フランケンシュタイン家の亡霊 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488586058

作品紹介・あらすじ

亡き双子の兄を甦らせようと、先祖が隠した怪しげな霊薬を口にしたヴィクターが、死後の世界で目にしたのは……。若き日のフランケンシュタインを描いたダークファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • 前作よりもダーク色が濃くYAよりで読みやすく面白かった。このヴィクターが後に怪物を作り上げると思うときっとこっそり蝶を身にまとってたんじゃなかろうかなんて。締めは案外爽やかだったのでゴシックホラーな原作を再読したい。

  • ・ケネス・オッペル「フランケンシュタイン家の亡霊」(創元推理文庫)は 例の「フランケンシュタイン」の前日譚第2弾である。前作は、ヴィクター・フランケンシュタインの双子の兄が病に倒れたので、それを治すためにヴィクター は魔術に頼つたがといふ物語であつた。結局、これはうまくいかずに兄は死んでしまふ。今回の「亡霊」はこれに続く物語である。父は兄の病を治さうと魔術に 頼つたヴィクターを咎め、城内の秘密図書室の魔術書等を焼却処分する。ここですべてがなくなつてしまへば問題は起こらないのだが、ヴィクターは燃え残りの 中に「あざやかな赤い色をしたものが朝日を受けて輝いてい」(15頁)るのに気がつく。「それは赤い本の背表紙」(同前)と見えたが、実際は「本そっくり に作られた、平たい金属の箱」(16頁)であつた。これが物語の発端である。ヴィクターは、当然、その箱を回収して中を調べる。いくつかのものが入つてゐ た。「降霊盤の使用法」と記された数枚の古書の切り抜きと,それと思しき器具の部品である。それらを組み立ててみると、実際に降霊盤らしきものができた。 さうしてそれで実験をしてみる。兄コンラッドの霊を喚ばうといふわけである。ここからエリザベスとヘンリーも関係してくる。かうして得られたメッセージは Come raise me、「来たりて、よみがえらせよ」(33頁)といふものであつた。これをきつかけとして、亡きコンラッドを蘇らせるための3人の試み、いや冒険が始まる のであつた……。
    ・「亡霊」のポイントは死者の復活、蘇りである。具体的にはコンラッドの復活である。「亡霊」ではいきなり直接的に復活を試みることなく、3人はその前に 死者の世界を訪れてゐる。この世界でコンラッドがゐるのはフランケンシュタイン城である。かつての使用人もゐる。所謂煉獄なのであらうか。ここでいづこか に呼ばれるのを待つてゐるらしい。そんな世界を3人は魔術的手段を使つて訪れる。その頃、城内で古代洞窟遺跡らしきものの発掘作業が行はれてゐた。つま り、ごく大雑把に言へば、この物語にはヴィクターの生者の世界、コンラッドの死者の世界、城内地下の発掘現場、この3つの場所があり、それぞれで物語が進 行してゐることになる。それがコンラッドの復活といふ一点で最後に交はる。その復活の過程で生者の3人が、いや死者コンラッドも含めた4人が対立する。し かもそれがひどく感情的といふより、理性も感情も超えたところでぶつかりあつてゐる。これはある意味ではしごく紋切り型の描写に思はれ、時に嫌悪感を催さ せる。しかし、逆にかういふ物語では、それにより正邪の邪の強さが予想されることになる。もちろん、「亡霊」もこの種の物語の例に漏れず、善悪、正邪の対 立が根底にある。そこに死者を蘇らせる復活が絡み、更にそれがヴィクターの怪物創造、つまり無から生を創り出す行為の伏線となつていく。ヴィクターがあの やうな怪物を創造するに至つた伏線としてはかなり説得力がある。死せる魂を蘇らせようとしても、この物語でヴィクターはイエスならぬ人の身ではうまくいか ないことを痛感したはずである。(さう、コンラッド復活の試みは失敗するのである。)さうして、ならば新たなる生命の創造を目指すしかないといふ気持ちが 芽生えたに違ひない。この「双子」と「亡霊」の物語に於けるヴィクターの一途な性格はそれを容易に想像させる。復活、蘇りといふテーマもおもしろかつた が、そんなケネス・オッペルのヴィクターがシェリーのフランケンシュタインにつながる様子が更にはつきりしたのがまたおもしろかつた。第3弾がないらしい のが残念である。

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