未来からのホットライン (創元SF文庫) (創元推理文庫 SF 663-6)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488663063

感想・レビュー・書評

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  • 本格的(というのもおかしな表現だけど)な印象の作品。 前半は取っつきにくいのでエンタメ小説として読むにはあまりオススメはしない。 こういった時間モノが好きなら読んで損はないように思う。 時間線の移動に関しての描き方はとても面白いけどもう少し何か細工があるのかと思った。 しかし30年以上前の作品とは思えない。 詳しいことは知らないけどシュタインズゲートはこの作品の影響を受けてるんだろうなって感じ。

  • SFって面白いと、素直に思える作品。時間不可逆を翻す理論と、実験による検証。
    過去にメッセージを送るマシンの存在と、過去にメッセージを送ることで、変わる世界、では現在はどうなるのかというパラドックス。
    丁寧に論理は展開され、どんどん引き込まれるが、前半は物理わからないとどっちきにくいかも。

  • 物語は過去に情報を送る事ができるタイムマシンを軸に展開されていく。

    タイムマシンでの実験を繰り返しながら宇宙の在り方についての推論を進めていく過程は少々難解だったが 作中でのマシンの実験は実に興味深い。

    60秒後の未来から送られてきた情報を得て、敢えて彼等は60秒後に何もしないという選択をする。

    当然そうすると 送信したのはだれか?という矛盾タイムパラドックスが発生するが、彼等は敢えて問題を棚上げにして様々な実験を繰り返します。

    その結果、歴史改変は可能であると知りそれに宇宙はパラレルワールドではないことを突き止めます。

    歴史改変が行われた瞬間に、それまでの未来は塗り替えられ新たな未来として更新されてしまう。作中では時間線の再構築と呼ばれてましたが。

    まさになかったことになるというわけです。今作ではそこが辛いところ……。

    作中で起こるノストラダムス級のカオス事件はマシンのお陰で未然に防ぐことに成功しますがその代償が何とも切ない。

    マードックとアンのラブストーリーが世界中で起こり得るであろう悲劇の縮図であり、歴史改変によって何度も強制的な別れを強いられる二人の心境は涙腺を緩ませました。

    再構築された世界は以前の世界と然程変化は無い様に思えるが、その僅かな変化がもたらす影響が凄まじい。

    映画バタフライエフェクトを見たことがある方はそれを思い浮かべてみればわかると思います。

    バタフライ効果よろしく、なかった事になるという事実は時間を遡るほど世界の人々に深刻な影響を与えていく。更に人々はそれに気づくことさえ無い。

    歴史改変とは極めて罪深いものであり、バックトゥーザフィーチャー3のドクの判断も納得がいく心境です。

    SF最高!!

  • 特に物語後半からの推進力がスゴかった。
    単純なタイムトラベルものではなく、制約がある中、過去の自分を信じて大切な情報をリレーしていく姿に心打たれた。
    友を世界を救うために過去を改変しようとする。
    そして運命の人には、どんな時間軸であろうと出逢える(出逢ってしまう)のが素敵だった。

  • 「星を継ぐもの」四部作を読み終って寂しくなり、過去の作品に挑戦。一種の時間旅行物だが、ホーガンは、現実社会は実際このとおりなのでは、と思わせるのがとても上手い。読み終わると、いつも妄想が止まらない。

  • スコットランドの片田舎で、過去にメッセージを送ることができるタイムマシンを開発した老科学者、チャールズ。一方、核融合施設が試運転を始めた途端、世界中で不思議な現象が…。どうやら、核融合炉が微小なブラックホールを無数に生み出してしまったらしい。放置しておくとエネルギーを吸収して巨大化し、世界は破滅してしまう。チャールズの孫のマードックは、タイムマシンを使って過去にメッセージを送って警鐘を鳴らすことに。しかし、恋人のアンとの出会いも無くなってしまい…。次の世界では、ブラックホールの発生は無事回避できたものの、未知のウイルスが広がってしまい世界がパニックに。そこで今度はワクチンの情報を過去に送って…。

    本書では、過去にメッセージを送ると、未来が書き換わることになっているが、元の世界がその後どうなったかは描かれていない。結局、元の世界は存続したまま別の世界が枝分かれしたに、ということなんだろうなあ。まあSFだから真剣に考えてもしょうがないんだけれど。

    前半は、スコットランドの風景や建物、機器の描写が細かくて、また、タイムマシンのりろんが複雑で読み難かった。中盤以降、ストーリーにスピード感がでてきて、面白くなった。

  • 過去へメッセージを送るプログラム?何それ?一種のタイムマシンね。物理学的な話は良くわからなかったけれど、存在する宇宙の時間的な在り方の一つの提示はそれもありかと思わせてくれる。他の作品も読んでみようかな。

  • ノーベル賞受賞の物理学者チャールズ・ロスは、スコットランドの寒村にたたずむ古城でタイムマシンを開発する。それは、60秒過去の自分に6文字までメッセージを送るプログラムであった。チャールズは自身の孫・マードックらとともにタイムマシンの実験を続けるなかで、「未来から届いたメッセージを60秒経っても送信しない」という選択をする。しかし、60秒前に届いたメッセージは依然手元にあるまま。いったい、これはどういうことか…

    本書は、「星を継ぐもの」で有名なハードSFの巨星が描く時間SFです。序盤は、タイムマシンの存在そのものが提起する難題(タイムパラドックスとか)を説明するため、ページの大部分が仮説の検証に費やされます。実際のところ、この時間に関する考察がとても刺激的でした。
    一方、中盤以降は実際にタイムマシンを活用し、世界を破滅へ導く大問題を未然に防ごうとします。ここでいきなりドラマチックな展開になるんですね。なお、ここではタイムマシンを使用するうえでの倫理的課題について少々の指摘はあるものの、タイムマシン自体については、基本的にポジティブに描かれます。物語の進行からすれば、確かにポジティブに描かれるのが正しいのでしょうが、予定調和のようなポジティブな展開にどこか違和感。
    とはいえ、序盤の時間に関する問題提起ときれいなオチのつけ方に総じて楽しめた作品でした。

  • ノーベル物理学賞を受賞しつつも故郷スコットランドで世捨て人のような生活を送るチャールズ・ロス博士は、「60秒過去に6文字のメッセージを送る」時間間通信を可能にするプログラムを開発する。アメリカから駆けつけた数理物理学者の孫・マードックと仲間たちと共に研究を続けるうちに、この研究が持つ大きな意味に気づいていく。一方で、ある事件が世界規模で人類の未来を脅かしつつあり、時間間通信の研究は否応無しに歴史の渦中に飲み込まれていく・・・

    ゼラズニイだのブラッドベリだのを続けて読んでいたので、久しぶりにハードSF読んでものすごく爽快感を味わいましたヽ( ´ー`)ノ
    「タイム・マシンで過去を改変できるか」という、SF的発想の古典中の古典であるタイム・パラドックス・テーマに、超ポジティヴなハードSFの泰斗・ホーガンが真正面から挑んだ長編。この手のワン・アイディア・ストーリーって、普通は短編で充分というか、瞬発力勝負なんですよね。長編だと先が読めちゃってダレるんですよ。そこを敢えて長編で勝負するホーガン、いろんな意味でさすがです(笑)
    この作品におけるホーガンの工夫は、誰がどう描写しても嘘クサくなる「タイム・マシン」を登場させず、「時間間通信」をメインのガジェットに据えてタイム・パラドックスを描いたこと。当時はありそうでなかったんじゃないでしょうか。物語後半が加速的に政治色が強まるところが実にホーガン的ではありますヽ( ´ー`)ノ人物造形が思いっきりステロタイプなところもホーガン的ではありますヽ( ´ー`)ノが、二転三転するストーリーのドキドキ感といい、余韻に残るハッピーエンドといい、実に「SF映え」する作品ですね。佳作だと思います。

  • まずタイトルでどんな話か分かるのが秀逸。まさにその通り、一日だけ過去へメッセージを送ることができる機械を中心に展開される物語です。
    タイムパラドックスの解決方法が面白いのでそういう思考実験が好きな人におすすめ。
    猫が展開上のキーポイントになるのも良いですね。
    あとはいつものホーガンというか、きわめてユートピア的な世界観。最先端の科学技術に対してあくまでポジティブな見方をしているのが特徴です。核によるクリーンなエネルギーが供給され、飢餓問題解決、だけど冷戦は解決していない…など、現代からすると苦笑いなのですが、80年代ならしょうがないね!
    ホーガンの小説には健全な人や健全な要素しか出てこないから個人的にはちょっと物足りないです。反動でむしょうにクトゥルー神話が読みたくなりました。

ジェイムズP.ホーガンの作品

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