肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ア 2-1)

  • 東京創元社
3.87
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488543020

作品紹介・あらすじ

引っ越してきたばかりの家。古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。アスピリンやテイクアウトの中華料理、虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。誰も知らない不可思議な存在。彼はいったい何?命の不思議と生の喜びに満ちた、素晴らしい物語。カーネギー賞、ウィットブレッド賞受賞の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • マイケルは両親と生まれたばかりの赤ちゃんと、老人が孤独死したあとの廃墟のような家を買い、引っ越してきた。引っ越しの翌日、壊れかけたガレージで、マイケルは、ほこりまみれ蜘蛛の巣だらけの「彼」を見つける。危険だからと止める両親の目を盗んで、マイケルは「彼」を確認するためにガレージを訪ねる。なにか欲しいものはないかと訪ねるマイケルに、彼は「アスピリンと27番と53番」と応える。
    家の片付けと修理を始めてすぐ、母親は、具合の悪くなった赤ちゃんに付き添うため病院に泊まり込むことになった。
    隣家の少女ミナと親しくなったマイケルは、彼女と彼の秘密を共有した後、彼らを会わせ、彼女はマイケルとともに、彼女の持っている空き家に彼を移す。そこで彼は、自らの名前を明かし、背中の羽を見せるのだった。

    少年の不思議な体験を描く物語。





    *******ここからはネタバレ*******

    なんとも不思議な物語です。
    正直何を言いたい話なのか、よくわかりませんでした。

    スケリグとは一体なんだったのか?翼の生えた人間?人間の形をした翼付きの獣?
    言葉を話し、服をまとい、ビールや中華料理やアスピリンを欲するけれども、どうも身体はそれを歓迎していないように思える。
    フクロウの分けてくれる生肉のほうがいいのではないのか?……とすると、後者?

    スケリグの言動も理解しづらい。
    ミナと会うまでは、名前さえ明かそうとしなかった。学校へ行かないミナに共感するものがあったからなのか?フクロウのいる部屋が気に入ったからなのか?自分の存在を認めてもらったからなのか???


    ボロボロの自宅と普段どおりの学校とのギャップの中で、入院した赤ちゃんの心配をするマイケルの気持ちが痛いほど伝わってきます。
    ミナとスケリグは、そんなマイケルの心を慰めてくれる存在だったんでしょうね。


    印象的なタイトルですが、これも不思議。
    原書は「Skellig」。
    表紙絵のマネキンさんも???




    主人公の年齢が見つけられませんでした。
    でも、難解なので、読解力のある高学年以上がいいと思います。


    *******ひとりごと*******

    図書館でお目当ての本を見つけるのがとても下手なので、いつもは予約してカウンターに置いておいてもらうんですけど、今回この本は書架で見つけました。
    そこで気が付いたんです。著者は、「パパはバードマン」を書いた人なんですね。他の著作はまだ読んでいませんが、翼のある人間に関心のある方なのかな?と思いました。

    いつもと違う探し方で、いつもと違う発見をしました。

  • 久しぶりにスゴイのを読んだって感じです。
    いつ頃から人は、狭い世界でくだらない事ばかりを
    考えるようになったのか。
    いつの間にか忘れてしまっていた沢山の事を思い出した。

    少しずつ少しずつ、ユラユラと揺れながら満ちて来る水のような
    透明でピュアで優しくて、そしてリアルなファンタジー。
    心がふるえるって、きっとこんな感じを言うんだろうなぁ~

    「ハリー・ポッターと賢者の石」を抑えて
    カーネギー賞とウィットブレッド賞の
    児童文学部門賞をダブル受賞したというのが
    納得できる作品です。

  • ◆生と天国(死)の距離。サッカーや学校生活と不安定なSkelligの世界の距離。ぼくは間をゆきて戻り、二つの世界を一身に収め、巣立ちの準備をする。◆Skellig。背の高い汚らわしい骨と皮ばかりの天使のイメージ。読後、やっぱり猛烈にガルシア=マルケスの年老いた天使の話が読みたくなる。このイメージには何か典拠があるのかな。◆印象深く引用されていたウィリアム・ブレイクの詩もぜひ読んでみたい! ◆描写は汚く臭いのになぜか幻想的な美しい児童書だった。モリフクロウやブラックバードの子育てなど、野鳥の場面も豊富で満足の成長物語。【2014.04.17】

  • ずっと読まねば、と思いつつも表紙が苦手でどうしても開けなかった本 。文庫化で変わるか期待してましたが、むしろホラー風になってしまったような気がします。羽の写真だけ、とかのほうがよっぽどいいのに。邦題は原題より素敵なので残念。

    さて、読んで見たら内容は雰囲気があって、とても好きでした。主人公の少年、マイケルが普通の少年と言うところに親近感がわき、感情移入しやすい。
    廃屋での不可思議な「彼」との出会い、不可思議な出来事についても、違和感なく読めました。説明的でなく、むしろ説明不足なくらいのシンプルな描写が読み手に想像の余地を与えて魅力的なのだと感じました。
    読後感も良く、外国文学への入口として、成長の過程で読む本として、すすめられると思います。

  • (あらすじ)
    マイケルは両親と生まれたばかりの赤ちゃんと一緒に新しい家に越して来た。家は古くとうさんが壁や床を直している。庭には今にも崩れそうなガレージある。とうさんから危ないから入ってはいけないと、さんざん言われているのにも関わらずマイケルはガレージに入ってしまう。

    ガレージの中には痩せ衰えて埃まみれの〈彼〉がいた。彼は自分の事を話してくれない。でもマイケルには彼が死にかけているのがわかり、何とかしたいと思う。同じ頃赤ちゃんの具合が悪くなって入院する。マイケルは赤ちゃんの事も心配でならない。

    隣の家に住む女の子は学校へ行ってない、ちょっと風変わりな子だった。やがてマイケルはその女の子、ミナと友達になり、二人で協力して彼を助けだそうと試みる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    1998年にその当時大ブレイクしていた『ハリー・ポッターと賢者の石』を抑え、カーネギー賞とプリンツ賞の児童書部門をダブル受賞したそうですが、読んでみると納得です。ハリー・ポッターは確かに面白いけど、エンタメの域を出ていない。けれど、この作品はファンタジーの要素は入っているけれど、やはり文学だと思えます。

    隣家の少女ミナが、『テレビシアにかける橋』のレスリーに通じる個性的でたくましい魅力的な女の子です。ミナのほうがレスリーよりもタフで芯が強い。この子を主人公にした前日譚があるようなので、そちらもいずれ読んでみたいです。

    ミナは子どもだけど大人以上にしっかりしているし、〈彼〉はたぶん大人だろうけど子どもっぽい所がある。マイケルのお父さんやお母さん、学校の先生やお医者さん達、みないい人ではあるけれど大人達がそれぞれちょっとだけ子どもの部分や弱いを持ち合わせている。その辺のリアルさがエンタメを越えていると思えた。

    [国際アンデルセン賞受賞作家 29/35]

  • 引っ越した家のボロボロのガレージで、僕は彼を見つけた。リウマチの体はガチガチで、虫とほこりで真っ黒の彼。僕は彼のことを父さんにも話さないことに決めた。
    生まれたばかりの体の弱い妹、不思議なしっかり者の隣の家の女の子、懐かしい学校の友だち。
    やがて物語がゆっくりとステップを踏みはじめる。


    孤独はひとりぼっちなのではなくて、透明な膜に包まれているようなものなのだなと思った。見えているのに、そこにいるはずなのに。
    手を伸ばして触れあえたから、何かが変わったんだろう。進化なのか、奇跡なのか。

    タイトルと表紙イラストで、ずっとSFと思いこんでました。が、読み始めてみるともしやミステリー?いえ、ジュブナイル小説でした。

  • 宮崎駿さんが、この本が好きだとかなんとかいっていたのをどこかでみて、学生のとき図書館で見つけて読んだ本。まず、タイトルがいいし、表紙にも惹かれる。ストーリーもいい。印象的なのは、「中華の◯番」が好きでいつもそれを頼むシーン。

    そのだいぶ後に悲嘆の門よんで、出てくる怪物?が「肩甲骨は〜」の天使?に似てるなーと、思い浮かんだのでした。

  • シンプルでいいなと思う。
    シンプルとは単純ということではない。

     この話に出てくる子供と大人は、同じことを心配している(保育器にいる赤ちゃん(マイケルの妹)のこと、赤ちゃんの健康のためにと引っ越したはずの家がどれだけ手入れしても荒れ放題なことなど)。ちゃんと同じ現実を生きているのに、見えているものが違う。
    子供と大人が異なる世界を見ていることを「悲しいこと」としてしまったらそれは大人の視点なのではないか。
    マイケルは、ミナやミセス・マッキーと過ごすなかで、「見えているものが違う」ことを肯定されて、知識がなければそれを表現できないことも知る…理屈っぽくなったけど、たぶんこの短い話で、私が好きなところはそういう部分だと思う。



     自分の心臓の音と一緒に、赤ちゃんの心臓の音が聞こえるマイケル。
    中華料理と鳥や鼠の死骸が好きな汚らしい天使スケリグ。




     赤ちゃんの容態を適宜(子供目線でもある程度現実的に)挟むのがこの話では徹底されていて、最後にスケリグの存在ともリンクする。そういう収束感も好き。





     レビューを読んでいると評価が絶賛と「うーん…?」とに分かれているようなのだけど、私は好きだった。無駄な状況説明がなく、子供の視点で現実的な描写がなされていって、印象的な台詞や詩の引用があって…という。





     ミナはいわゆるアクセントになる女の子なんだろうし好きだけど、ある意味ステレオタイプかな。まあだいたい、学校に行ってなくて画家のお母さんに色々なことを教わったりしながら暮らしていて教養豊富でお父さんは亡くなっていて…という設定だと性格づけが決まってくるのでそこは仕方がない?
    同じ作者の『ミナの物語』という小説もあるようなので読みたい。







    10.12.16 初登録
    3.8~3.16

  • 2010年国民読書年にJPICが選んだ「20歳の20冊」にリストアップされていて初めて知った本。
    気になってすぐ買ったにも関わらず、ずっと積んでありました…。

    主人公・マイケルが家族とともに引っ越してきた家。その古びたガレージの奥でマイケルが出会ったのは「27番と53番」や虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む「不可思議な存在」でした。

    隣家に住む女の子・ミナがとてもすてきです。
    生命をよく見て、想像し創造することで自分の世界を深めている女の子。
    マイケルのよきパートナーとして、「不可思議な存在」に向き合っていきます。

    生命の輝きをきらきらと放つ1冊です。

  • 印象的なファンタジーです。
    一軒家に引っ越してきた男の子マイケル。
    学校は同じだがバス通学で遠くなり、仲間とはちょっと距離を感じる。
    赤ちゃんの妹は生まれたばかり、保育器から出たものの、また入院することに。ママは赤ちゃんにかかり切りなのだ。
    庭にある小屋は車が2台はいるガレージだが、中は不要品と埃だらけ。こっそり入ってみた男の子は、身動きもしないやせこけた小柄な老人を見つける。
    死体?幻?普通の人間ではない‥
    「何が望みだ?」と言われる。
    合っていない服の背中は奇妙に盛り上がり、そこには‥?
    ひそかに食べ物を運び、親しくなった隣の女の子ミナと助けようとする。
    女の子は画家の娘で、親に教育を受け、学校へは行っていない個性的な育ち。
    不思議な数日間の出来事。
    作者は1982年、勤めを辞めて短編を書き始める。
    1988年、初めて書いたこの児童小説がヒット、カーネギー賞とウイットブレッド賞を受賞。

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著者プロフィール

1951年生まれ。イギリスの作家。1988年『肩胛骨は翼のなごり』でデビューし、この作品でカーネギー賞受賞。ほかの作品に『星を数えて』『ミナの物語』『パパはバードマン』などの作品がある。国際アンデルセン賞受賞作家。

「2018年 『ダム―この美しいすべてのものたちへ―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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