魔道師の月 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
4.12
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本棚登録 : 429
レビュー : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488525033

作品紹介・あらすじ

心に傷をかかえた書物の魔道師キアルス、心に闇をもたぬ大地の魔道師レイサンダー、若きふたりの運命が太古の闇を巡り交錯する。『夜の写本師』の著者が放つ闇と魔法の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「夜の写本師」に続く2作目。
    同じシリーズで登場人物もダブりますが、続きというのとはちょっと違います。
    若い魔道師二人の運命が帝国の危機に交錯し、さらに数百年前にまでさかのぼり絡み合う人々の物語。

    コンスル帝国が繁栄を謳歌していた時代。
    大地の魔道師のレイサンダーは、心のうちに闇を持たない半人前。
    幸運の守りとして献上された<暗樹>が帝国を蝕んでいくとき、恐ろしいものだとはわかっても何をするすべもなく、城から逃げ出してしまう。
    レイサンダーは追われる身に。

    黒髪に緑の目で長身、という特徴がレイサンダーと似ていたキアルスは書物の魔道師。
    心に深い傷を負い、衝動的に貴重な書物「タージの歌謡集」を燃やしてしまった。
    レイサンダーと共に、不思議なタペストリーの中へと入っていくことになる‥

    タペストリーに描かれているのは、かってコンスル帝国に侵略されて抵抗した人々。
    一介の少年テイバドールが苦難を経て成長し、魔道師らの力添えを得て‥
    古代を思わせる辺境の民人の暮らしに魅力があり、勇気ある決断を応援したくなります。

    へたれの若者二人がこのタペストリーに学びながら、協力し合い、力を尽くしていく。
    誰も見たことも聞いたこともない現象を、言葉の力だけでありありと描きあげていく筆力に感嘆しました。
    結末は、それまでの濃厚さに比べると、急に終わる感じもなくはないですが。
    希望の持てるシーンに、一気に風景が変わったところに自分も立っているような心地になりました☆

  • 世界観に圧倒される。
    乾石さんの頭の中に無限に世界が広がっていて、特別必要な部分だけを切り取って慎重に再現されたもの、という感じがした。場面ごとに空気ががらっと変わるのも凄いところだと思う。
    中でも、テイバドールの話が一番印象に残った。
    憎むなという父の教えが星の光となって背骨に宿っていて、闇に誘われるたびに、その星が正しく導いてくれる。その星こそがテイバドールの核であり、歌の元となったものではないかと思い、自分にそんな星があるかなと省みたりした。

    • komoroさん
      なんだかとても難しそうな本です。
      背骨に宿っていて暗闇から導いてくれるんですね。きっとnanokaさんにも宿っています。あなたはそんな感じ...
      なんだかとても難しそうな本です。
      背骨に宿っていて暗闇から導いてくれるんですね。きっとnanokaさんにも宿っています。あなたはそんな感じの人です。
      2016/02/21
  • ずっと紛失していたオーリエラント魔導師シリーズ1巻目の「夜の写本師」を発掘し再読したので、前から買って読んでいなかった2巻目の「魔導師の月」をようやく読破。

    思えば「日本のファンタジー」を毛嫌いしていた僕がファンタジーを読み漁るようになったのは「夜の写本師」がきっかけだった。なので続編はとても楽しみにしていた。

    そして、期待は裏切られた。

    まず、この本は「夜の写本師」の続編ではなく、あくまで同シリーズの作品ということ。裏表紙を読めば分かるものの、何も読まずに本屋で即購入したのが勘違いの原因だった。
    だが続編ではなくとも世界観は同じであり、共通するキャラクターも登場する。



    今回の主人公の内一人は前作で主人公を(特に後半で)支え導いていた書物の魔導師キアルス(別名は一巻のネタバレになるため伏せる)。キアルスが大事な存在であるシルヴィアンを救えず失ったところから始まる。また、もう一人の主人公は闇を抱えない半端な魔導師レイサンダーは仕えていた帝国に贈り物として献上された“邪悪なもの”から逃げるところから始まる。

    また、この小説は前作同様「過去の主人公」が存在する。そして、その過去を知り、二人が出会った時に“邪悪なもの”を解く光が生まれる。


    前作の続編ではないと気付き失望したのは一瞬。
    日本ファンタジー小説の中でも卓逸した作品となっている。
    前作を読んでいない方にも読んだ方にもお勧めしたい。

  • ソフトカバー版を既読。物語を読む楽しみがページ数の何倍も詰まっている作品だ。はじめて読んだとき、「夜の写本師」を読んだからこその感動であると理解したうえで、前作よりもこちらのほうを非常に気に入った。それはどちらの作品もだいすきだというのが大前提ではあったが、キアルスに魅了されたことがおおきかったかもしれない。この複雑な世界を構築しながらキャラクターにも魅力を持たせるということをやってのける作者には、みずから翻弄されたい気持ちにもなった。さいごにキアルスが得たものと、見上げた夜空の姿に胸がいっぱいになった。

  • 三冊目。前二作品の自分が書いたレビューを読んでも、いまいちパッと思い出さなかったので、ていねいに書いておかなくては。


    レイサンダーの名前は記憶しているのだけど、どこで出てきたんだろう?
    闇を持たない魔術師。まあ、初っ端からラスボス闇樹相手に尻尾まいて逃げ出す。
    んー。なんか、ハウルっぽい。

    そして、本の魔術師キアルス。
    こちらもいきなりいじけて、大事な大事な「タージの歌謡集」を火に変える失態。
    二人とも、何やってんの?

    とまあ、ここまでは二人の魔術師のヘタレっぷりを面白く読んでいるのだけど、タペストリーの魔力から遥かな過去、テイバドールの時代へ。
    部族と帝国との争い、双子ちゃん魔術師の登場、病み姉アーチェ。うわー。燃える!
    吟遊詩人の思わぬ攻撃力に、ちょっと見直しをかけた私でした。

    まあね、後は二人の魔術師がそれぞれの成長を遂げるといえば簡単にまとめられてしまう(笑)

    キアルスと奴隷少年エブンの会話が好き。
    魔術師の資質を問い、それがないことに気落ちするエブンに向かって、キアルスは「自分の中にあるものを数える」ように諭す。
    足が速いことや、教える力、努力家であること。
    それらを持っていること、選択肢がたくさんあることを喜ぶように言う。

    魔術というチートな力が渦巻く世界にあって、でも、己の手元を見よと言えるキアルスがいいな、と思った。

  • 前作「夜の写本師」を読んだ時も圧倒的な世界観に驚かされたけど、今作ではこの世界の『魔導師』の定義や、魔法のあり方自体に驚かされた。大抵のファンタジー作品の魔法は、才能と決められた儀式によって受け継がれてるものだと思うんだけど、この世界では魔法の種類によって、お互いの魔法がどのようなものなのかさえわからないってのが面白い。読み始めに、時系列がよくわからなくなってしまって戸惑ったが、そこが読み取れれば壮大な物語をあとは楽しむだけだ。私は楽しめた。

  • 「静かにうちよせる波、ときおり響く海鳥の声、半日航路の対岸には帝国本土の連絡港ヂャイの町が白くへばりつき、空も海もイルモネス女神の美の錫杖にかきまわされて、冬でも菫青石(アイオライト)の底なしの青さだ。」

    ページを開くとすぐに、こんな文章で書かれた美しい描写。
    前作「夜の写本師」と同じ世界でありながら、時間軸が違い、これはその頃から1000年もの昔の話。さらに作中ではそこから400年もの昔にも旅立ちます。
    ギデスディン魔法の創始者キアルスなどが登場し、その魔法の成り立ちもおもしろいし、若かりし頃の彼の未熟さもまた読み手にはたまらない。

    あとがきにも「本書は前作に先立つ物語であると同時に後日談でもある」と書かれているとおり、どちらから読んでも支障はありません。

    さて、壮大な大地、雄大な時間とともにとにかくスケールが大きくて、引き込まれます。何だか、神話を読んでいるような気分です。

    この世界には通常に息づく魔道師ですが、その成り立ちが丁寧に書かれているのも魅力です。魔道師とはいえば、万能で何でもできるかのように思うけれど、決してそうではないということ、闇を引き受け、それでいて闇に飲み込まれないようにしないといけないということなどが綴られていますが、今作では「太古の闇」が登場することもあって、闇に思いを馳せることになった1冊でした。

    魔道師はその生い立ちや才能から誕生するもののようですが、魔道師に限らず誰もが大なり小なりの闇を抱えて生きています。
    誰かを妬むこと、呪うこと、復讐したいと思うこと、など闇の力を強めてしまう心の動きもあります。
    私たちも闇を知ることで相手の闇に気付き、寄り添う優しさを手にしたりもしますが、一方で大きすぎる闇は自分を滅ぼします。時には無自覚に飲み込まれてしまうこともあるかもしれない。
    人の業とも思える太古の闇は、退けることはできても滅ぼすことができない、というのも印象的でしたね。

    これは確かに異世界ファンタジーで確立された世界観に酔いしれたりもするのですが、根底には人の業、人の持つ闇について綴られたもう1つのテーマがあるようにも感じています。
    更にこのシリーズは続いているので、記憶が薄れる前に読んでいきたいと思います。

  • *単行本からの転載*

    前作「夜の写本師」と同じ世界観のお話。
    前作にも出ていたキアルスと、レイサンダーのお話です。
    スケール的には前作以上。
    テイバドールの章は特に惹きつけられました。

    失意や苦難の中から懸命に前に向かって、やるべきことに向かって進んで行くテイバドール、キアルスの姿が印象的でした。レイサンダーはラストで一気に見違えましたね。
    レイサンダーの体験やクライマックスの表現はかなり独特で読むのに時間がかかりましたが、何度も読ませる魅力があります。

  • 『夜の写本師』に登場する、キアルス君が主人公の一人です!
    暗樹にまつわる話も面白いですが、私はテイバドールの話が一番面白くて、ちょっと泣きそうになりました。
    最初は、キアルスが何でこんなに詩集のことを気にするくだりが出てくるのかよく分からず、途中でテイバドールの過去話に入った時には、そこ掘り下げるの?!と焦ったのですが。。この話がないと成り立ちませんでしたね。

    私は『太陽の石』を読んでしまったので、オルヴァン、イスリル、ソルプスジンター、デイサンダー、それからナハティの力に繋がる記述があるたびに、おお!と楽しみながら読ませていただきました。

  • 『夜の写本師』に続く2作目(しかしあくまで独立している話)ということで、さっそく読んでみた。

    前作の世界観を引き継ぎ、登場人物の一人であったキアルスが主人公の一人となっている。

    「暗樹」の不気味さが際立っていて、ホラーさながらのおそろしさ。

    前作は相手が生身の人物であったために気にならなかったが、今回はもっと宇宙の根源的な存在。その壮大すぎる設定や、抽象的でややもすると難解な描写の連続に対して、決着のつけ方には少し拍子抜けするような感じを受けた。

    またメインの二人が問題意識や目的を共有する、互いに信頼関係を築く、その過程になるようなエピソードや時間がほとんど存在せず、ただ「テイバドールの体験を通して」理解し合う、というのも若干腑に落ちない印象だった。

    しかし古代ローマや周辺世界の諸民族を思わせる精緻な世界観や、きっちり設定された魔法体系の構築は相変わらず感嘆させられるし、筆致の濃密さは魅力的である。

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著者プロフィール

山形県生まれ、在住。山形大学卒業。1999年教育総研ファンタジー大賞受賞。2011年刊行の『夜の写本師』が話題になる。著作に『魔道師の月』『太陽の石』『ディアスと月の誓約』など。優れたハイファンタジーの書き手として知られている。

「2015年 『双頭の蜥蜴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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