- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488629021
感想・レビュー・書評
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『僕はかぐや姫』の千田さんが作中で読んでいた本。千田さん曰く「つまらない本」らしいが、引用されていた文にひかれて、読んでみることにした。
はじめから弱冠のネタバレが作者によってなされているのにもかかわらず、続きが気になってどんどん読めた。
やはり、驚かされるのは結晶化した世界の描写の細かさだ。訳者もこれにはきっと苦労したはずだ。
自分の語彙力や想像力が乏しくて、なかなか映像化が難しかった。
また、筆者の文学的時間概念のアプローチは、この作品を純文学にとどめない、強いSF要素が感じられた。 -
ニューウエーブも今の小説界からみれば、驚くものではない。だけど、この前によんだニューロマンサーがSFに衝撃を与えた様にこのバラードの一連の作品がサイエンス一辺倒だった、SF小説(小説強調)にインナースペース(宇宙ばかりではなく、人間内面)に目を向けるべきだと、主張したのだろうな。とにかく美しい描写、結晶化していく、森、水晶に覆われ、眠りにつく鰐や木々、それは死ではなく、世界との一体なのだろう。その世界で人は相変わらず、愛し憎しみ生きていく。SFファンもだけどそれ以外の人が感銘を受けると思う。訳が古いけど。
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「アフリカの癩病院副院長であるサンダースは、一人の人妻を追ってマタール港に着いたが、そこからの道は何故か閉鎖されていた。翌日、港に奇妙な水死体があがる。死体の片腕は水晶のように結晶化していた。それは全世界が美しい結晶と化そうとする無気味な前兆だった。バラードを代表するオールタイムベスト作品。星雲賞受賞。」
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被写体の選択行為とは。「荒涼とした風景」を表現した写真を観ての感想である。JGバラードの「結晶世界」というSFがある。タイトルの通り精神病患者の「荒涼」(結晶世界)とした心象風景を表現した作品であり名著と呼ばれている。SFには外の宇宙(スターウォーズのような作品)を表現した作品だけでなく人間の内面の宇宙を表現した作品がある。文学作品でも三島由紀夫の「金閣寺」は人間の精神をシンボリックに表現した作品だし、映画作品でも「地獄の黙示録」はベトナム戦争を描きながら、人間の内面への旅路を表現した作品である。写真でもカメラマンの内面が表現される傾向は存在する。「荒涼とした」あるいは「殺伐とした」風景を好んで撮る行為には、カメラマンの精神性がそのまま現れる。被写体を選びシャッターを切る行為により心象風景が投影されるのである。春の「桜」や秋の「紅葉」だけが被写体ではないと思う。真摯に自己の精神と向き合えばシャッターボタンを押す行為にも内面が表現されることに気が付くであろう。写真技術を学ぶだけではなく文学作品に親しみ、そこから精神性を学ぶことにより、新しい作品のヒントを学ぶことも出来るであろう。写真の表現の幅を広げる為に文学・哲学を学ぶアプローチもあると思う。ありきたりの論考であるが、人間としてこの世に生を受けてきたからには、人間を学ぶことが非常に重要だと思う。この辺は文芸評論家「小林秀雄」の影響が非常に大きい。
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最後が余韻があっていい感じだが、全体としてはもし今書かれていたら発売されていないレベルである。
1969年発売当時の値段が160円の方が驚いた! -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765258
J.G.バラードの作品





