- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488547059
作品紹介・あらすじ
兄が死んだのは、ぼくが十三のときだった。線路を渡ろうとして転び、第三軌条に触れて感電死したのだ。いや、それは嘘、ほんとはぼくが…。ぼくは今、ウィーンで作家活動をしている。映画狂のすてきな夫婦とも知り合い、毎日が楽しくてしかたない。兄のことも遠い昔の話になった。それなのに-。キャロルの作品中、最も恐ろしい結末。待ちに待たれた長編第二作がついに登場。
感想・レビュー・書評
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すばらしく面白かった!
グレイト! と唸らせる構成。
畳み掛ける展開。
ほんとうにおもしろい映画を見たあとのような読後感。
何をいってもネタバレになりそうだから書かないが、備忘録に。
P134 P170 P261 P277からそれぞれ始まる場面はすごい。
ぞーっとした。
そしてP270のインディアの台詞による、ジョゼフの人生観の暴露。
「死者の書」にも負けない水準。
次が今から楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
取り返しのつかないミスをしてしまった時に、人はどうすればよいのか。
ミスがミスを読んで、本当に取り返しのつかないことになってしまう。
最初のミスなんて、実はたいしたことなかったはずなのに。
それにしたって、抵抗しようがないじゃん。
どうしろっていうんだ。
名探偵がそばにいてくれたらよかったのにね。
最初から最後まで、性欲の扱い方が不得意だった男性の話だったような気もする。
でも、万引きについてむしろカッコいいみたいな感想を言っておいて、それを怒るのかという気もする。
自分の身に降りかからないとその意味がわからないのかもしれない。
または、ただ単に悪い時に悪いことが重なるということなのかもしれないね。 -
決してベストセラー作家ではないが、同業者や玄人筋にはやたらとウケのいいジョナサン・キャロル。結末のサプライズが最大の読みどころだと評判のジョナサン・キャロル。しかし僕にはいまいちその魅力が理解できない。
確かに、『炎の眠り』でもそうだったけど(というか、本書とそれしかキャロル作品は読んだことがない)、一組の男女が出逢い、胸をときめかせ、疑心暗鬼に陥りつつも、あれこれ駆け引きを巡らせながら、徐々に関係を深めていく一連の過程はリアル過ぎて怖いくらい。さらに本書に限って言うならば、恐怖感/不気味さを煽るシーンの筆致は間違いなく一級品だと思う。
だが、結末のサプライズ?
そりゃあね、この結末は予想できませんでしたよ。できるわけない。だって何も伏線が張られていないんだもの。ミステリーとしては失格。こんなの物陰に隠れて待ち伏せして、わっ! って驚かすのと何が違うんだ?
そういう小説じゃないと言われればそれまでかもしれないけど、少なからず本格ミステリーを読んできた身としては、ある程度のフェアネスを要求してしまうのです。 -
んー。
期待しすぎたのか、最後、取り残された感が・・。
元が洋書だからなのか、自分の理解力のなさなのか、途中の文章でインディアの言葉なのかポールの言葉なのかジョゼフの言葉なのかわからなくなる時があった。
オチも報われなさすぎて。。
キャレンくらいは。。
ね。。 -
え、え…?みたいな終わり方。
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ジョナサン・キャロルに夢中になるキッカケとなった本。
もう大好き!!
予想したオチをラスト2行で覆された時は鳥肌たった。 -
事故とはいえ兄を殺してしまった男が作家になり、ウィーンで映画狂の夫婦と知り合い、奥さんのほうと関係をもってしまったが為に世界が破綻していく話。
なんか意味がはっきりわかるかと言われたらよくわからないのですが不穏な、気持ち悪い空気がそこかしこに蔓延していてなんだかじっとりきます。
最後の狂気の爆発がまた気持ち悪い気持ち悪い。
誰かの世界が破綻する瞬間というのはリアルに考えるとどうしてこうも気持ち悪いんでしょう。
怖いと聞いたのに表紙は明るいなあと思いながら読んでいたのですが(1991年初版の古い文庫なので)読みおわって、表紙の絵がどのシーンを指しているのか考えるとぞくっときました。
主人公も普通といえば普通の善人(…?)なのになんか薄気味悪いんだ。
直接的な恐怖は全くないけれど、なんか気持ち悪い話。 -
まあまあ面白かった。他の作品も読んでみたいかも。読了後に、色々思い出したり考えなおしたりするのも楽しい。
全然違う話だけれど、『心臓を貫かれて』を再読したくなりました。 -
キャロルの長編第二作。ここに登録してみて、いつの間にか絶版になってること、そして読者評価が低いことを初めて知った。最新作から処女作へ戻ってキャロル作品を再読しているが、10代の頃は気付かなかった、キャロル作品の底流にある“「利己的」という「罪」に対する容赦のない「罰」”というテーマがひりひりと感じられる。特に本書は、「死者の書」よりそのテーマが露骨に描かれ、「薪の結婚」からここへ戻ってみると尚更、ダークな幻想というより潔癖なまでに厳しいキャロルの倫理観が見えてくる。一人称で語り、利己的な自分を正当化する思考と言葉を用いてストーリーを進めつつ、サイドからばっさりと断罪する厳しさが、「自分の断罪されうる存在である」という恐怖を読者にじんわりと残す。ストーリーが突然現実世界から乖離していくのはいつものことだし、作品の風味が非常にキャロルらしい「我らが影の声」、私は好きです。
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強烈な個性の兄のいじめに耐えきれず兄を殺害した主人公が、歳を経て遭遇した恐怖。ジョナサン・キャロルは最後の1ページまで、何が起こるかわからないし、あとでじわじわくる恐怖がある。特にこれは、最後の空白感がたまらない。面白かったよ。