赤々煉恋 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 297
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488550028

作品紹介・あらすじ

人の世はなんとおぞましく、美しいのだろう-。若く美しいまま亡くなった妹の思い出を残したいと、凄腕だという遺体専門のカメラマンに写真撮影を依頼した早苗。ところが…。初恋、純愛、そして日常と非日常への切望の数々。赤々とした、炎のような何かに身を焦がす者たちの行く末を、切ない余韻の残る筆致で巧みに描く。直木賞作家・朱川湊人の真骨頂を、連作集であなたに。

感想・レビュー・書評

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  • こう言ってしまうと人格を疑われそうですが(笑)、死体愛、四肢欠損愛など、私好みの話が集まった一冊。

    ・死体写真師
    まだ若いのに、何の楽しみもないまま亡くなった妹・百合香を不憫に思う姉の早苗。葬儀が迫る中、早苗の恋人・晴紀が、遺体を生前そっくりな形で写真に残してくれる葬儀屋を見つけてくる。早苗はそこで百合香にウエディングドレスを着せた写真を撮ることを決意する。
    本当にそんなことが可能なのかと疑う気持ちもある中、当日を迎えた早苗は晴紀と共に葬儀屋を訪れる。百合香の遺体は写真師・ソーニャの手により美しく飾られ、理想通りの写真が撮れた。
    しかしその日以降、晴紀の様子がおかしい。身辺を探るうち、晴紀とあの葬儀屋が怪しいと分かった。葬儀屋を訪れた早苗は、そこで晴紀が百合香の遺体と交わっているのを見てしまう。晴紀は死体愛好家で、葬儀屋はその手の顧客のための施設。
    秘密を知ってしまった早苗は、身体を拘束されてしまう。薄れていく意識の中で、自分も死んだらあの写真師に撮られるのだろうか、と思う。

    ・レイニー・エレーン
    ホテル街・渋谷のM山町には、雨の日にエレーンという女の霊が彷徨うという噂があった。エレーンは本来は有能なOLだったが、お金で男を買っていて(とある実在の事件を彷彿とさせます)、その時に殺されてしまったらしい。
    会社員の佐原は、出会い系で出会った女性と身体の関係を楽しんでいる。佐原学生時代、渋谷で同級生の女性・理華とささやかな時間を楽しんだ思い出があった。
    佐原は、その理華こそ、エレーンの正体であると知っていた。過去に想いを馳せ田が、理華がどうしてあんなことをしていたのか分からない。
    今いるこの場所は、そのM山町。雨も降っている。佐原が出会い系で知り合った女性を抱こうとすると、その身体に何かが憑依する。
    交わりながら、これ以上ない快楽へ辿り着く佐原はやがてそのまま……。
    気が付くと、魂だけの存在となり、M山町を漂っていた。

    ・アタシの、いちばん、ほしいもの
    語り手は女子高生の幽霊。
    街を徘徊していると、おぞましい虫のようなものを見る。それがくっついている人は近いうちに亡くなる。
    幽霊になって、誰とも話ができなくなった主人公。唯一自分に気付いてくれたのは5歳の少女だった。
    しかしその少女は母親の心中に巻き込まれて死んでしまう。
    落ち込む主人公に向かって、突然話し掛けてきた人がいた。女子高生だった時の同級生の女性だった。しかし主人公は絶望して、口を閉ざす。

    ・私はフランセス
    つらい少女時代を過ごし、ようやく自分を愛してくれる男性を見つけた女性。しかしその愛する男性が「アクロトモフィリア(四肢欠損愛)」という性癖を持っていた。映画「フリークス」に出てくる四肢のない女性、フランセスを心から愛する男性。女性は一番に愛してほしいと思うようになる。そんな折、秘密クラブのようなところへ連れていかれた。そこで下半身のない女性が出てきて、客を魅了する。生き生きとしたその姿を見て、主人公はついに……。
    何というか、究極の愛の形を見たような気がします。オーソドックスな展開ではありますが、人が自分の四肢を捨て去るまでの気持ちの波が、幻想的蠱惑的に、かつ、ありありと書いてあって良かった。

    ・いつか、静かの海に
    近所の男性から、月夜に「レンズ」を使って集めた夜露「月の水」でのみ成長する女性「お姫様」に見せられた主人公の少年。じわりじわりと人の形を成していくそれに魅了された彼は、男性亡き後その女性を世話することを誓う。
    男性はあっけなく亡くなってしまった。彼は「レンズ」の作り方を残していた。
    レンズを作るのに必要なのは、人の頭蓋骨。少年の前には、男性の遺体。
    しかし少年は、どうしてもレンズを作ることができなかった。「お姫様」は縮んでいき、小石のような形になってしまっている。だが、死んではいない。
    少年はそのお姫様を手元に置いたままにしている。

  • 以前、読んだ朱川さんの作品のようにほっこりする心霊ものだと思ったら違った。ホラー、グロテスクな性癖を題材にしたものもあり。でも面白かった。仲の良かった妹の身体を死ぬ前に美しい姿で写真に残すことから始まりぎょっとするラストが待ってる「死体写真師」と死のうとする人間にとりつく虫男、虫女がとても不気味な「アタシの、いちばん、ほしいもの」が印象に残った

  • 本作品はネクロフィリアやアポテムノフィリアという病的なテーマを扱っているので嫌悪感を覚える読者もいるだろう。相変わらずネタもバラエティーに富んで読ませる力もあるので、やっぱりこの人の短編集はハズレが無い。物語途中から急に気色悪くなる展開の斬れ味は流石。この展開の落差が病みつきになる。泣かせどこなど1片も無くグロい話なんだけど、どこか美しくさせるのも朱川湊人の筆力と人柄であろう(笑)。歪みきった愛や性癖のおぞましさを切なく感じた心の余韻は今もざらついている。

  • うますぎ。ぞわぞわっと薄気味悪くなるのが、官能めいてすらいてたまらない。文体のしんしんとした静けさがまたいい。
    …わたしはホラーだとは思わないんだよねえこれ。乱歩をホラーだとは思わないように。

  • 創元推理文庫だけど推理ものではなく、連作集とあるけど連作という感じでもなく。でも、幻想的できれいな結構好きな雰囲気の作品でした。朱川さんは初だったのですが、解説によるとこの作品は「らしくない」みたい。とりあえず他の作品も読んでみたい。


  • 普通、ではない人達の愛情のお話

    怖さもあり、切なさもあり



    「わたしはフランセス」が好き



    なんとなく、文庫じゃなくてハードカバーで読めて良かった

    っておもいました、なんとなく

  • ホラーテイストな短編小説。
    ちょうどSimon & GarfunkelのApril Come She Willを聴いていたのもあり、レイニーエレーンが好き。
    「ヤスラカニネムレ、ワスレナイ」からの「君が好きだった」でグッときた。

  • 表紙を見てホワイトかと思いきや、おもくそブラック。ホワイトもいいけど、朱川さんはやっぱりこうでないとね。
    お姫様を月の水で育てる「いつか静かの海に」が好き。

  • 表紙が違う。。。
    女性が片手を伸ばしているイラストだったのだが、該当なし。

    なかなかぶっ飛んだ題材を扱っているのに、 さらりさらりと表現してしまうのが毎回凄い。
    性的な関係も絡むので、中高生にお薦めできるのと出来ないのがあるが。。
    3作目は読んで欲しい。

    『死体写真師』
    →写真師の動機は何なのだろう。。あくまでも、その後のシステムは商売人である葬儀社の思惑から来ているのだろうし。

    『レイニー・エレーン』
    →これまた、主人公は何故にそういった行為に走ったのか。。。本当、子供がいる人はそちらを優先して欲しいと思うのは綺麗ごとなのだろうか。。

    『アタシの、いちばん、ほしいもの』
    →欲しいものは何なのだろう、というのにナルホドな、という答え。
    言葉が足りない時、逆に説明しすぎてしまう時、何となく、そうなってしまった時の心情。
    もやもやする思春期の感情をこうも的確に表現できるとは。。。
    読み終えた時、一番苦しくなる作品。

    『私はフランセス』
    →マイノリティであることを理解しながら生きるのは辛い。。こんな長文の手紙をもらったら読みきれないが、本当、作家さんの力は凄い。

    『いつか、静かの海に』
    →どうなるのだろう、という展開に対し静かな結末。
    けれど、これからどう転ぶかは分からない。。

  • 2004年から2005年にかけて雑誌『ミステリーズ!』に発表された短編5編からなる短編集。
    5編のうち1編はネクロフィリア(死体性愛)、もう1編はアクロトモフィリア(四肢欠損性愛)、更にもう1編は アポテムノフィリア(身体欠損性愛)、というなかなかド変態な内容ですが、朱川湊人氏の筆にかかると、ダークなファンタジーになります。
    5編のうちもう2編は幽霊もので、変態性はありません。
    5編に共通してバッド・エンディングですが、イヤーな感じのするエンディングではなく、切なくホロ苦く哀しい、という感じです。
    この感じ、何かに似ていると考えると、解説の中の「特撮」というキーワードから、市川森一脚本に思い当たりました。
    刑事ドラマや特撮ヒーローもので、何とも言えない苦ーい結末を迎えることもある市川森一脚本回。変態性は別にして、後味はこの作品集と共通する気がします。
    そういう意味では、自分の世代には、これもノスタルジー作品集といえます。。

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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