フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1)) (創元推理文庫 532-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488532017

感想・レビュー・書評

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  • 分類としてはホラーになるかもしれませんね
    天才科学者 フランケンシュタインが、生命の真理を窮めて創りあげたものが怪物だった。やがて、知恵を持ち感情を持つことになる。
    宗教色の強いこの作品は、キリスト教で言う創造物である人間を倫理を超えフランケンシュタインが名もない怪物・生命体を造ってしまった。それが是か否かは、わからない。
    醜悪であるがゆえに、全ての人間に問答無用の如く忌み嫌われてしまう。やがて、怪物は自身を創造したフランケンシュタインに憎悪を抱き、復讐する事となる。
    小説の著者 メアリー・シェリーは、パーシーやバイロンらと人造生命の可能性について語り合ったことが同作の着想のきっかけとなっている。そして同作品は二人の合作であり夫婦(メアリーとパーシー)です。
     誰もがいう事だが、フランケンシュタインの名を知らぬ者はいないが、原作を読む者は欧米でもまれだそうです。それでもこの名が普及しているのは、ひとつには映画の影響、もう一つはSFの世界ではこの小説がH・G・ウェルズ以前の古典の一つに数え上げられているためであるという。
     冒頭で「宗教色の強い」と書いたが、「種の起源」ダーウィンの進化論は神の否定につながり・・・云々。その点についての考察については、小説を読み個々で言及すればいいのではないかと思う。細かいことについて、いろいろと詮索すればかなり深い作品だと言えよう。その分読みごたえもあるということです。 

  •  友人同士の集まりで「一番物凄い怪奇小説を書けるのは誰だ!?」と競われたなかから誕生した、曰くつきの作品だそうですね。企ての中心人物は、かのバイロン卿だったとか……?
     そのような興味深いエピソードを聞いてから、吸い寄せられるようにして観た映画『ゴシック』(ケン・ラッセル監督)にも、眩暈をおぼえたものです☆

     フランケンシュタインというのは、再三に渡って「世にも恐ろしい」と描写される怪物の、生みの親です(怪物の名前じゃないですよ)。彼は夜も昼もなく研究に没頭する科学者で、ついに一つの生命を世に送り出したのですが、激しい後悔に苛まれて自らの研究対象から逃げてしまったのでした。

     あれ? と思ったのは、怪物の容姿を具体的に描写している部分が、ほとんどないこと! あれこれ怪物の身体的特徴を挙げられるより、逆に霧がかった恐怖を感じます。

     どうやら、メアリ描く究極の恐怖とは、怪物の姿かたちにはないようですね。
     科学者フランケンシュタインは、我を忘れて怪物に命を吹き込んだものの、それがあまりにも恐るべき罪であったと自覚してしまいました。となると、怪物は生まれながらにして親に否定された子です。その呪わしい風貌を脇に置いて考えても、誰からも望まれない存在なのです★
     こうして存在を完全否定されたことで、怪物の精神状態はすっかりいびつなあり様になってしまったのです。

     その顔を昼間の光にさらすこともできず、耐えがたい孤独の淵に立たされた怪物は、復讐のために科学者の後を追います。科学者も、世間の目を逃れて常に怯え続けます。二人は似通った道を歩んだ。ただそこに存在するだけというだけのことが、彼らにはできなかったのです。

    「呪われた創造者よ」その身を震わせながら呼びかける怪物。ついに、呪われた存在が、呪われた創造者と向き合う――!
     この小説は、世にも奇怪な繰り返しでできているのです。

  • SFの起源と言われている本作、『標本作家』で登場したこともあり、手を取りました。ザ・いつか読みたいとは思っていたが、読んだことがなかった本。
    そして読み進めていくうちに、おそらくほとんどの方が思われている「えこんな話だったの…?」「フランケンシュタインって博士側の名前なんだ笑」などなど、思いながら読み進めました。

    正直、怪物に同情してしまって、なんというか煮え切らないフランケンシュタインおまえ!!と思ってました。怪物ぅう…そしてこれはある意味BLだなとも思いながら…

    「だがすぐに…自分は死に、今感じることももう感じはしなくなる。燃えるようなこの苦悩ももうすぐ終わる。自分は意気揚々と火葬の山に登ってゆき、劫火の苦しみに凱歌をあげよう。大火の明かりはうすれゆき、自分の灰は風に乗り海へとさらわれてゆくだろう。わが魂は安らかに眠る、よしたとえものを思うとも、今のように思いはすまい。さらばだ」

    こんな言葉を残して逝く人と、愚かにも自分が責任を負える範囲を超えたものに手を出す人、そして人類とでは、どちらが本当に怪物なのだろう?

    人類の行く末を案じさせるような意味で、この本は紛れもなくSFだなと

  • 再読。ヴィクター(フランケンシュタイン)の身勝手さと無責任さ、自業自得のあげくの被害者面は何度読んでも腹立たしい。怪物を子供に例えるなら、フランケンシュタインのしたことは完全に虐待。自分で産んでおいて醜いからと育児放棄、外見だけで怪物め悪魔めと生みの親から罵倒される怪物側の孤独、悲哀、憤怒のほうによほど共感してしまう。親から愛されず存在を全否定された子供がグレるのは当たり前です。

    ベタだけど、怪物の行動は単純な復讐だけでなく、愛されないくらいなら憎まれてでも関心を買いたいという屈折した愛情表現にも思える。だから読者には、造物主の死と同時に怪物が生きる意味を失うことは明白なのだけれど、肝心の造物主がそれを全く理解していないことにも憤りを感じる。

    解説がとても良かった。分析的なことはほとんど解説者が書いてくれたので言うことなし。

  • バイロン卿のディオダディ荘で行われた怪奇談義から生まれたメアリー・シェリーのゴシック小説。今までに何度も映画化されてきたため、映画の印象が強すぎてホラー作品のように思えますが、原作は悲哀に満ちた内容です。フランケンシュタインの体験を聞いたウォルトンが姉への手紙に書くという体裁のため、一方から見た事実を中心に物語が進みます。出来ることなら、怪物からの見た話も読んでみたいですね。怪物の名前がフランケンシュタインだと勘違いしている人も多そうですが、怪物を作った科学者(大学生)の名前がフランケンシュタインです。

  • 「タイトルは有名だけど中身知らないよね」
    となる典型的な作品の一つ。

    長らく積ん読状態だったけど、
    とあるブログのレビューが興味深かったのでこの度呼んでみた次第。

    語り手が交代しながらモノローグを行うように展開されていて、
    解説よろしくこれが後生の『嵐が丘』等へ派生していくというのは個人的に胸がアツくなる部分ではある。

    フランケンシュタインと聞くと一般的には怪物をイメージしがちだけれども、
    怪物には固有名詞はなくフランケンシュタインとは怪物を生み出した天才科学者(ヴィクター・フランケンシュタイン、主人公)の姓である。

    物語の原題は正式には『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』。
    プロメテウスとはギリシャ神話に登場する神の一人。
    寒さに凍える人間を想い火を与えることでその生活を助けようとしたが、
    火を与えられた人間がそれを争いに用いたことにより刑に処せられる。

    ヴィクターば人間を作ったこどにより、
    怪物ば言葉を理解してしまったこどにより、
    自らが抱える愛を遥かに超越した絶望の淵に置かれ身を滅ぼす。
    -現代のプロメテウス-はその隠喩にあたる。

    人間と怪物を比較することで人間の定義について問いを投げ掛けていて、
    そのような意味ではSFの先駆的な作品としても位置付けられているようである。



    …というように何の気なしに呼んではみたものの
    幅広いジャンルに影響を与えたようだ。

    圧巻なのはやはり終盤。
    ヴィクターが息を引き取ったのを観た怪物がウォルトンに自らが抱える想いを吐露する場面。
    目を合わせられなかったとはいえ、
    怪物がまともに会話したのはヴィクター以外ではウォルトンが初めてであり、
    それゆえに怪物がとても人間らしく見える。

    別の機会に是非映画も観てみたい。

  • 映画で余りにも有名だが、原作は初読。情熱の狂気にまかせ、理性ある生き物を創造したヴィクター・フランケンシュタイン。被創造物の怪物は置き去りにされ、最初は原始的な感情しか持たないが、独学で言葉を覚え、旅人の鞄から見つけた3冊の書物(『失楽園』、『プルターク英雄伝』、『若きウェルテルの悩み』)から新しい概念を学び、知識が増える毎に、一体自分は何なのか、何処から来たのかと苦悩する。伴侶が欲しいという訴えに被創造物の幸福と福利を保証するのが義務とヴィクターは感じるが、人類に対する義務を選ぶ。両者の分身的な側面、エディプス・コンプレックスと愛と友情を狂おしく希求するが叶えられない苦悩。そして怪物側にある「父親殺し」のモチーフ。この本は、ロマン小説であり、ゴシック小説であり、怪奇小説でもあるが、個人的には人類史上初めて書かれたSFだと思う。

  • 〔フランケンシュタイン豆知識〕
    ・怪物の名前ではない
    ・怪物を創り出したフランケンシュタインはマッドサイエンティストの博士ではなく、大学生
    ・怪物が読んで感銘を受けた書籍は『若きウェルテルの悩み』『プルターク英雄伝』『失楽園』
    ・最初は北極を目指す冒険家の話、その中でフランケンシュタイン、その中で怪物の話という入子構造になっている
    ・怪物はあまり暴れない、知的で感性の細やかな人間の能力を超える存在。しかも動きが早い。確実に絞殺する。
    ・フランケンシュタインは怪物を創造した良心の呵責から現実逃避してばかりであまり天才という感じの人物ではない。結果、予想どおり周りの人を怪物に殺されまくる。
    ・今ならAIとパラレルに考えられるかも。

  • 初めてちゃんと作品読んで、
    ストーリーってこういうのなんだ
    って知った。

    海外翻訳は、読むのに倍以上時間かかる。
    結構疲れるんだよね、
    翻訳家にもよるんだろうけど、
    読みやすかった方だと思う。
    だらだら長いけど。

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