わたしが幽霊だった時 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488572013

作品紹介・あらすじ

歩いててふと気がついたら、あたし、幽霊になってた!頭がぼやけてて何も思い出せないし、下を見たら自分の体がないじゃないの。生垣やドアをすり抜けて家のなかに入ると、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのケンカ。誰もあたしのこと気づきゃしない。でも、どうして幽霊になっちゃったんだろう……現代英国を代表する女流作家の、おかしくもほろ苦い時空を超えた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公がのっけから幽霊で、しかも自分が誰だかわからないところから始まり、ぐいぐい引き込まれていった。
    主人公が幽霊なんだから、怖くないかも!って気楽に構えていたらそうでもなく、そうだった、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品じゃん、そんな甘くないよね…と途中であわあわした。
    日本の幽霊とは違うホラーっぽいダークさも兼ね備えたファンタジーでミステリー。
    姉妹の喧嘩っぷりや暮らしぶりは破天荒に突き抜けていて生命力に溢れていた。生きているってそういうことだな、を凝縮している描写。
    7年という年月との掛け合い、次第に見えてくる人間模様、最後にこうきたか!とそれまでの色々を回収していくのは本当に見事。
    ダークで憎らしくて少し荒削りな分、後からじわじわと愛情やら見えていなかった細部やらが染みた…!
    ファンタジーだけじゃなくて女の子たちの成長、姉妹愛に恋愛要素も全部盛り込んでくるってちょっと…!

    カートにサリー、イモジェン、フェネラ。
    どの子も個性的で面白い。
    この世界、誰かアニメ化してくれないかなぁ。映像化作品観てみたい。残酷なとこもあるから無理かな…。

    ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は、いつもものすごい勢いよく描かれていて、まるで場面場面を走り書きでスケッチしているかのよう。ついていくのに必死。
    たぶん細かなところはついていけてない。
    そこまで描き出したい物語を持っている彼女はすごいなぁと毎回尊敬の念を抱く。 まだ消化しきれていない『9年目の魔法』をもう一度読み返したくなった。

    • すいさん
      部屋に積んでます(笑)
      感想読んで、ますます読みたくなった!
      部屋に積んでます(笑)
      感想読んで、ますます読みたくなった!
      2020/10/10
    • apricot-2007さん
      おお、部屋にいらっしゃいますか!(笑)
      ぜひぜひ読んでください〜!
      続きが気になって、あっという間に読んじゃいました。
      おお、部屋にいらっしゃいますか!(笑)
      ぜひぜひ読んでください〜!
      続きが気になって、あっという間に読んじゃいました。
      2020/10/10
  • ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「わたしが幽霊だった時」を読みました。
    彼女の比較的初期の作品です。

    主人公の少女は気づくと幽霊になってさまよっています。
    自分が誰かも、どうして幽霊になっているのかもわかりません。
    断片的に戻って来る記憶を頼りに道を辿り、やがて寄宿制の男子校に至り、そこの宿舎に住む4姉妹の一人であるということはわかってきます。
    少女は宙を漂いながら、10代前半の4姉妹の繰り広げる凄まじい、狂躁に満ちた暮らしを見つめ、自分は姉妹に殺されたのだろうかと疑いつつ置かれた状況を何とか理解しようとするのですが・・・。
    どういう状況なのかいっこうにつかめないまま微細に描かれる4姉妹の葛藤、狂乱につきあうことになり、前半は読者も宙に浮いたような気分のまま読み進めることになります。
    それが中盤から時を超えるファンタジー・ホラーとなって一気に話が動き、感動のラストへ・・・。
    素晴らしい作品です。

  • サリーは気がついてみたら、幽霊になっていた。といっても、手足が有るわけでもなく、誰にも見えない。家に帰ってみると4姉妹のサリーを除く3人がいる。なぜ幽霊になってしまったのか、その鍵は、4姉妹で信じていた、モニガンという精霊にあるのだ…。

    『ハウルの動く城』の作者が送る、ファンタジー&SF作品。サリーの幽霊の視点から描き、なぜ幽霊になったのか、どうやってみんなに気がついてもらえるのか、本当は自分が誰なのか、モニガンの狙いはなにか、ということを章ごとに解いていく形になっている。

    途中からはSF的な展開となっているからか、世間的には非常に評判が良いようだが、子供の自分語りという形になっているからか、訳がまずいのか、全体にわかりにくい。

    また、途中からは書きたいものの方向性からやむを得ない部分はあるが「サリーは」という三人称主人公を「幽霊は」「患者は」という形で書いてしまい、いわば叙情トリックの伏線的な不信感を読者に与えたのはあまり印象がよろしくない。

    さらに個人的に、こういうファンタジーもので前提なく使われがちな「動物は純粋なので霊が見える」「子供(特に女の子)は純粋なので霊が見える」というような暗黙の特殊能力を有しているというのは好まない。本書においては、後半は否定されており、それは全体のテーマとして「女の子はきれいでも純粋でもない」というところに根付いているからだろう。でもね、犬は気がつくのだよね。

    調べると、訳者の関係者が「この話は暴力的な父親に対する娘たちの抑圧された関係がテーマ」という論文を書いているようだが、そこまでうがって読むほどの話でもないだろう。

    テーマというかトリック的には面白かったが、文章と配役が今ひとつである。

    電子で読んだが、文庫版はプレミア価格の模様。

  • 気づいたらあたし幽霊になっちゃって大嫌いな姉さんや妹たちの喧嘩を横で聞きながら、どうして幽霊になっちゃったんだろう?って。ダイアナウインジョーンズは昔からあまり馴染めない。設定はファンタジーなのだが10代の女の子の心の内や成長していく様子が描かれる。男だから共感しづらいのかな

  • 私は幽霊になっちゃった。足元も見ても何も見えない。ここはどこだろう?私は誰なの?ようやく自分は四人姉妹の誰かだろうと見当がついたが、そのうちの誰かが分からない。カート、イモジェン、フェネラがいる。サリーがいない。私はサリー?そして、死んでしまったの?それにしては、誰も心配していないのは何故?幽霊となって七年前の当時に戻って過去を変えようと奮闘する。

  • 登場人物がもれなく皆ブレーキが壊れている
    姉妹ばっかりってこういうイメージある(偏見)

  • ダイアナ・ウィン・ジョーンズ版、若草物語(笑)。
    4姉妹ということで、多分、意識はしていると思う。

    賢い長女。活発な次女。芸術家肌ですぐ悲劇的になる三女。少し思慮が足りなくでも勘が良くて行動的な四女。

    でも、若草物語よりは、それぞれ強烈な個性を発揮してくれます。*1
    姦しいよりも、姉妹1人分、多いですから。もう、喧しい。
    で、いつもいつも、ケンカしているんだけれど、仲が悪いかというと、そんなことはない。
    そして、その姉妹のあり方というのは、けっこう、あるあると思いました。
    そこが、最後の盛り上がりをつくります。
    ラストの対決、かっこいい。

    主人公は、幽霊です。
    多分、自分は次女だと思うのだけど……と、自分が誰かさえあやふや。そのあやふやさ加減とか、ままならなさは、ジョーンズなりの理屈が1本通っていて、ファンタジーだけれどもリアルな感じがします。

    ただ、そのもどかしさが、そのまま作品にも出ていて、物語の途中、交通事故が起きるまでが、若干、だるい感じがしました。

    でも、その後の展開は、ジョーンズらしい、スピーディな展開でした。

    まあ、最後の対決で、アレ差し出して良かったのかとは思うんですけどね。
    あれのせいで、未来が変わったのでは?

    それでも、そこでそれを捨てたからこそ、これから新しい道を歩み出せるという力強さがあって、読後感は、爽やかです。

    この人、ひねくれ者だから、嫌な感じで書いてある人のことを本当に憎んでいるわけでなかったりして、そこがわからないとおもしろくないんです。
    だから、ファンタジーだけど、ちょっと大人の読み物なのです。

  • カバーイラスト / 佐竹 美保
    カバーデザイン / NORIC
    原題 / "THE TIME OF GHOST"(1981)

  • 読むのが楽しみ~

  • 気がついたら自分の体が透けていて、自分のことがなぜか思い出せなかったらどうしよう?個性豊かな4人姉妹が体験した現代と過去を行き来する人情ファンタジー。

    今までのダイアナ・ウィン・ジョーンズの物語とは違い、主人公は最初自分が何者であるかがわからない。寄宿学校やその隣の建物で暮らしていることや、寝起きのうるさいカート、夢見がちで泣き虫なイモジェン、大声の持ち主のフェネラなど個性豊かな姉妹と、放任主義だが娘のしつけに厳しいぬしと呼ばれる父親や、同じく放任主義で優しくはあるものの子供に関心を払わない母親のことなどを思い出していく。
    子供たちがいたずらに信仰していたモニガンなる女神が七年後に命を狙いにくるなど、何やら物騒なことも挟みつつ、最後の最後になるまで主人公が誰なのかが分からない。現実社会では主人公は寄宿学校の男子生徒に車から突き落とされて死にかけているし、その男子生徒は結局命を落としてしまう。後味としては少しよくないが、子供のころにしていた馬鹿げた遊びや、自分だけが取り柄がないような気がして馬鹿なことをしてしまうことや、親の言いなりになってしまうようなこと。そんな若かった時代を思い出させてくれた。

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著者プロフィール

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)
1934年8月16日 - 2011年3月26日
イギリスのファンタジー作家で、子ども向けの独創的なファンタジー小説を記す。代表作に『ハウルの動く城』『大魔法使いクレストマンシー』のシリーズがある。
2004年に『魔法使いハウルと火の悪魔』が宮崎駿監督・スタジオジブリ作品「ハウルの動く城」として映画化され、日本でも広く知られるに至る。

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