魔導の黎明 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 95
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488537050

作品紹介・あらすじ

内戦から十年、ラバルタでの魔導士への迫害は増すばかりだ。そんなある日一人の魔導士が奇妙なことに気づいた。〈砦〉に入ってくる人数と在籍している人数が数百人単位で合わないのだ。それだけの魔導士がどこに消えたのか。同じ頃、エルミーヌで魔導士の指導をしているレオンのもとに、かつての弟弟子が訪ねてきた。そしてその日から、レオンは姿を消してしまう。謎を解く鍵はレオンの師が研究していた禁術。感動のシリーズ最終巻。

感想・レビュー・書評

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  •  アシェッドとイーディスの二人組がすごく良いなぁ……このシリーズで一番気に入りました。というかそこにアシェッドの祖父やセロが加わるのも見たかった!
     良い友達というのは、別々のことやってても一緒にいるだけで嬉しいものだよなと改めて考えさせられました。

     禁術のシーンはレオンとゼクスが収めるのかなぁと思っていたのですが、どちらかというと力不足で中途半端に終わったのが少し拍子抜けでした。でも佐藤先生は一巻からそういう部分を読者の期待通りには書かない節がある(笑) 嫌いじゃないです。
     あとがきにもある通り、「もがきながら生きていく人間」を描くのがこの作品の目的で、必ずしも歴史が綺麗に気持ち良く終わるわけではないんですよね。そういう意味ではどこか純文学っぽさもあるような。

     最後にロザリンドが出てきてレオンと言外の挨拶を交わしたり、セレスの墓参りに来たレオンが自分の弟子をセレス師に引き合わせたかったと言うところは思わず目頭が熱くなりました。
     レオンとガトーの再会も! レオンよりずっとコミュニケーション能力の高そうなガトーですら、本当に友達と言えるのがレオンしかいないかもしれない、というのは意外だけれど素敵です。

     シリーズを読み始めた時は世界観の設定が多少安っぽいなと思っていたのですが、読み進めるうちにだんだん気にならなくなってくるというか。作品の長所を損なわないまま巧くなっている、しかも結構なスピードで。
     第一回創元ファンタジイ新人賞の選評で、『魔導の系譜』を推した三村さんが「拙い部分はあるけれど、これだけのものを書ける将来性を買った」というようなことを仰っていました。分かる。面白い話を一つ書けるだけならアマチュアで十分だと思います。でも佐藤先生は心の内に抱えるものを次々に物語として昇華できる才能をお持ちで、それはプロとして必要なものの一つではないかと思うのです。
     もうすぐ次回作が刊行されるとのことで、そちらもとても楽しみにしています。佐藤先生にはぜひ、三村さんの予言通り、デビュー作から応援していたことを自慢できるような作家になってほしいです。

  • 取り憑かれたように読み続けていたシリーズだけれどもとうとう読み終わってしまった。もっと読んでいたかった。もっとこの世界に浸りたかった。という気持ちでいっぱい。

    シリーズ最終作となる今作ではカデンツァ自治区とラバルタが再度の停戦に至るまでが描かれる。
    一作目の停戦から12年もの時が経過しているので、意外なひとが亡くなっていたり逆に意外なひとが存命で驚かされたり……とにかく総集編とばかりにこれまで出てきた人物が次々登場する。変わらぬ姿あり誇らしく成長を遂げた姿あり、ずっとこの世界に浸っていたので懐かしい顔ぶれが出てくると嬉しい。

    肝心の内乱は、自治区とラバルタ王家だけでなく第三者勢力の介入あり、寧ろそちらが今回の主役であり、王家のあるリアンノンサイドも王家と鉄の砦と近衛騎士団とで思惑が異なっていたりして、意外な方向に収束していく。これが本当に意外だった。このタイミングでようやく…。しかしこのタイミングでなければ動けなかったという某卿の気持ちも理解できないものではなくて、この作品は弱い人間の決意で進んでいく物語だなと思う。
    終盤でこの世界が少しずつ良い方向に進んでいくだろう可能性が示唆されているけれど、1巻の『魔導の系譜』では「三十年以上の長きに亘り続く、北ラバルタ内乱」という記述があるので、読者が目にした自治区を取り巻く物語はその半分にも満たない。(――し、いずれ滅ぶと予告され続けてきたラバルタ国家が少なくともあと30年は存続するということでもある。)これからもたくさんの犠牲を払って、代替わりもして、粘り強く耐えながら少しずつ少しずつ夜明けを迎えていくのだろう。

    オールスター総集編的な演出だった分個々の描写は薄めで、禁術のもたらしたものであるとか、鉄の砦のその後であるとか、もう少し厚みのある描写をして欲しかったなと思う部分はあるのだけれども、そう簡単に「めでたしめでたし」とはいかない世界ではいくら描写されてもきっと足りないと感じてしまうので、これくらいでちょうど良かったのかなとも思う。願わくば少しでも良い方向に進んでいきますようにと願う。

    主人公の師弟は俗っぽい言い方をしてしまうと末永く爆発しろという感じで、何度絆を確かめ合ったら気が済むんだろう!
    一時は師に依存してしがみついている感のあったゼクスがすっかり精神的に自立した一個人になっていて、寄る辺を得て初期よりは芯が強くなったもののいまだに危なっかしさの残るレオンとの対比が際立つ。レオンはもっと大丈夫な大人になったんだと思っていたのだけど、まだまだ駄目な大人だなあ。でも懸命に生きているこの人がとても好きだ。ゼクスが何度でも迎えに行くと宣言してしまったし、きっとこの二人はいつまでもこんな感じなんだろう。もう末永く寄り添っていて。

    最後の最後で第一巻のタイトルである『魔導の系譜』を思わせる発言が魔導師ではないガトーから出てきたのも良かった。やっぱりこれ最終巻なんだなあ。
    読み終わるのがもったいないと思える本と出会えて良かった。

  • デビューシリーズの完結作。作者はこの世界すごく好きなんだろうなあという愛情を感じました。ただ、その方向性が個人的すぎる方向にいっちゃったかも。次シリーズでは、違う感じを楽しめるといいな。

  • 登場人物それぞれの悩み苦しみ願いが混然として、早く解決して!と思いながら先を読み進めました。
    レオンたちが生きている間はまだまだ魔導士は迫害されているかもしれないですが、未来は真っ暗というわけではなさそうで、そこが救いです。
    イーディスとアシェッドの関係にによによさせられ、アシェッドが騎士団たちにからかわれてるところも重たい話の合間の癒しでした。
    彼らの未来も想像はもちろん、書いていただきたいなと思います。

  • シリーズ最終巻。

  • シリーズその4
    楽しく一気読み出来ました

  • 激動が続く。それぞれの思いが伝わるから、皆がもどかしく思いつつ、もがき続けているのが分かる。自分と違う人の事を少しでも理解しようと思える人が増えると良いな。そしてレオンは自分が周りからものすごく愛されている事を理解すると良い。

  • めでたしめでたしではない。
    けれど魔導士の明日に光が見えるのは間違いない。
    どんな世界になっていくのか楽しみな感じもする。消えていくのか残っていくのか、目立つのか埋もれていくのか、一人一人の想いが少しずつ道を創っていくのだろう

  • 最終巻です。

    お師匠様、あんたって人はっ。。。。
    開き直ったってことですね。
    いやいいんだけど、がんばれ弟子。

    既刊の登場人物たちがわんさかちょびっとずつ出ている、おいしいものをちょっとだけスタイル。
    ガトーさんとアスターは割と出張ってます。

    師弟尊い!!!!!!!!!!!

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