死せる者の書 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488585068

作品紹介・あらすじ

生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の、そして死者の都パラディス。退廃と背徳の都の墓地に眠る死者の物語8編を収録。闇の女王タニス・リーの面目躍如たる傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 生者と魔性の者の都、パラディス。今回は死した者たちの話。まず、墓石とその様子が示され、その墓に眠る死者たちの話が語られていく。どれも怪奇・幻想寄りの話で、なかなか面白かったです。特に良かったのは『美しき淑女』『硝子の短剣』『月は仮面』

  • はじめてのタニス・リー。架空の町パラディスを舞台にしたシリーズの3作目ということですが、単品で読んでも問題ない短編集でした。

    インパクトがあったのは「鼬の花嫁」と「美しき淑女」。前者は結婚初夜に花婿が花嫁を殺害するも、その理由を語ることを頑なに花婿は拒絶、のちに花嫁の墓を暴いた人間だけがその真相を知る。後者はいわゆる「毒娘」と噂される女性が殺され、遺体安置所の警備員だけが彼女の「毒」の謎を解明するというもので、どちらもラストに「あっ!」と驚く真相が明かされるインパクト勝負の作品。犯人(真相)が読者に与えられた情報の範疇外なので推理のしようがないという意味ではポーの「モルグ街の殺人」的理不尽さもなきにしもあらずなのだけれど、その正体のあまりの異質さに受ける衝撃はかなりのもの。

    呪術的な「悪夢の物語」、ストーカー奇術師に一目惚れされてしまった女性が不憫な「大理石の網目」、隠れ里かはたまた異世界への入り口なのか冒険譚風の「世界の内にて失われ」、不思議な仮面の力で夜な夜な吸血鳥となって飛びまわる女性の幻想譚「月は仮面」など、作品ごとにテイストが違うので楽しめました。

    余談ですが1作ごとに冒頭に伝承歌や詩からの引用文があって、「悪夢の物語」ではデヴィット・シルヴィアンの歌詞が使われていてびっくり。思わず調べたら「Secrets of the Beehive(1987)」収録の「The Devil's Own」の一節でした。

    ※収録作品
    「鼬の花嫁」「悪夢の物語」「美しき淑女」「モルカラの部屋」「大理石の網目」「世界の内にて失われ」「硝子の短剣」「月は仮面」

  • 懐かしい「パラディスの秘録」の3作目の邦訳。訳者が浅場莢子さんから変わっているので、少し雰囲気が違ってしまったかな。
    「死せる者の書」ということで、情熱と死をめぐる短篇集。最後の「月は仮面」はいかにもタニス・リーらしいというか、クリムトや耽美主義の絵を思い出させるようなハルピュイア=鳥少女=吸血鬼エロスの話で良かった。でも「黄の殺意」ほどの圧倒的な力強さはなかったので残念。

  • 短編集。〈パラディスの秘録〉四部作の三作目らしい。
    ホラー、ファンタジー、ミステリ、恋愛が混ざり合い、ジャンルの分類が難しい不思議な作品集。
    「鼬の花嫁」はホワイダニットもののミステリとして読めるし、「世界の内にて失われ」はコナン・ドイルの名作のオマージュだとしたらSFだし。
    全体的に好きな雰囲気。
    特に「月は仮面」がダークファンタジーとして素晴らしい。主人公が空を飛ぶ描写が美しい。傑作です。

  • 幻想の都パラディスを舞台に、死をテーマにした短編集。ひっそりとした死の影には、激しいほどの情熱や愛が隠されている。その死と生の、そして動と静のイメージの対比が印象的だった。

  • タニス・リーの創作した、パリをモデルとした都パラディスにまた戻って来れるとは思いませんでした。
    死と妖美な退廃の香り漂うパラディスにあっては、この本に収められている8つの物語など、あるいは日常茶飯事なのかもしれません。
    どの物語も、狂おしいほどの愛の末に、死を見出し、死に魅入られる物語だったと思います。しかもこの本で描かれる死とは美しいものでも醜いものでもなく、平凡なもの。そのような印象を受けました。(つまり、十人並みの容姿の相手に焦がれて身を滅ぼす者が多数ということ)

    正直、この本を読み終わるのにだいぶ時間がかかってしまいました。
    死を題材にした短編集だけあって、どこか陰鬱で重々しい冬の夜のような物語ばかりでした。そういう雰囲気がお好きな方には、とてもいい短編集だと思います。ある意味では、非常にタニス・リーらしい短編集ですね。

    でも、いかんせん登場人物に感情移入しにくいところがあったりします。短編集だからある程度仕方ないのかも。
    でも、パラディスの墓地の様子がよくわかるのは、とても面白かったです。
    個人的には、どのお話にもそのお話なりの良さがあって、どれが一番とかは決められませんでした。
    不思議な都パラディスの中でこそ許される物語。
    やはり我々はリーの目を通して、パラディスを視ているのかもしれません。
    このシリーズを読むたびに、そう思わずにはいられません。
    この都に住みたくはないけど、この都の存在を忘れないようにしたい。
    読んでいると、そんなことを考える短編集です。

  • ダークファンタジー。。。
    常に暗い雰囲気を漂わせてくれてるので、
    ホラーではないけど、ゾクゾクこわい。

  • 『銀色の恋人』以外にタニス・リーを読んだこと無かったので、彼女の代表作はスルーしてきたことになるんだろうな。こっちのジャンルが本家だよね?たぶん。あやしく、いやらしい感じがなんともいい味出していました。女性主人公の章のほうが読みやすいのは私が女だからか。『硝子の短剣』『月は仮面』とかね。主人公が、いそうなんだよね。現代にも。周りからは真面目で暗くて面白みがないって思われてて、でも個性的で。うん、タニス・リーの描くヒロインは、私結構好きです。あと、人間と動物や魔性の交わる姿が絶妙。都市が舞台なのもいい。

  • 容赦のない目と美しい言葉で物語る。パリに似た架空の街とその近郊で、仮面で鳥と化す女、芸術家として選ぶ女。人の目に映った事件はそのままではない。

  • タニス・リーにしては大変読みやすい短編集。シリーズ物語の3冊目なのですが、これ1冊でも違和感なく読めます。タニス・リー初心者にも是非。
    ファンタジーや幻想譚の、自由自在縦横無尽、なことを味わえる素晴らしい短編集でした。事象に対してなぜそうなのか、という説明を必要としない芳醇な世界観の語りが素晴らしい。ファンタジーとはそうあってほしい。
    わたしのイチオシは「世界の内にて失われ」です。なんてなんてなんて幸せな死かと。羨ましいほど。

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