綺譚集 (創元推理文庫)

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  • 東京創元社 (2008年12月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (270ページ) / ISBN・EAN: 9784488542023

みんなの感想まとめ

多様な文体で描かれる短編集は、ミステリやホラー、幻想文学、エログロといったジャンルを巧みに横断し、独特の雰囲気を醸し出しています。各作品は、肉体の感覚を強調しながら、死体や骨、肉といった根源的なテーマ...

感想・レビュー・書評

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  • ミステリ、ホラー、幻想文学、エログロなどを同じ人は思えない多様な文体で横断する短編集。

    どれもなんとも言えない奇妙な味わいのある話。
    肉体の感覚を強調し、なんとも言えないむず痒さを感じる。死体や骨、肉など、根源的な対象に降りていくことで、人間の身体を再認識するような感覚。

    自分が気に入ったのは
    「天使解体」
    「サイレン」
    「脛骨」
    「玄い森の底から」
    「黄昏抜歯」

  • これが僕の個人的2025年ベスト本でした

    どの話も面白かったな
    「天使解体」
    「サイレン」
    「夜のジャミラ」
    「聖戦の記録」
    「約束」
    「ドービニィの庭で」
    どれがお気に入りとかなかなか選べないけれど
    「約束」のラスト
    急に首根っこ掴まれてから話から引きずり出されるような、梯子を急に外されるような、こんな読後感は初めてだったかな

    津原泰水、改めて惜しい人を亡くしたんだな…

  • 例えばこういった感想のようなものを書いていると、自分の文才の無さに絶望的な気持ちに陥ってしまうのですが、津原泰水は文章を綴ることが楽しくて仕方がなかったのだろうなと思わせるような多様な文体で楽しませてくれます。
    幻想小説というのは、ストーリーよりも、その文体が持つアトモスフィアによって成り立つものだと常々思っていたのですが、まさにその通り。どの作品も作品の中に溢れる空気がもう違います。
    ただ、興味深く読んだのは、「赤仮面傳」「玄い森の底から」「ドービニィの庭で」。僕自身はストーリー重視のようです。


    津原泰水は川上未映子の「わたくし率 イン 歯ー、または世界」が本書収録の「黄昏抜歯」からアイデアを盗用していると指摘していたそうです。真偽は判りませんが両作品とも面白かったです。

  • 奇譚:世にも珍しく不思議な物語や伝説。

    本書は奇譚集、すなわち世にも珍しく不思議な物語や伝説を集めた一冊。

    私にはまだ早かった。


    天使へと解体される少女に、独白する書家の屍に、絵画を写す園に溺れゆく男たちに垣間見える風景への畏怖、至上の美。生者と死者、残酷と無垢、喪失と郷愁、日常と異界が瞬時に入れ替わる。――綺の字は優美なさま、巧みな言葉を指し、譚の字は語られし物を意味する。本書収録の15篇は、小説技巧を極限まで磨き上げた孤高の職人による、まさに綺譚であり、小説の精髄である。解説=石堂藍

    内容(「BOOK」データベースより)

    天使へと解体される少女に、独白する書家の屍に、絵画を写す園に溺れゆく男たちに垣間見える風景への畏怖、至上の美。生者と死者、残酷と無垢、喪失と郷愁、日常と異界が瞬時に入れ替わる。―綺の字は優美なさま、巧みな言葉を指し、譚の字は語られし物を意味する。本書収録の十五篇は、小説技巧を極限まで磨き上げた孤高の職人による、まさに綺譚であり、小説の精髄である。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    津原/泰水
    1964年広島県生まれ。89年より津原やすみ名義で少女小説を多数執筆。97年、現名義で『妖都』を発表、注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 氏の逝去の報に接して再読、やはり素晴らしい。綺羅を尽くした文体で紡がれた15の短編。「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない。」と言ったのは中井英夫だったか、その言葉そのものの一冊。作者自身は「一冊だけ残せるなら、これ」と言ったそうだが、「一冊だけ無人島に持って行くとするなら、これ」かもしれない。もっと書いてほしかった。ご冥福を。

  • 15つのお話からなる短編集
    日常に潜む狂気みたいなものが、色々な話の中に隠れている。
    「いや、こんなのなんでもないですよ、普通です普通」みたいな感じで書かれているから、こっちも「そうなのか」と思ってしまうけど、読んだ後に得体の知れないものが、じわじわとにじり寄ってくる。そんな感じ。

    私は「夜のジャミラ」「赤假面傳」「玄い森の底から」「脛骨」「ドービニィの庭で」が特に好き

    もし、グロテスクな表現が平気な人だったら、読んでみることをおすすめします。

  • エロ(生)と死。パンチがあり過ぎて、侵食されて精神をやられています。どの短篇もすごいです。
    たとえば恒川光太郎さんの幻想はファンタジー寄りの性善説に対して、津原さんはホラー寄りの性悪説みたいな感じ。この世とあの世の境界線がそこ彼処にあって誰しもに起こり得るっていうのは同じだけど、津原さんの人物たちは特に元々その境界が曖昧な人物(アーティストや子供やトランスジェンダーや精神疾患者など)が多く、敏感ゆえに圧倒的な力で悪とか美とかに飲み込まれてしまう。抗えないし抗うという発想すら持ち得ない。むしろそれが自然なことだと。だから怖い(苦笑)足下がぐにゃりと溶けて恐怖と不安に襲われてしまう。
    ただ、美しいものが持つ力についてはとてもよく分かります。
    私がいちばん好きなのは『脛骨』です。最も普通に感じる作品かも知れないけど、生きている人の切断されてしまった脚はその人のものなのか屍なのか否かなど考えだすと確かに気になります。その視点が面白いと思いました。

  • (2008/5/26)
    生と性は隣りあわせなんですねもちろん生と死性と死も、、リアルであり、グロテスクであり生々しくあり実感でありました。いやがおうにもひきつけられてしまいました点と丸が無い文章旧字体の文章凄く読み難かったのですがそれがまた惹きつけましたああ真似が出来ません

    あな恐ろしや津原泰水この人は一度死んだことがあるに違いない 桐野夏生 帯の文章も凄いです

  • 「天使解体」
    ……何をやっとるんじゃ……。

    「サイレン」
    何やってんの、と思ったら、妄想?
    お姉さんの方が???

    扉絵の模様、全部違うんだね。

    「夜のジャミラ」
    あっちゃ~……
    何で私これ夜中に読んでんだろ。

    「赤假面傳」
    麗人のエナジーだか血を吸う画家の話。と思ってたら、さらにその上をいくものも。

    何となくこの本の方向性が見えてくる。

    「玄い森の底から」
    ぞぞぞと虫で体を成して先生のもとへ駆けつける様、「、」がなくて鬼気迫る感じだった。
    ラストの皓い空がタイトルと対をなす。

    「アクアポリス」
    彼女は船に乗ってニライカナイに行ったのね。
    もしかしたらありそうな、貯水池の話。

    「脛骨」
    これは結構好き。
    若い日の屍、か。
    真っ白い、脛骨。

    「聖戦の記録」
    カオス。
    名前が分かりやすいイメージに繋がるのかと言われるとこれが何がなんだか。意外なことに。
    犬対兎。の飼い主達の話なのかと思いきや、彼ら自身の戦いなのか?

    「黄昏抜歯」
    「歩みは、蒼い闇を泳ぐようで」この表現が好き。
    遠いところでわざわざ抜いちゃうかなぁ。
    抜いたあと、しばらくごはん食べられなくて大変だったなぁ。口は麻酔でしまらないし。
    こんなきれいにいくかしら。
    というか、本当に抜いたかな?抜かないで別なことしてたんじゃないの?

    「約束」
    おお、確かに美しい話だった。

    「安珠の水」
    ホックニー色。なんかべたっとした平板なグラデーションでない色使い。暑苦しくもあるし密閉感がある。

    「アルバトロス」
    目覚めさせられて目覚めちゃった感じ。
    見て見ぬふりって、もうしょうがないのかな、この状況では。

    「古傷と太陽」
    吾郎の腹は本当に石垣島の海岸に繋がっていたんだ。

    「ドービニィの庭で」
    庭にとりつかれた三人の男と、巻き込まれた主人公の片割れでありなりたかった姿を持つ一人の女。
    絵を現実に完成させようと躍起になるうちにここは絵の一部なのか現実なのかわからなくなり、呪われるように命は失われ、女は庭の怪を産み落とす。

    「隣のマキノさん」
    マキノさん、やべぇ。多重人格の変わり者。
    でも一番ヤバイのは、ヤバイマキノさんに日々話しかけてる主人公じゃあるまいか?

    いくつかのものがたりでおなじ単語を繰り返す特徴あり。()と「」を連打で使って声の大小表現したり、音楽のクレッシェンドでクレッシェンドみたい。
    年始に読むにはエログロな感じでしたが、なぜかすらすら読めてしまった。
    見える景色が綺麗だったりして。
    ごちそうさまです。

    なお、私はこの本を表紙にそそられて買いました。
    解説を読んで、あながち間違いではなかったということを確信しました。
    幻想のカテゴリーもまずまずあっていたようですね。

  • 大傑作。
    幻想文学に惹かれる人は残酷さの中にある美しさを探している人だと思うのだが、本著にはそんな残酷さの中の美に溢れている。
    その残酷さも即物的なもの(それはそれで好きなのだが)とは違って美学がある。腐臭があっても、どこか目を離すことができない。
    更にその美しさを然るべき文章で記すことが出来る作家である。
    津原泰水さんの記す文章をもっと読みたかった。

  • どの作品にも惹き付けられるが、一際美しく思ったのは「脛骨」だった。舞台となった場所が近いので、たまに行く。ここでね…と水辺につい目をやる。
    津原氏が亡くなられたことを、悲しく、悔しく思う。

  • 短編集。
    面白かった。
    人ではないものと人であるものの、それぞれのこわさが味わえる良作。
    高評価のルピナス探偵団が、まったく楽しめなかったので、同じ作者の作品を手に取るのが不安だったが杞憂。
    (短編集好きなので)

    各話の扉絵(なのかな)のデザインがそれぞれ違って、それがまた凝ってて素敵。

  • 津原泰水の短編はどれも素晴らしいのだけど、どの作品も読み始めはややうんざりする。自分の中の見たくない自分や忘れかけていたものなど、なんというかそういう朽ち果てようとしていたものに不意に出くわしてしまう感じ。ダメージが大きい。綺譚集では、自分の残酷さと薄さに向き合わされた。「聖戦の記録」、血が滾った。

  • 悪夢を見て、そこから抜け出せないでいるような、日常から一瞬にして異界へ引きずり込まれてしまうような、奇妙な話ばかりを集めた短編集です。不条理、頽廃と狂気、淫靡で猟奇的、グロテスクで残酷、懐かしさと喪失感、倦怠と恍惚、猥らで無垢、虚無と絶望、失望と冷笑、憎悪と未練、醜悪と哀切、そして美・・・死と背徳の匂いが付き纏うこの種の作品に、つい惹きこまれてしまうのは、ここに描かれているのが人間の業、本性、本質だということを、無意識に感じてしまうからなのではないでしょうか?〝奇譚〟ではなく、〝綺譚〟という文字を使っているところが味噌ですネ。幻想文学という括りでは、収まりきらない一冊でした。

  • ホラー幻想小説。若干のグロエロ含み。短編15本。

    万人にはお勧めしないけれど、江戸川乱歩が好きな方や、この表紙の絵にピンと来て、以下の文字の並びが琴線に触れた方は是非ともご一読の上、私と握手をお願いします。握手だけ、言葉はいらない。

    綺 幻 妖 黄昏 境界 惑乱 美醜 狂気 蠱惑 紅湿 憂愁

    感想としては蛇足ながら、短編15本全て文体が違う上にどれも美しい文章という離れ業も楽しめることも1点付け加え。

  • どこまで行っても行き場のない、澱んだ世界の美しさに、嫌悪と寂しさを覚える。

    夢とも現ともつかない、白昼夢のような短編集。
    触れればべったりと手の跡がつきそうで、それでいて最後は惜しげもなくすっと切り捨てられる。

    最後の一文がとても綺麗な『天使解体』
    小川国夫や三浦哲郎を思わせる『脛骨』
    サスペンス的な小品『黄昏抜歯』『古傷と太陽』
    偏執的な小世界に執着し、いつしか紛れて消える『ドービニィの庭で』

    万華鏡のような世界から唐突に放り出される度にはっとして、次も次もと読む手が止まらない。


    本人的には「SF?」と首を傾げつつSFアンソロの常連だったりしますが、卑近でねっとり匂いたつような日常を描きながら心ここにあらずな感じ、作者の視線がずっと遠くを見ている感じが、「ここではないどこか」を切望する人の琴線に触れるのかなあと思いました。

    『隣のマキノさん』の「僕」の日常を延々見ていたい。

  • 津原泰水には中毒性があるようだ。
    「バレエ・メカニック」を最初に読んだときは、狐につままれた気分になったけど、「蘆屋家の崩壊」でまんまと虜になり、ふと気がつくと津原作品が読みたくて仕方なくなる。
    そんなわけで3冊目。

    これは、一つ一つ輝きの違う宝石が入った宝石箱のような短編集。
    しかし、まあ、宝石と言っても、美しいけど、触ったら表面が血でぬらりとしてそうな禍々しい感じ。

    私が特に好きだったのは、『天使解体』『赤假面傳』『脛骨』『聖戦の記録』あたりかなー。
    『脛骨』は最後にうるっときてしまった。ホラーなのに泣けるとは・・・。

    しかし、彼(彼女じゃないよね)の作品は万人には勧められない。というか、読んでいることをあまり公表したくない気がする。
    ただ単にエログロで、時折サディスティックで、神経症的なものが好きだと思われたくないもんなーw
    わかる人にはわかるし、ハマる人はハマるのです。感覚的なものと思われ。

  • 『夜のジャミラ』、『赤假面傳』が好みだった。
    普段幻想文学は好きだけどエログロは好んでおらず、ドキドキしながら読み進めたけど、文体や語り手の違い、一言でまとめられないジャンルの広がりが癖になってあっという間に読了!!読んでおくべき本だと思った。考察とか人それぞれなんだろうけど色々気になる部分は残る。
    貸してくれてありがとう!

  • 異形コレクション初出の短編を多数収録。
    まさに綺譚が集められた1冊。
    ちょっと気持ち悪い寄りかな。

  • 妖しくて、恐ろしくて、美しくて、摩訶不思議な世界が、様々な文体で綴られている短編集。
    面白かった。
    幻想的な世界に引きずり込まれるような感覚が、実に気持ちいい。
    「天使解体」「玄い森の底から」「脛骨」「アクアポリス」
    あたりがお気に入りだった。
    ちょっと癖になる中毒性がある作家さんだな。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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