    ●厳密には神話に属さないが、展開はホラーの王道で神話っぽさも感じられる。実は何度か映像化されているのだが、設定は大きく変えられているので、知らないとラヴクラフト原作とは気づかないだろう。

    ⑤アウトサイダー
     遥かなる年月を闇の中で過ごしてきたわたし。日の目を求めて塔を登り、念願の外へ出たのだが――。
    ●結末にて、哀しみの中に混じる救いの描写は、ラヴクラフトが求めたものか。

    ⑥戸口にあらわれたもの
     わたしは確かに親友を殺した。だが彼は親友ではない。親友であって親友でないのだ。なぜなら――。
    ●よくある結末にせず、あえて曖昧な結末にしたのが良い。
    インスマスが深きもの"だけ"の街ではないことを伺わせる点で、クトゥルフ神話の深みをより強く感じさせてくれる作品でもある。

    ⑦闇をさまようもの
     とある男性が自室で変死体で発見される。彼が遺した日記と客観的事実を元に表された、彼の最後の数日とは――。
    ●ラヴクラフトの遺作。神話作品では王道の、好奇心から身を滅ぼす話。
    執筆年で見ると、晩年の作品は「乗っ取られる恐怖」というテーマが続いている。

    ⑧時間からの影
     後を継ぐであろう息子のために書かれた日記。そこに記されていたのは、謎と恐怖と深秘に満ちた体験だった――。
    ●前半は5年半の空白を埋める内にじわじわと表れ出る未知の記憶に対する恐怖に侵されるが、後半は恐怖というよりも、偽史的な面白さに囚われる。
    なにせ精神のみとは言え、古の先住種族から人類滅亡後に登場する種族まで、古今東西の種族が一堂に会するのだから!

  •  主人公が与えられた状況においてなすすべもなく恐怖に飲み込まれていくというシチュエーションは怪奇の本質であると思われる。「なすすべもない」というのは究極の受身であり、ラブクラフトの不遇な人生もある意味このような受身の態度をもたらさざるをえなかったのだろう。巻末の履歴書がそのことを如実に物語っている。

     「時間からの影」が面白かった。SF的なところが面白かった。

  • 1985年以降購入して読んだが、詳細は覚えていない。
    これまで聞いたことがないような擬音のカタカナ、”ほのめかす”という普段使わない訳、不気味な話には惹きつけられた。
    また読みたい。(2021.9.7)
    ※売却済み

  • 再読。


    ラブクラフト初期の作品が興味深い。
    お気に入りは「戸口にあらわれたもの」
    自分が自分でなくなる恐怖ってのはアメリカ人にはすこぶる堪えるものなのかな?

    「闇をさまようもの」の裏話がとても好き。
    仲間内で楽しんで創作に耽っていたのはなんだか微笑ましい。

    自身を語る履歴書がこれまたおもしろい。

    ラブクラフト世界を十分堪能しました。

  •  窓に! 窓に!

     「ダゴン」「家の中の絵」「無名都市」「潜み棲む恐怖」「アウトサイダー」「戸口にあらわれたもの」「闇をさまようもの」「時間からの影」の八編。どれも短め。最後のが長かったかな。
     そもそもクトゥルフ神話ってのはラヴクラフトが体系化したものじゃないからこういう表現するのは違うんだろうけど、「家の中の絵」「アウトサイダー」以外がクトゥルフっぽいかなぁって感じ。「家の中の絵」もアーカムって地名が出てきてはいるんだけど。
     「時間からの影」の大いなる種族って、グラーキのこと? なんか外観の描写がそれっぽいなぁって。調べてないから分からんけど。
     「ダゴン」の「窓に! 窓に!」が読めたから満足なんだけど、ぶっちゃけそれ以上に「アウトサイダー」がめちゃくちゃ好みでした。うん、ほんと、すごい好き。オチは途中で読めちゃうんだけど、なんだろう、最後の一行できっちり落としてくるの、いいよね。「時間からの影」とか「戸口にあらわれたもの」とかも。
     すごいどうでもいいけど「戸口にあらわれたもの」に脱字ない? P125最後から五行目。「決して白くならないじゃもじゃの顎髭を」ってあるんだけど、「もじゃもじゃ」だよね?
     巻末の解説を読んでないので、1、2巻のも含めてちゃんと読んでおきたいです。あとクトゥルフ神話を体系化したダーレスの著作も読みたい。
     抜粋。「潜み棲む恐怖」より。


    しかしすべてはむなしく、どこからともなく到来した死は、殺戮を除いて、何らの痕跡も残していかなかった。


     一番でっかい痕跡だろそれ。

  • 久々に読んだら、すごく時間がかかってしまった。
    ラブクラフトの創作活動の各時期の
    代表作を集めた作品集。
    短編七作、中編1作、本人による履歴書が収録。
    偶然、或いは自ら深い謎を探求して、
    名状し難き者に出会ってしまい錯乱するという定型は、
    初期から始まっています。
    ・ダゴン・・・初期の作品。
      短編ながら、その原型となる特色があります。
    ・家のなかの絵・・・最後が尻切れトンボな感。
    ・無名都市・・・あの狂える詩人の名が初出。幻想的。
    ・潜み棲む恐怖・・・邪悪な一族は主人公と何か繋がりが
      ありそうだけど、わからぬままで終わり(^^;
    ・アウトサイダー・・・囚われの主人公が戒めの館から出て
      見たものは?描写とクライマックスが秀逸。
    ・戸口にあらわれたもの・・・インスマウス出身ですか~。
      「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」とも類似。
    ・闇をさまようもの・・・ラブクラフト最後の作品。
      雷鳴と停電、群衆が恐怖を掻き立てる。
    ・時間からの影・・・定型の、SF的&幻想的な集大成。
      でも冗漫。読み進めるのが大変でした。
    ・履歴書・・・ラブクラフトの本質を知る一端になります。

  • ある登場人物がなんらかの謎に疑問を持ち、恐ろしい秘密が明らかになる。定型的、ワンパターンといわれがちなラヴクラフトだが、薬物、忌まわしい因縁の館、都市の遺跡、解読不能の書物、自らが自らでは無くなる不安など様々な題材を使っていることに気づく。特に「家のなかの絵」で海外の事物、「潜み棲む恐怖」の見捨てられた貧しい者たちの部落からやってくるものといった題材には作者の生活圏外の未知なるものへの恐れが読み取れる(差別者であることをこちらが意識してしまうからかもしれないが)。人間ではないものに変化する側の視点で描かれた「アウトサイダー」、時空間に関する科学的視点からスケールの大きな凶々しい宇宙史が展開される作者らしい傑作「時間からの影」が特に面白かった。

  • ダゴン
     短い!「窓に!窓に!」の終わり方が印象的だけど、本文にダゴンの言葉が出てこないのはなんだかなあ。『インスマウスの影』のダゴン教団の聖地だったのだろうか。

    家のなかの絵
     これまた短い!そして起承転結でいえば、起承で終わるという中途半端さ!爺さんが食人鬼だったんでしょ。

    無名都市
     超古代の遺跡を探検…。何かが起きるぞ、という雰囲気を醸し出す書き方は、HPLのお家芸ですね。

    潜み棲む恐怖
     雷で現れる地底人、マーテンス一族。不思議なこともあるものですねえ。

    アウトサイダー
     時々記憶をなくしては、自分が何者なのかを問う、不死者のライフワークだろうか。

    戸口にあらわれたもの
     ネクロノミコン、インスマス、アーカム、ミスカトニック。ようやく、クトゥルフ神話体系らしく、おなじみの共通言語が出て来るようになってきた。。魂を入れ替える魔術の恐怖。

    闇をさまようもの
     トラペゾヘドロン登場!それを見ることによって、ヨグソトホースを召喚してしまった話。

    時間からの影
     一億年以上も前の世界の「大いなる種族」と精神を交換した話。三角錐の身体というのが、どうにも恰好悪い。主人公の感じる本当に昔に行っていたのか!という恐怖感は、理解できる。

  • ホラー短編集。とにかく厭な雰囲気がじわじわとつきまとう作品だなあ。夜中にひっそりと読んでいると、雰囲気に浸れます。海辺の寂れた民宿とかだと、ぴったりかも(笑)。
    お気に入りは「戸口にあらわれたもの」。これが一番怖かったかなあ。そしてやっぱり厭だ、インスマウス。
    「時間からの影」も凄かった。個人的に、宇宙的恐怖とかいうのは壮大すぎてあまり怖いとは思えなかったのだけれど。イメージの壮大さには飲み込まれる心境でした。

  • 「無名都市」の階段を下りていく描写が非常に好みだ。同様のモチーフは他の作品でも見られるが、この作品は延々とそれをやっている印象がある。

  • 第3巻。
    小説の他、資料として『履歴書』と題された文章を収録。
    個人的に『無名都市』『アウトサイダー』のような、断章的な短編が好きだ。特に『無名都市』は昔から好きだったなぁ……。
    3巻から翻訳は大瀧啓裕氏に代わり、以降、完結まで氏が担当することになる。

  • 窓に!窓に! が見られて満足。。

    本巻収録作品に限らず、ラヴクラフトの小説は、
    ジャパニーズホラーと似た悍ましさがあって自分好みです。
    (ハラハラでなくゾワゾワ。ジェイソン的でなく貞子的)

  • 翻訳文体としては、1巻や2巻のほうが好みです。こちらは、いささかまどろっこしく、かつやたらと仰々しいところが気になる点。まあ、原書の文体がそういうものだと言われれば、恐らくそうなんでしょうが。

  • ■ ダゴン
    ■ 家の中の絵
    ■ 無名都市
    ■ 潜み棲む恐怖
    ■ アウトサイダー
    ■ 戸口にあらわれたもの
    ■ 闇をさまようもの
    ■ 時間からの影
    ■ 資料:履歴書

  • ダゴン、読みやすくて良いですね。名作。最後の一編「時間からの影」はちょっと冗長かな。それ以外は、面白かったです。アーカムやインスマス、それにミスカトニック大学の名前が出てくると、なんか安心しますね。魚臭や魚顔の人間とか^^

  • 各作品の詳細は巻末の「作品解題」で詳しく書かれているためそれを読めば話の内容、隠された意味、背景等は詳しくわかる。よって書く作品を簡単にまとめようと思ったがやめた。
     ゾンビが襲ってくるなどのアメリカンホラーと違いラヴクラフトの作品は、化け物がいる気がする、とか何かとてもじゃないが自分では対処しようの無い大きな存在に怯える目に見えない恐怖を描いている。推理小説かのように詳細に描かれる情景、部屋の間取りや家具の配置に至るまで、が読者の想像力を駆り立てる。
     ラフクラフトの作品はなんだかモヤモヤとした終わり方をすることが多い。ホラーといえばその恐怖の根源に立ち向かう、または巻き込まれる話が多いと思う。そこで描かれるのは戦うか、逃げるかして生き延びようとする主人公たちの姿である。ラブクラフトの作品はそうではなくモブキャラ、例えば、夜中物音に目が冷め眠気眼をこすりながら外を見ると逃げる主人公とそれを追いかけるバケモノを見て恐怖のあまり気絶してしまう。翌朝目がさめて思い出すが、果たしてあれは夢か現実か。そんな感じである。これが物語の現実味を持たせることに成功していて、もしかしたら本当に有りそうと思わせるのである。

  • 一番好きなアウトサイダー収録

  • 1989年6月23日発行の11版。
    訳者の大瀧啓裕氏はダーレスのことが嫌いなのか……。
    「不肖の弟子」扱いなど個人的感情がくどいほどにじみ出ている。
    あなたのエッセイじゃないのだから解説に個人的感情を入れるべきではないだろうに。

    「ダゴン」
    窓に! 窓に!

    「家のなかの絵」
    人肉食で無限のパワーを。

    「無名都市」
    狂える詩人アブドゥル・アルハザード。

    「潜み棲む恐怖」
    この巻で一番好きなお話。
    怪奇!土竜男!

    「アウトサイダー」
    寓話的。
    新たな物語の話型となっている点ですばらしい。

    「戸口にあらわれたもの」
    ほんとインスマウスの住人はろくなことをしない……。
    結末を冒頭に持ってきた構成が秀逸。

    「闇をさまようもの」
    ラブクラフトの遺作。
    無闇に廃墟に入るものではない。好奇心は猫をも殺す。
    アザトホース、ナイアルラトホテップ、ヨグ・ソトホースと有名どころの名前が出るのも遺作らしい感がある。

    「時間からの影」
    〈大いなる種族〉の容姿がさっぱり想像できない。
    言葉で形容できないところに真価があるのか。
    次男がいい息子すぎる。ほんと父親思いやで……。

    「資料:履歴書」
    おまけ。
    ラヴクラフトの「環境」がわかる。
    黒人やタスマニア人を「生物学的に劣っている」と考えている点や彼のヒトラー評とムッソリーニ評は興味深いものがある。
    特にムッソリーニに「敬服」していた点は現代から見れば眉をひそめてしまうが、ラヴクラフトの意外な一面として面白い。

    総評。
    雨、廃墟、屋敷がキーとなる話が多くおどろおどろしい感じが良い。
    短編の集まりで長さ的にも読みやすい。
    が、各話の途中で眠たくなってしまう。
    ただ、繰り返しになるが解説での訳者のダーレス批判が目に付く。
    嫌いというほど積極的な感情ではないかもしれないが、嫉妬に近い感情を持っているのかもしれない。
    また訳者はラヴクラフトの作品群をクトゥルフ神話としてひとまとめにされることを快く思っていないらしい。
    ラヴクラフト作品のことは自分が一番知っているんだと言いたげな文章が呆れを通り越して実に微笑ましい。

  • 「ダゴン」「闇をさまようもの」「時間からの影」が良い。特に「時間からの影」では大いなる種族イース様登場。ラヴクラフトのなかでも出色の出来栄え。


    以下引用。

     そろそろけりをつけてしまおう。ドアが音をたてている。何かつるつるした巨大なものが体をぶつけているかのような音を。ドアを押し破ったところでわたしを見つけられはしない。いや、そんな! あの手は何だ! 窓に! 窓に!(p.18)

  • 2巻までの異形ゴシックホラーから途中で方向転換。「アウトサイダー」なんかは他の作家の著作かと思った(解説でポーの影響と明記)。懐かしのアーカム、インスマスが出てきたと思ったら、魚人間ではなく、霊魂的なもので驚く。そしてなにより、最後のSF大作である。総じて1, 2巻よりは退屈かも。

  • 面白いのにちょっと読むとすぐ眠くなるのは何故なんだ(´ω`;)ヾ

  •  先に読んだ『ラヴクラフト全集2』から,少し間が空いてしまいました。時間がかかったのは,このところ仕事が忙しくて読むヒマがなかったせいもありますが,難解な文章があって同じ場所を何度も読み返していたせいでもあります。例えば「時間からの影」最初の一文は,「ある種の印象は神話に源を発しているのだと,そうむりやり納得する以外救いようのない,悪夢と恐怖に満ちた二十二年間の歳月を思えば,わたしは,一九三五年七月十七日から十八日にかけての夜,オーストラリア西部で発見したと思うものが,事実であると断言したい気持にはなれない。」──何を言おうとしてるの?と初手から引っかかってしまいました。
     文が難しくてなかなかスラスラとは読めませんでしたが,なかでも怖かったのは「潜み棲む恐怖」。雷の轟く嵐の夜に限って村々を襲う謎の化物と,丘の上に建つ不気味な館の廃墟のお話です。かつてその館に住み,村々とは交流もなく,いつの間にかどこかへ消えたマーテンス家の人々は,実は……ということが全て明らかになる結末部分で鳥肌が立ちました。
     読みごたえのある分量と内容なのが「時間からの影」。この本の3分の1がこの作品で占められています。5年にわたって記憶喪失となった後もとに戻った大学教授の物語です。記憶がない5年間,奇妙に人格の変わった教授は何をしていたのか,また元々の教授の人格はどこで何をしていたのかが,徐々に明らかになっていくのですが,この感じは怪奇小説というよりSFっぽい感じがしました。結末も,これは気が狂った教授の妄想ではないということが明らかになる証拠がバーンと提示されて終わり,その時に受ける印象は,怖いというよりも面白いというか不思議というか,センス・オブ・ワンダーを感じました。その辺もSFっぽい印象です。
     最後に「履歴書」と題して,ラヴクラフトが自分の生い立ちや性質を書いた書簡が収められていますが,これが意外に面白いです。「絵が描けない」と書いているすぐそばにラヴクラフトのかなり残念な自画像が掲載されていて,小説の作風とはあまりにもイメージの違うタッチが笑いを誘います。海産物が大嫌いなのは小説を読めば何となく想像ができますが,チョコレートとアイスクリームが大好物だというのは意外でした。
     ほかに,同時代のヒトラーとムッソリーニについて書いている部分と,それに関連して彼が人種と国家をどう考えていたかがわかる部分があって,興味深いです。ラヴクラフトがムッソリーニを「敬服している」と評価しているのは,恐らく彼の大好きな古代ローマの伝統をムッソリーニが復活させようとしていたことと関係があるのでしょうが,一方でヒトラーに対しては「(ムッソリーニの)きわめて劣悪なコピー」と厳しい評価。この辺,両大戦間期の人々がムッソリーニとヒトラーをどう受け止めていたのか知る上でのヒントがあります。「ヒットラーの人種的優越感に基づく政策は莫迦げたグロテスクなものです」と書く一方で,「生物学的に劣っていると考えるのは,黒人とアウストラロイドだけです」と,思いっきり差別的な人種観をさも当然のようにさらっと吐露しています。当時の知識人が人種差別ということに関してどういう考えを持っていたのか,興味をひかれる書簡でした。本題とは離れますけど。

  • やぁーーーーっと読み終わった。読みづらい。疲れるだけどやめられないのがラヴクラフト次の目標はラヴクラフトを巣通のペースで読みきること。で、感想。今まで読んだ中ではもっともクトゥルフ神話に近いんじゃなかろうか。ダゴンとかあるし。時の~は名作だと思う。

  • やっぱり日にちはてきとう
    短編が八本も入っていてお得だけど、クオリティは物足りないところがあるかも。個人的には、「家の中の絵」「潜み棲む恐怖」「闇をさまようもの」「時間からの影」が好き。

  • 後半からが疲れた…「ダゴン」「家の中の絵」辺りが読みやすいし面白いと思う。あと「履歴書」かな。

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