究極のSF―13の解答 (創元SF文庫) (創元推理文庫 661-1)

著者 :
制作 : E.L.ファーマン  バリー N.マルツバーグ 
  • 東京創元社
3.14
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本棚登録 : 89
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488661014

感想・レビュー・書評

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  • この本に興味を持ってこれから読もうとしている方のために、収録されている13作品を読みやすさで分類して微バレのあらすじを書きます。タイトルは気になさらず…
    【読みやすさ◎】
    「われら被購入者」宇宙人に購入され体“だけ”をコントロールされる男の話。宇宙人に購入されるのは精神疾患を患った犯罪者だけ。で、話を追うごとにこの男の異常性が明らかになっていく…。
    「先駆者」人類が生存可能な惑星探査のために意識を宇宙船とロボットにコピーされた男女の話。宇宙船とロボットとなった男女は、肉体を生成し意識をコピーすることで、まるで神のように“孫コピー”を作り出すことができ…。
    「心にかけられたる者」人間の反ロボット感情を解決することを命じられた高性能AI搭載ロボットの話。同じく高性能AIを搭載した別のロボットとの対話から、ロボット三原則の“人間”の解釈が変化していき…。
    「ぼくたち三人」ある日突然、万能の超能力を得た三つ子の子供たちの話。万能の力を得たことで旧来の人類のルールやタブーを無視し、ためらいなく両親を殺し兄妹で性交する。その結果身籠った“第三世代”の赤子には生まれる前から三つ子を超える超能力が備わっていることがわかり…。
    「キャットマン」誰もが欲しいものを手に入れられる時代に泥棒を生業とする男“キャットマン”と、その父である警官の話。“未来のセックス”というテーマが縦軸ならば、横軸は親子の愛。半人半機械の住人たちが暮らす地下世界の描写は必見。
    「CCCのスペース・ラット」スペース・オペラのパロディ。CCCとは“戦闘駱駝部隊(コンバット・キャメル・コー)”の略称であり、人間の腕や頭を咬み切る凶暴なミュータ駱駝を相棒とする宇宙船乗り(スペース・ラット)の精鋭部隊。だがミュータ駱駝は序盤以降登場せず、新米スペース・ラットのMとLは上官の命令を受け悪辣なラーシュニク人の討伐に勇ましく向かうが…。
    「時間飛行士へのささやかな贈り物」時間飛行中の事故により閉じた時間の中を繰り返し生きることになった時間飛行士たちの話。ジャーマンウイングス9525便墜落事故の超大規模版と言ってもいいかもしれない。時間飛行士への、いや時間飛行士から世界へのささやかな贈り物。

    【読みやすさ○】
    「大脱出観光旅行㈱」仮想空間で子供時代に戻った老人夫婦と仲間たちの話。タイムリミットが来て仲間たちが現実に戻ったあと、老夫婦であった男の子と女の子の下した決断とは…。
    「わたしは古い女」
    高性能コンピュータを搭載した家に友人たちを招いた女主人の話。家の端末のひとつである若者と性交したところを友人たちに目撃された女主人だったが…。
    「すばらしい万能変化機」万能変化機――すべての欲望を実現し、すべての可能性を本物にすることのできる機会――にのめり込む男の話。一週間に7回以上使用すると永久的な神経の損傷が生じるというが…。
    「旅」元の世界からほんの少し、あるいは大きく異なる多次元世界のサンフランシスコを次々と旅する男の話。思ったよりもずっと早く元の世界に戻ってきたと思ったが…。

    【読みやすさ△】
    「3つの謎の物語のための略図」夢の話かな?さっぱり意味がわかりません。お手上げです。
    「けむりは永遠に」“ホロコーストの後”というテーマだが、全く読み取れなかった。徹頭徹尾、“で…何の話?”と疑問を抱きながら読み、最後までわかることはなかった。


    あらすじは以上です。半分以上は読みやすい話なので、あらすじを読んで少しでも興味を持たれた方はどうぞ。

  • 魅かれる話が殆どない。
    ?な話が多い。

  • 本書は、SFにおける普遍的なテーマに基づいて、当代一流のSF作家が力作を寄せるアンソロジーです。「究極のSF」という割と安直なタイトルではありますが、作品を寄せる著者はどれも有名どころばかり。さらには、執筆作家自身のあとがきも掲載されており、なんとも豪華な振る舞いとなっております。
    さまざまな趣向の作家を集めたこともあってか、作品のトーンはばらばらで、読みにくいクセのある作品も収録されております(特にブライアン・W・オールディスとジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)。

    個人的なヒットは、アイザック・アシモフ、ハーラン・エリスン、ロバート・シルヴァーバーグ、フィリップ・K・ディックあたり。

    アシモフの「心にかけられたる者」は、彼が描くロボットをテーマにした一連の作品のひとつ。ロボットが人間に反旗を翻す論理を確立した瞬間で、ちょっと今後の展開が気になりました。そろそろアシモフのロボットシリーズの続きを読み進めないといけないな…
    エリスンの「キャットマン」は、異なるテーマで構想していた作品を「未来のセックス」というテーマにあてはめたためか、序盤と中盤以降で雰囲気が変わった印象。ただ、著者が描く独特の荒々しさには、魅せられるものがありますね。
    シルヴァーバーグの「旅」は、並行世界を旅する主人公を描く。いろいろな世界を行き来する様は(もといた世界に戻りたいという無意識な願望も含めて)、最近ますますドメスティックになる自分にとって、かなりえぐられた作品でした。
    ディックの「時間飛行士へのささやかな贈物」は、本書で一番のお気に入り。現実への懐疑を描かせたら、ディックに勝るものはいません。

    ▼収録作 ※<>内はテーマを表す
    ・フレデリック・ポール 「われら被購入者」 〈ファースト・コンタクト〉
    ・ポール・アンダースン 「先駆者」 〈宇宙探検〉
    ・キット・リード 「大脱出観光旅行?」 〈不死〉
    ・ブライアン・W・オールディス 「三つの謎の物語のための略図」 〈イナー・スペース〉
    ・アイザック・アシモフ 「心にかけられたる者」 〈ロボット・アンドロイド〉
    ・ディーン・R・クーンツ 「ぼくたち三人」 〈不思議な子供たち〉
    ・ジョアンナ・ラス 「わたしは古い女」 〈未来のセックス〉
    ・ハーラン・エリスン 「キャットマン」 〈未来のセックス〉
    ・ハリー・ハリスン 「CCCのスペース・ラット」 〈スペース・オペラ〉
    ・ロバート・シルヴァーバーグ 「旅」 〈もうひとつの宇宙〉
    ・バリー・N・マルツバーグ 「すばらしい万能変化機」 〈コントロールされない機械〉
    ・ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 「けむりは永遠に」 〈ホロコーストの後〉
    ・フィリップ・K・ディック 「時間飛行士へのささやかな贈物」 〈タイム・トラベル〉

  • 思わぬ拾い物で大満足

     時間軸の輪の中に閉じ込められたという筋のディックの「時間飛行士へのささやかな贈物」が読みたくて、この短編集を手にしたのだが、ロボット三原則をかなり厳しい方向で発展させたアシモフの「心にかけられたる者」のほうが圧倒的にインパクトがあった!

     フレデリック・ポールやポール・アンダースンやブライアン・W・オールディスや(このころにはまだ女性だとは思われていなかった)ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアも参戦している豪華絢爛短編集。作者自身によるあとがきなど見所は多い。大満足だ。

     作品は以下のとおり(《》内はそれぞれの作者に付与されたテーマ)。

    《ファースト・コンタクト》
     ・フレデリック・ポール「われら被購入者」

    《宇宙探検》
     ・ポール・アンダースン「先駆者」


    《不死》
     ・キット・リード「大脱出観光旅行?」

    《イナー・スペース》
     ・ブライアン・W・オールディス「三つの謎の物語のための略図」

    《ロボット・アンドロイド》
     ・アイザック・アシモフ「心にかけられたる者」

    《不思議な子供たち》
     ・ディーン・R・クーンツ「ぼくたち三人」

    《未来のセックス》
     ・ジョアンナ・ラス「わたしは古い女」
     ・ハーラン・エリスン「キャットマン」

    《スペース・オペラ》
     ・ハリー・ハリスン「CCCのスペース・ラット」

    《もうひとつの宇宙》
     ・ロバート・シルヴァーバーグ「旅」

    《コントロールされない機械》
     ・バリー・N・マルツバーグ「すばらしい万能変化機」

    《ホロコーストの後》
     ・ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「けむりは永遠に」

    《タイム・トラベル》
     ・フィリップ・K・ディック「時間飛行士へのささやかな贈物」

  • 148.02.11/8、9刷、カバスレ、帯なし。
    2009.12/29.松阪BF.

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著者プロフィール

1930年生。英米文学翻訳家。大阪外国語大学卒。主訳書にヴォネガット『タイタンの妖女』、ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、ラファティ『九百人のお祖母さん』、ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』(以上ハヤカワ文庫SF)、著書に『ぼくがカンガルーに出会ったころ』(国書刊行会)。2010年没。

「2022年 『SFの気恥ずかしさ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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