ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4))

制作 : 大滝 啓裕 
  • 東京創元社
3.63
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本棚登録 : 581
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523046

作品紹介・あらすじ

ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる南極大陸。その禁断の地を舞台に、著者独自の科学志向を結実させた超大作「狂気の山脈にて」をはじめ、中期の傑作「宇宙からの色」「ピックマンのモデル」「冷気」や、初期の作品「眠りの壁の彼方」「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」「彼方より」の全7篇に、エッセイ1篇を収録。

収録作品
「狂気の山脈にて」 「宇宙からの色」 「ピックマンのモデル」 「冷気」 「眠りの壁の彼方」 「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」 「彼方より」

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにラブクラフト全集の続き。これは当たりの巻。

    訳者による解説にも書かれているが、「ピックマンのモデル」以外は、科学的な話というか、分析がキーとなる話になっており、出てくる物質の名前が古いのを除いて、全く現代でも通用するような話ばかりだ。

    名作「インスマウスの影」を彷彿とさせつつ、得体のしれない謎の物質(生物?)の恐怖「宇宙からの色」、何故か体を冷やし続けないといけない「冷気」と、南極に氷漬けになっていた宇宙からの生物をめぐる「狂気の山脈にて」そして超名作で怪談風の「ピックマンのモデル」など、硬い文章ながら、読書なれしていない人でもゆっくり読めば映画のように脳内で映像化されてくるはず。

    3巻が地味な印象だっただけに、この4巻はさらに素晴らしく感じる。ホラーというよりも、SFとして読んでも面白い。

    なお、ラブクラフトの作品は、書き出しは訳がわからないことが多いので、最初の3~4ページは2回位読むのがコツ。本書に収められた作品も例にもれない。

  •  気づくと狂う。

     四冊目。「宇宙からの色」「眠りの壁の彼方」「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」「冷気」「彼方より」「ピックマンのモデル」「狂気の山脈にて」の七編。狂気山脈が長めで他は短編。さっくり読める。クトゥルフっぽいのは「宇宙からの色」と「狂気の山脈にて」かな。「眠りの~」「彼方より」もちょっとそれっぽい。
     基本おぞましいものに触れた人物が狂うのって「気づくから」なんだよな。気づくことができないほど愚鈍であれば逆に助かってる。大きくSAN値が減ったとき、アイデアロールに成功してしまうと発狂っていうTRPGのルール、めちゃくちゃうまくできてるな、って感心しました。気づいちゃうから狂う。
     「冷気」と「彼方より」がさっくりよめて、ほどよくぐろくて怖くて好きです。
     あとようやく読めた、「狂気の山脈にて」。一番ひどくぐちゃぐちゃにされてたのってやっぱりレイクですかね。何度も「気の毒なレイク」って言い方されてたから、そうかなって。作中の〈旧支配者〉には名前は付けられてないのかな。クルウルウの末裔とはまた別の存在なんだよね。〈旧支配者〉が恐れてたらしい山脈は、要するに外なる神と関係あったってことかな? ヨグ=ソトースの名前が出てきたからそうだと思うんだけど、要するに、古代の宇宙からの飛来者(旧支配者)が何パターンもいて、その彼らですら恐れるよりおぞましく、存在の深淵に触れるだけで発狂してしまうような何か(外なる神)がいるってことでよいか。
     抜粋。「狂気の山脈にて」


    このはるかな菫色の連なりこそ、禁断の土地の恐るべき山脈以外の何ものでもなかったからだ――地球で最も高く、地球の邪悪のすべての焦点になっている山脈なのだ。


     テケリ・リ! テケリ・リ!

  • 宇宙からの色
     宇宙から来た謎の生命体が、周囲の生命を食らい、飛び去って行く。未知の生命体との遭遇とはこういうものかもしれない。

    眠りの壁の彼方
     惑星霊が人間に宿っていたため、容量が小さく精神に異常をきたしたという話。人間って、心もちっぽけなんだね。

    故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実
     自分の祖先が猿を獣姦していたと知って絶望・自殺した人の話。忌まわしいが、自殺しなくてもよかったのに。

    冷気
     アパートの上の階の住人は、自分を冷蔵しつづける死人だった。忌まわしいというより、面白いけどね。

    彼方より
     ティリンギャーストが発明した、人間の知覚力を増大させて見えないものを見えるようにする装置。幻覚・催眠術と言われてもしょうがない。
     
    ピックマンのモデル
     食人鬼の絵を得意とする画家ピックマン。そのモデルは実在する地下の怪物たちで、地下室の壁に飾られていたものは絵ではなく写真だった。えっと…なんか、今さら感がありますね。そんな話ばかり何回書くんだ。もっと先に行ってほしいものです。

    狂気の山脈にて
     南極に存在する、狂気の山脈と<旧支配者>の廃墟。かつて<旧支配者>が使役していたが今となっては制御できなくなった無定形の怪物ショゴスとそれが発する音「テケリ・リ!」重厚長大で前半読むのが苦痛だったが、後半、死の都市に入ってからはsnow ballでした。でも、この警告文…読んだら絶対確かめに行きたくなると思うw。

  • 今回のも宇宙的な物語が多くて、恐怖感はそれほど感じませんでした。でもあまりに壮大な設定と浮かび上がる光景には息を呑むばかり。全体的にスケールが大きい印象です。
    お気に入りは「冷気」。これが一番ホラーらしくて怖いと思える作品でした。
    大作「狂気の山脈にて」も圧倒的なパワーのある作品です。うーむ、やっぱりこういう「秘境」のようなところには、何があるか分からなくって怖いなあ、という印象。そして探究心というものの恐ろしさ……私だったら何も見ないで逃げ帰るんだけどなあ(笑)。

  • "きみはこの惑星でのわたしの唯一の友だったーーこの寝椅子に横たわる忌わしいもののなかに、わたしを感じとって見つけだしてくれた唯一の魂だった。また会うことがあるだろうーーおそらくオリオン座の三つ星の輝く霧のなかか、先史時代のアジアの荒涼とした大地か、記憶にのこらない今晩の夢か、太陽系が消滅している遥かな未来の他の実体で。"[p.71_眠りの壁の彼方]

    「宇宙からの色」
    「眠りの壁の彼方」
    「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
    「冷気」
    「彼方より」
    「ピックマンのモデル」
    「狂気の山脈にて」

    「資料:怪奇小説の執筆について」
    「作品解題」大瀧啓裕

  • 「故アーサー・ジャーミンとその系譜」が印象的。主人公が自分の系譜を調べていくと実は……な展開を持つラヴクラフト作品は複数あるが、これもその例の一つ。

    「狂気の山脈にて」は冒険風味を味わえる作品。「ピックマンのモデル」は描写が要を得ていて面白く、「宇宙からの色」は科学的な(?)律儀さが現れていて楽しい。個人的に比較的好みが多い巻か。

  • 第4巻。
    資料として『怪奇小説の執筆について』を収録。
    この巻では矢張り『狂気の山脈にて』が読み応えがある。一番長いというのも理由のひとつだが、怪奇冒険小説としても素晴らしいクォリティ。飛行機で山を越えた途端に広がる打ち捨てられた都市の姿は想像するととても美しく感じる。本当にあればいいのに……。難を言うなら、あまり『南極』という極限の地で起きていることのように思えないことだろうか。
    短編では、ラヴクラフトが何度も使った『家系』『先祖』をモチーフにした『故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実』が良かった。昔読んだときはピンと来なかったんだけどな。歳をとって読み返すと好みも変わっているのだろうか。というか、4巻はイマイチ印象に残っていないようだ……。

  • 「狂気の山脈にて」が冗長で少し退屈でした。
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    ■ 宇宙からの色
    ■ 眠りの壁の彼方
    ■ 故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実
    ■ 冷気
    ■ 彼方より
    ■ ピックマンのモデル
    ■ 狂気の山脈にて
    ■ 資料・怪奇小説の執筆について

  •  ラヴクラフト全集1巻を読み終わった時、ラヴクラフト氏の作品は、情景を推理小説が如く性格に描いているにもかかわらず、肝心な恐怖をもたらすそのものについては曖昧にしか書かれていないという話の構成であると感じた。つまり、都市伝説のように嘘にきまっているが、もしかして・・・と思わせる一人称的恐怖感があった。
     現在のところ3巻とこの4巻を読み終わったが、その認識を変える必要がある。3巻もそうだが特にこの4巻では、もう個人の幻覚や幻聴として片付けられないほどに、異型の者達を描写しているのである。科学的に判別不能な物質が出てきたり、公式な記録として異世界人らしきものが見つかったと記録されていたりである。
     私の中で、ラヴクラフト氏の作品が、自分の身に振りかかるかもしれない怖い話から、SFホラー小説にシフトしてしまった。拍子抜けした部分もあったが、そもそも1巻から架空の都市が出てきたり、後にクトゥルー神話としてまとめられるということを考えると私の第一印象が間違っていただけのことではある。
     さて、いざ異型の者達を描写するとなるとそのディテールの細かさは驚かされるばかりで、想像力をフル動員して読み進める必要がある。「見たことのないような」とか、「この世のものをは思えない」という表現に逃げること無く書ききっているラヴクラフト氏の表現力は尊敬するしかない。しかも随所に上記の「この世のものと思えないような」と言った様な表現をここぞというところで使うことにより、物語の語り手が人間の手にあまる自体に遭遇しているという事がひしひしと伝わってくる。
     100%フィクションであるとわかりながらも、実際に起こったことのように読みながら感じる。レビューに拍子抜けしたと書いたが、今現在はよりラヴクラフト氏の作品に引き込まれるようになったと思う。

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