オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488525057

作品紹介・あらすじ

注文を受けて粘土をこね、ろくろを回し魔法を込めた焼き物に焼く。果たして魔道師は職人か否か「陶工魔道師」、女たちの密かな魔法組織を描く「闇を抱く」、死体を用いる姿なきプアダンの魔道師の復讐譚「黒蓮華」、そして魔道ならざる魔道をあやつるもの、もうひとりの〈夜の写本師〉の物語「魔道写本師」。四つの異なる魔法を操る魔道師たちの物語を収録。日本ファンタジーの歴史を塗り替えた著者の人気シリーズ初の短編集文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 四編の短編集で四つの異なる魔法を操る者たちの話ですが、いずれの話にも共通しているのは日々の手仕事を惜しまずに己の技能に研鑽を重ね行動を省みて、力を得た者が成すべき事を見据えている、覚悟と肝の座りかたが実に好ましく、清々しい人たちの話でした

    『陶工魔道師』は陶芸の工房を構えながら、その焼き物に呪力を込めることのできる、陶器の魔法使いの話
    粘土を掘り出し、呪言を込めて練り上げて、釉薬を調合して焼き上げるその過程の描写がすごく面白い
    『闇を抱く』は生まれた家でも嫁ぎ先でも、理不尽な境遇に耐えることを強いられた傷付いた女性たちが、お呪(まじな)いと魔法をもって互いを救っている
    しかし魔法は当世においては禁忌であり、社会からそれを秘匿する組織も作り上げている
    『黒蓮花』はかつて故郷を滅ぼされた魔法使いが、その仇を探し出し、復讐を成し遂げる話
    途中から語り手が変わり、誰が復讐の魔道師なのかとざわつく展開になる上に、前二篇とも違う魔道師対魔道師の戦いの描写も面白く、昏い復讐譚だけど読後感は晴れやかな話
    『魔道写本師』は元々魔道に縁の無い写本師の出来の悪い見習いだった少年が魔道書の写本を手がけたことにより、己の技術を磨くこと、たゆまぬ研鑽を積むことの面白さに目覚め、文字を綴る事で発する魔法の術をも身につけた話
    他三編にも共通する、“その力を使って何を成すべきなのか”という、力を得た者の使命と責任に踏み込んだ話でもあり、そして日本の怪異譚にも通じる風味もある、力強く楽しい話です

    なお、ある一編で、猫に暴力を振るう人物が登場するのですが「にゃんこを蹴るなんて人間じゃねえ」と忌々しそうに罵る文言が4、5回繰り返し出てくるので、うっかりほっこりしてしまった
    ちなみにその蹴られたにゃんこは、本物のにゃんこではなく魔法使いが変身したものなので、実際には生にゃんこは蹴られてません
    でも、いくらフィクションでも、本物でなくても、猫が蹴られる場面を書くのは、作者さんはすごくしんどく感じていたんだろうな、絶対猫好きだな、とニヤニヤしちゃった

    乾石智子さんの作品は初読みだったのですが、これはすごい、素晴らしく面白い
    ご紹介が無ければ読む機会が持てなかった作家さんでした 

  • 短編なのにどれもしっかりとした世界観があって読んでて飽きない作品でした。
    終わり方が突然だったりするので、ここで終わり〜!先が気になる。。。とも思ったけど、でもだんだんと、いい意味で気にならなくなる良作だと思います。
    でも、いつかどこかのシリーズでチラッとでもオーリエラントの魔道師が出てくるに期待!

  • 魔導士というよりは魔法職人といったほうがいいような職人技としての魔法の描き方は相変わらず興味深い。
    魔力の源泉は心の闇だとしても、それを制御する技術としての職人的熟練が語られることで、ただ暗いだけでなく人間的な要素が加わってより魅力的に思える
    短編ということもあってか前作より表現もすっきりしてより読みやすくなっているのもよかった

  • 長編は重たくて一回ならず本を置いて寝かせる期間があるのですが、短編集なのでさくさく読めました。いろいろな魔法使いと彼らを取り巻く世界。

  • 色んな種類の魔導師が混在する世界なのね

  • 魔法の種類!

  • 2017.2/12 夜の写本師シリーズ4作目は短編集なのですね♪前の3巻からしばらくぶりに読んだけど違和感なしの濃密な世界観。市井の生活の中に沈む者たちと、手を貸す魔術師の抱える闇を丁寧に描いていて素晴らしい。前に感じた重厚さの語りの中に浮く現代口語的な文章も減ったようで良し。次つぎっ!

  • いろんな魔法が出てきて面白かった!
    「闇を抱く」が好きです。
    いや、陶工の魔法もよかったな…

  • 魔道師たるもの闇との共存は当たり前。その闇とのつき合い方に魔道師としての生き方がかかってくる。滅ぼされた一族、家族の復讐をスリリングに描く「黒蓮華」にはドキドキし、女性達の駆け込み寺みたいな魔女たちの活躍を描く「闇を抱く」は、これまで自分たちを痛めつけてきた男性を掌で転がす様がなんとも壮快。3人の女性のキャラが良くって、続編も読みたい所。

  • 様々な種類の魔道師たちの短編集

    これまでの作品では見ることのなかった魔道師や、
    馴染みの魔法
    あそこと繋がりのあるものが!と
    バラエティに富んで面白かった

    個人的にどれも読後が爽快で
    救いのある話だったなぁという印象

    魔法を使うのは全て業、というのが
    いいなと思う
    人間らしい

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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