ねじの回転 -心霊小説傑作選- (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488596019

感想・レビュー・書評

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  • 表題作について。
    たしかに難しい…。「怪奇小説の傑作だが難解」を痛感。いろんな見方ができる作品なのは確かだけど、ひとつの解釈がしっくりくるかというとそうでもない。
    一人の視点・主観(しかも感情に左右されていたり、もしかしたら妄想が含まれてるかもしれない)であやうさのある状態で始終物語られており、第三者の明らかな反応が乏しいのがモヤモヤと難解さの原因か。
    とはいえ「幽霊とおぼしき何者かがいる」という第三者の反応も皆無ではない・確実にあるので、1人の妄想だとも言い切れない…それもまた難解さのひとつ。
    怖いのは幽霊か、人間心理か、あるいかその混合か。

    ほかの作品もゴーストストーリーながら、肝心の幽霊は最後の最後。それまでの人間描写の積み重ねがなかなか。
    始終幽霊の存在を感じる作品も面白いが、最後にピリリと効いた幽霊というのも面白い。
    日本語訳も読みやすくて、サクサク楽しめた。

  • 2018年の復刊フェアで復刊された本書。ゴーストストーリーを集めた中短篇集。
    名作と前から噂は聞いていたのですが今まで読んだことなくて。今回読んでみてなるほど、と。普通に想像するオーソドックスなゴシックホラーストーリーとは一味違う味わいです。
    陰鬱な屋敷やそれらしき逸話、ひと癖ある登場人物…とゴーストストーリーにはありがちなパターンの書き出しに引き込まれつつ、肝心の「そのものズバリ」をはっきりと書かないが故に発生する奇妙な読書感と言いますか…。この感覚が面白いし、物語に色んな解釈が発生するのも納得でした。

  • 表題の「ねじの回転」はホラー小説としては難解と言われているようです。
    確かにいろんな見方ができるけど、怖さで言うと主人公の家庭教師の頭で妄想炸裂、スピリチュアルな方向へ突っ走ってるとこが、怖い。いわゆるお化け屋敷ものですが、オカルトにサイコスリラーを足した感じかしら。

    家庭教師の視点でのみ話が進むので、この人がおかしいのか、本当に幽霊がいるのか、よくわかりません。
    本当にいるっていう表現も何ですが(´△`)

    他の短編は比較的わかりやすい恐怖譚。ただヘンリー・ジェイムズさんの文章は前置きが長いね。
    訳にもよるんでしょうか。クドさが気になってしまいました。

  • ミステリーのようなホラーのような。幽霊話。

  • 表題作が難解とか言われてるけど、これはそのまま古風な怪談話として雰囲気を楽しめばソレで良いんじゃないのかなあと。他の作品もいかにもといった感じの古風な怪談話だし。

  • 夏だから、暑いから、ホラー!
    ということで、本作。

    最初のうちは「レベッカ」のような、我々には見えない怖さ・・・?
    でもそのうち、あれ?あれれ???
    手記で、己の言葉で綴られる内容は、あくまで一方通行であって
    公正ではないのかも
    やはり、一番怖いものは、人間の想像や欲望なのか・・・
    正直よくわからない、唐突な終わり
    その後が気になって仕方ない、夏の終わりでした(意味不明・・・?)

  • 怪奇小説の名作と言われる表題作「ねじの回転」は、ヒロインである女性家庭教師の過去の恐怖体験が手記として語られる体裁の幽霊譚。読みにくいもののなかなかよい雰囲気。ヒロインは仕事先の御屋敷で愛らしい子供たちを邪悪な幽霊から守ろうとするも、子供たちは幽霊の側に立ったようなそぶりをして、決して秘密を明かしてくれない。ヒロインは、子供たちとのかけひきをしながら、どんどん疑心暗鬼に囚われていく。元凶は幽霊だったのか?ヒロインの妄想なのか?それとも両方か?最後まで明らかにされないまま、唐突に物語は結末を迎えてしまう。主人公の妄想がかなり入っていると考えると、結構ぞくぞくします。
    他の作品では「幽霊貸家」が好きです。これぞひとひねり、ふたひねり。してやられた感がありました。

  • 女性家庭教師の、過去の恐怖体験を綴った手紙が紹介される、
    という体のお話なんですが……【以下ネタバレ含む】

    話中話のヒロインである女性家庭教師が、
    赴任先のお屋敷で邪悪なオーラを放つ幽霊を目撃し、
    純真な子供たち(兄妹)を守らねばと奮闘するのですが……
    そうした話のタネになるような、
    生前に問題行動のあった男がいたことは確かなんだけど、
    その幽霊を目の当たりにして恐怖しているのはヒロインのみ。
    誠実な女中頭は彼女の話を聞いて同調してくれるものの、
    自らは一度も幽霊を見ていないため、
    日に日に恐怖心を募らせて言動がおかしくなっていくヒロインに、
    段々疑問を抱くようになっていく。
    更にヒロインから、女性の幽霊も現れたと聞いた女中頭は、
    子供たちの先任の家庭教師だった女の名を挙げ、
    先の従者だった男と「不適切な関係」だったらしいと告げます。
    それによってヒロインの妄想が更に激しく炸裂するワケね。
    ですが、そんな考えに囚われるのも、
    ヒロインが自身の性的な欲望を内に秘めて抑え込んでいるが故、
    なんですな。
    実は無意識のうちにあれこれいかがわしいことを考えているに
    違いないのだが(笑)
    慎み深くあらねばならなかった19世紀末ヴィクトリア朝時代の
    イギリス人女性ですからして、
    普段、頭の中に閃きすらしないんですよ、
    つーか、エロい妄想なんて、
    そんなもの自体、存在しないはずなんです、彼女らにとっては。
    では、何が無意識の欲望をアクセラレートしたかというと、
    最初にチラッと登場した、
    雇い主であるハンサムな紳士(子供たちの伯父)に違いない。
    でも、この紳士がなぜか、
    いちいち状況報告なんぞ寄越さなくて結構とか言って、
    他人事を決め込んでいる。
    ヒロインとしては、逢いたい人が逢いに来てくれないので、
    フラストレーションが高まるんですな。
    そんなこんなで、怖いのは幽霊の存在ではなく、
    自分の心の問題を
    幽霊のせいだと責任転嫁したヒロインの妄念だった……と。

  • 短編集。読んだことのないもの(ねじの回転以外ぜんぶ)を読みました。大変奇妙だった。

  • とりあえず、表題作のみを読んでみた。たしかに難解な小説だと思う。単なる幽霊譚のようにも読めるし、語り手である家庭教師の妄想のようにも読める。また、19世紀に流行した心霊主義の「科学的」研究の調査報告と似ているという解説も読めば、そうなのかなとも思う。でも、語り手の微妙な心の動きから恐怖を表現する手法は調査報告のような味もそっけもないものとは異質で、やっぱりヘンリー・ジェイムズが紡ぎ出した言葉のアートではないかと思う。子供が幽霊を知っていて、それから影響を受けているという話じたいは20世紀のホラー映画に慣れている読者からすれば、それほど恐怖を感じないが、それだけにこの作品の後世への影響の大きさを知ることができる。

著者プロフィール

Henry James.1843-1916
19世紀後半~20世紀の英米文学を代表する小説家。
主要作品に『デイジー・ミラー』、『ある婦人の肖像』、
『ねじの回転』、『鳩の翼』等。
映画化作品が多いが、難解なテクストで知られる。

「2016年 『ヨーロッパ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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