世界最終戦争の夢 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488607067

作品紹介・あらすじ

多彩をきわめるウェルズの全作品のなかから、表題作をはじめ「アリの帝国」「森の中の宝」「めずらしい蘭の花が咲く」「海からの襲撃者」「盲人の国」など、必読の傑作中短編全12編を精選した。訳者あとがき=阿部知二(初刊時タイトル『ウェルズSF傑作集2』を改題)

感想・レビュー・書評

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  • 10代の頃に一度読んだ記憶がある古典中の古典、復刊されたので久しぶりに手に取りました。作品内容はすっかり忘れてるんですけど、独特の和訳タイトルが今でもはっきり印象に残っています。「めずらしい蘭の花が咲く」とか「故エルヴシャム氏の物語」とか。なんと19世紀に発表された作品も収録されています。

    今読むと、さすがに古いです。古いですが、そう思うのは主に訳文の古臭さが原因と思われ、描かれているSFとしてのアイディア、展開、そして何よりも情景描写の鮮やかさは、十分に通読に耐えうる骨太さを保ちえています。SFとしてはもちろんのこと、ひとえに「物語」としての完成度が高いのだと思います。
    古典落語「一眼国」を彷彿とさせる「盲人の国」、洒脱なショートショート「ダチョウの売買」あたりが鴨的お気に入りですが、なんと言っても表題作「世界最終戦争の夢」。たまたま汽車で乗り合わせた男が問わず語りに語るハルマゲドンの夢に引き込まれていく主人公。夢のラストシーン、救いようのない結末にのめり込む主人公を取り囲む、最終駅に到着した汽車の振動、プラットホームを行き交う運搬夫の怒鳴り声、夕暮れ時の町の明かり・・・そうした現実的な風景の先に幻想的に立ち現れる、残酷なヴィジョン。この展開の鮮やかさ、美しさは、凡百の幻想小説家が束になってかかっても叶わない完成度です。読み継がれる古典には、読み継がれるなりの理由があるのですね。
    ・・・が、まぁ、やはり古いことには古いですし、救いようのない暗い話が多いです。その辺は、少々読む人を選ぶかもしれませんね。

  • 古さを感じない。
    盲目の国・アルマゲドンの夢が面白かった。
    戦争って現代から遠いものだと思ってたけど、あの主人公の夢の中に自分もスッと入っていけた。
    人間の考えることや本質・尊厳はずっと変わらないんだよな〜…

  • 得体の知れないモノに対する恐怖、不安を上手く描いている作品集。

  • 「めずらしい蘭の花が咲く」「海からの襲撃者」がおもしろかった。きっちりとオチがつかないものが多いのがいい

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著者プロフィール

1866~1946年。英国の作家・社会活動家。『タイム・マシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』などの小説で「SFの父」と称される。フェビアン協会に参加し、国際連盟の提唱、人権の遵守、英国の社会問題に取り組んだ活動家でもあった。また、第一次世界大戦前に作品で原子爆弾を予見したとされている。1910年に発表された本書は、代表作『キップス』同様、虐げられた者への深い同情と格差社会への強い憤りを表明している。英『ガーディアン』紙は本書を「古今の名作小説100」に選出、ウェルズを主人公にした伝記小説『絶倫の人』の作家デイヴィッド・ロッジは、ウェルズ作品のトップ・テンに選出している。

「2020年 『ポリー氏の人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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