- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488629045
感想・レビュー・書評
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バラードの処女長編。どこからともなく吹いてくる東からの風が強まっていき、ついに建物も倒壊してしまうほどに。
昔読んだ破滅3部作よりは通常の災害パニック小説とも読めないこともないけれど、そこはバラード。そこかしこに人間の不条理さをはさみこんで異様な風景が広がっていきます。そこにはヒーローなどはおらず、シュールともいえる光景の連続。いったい何を描こうとしているのかとか、ストーリーとしてこの作品を読んでは迷ってしまいます。シュールな抽象画を見たときのように、何を描いているのだろうと考えたときの自分の頭のなかに出てくるものこそが興味深いのではないでしょうか?
でも、現実世界でもまったくのシュールと済ますこともできなくなってきている今日この頃。今こそ読まれるべきバラード!
一人バラード祭り始めるか!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
バラードの世界破滅物は、長編処女作からだった!読み易い分インパクトに欠けるがそれも初々しい
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20世紀を代表する英のSF作家バラードの第一長編。世界中で強風が吹き荒れるようになって、人間の文明は消滅の危機に瀕する。圧倒的な筆力で、さまざまな建物が崩れ去るのを描き出しており、まるでその場に居合わせたような臨場感を感じた。強風の原因は一応科学的に説明されるのだが、そのような科学的な細部よりも、バラードは滅びに向かう人間の社会を執拗に描くことに重点を置いている。建築物が風で薙ぎ倒された都市の様子は、まるでシュールレアリスムの絵のようだ。結末はやや呆気ないが、バラードの筆力が実感できる傑作。
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2014/5/19購入
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バラードの長編処女作。
『結晶世界』など、他の長編作品と比べるとやや印象が薄いのは初長編故か。但し、他作品でも描かれた終末の情景はこの頃からのものだった。 -
なんというか、いかにも処女長編という感じで、ややとっちらかった印象。濃縮されているわけでも比喩に満ち満ちているわけでもなく、「いっしょうけんめいがんばった」気配が伝わってくる。でも、砂と風と荒廃した大地のイメージはバラードならではという感じ。
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始まりも終わりも唐突。でも風ってそういうものか。