- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488528010
感想・レビュー・書評
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近代英国怪奇小説界における三巨匠の一人、
モンタギュー・ロード・ジェイムズ
(Montague Rhodes James;1862-1936)短編集。
ちなみに他の二人はブラックウッドとマッケン。
訳者・紀田順一郎の解説によれば、
作者自ら認める古風な作柄――というか、
要はゴシック趣味てんこ盛りなのだが、
簡潔な筆致を以て皮膚感覚をリアルに刺激し、
肉体的な恐怖を描出することを得意としたそうだ。
怪異に直面して恐れおののく人の姿が活写されるが、
恐怖の淵源に対する言及は
意外にアッサリしていて後を引かない。
そこを洒脱と受け止めるか物足りないと感じるかは
読み手次第、か。
吸血鬼系の話と聞いて期待していた「マグナス伯爵」【※】は
面白かったが想像とはかなり違って、
意外にラヴクラフトっぽいテイストだった。
いや、ラヴクラフト(1890-1937)の方が
後から生まれた人だけど。
で、少し検索してみたが、「マグナス伯爵」(1904年?)と
「クトゥルフの呼び声」(1926年)は
一本の線で繋がらなくもないらしい……って、
やっぱりそうなのか。
ほとんどの場合、
語り手はストーリー本体の外側に位置する狂言回しで、
事件への距離の取り方・姿勢が頗るクールで
「他人事」感が凄いのだが、
それが怪談をキリッと引き締めている気がして好ましい。
【※】「マグナス伯爵」
文筆家ラクソール某がスウェーデンを旅して、
旧家の系譜を調べるうちに発生した奇怪な出来事。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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正調英国怪奇譚の古典的名作。とりわけ過去の遺物を題材にした作品がより「らしさ」をかもし出している。これ以前の作家にも、これ以後の作家にも決して書けなかったであろう抑制されたバランスと言うものが感じられる。
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神学者らしく「怪」を信じない作者が書いた怪談集。なのにとても怖い。
イギリスも怪談の宝庫だなと改めて思えます。