- 東京創元社 (2019年8月9日発売)
本棚登録 : 236人
感想 : 17件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (592ページ) / ISBN・EAN: 9784488525095
作品紹介・あらすじ
北国カーランディア。建国以来、魔法の才をもつカーランド人と、征服民アアランド人がなんとか平和に暮らしてきた。だが、現王のカーランド人虐殺により、平和は消え去った。怒りに燃える大魔法使いが、平和の象徴であった鐘をで打ち砕いたのだ。そして闇の歌い手と魔物をも解き放ってしまった。闇を封じることができるのは、古の魔が歌のみ。著者が二十年間温めてきたテーマを圧倒的なスケールと筆致で送る、本格ファンタジーの金字塔。
感想・レビュー・書評
-
分厚かった・・・。章はかなり細切れで、それというのもタゼーレン側(カーランド人)とロベラン側(アアランド人、王族)、ふたつの視点を、同時進行でそれぞれ書いているから。最初は向き合っていたわけではなくお互いは大きな集団でしかなかったのに、物語が進むにつれて円が狭まるように焦点が合っていき、ついにはタゼーレンとロベランが直接相対する、という流れが面白い。
穏やかな時期もあり戦もあり、と緩急はあるが全体的に淡々と時間が過ぎていく印象。タゼーレンの哀しみ、憎しみも、湧き上がるというよりタイダーのそれに同化するという感じで静かなものにさえ思えるのが不思議。ロベランの"怒り"のほうがよほど激しい。
そう、ロベラン・・・少しずつ、こわれていく彼は誰よりも哀しくみえた。すべてが壊されて立て直しが始まった時、彼が立ち直ることは許されなかったのだ。当然の帰結とはいえ、その結末はなんとも哀しかった。
それにしても民族の違いを理由に対立する、その愚かしさ。
こうしてシンプルな構図の物語で見せられると、その虚しさがいっそう際立つ。
好きな場面もいくつも。
タゼーレンが父から諭されるところ。
「――淵は深いがゆえにまだあふれてこないが、努力をつづけていれば必ずあふれるときが来るだろう。」
アアランド人であるセフィアが、追われるカーランド人たちに合流するところ。
「ひたすら逃げて逃げて、相手の善意を信じるときは終わったの。――カーランド人も、戦うときが来たのよ」
ダニシアで過ごした、輝かしい一年。
そして、カイドロスの体を切り裂くように老ローマルトが飛んできた瞬間。
自然物のさまざまな描写の羅列は今作でも繰り返し見られ、それは読み流すこともできるが、一つ一つできるだけ思い描くようにすると、この世界が色づいて見える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今まで読んだ乾石さんの作品で、一番おもしろかった!
「精霊の守り人」のように、ドラマ化してほしい。
映像でも見たいなと思いました。
出てくる人たち、みんななぜか好きだった。 -
割と面白く展開するのだが、真ん中ちょっと過ぎたくらいの拷問シーンからの憎しみの描写がいただけない。完全にテンポが止まり進まない。
わたわたっと風呂敷を畳み終了。 -
子どもの頃からファンタジーが好きだった。いいかげん大人になっても、その気質は変わらずだ。現実ではない世界にあっても人々には生活があり、人生があってそれは現実となんら変わりないと思えるし、だからこそ現実と照らして考えることもある。差別やそれに伴う憎しみの連鎖、うねりに飲み込まれる人と抗う人。前半と後後半のスピード感の差がちょっと気になったが、読み応えがあった。
-
うーん。風景描写は美しいんだけど…この方の女性の描き方がどうも合わないなあ…どうしても男性キャラのオマケに見える…
-
ファンタジーだがさすがにゴリゴリ。えげつなく死が蔓延するが、最後は迫力ある描写で強引に救いが生まれていく。
世界観は徹底して守られて破綻なく印象的。ただ、個人的には感情を揺らすものがなく、ただ終わりまで勢いで読み切っただけ。厚いが熱くない。 -
迫害され逃げるとは、こんなに辛いものなのか。安住を許されず滅ぼされようとする者の苦しさ。天地がひっくり返るような鮮やかな結末に、感服。
-
面白くない訳ではないのだけれども…という感じ。
個人的に、弟王子の方にすごく共感してしまい、なんで彼が…という思いになってしまったというか。だって、魔法使いの孫可愛くない(笑)主人公だってあの鐘の石の所為でおかしくなったなら王子も何とかならんかったのかなぁ?と言う感じ。
大体、予言のために鐘を壊すとか、戦争は避けられないとか先に言われるとゲンナリするよなぁ…
というわけで主人公チームにあまり肩入れできずに読み流してしまいました。残念ですがあまり合わなかった。 -
この作者ならではのすばらしい描写と世界設定なのだが、どうにも途中で危なかった。「やばい、飽きる、飽きる!」と焦燥感を抱えながらそれでも読み終えることができたのは、乾石智子さんという作家への信頼いがいの何物でもない。そして、魔法を交えながら書かれている世界に見覚えがあり、物語を見届けなければという気持ちが強かったからだとおもう。この地球という星の過去を見ているようでつらかったが、願いを込められるのが小説の良いところ。見せかけの平和をぶち壊したのちに得たもの、失ったもの。平易な文章が熱い涙を誘い、額が燃えた。
-
海を超えてやってきた民と、元々住んでいた民。表面上は上手くやっているように見えてはいても……
魔法使いの力と石の持つ力、もたらすものが心からの平和だと良いな。
600ページのこの世界にはちゃんと色があって、ハッキリとそこに見えるようだった。 -
乾石智子氏のファンタジーはすべて読んだ。
読み始めるととまらない…まるで作品そのものに
魔法が封じ込められているかのように。
正直、心がずたずたにされそうな悲しい話も
たくさんあった。
でもこれだけは言いたい。
この作品は彼女の最高傑作だと私は思う。
これまでの彼女のファンタジー作品の数々には
どこか矛盾や受け容れ難い設定や
直視できない残酷さにまみれて
どうしても好きになれないものが含まれていたが
この作品を読み終えて このような素晴らしい世界観に
包まれたエンディングなどに出会えたことの幸せが
胸の中に溢れるのをどうにもとめられず
読み終えてすぐにレビューを書いている。
繰り返す。これは乾石智子氏の最高傑作だ。 -
てっきり続編かと思っていたら、単発の長編だったw 何故こんな勘違いをしていたのか、自分でもよく解らない……。
そこそこの厚みがある文庫本だが、考えてみれば、これだけスケールの大きな話が、この厚みに収まっているというのは凄い。現実の物量以上に壮大だった。
著者プロフィール
乾石智子の作品
