悪魔の星 (創元SF文庫 フ 4-1)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 48
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488622015

作品紹介・あらすじ

地球人調査団は、人類による植民の可否を検討するため新発見の惑星リチアに降り立った。この星は進化した爬虫類に支配されており、高度に理性的な文明社会が築きあげられている。だが調査団の一人、ルイスサンチェス神父は疑問を抱いた。神を持たない彼らに"良心"は存在するのか、結論如何ではリチアの封鎖が決定されることになる。ハードSFの巨匠が描くヒューゴー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • SFに宗教を持ち込んだ作品。宇宙人の卵を地球に連れ帰ったために、地球生まれの宇宙人によって引き起こされる宗教的対立、そして訪れる破滅の日。

  • これにて個人的東京創元社文庫フェア終わりー。長かった笑。
    あまり期待せず読み始めたけど意外に面白く読めた!終始気になる展開があり続けたのがよかったな。クリーヴァーなに企んでる!?からこいつ育ったらなにをし出すんだ…?だめだこいつ早くなんとかしてくれ!といった具合。
    人類は宇宙で、神学的に到底許容できない存在、神を必要とせずとも理想的であることのできる存在と出会ってしまう。神に愛されてしかるべきであるにも関わらず神を信仰しない悪魔的な存在に危惧する主人公だが、地球に帰るそのとき、彼らから彼らの卵をもらい受けてしまい…。
    神学SFと呼ばれているそうだけど、この話のキモは神学などでなくても物語が語れてしまうことじゃないだろうか。あらすじは神うんぬんに触れなくても説明できるし、現に登場人物の一人はまったく別のパラダイムで事物を解釈し行動している。SF的な出来事が起きた時に、神学はいかに語るかという思考実験。そして物語の中で神学は何をなしたか、という点に著者のドライな見解が表れているような。うーん。興味深い話だった。

  • ハードSFの巨匠ジェイムズ・プリッシュが描く長編小説はヒューゴー賞受賞の「神学SF」です。
    爬虫類から進化した知的生命体が住む惑星リチア。人類による殖民の可否を検討するため、地球人調査員としてこの地に降り立ったルイスサンチェス。生物学者にしてキリスト教神父である彼は、とある疑問を抱くようになる。リチア人…彼らは人間よりも人間らしい理知的な生命体であまりにも理想的過ぎる…まるで、エデンの園から知恵の樹の実を食べる前の人間のような…

    神学SFということで、宗教に疎い身からすると、てんで意味が解りませんでした…というよりも、なんとなく言いたいことは解るんだけど、なぜそんな展開になるのか理解できないところが多々。特に、ルイスサンチェスが人間よりも人間らしいリチア人を悪魔と捉えている点。たぶん、物語の核ともいえるこの解釈をよく理解できなかったために、疑問符が終始頭から外れなかったのだと思います。
    一方、リチアの惑星を一個の子宮として描くアイデアは興味がわくところ。また、解説にある「宇宙の仕組みは解明できても、その意味を明かすことはできなくなったのだ」という言葉にすこし本書の意図を感じることができました。ハードSFの巨匠が描いたのは、難解な理屈うんぬんではなく、それが備える意味、目的なのかもしれません。そして、それはもちろん捉える角度によって異なります。本書におけるリチアを「悪魔の星」と捉えるルイスサンチェスもいれば、「爆薬貯蔵庫」とみなすクリーヴァーもいる。ここに正解はありません。人間はリチア人ではないのですから…

  • 人類が入植するに適している星かを調査するためにリチアに滞在するルイスサンチェス。神父としての自分が宗教を持たないリチア人を信じきれないと訴える。リチアを封鎖することに決定し地球に帰還する日、リチア人のシュテカに自分の子供を託されるルイスサンチェス。地球で育てられるエグトヴェルチ。地球上で先導者となるエグトヴェルチ。リチアを悪魔の星と認定する教会。地球から脱出しリチアに向かうエグトヴェルチ。リチアで行われる実験。

  • 解説によると『神学SF』。確かにそうとしか言えない内容で、カトリックの教義が重要なモチーフになっている。
    原題をそのまま訳すと『悪魔の星』にはならないようだが、このタイトルは内容を一言で表している。

  • 宗教ハードSFでよくぞヒューゴーを獲ったな、という気持でいっぱい。色んな意味ですごい。怖い。星全体をエクソシズムの対象って、要はそういうこと。しかしカトリックやキリスト教の教義を少しでも齧ってないと何も楽しめないと思う。私は面白いと思ったけれども、それと思想は別の話で。

  • 惑星リチアの調査員である主人公は惑星を去る際、リチア人から1つの壺を贈られる。それは地下シェルターでの生活が当たり前になっていた地球にとって、「希望」の入っていないパンドラの箱だった――宗教観ががっつり組み込まれたSF。あいにく私はキリスト教徒ではないので、さほど感銘は受けなかったが、題材は面白いと思った。

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