造物主の掟 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (556ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488663070

感想・レビュー・書評

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  • 土星の衛星タイタンを舞台にしたホーガン節の傑作。独自に進化した機械人たちの文明は中世西欧風の世界だった――。

    冒頭の、ロボットたちが独自の文明世界を構築していく過程が、これぞSFという感じで面白い。その後は、ホーガンおなじみの、組織と人間関係の軋轢の中で真実への探究心を燃やす主人公たちが登場する。本作ではザンベンドルフとマッシーが対立しつつもやがて信頼関係を築いていく姿が、『星を継ぐもの』のハントとダンチェッカーを思い出させて、やはりこのあたりのキャラの書き方はうまい。ただし、人名が多すぎて読みにくくなっているのもお約束。

    ハードSFとしての本質的な部分はプロローグで語り切ってしまっているようで、接触した機械人文明が中世ヨーロッパ風なのもあり、本編は実は人間世界についてのアナロジーな気がする。SFは突き詰めると宗教的な論議になってしまうのか、機械人たちの形而上学的な会話が興味深い。ここから宗教と人間性に関する論点にスライドし、中世文明VS現代文明のような形でドラマが展開する。物語の展開そのものはとても面白く、後半はさすがホーガン、と何度もうならせてくれた。しかし同時に、本書からは「精神的に進歩しようとしない一般大衆」への強い憂慮と批判が強く感じられる。根本にある作者の思いを特に汲み取れる作品だったかと思う。「愚かな大衆はどこまでいっても馬鹿なままだ」――作者の強い悲しみを感じるラストの一シーンに、現代の日本の大衆の姿が重なって見えた。1983年刊、すでに40年前の小説だが、まるで今の時代を見てきたかのような書き方が何箇所もあるのでひとつ引用してみる。

    P347 「よかろう、きみが今日の大衆に対して抱いている気持はわかっている」マッシーは両腕を宙にふり上げ、「彼らが二十一世紀に育ち、史上いかなる時代の人々よりも完備した学習と教育の機会に取り巻かれながら、その特権を利用しないほど愚かなら、それはきみの知ったことじゃない。彼ら自身の選んだ道だ」

    とはいえ、主人公たちと機械人との交流は希望が持てるものだったし、小気味良いユーモアで後半は何度も笑わせてもらった。なるほどそういう意味だったのか!と舌を巻く、絶妙な「タイトル回収」の巧手も健在。続編は絶対面白いでしょうコレ!

  • 設定が幾分ご都合主義というか、ガニメデシリーズで感じたような虚構としてのリアリティが弱いように感じた。
    であるが、魅力的な設定でもあり、概ね楽しく読めた。
    一方で登場人物が非常に多く、それぞれが結構な頻度で物語に関わってくるため、読みながら誰が誰なのか判別に苦労することが多かった。口調や行動規範によって判別することも難しく、そこに関してはアニメ/漫画的な過剰なキャラ付けのないリアルさ、と言えるかもしれない。読み手の問題ではあるだろうが、翻訳文が意味を取りにくいと感じた箇所も散見された。
    ネガティブな要素ばかり書いてしまったが、序盤から中盤にかけて、地球から舞台が移り変わるあたりでは、特にワクワクさせられ、次へ次へと読んでしまった。再読するともっと面白さがわかるかもしれない。続編も読んでみたいと思う。

  • 大昔の異星人が残した開拓用建設マシンが自律性を得て、タイタンに文明を築いていたという異色のファーストコンタクトもの。
    ホーガン作品の主人公はほとんど科学者だが、本作はなんと心霊術師。しかし悪者に見えた彼が、機械人との邂逅により変質して意外なラストに繋がっていくのはさすが。

  • 『星を継ぐ者』シリーズ以来のホーガン。やっぱホーガンめちゃくちゃ面白い。

    ロボットやAIの分野ではシンギュラリティが焦点になることも多いですが、この作品は逆でロボットたちが中世封建的な社会を築いて科学革命に至っていないとしたら…という発想。

    このあべこべの発想に立つことで人間とは何かとか、社会とは何か、あるいは人間は何を問いうるかといったことを考えさせられますし、主人公がインチキ心霊術師で人は真実を見つめているかという問いに角度をつけた皮肉まで突きつけられます。

    ホーガン作品の異星人との「個人的な通じ合いの感覚」の描き方も好き。

  • 造物主(ライフメーカー)の掟 (創元SF文庫 (663-7))

  • 名前を覚えるのがしんどい/ 後半の巻き返しからは面白かった/ 機械生命体と細かい設定も良い/ 『米国政府』と出てきてなるほどな、と思う/ 

  • 機械生物である必要性があまり感じられず、ちょっと話に厚みが感じられなかった。

  • ちょっと登場人物多すぎ。
    ホーガンの中では退屈だった。

  • 興奮の導入、そして始まる「神様もつらいよ」。キリスト教のパロディも愉快に、理解不能な事物を理解するために神の言葉と奇跡への「変換」が起こるメカニズムの具体化が抜群に愉しい。ロマンチックなほど探求の精神を信じる作者の姿勢も痛快だった。心理学者のマッシーをさしおいて詐欺師もどきのザンベンドルフが主人公なのは、ショーマンにしかできない事もあるからなのだろうな。

  • ーーー百万年の昔、故障を起こした異星の自動工場宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸し、自動工場を建設し始めた。
    だが衛星の資源を使って作った製品を母星に送り出すはずのロボットたちは
    故障のため独自の進化の道をたどり始めたのだ。
    いまタイタンを訪れた地球人を見て彼ら機会生物は……?


    ホーガンSF5作目

    私たち人間とは、「生きもの」と「機械」の概念が正反対の、緻密な機械生物の世界。
    まずプロローグが凄い。生物の進化と全く違う様に見えて、似通った部分も見受けられる。
    独自の進化をとげた機械生物たちとの対比を通して、私たちの見ている「世界」とは電波や可視光、空気の振動といった一次的な刺激を受けて
    私たちの脳が構築しているものにすぎないことが理解できる( ̄▽ ̄)
    こういうクオリア論みたいなものは大好物です

    さらに綿密に練られたプロットで最後まで飽きることなくエンタメとして楽しめる。実に満足のいくSF作品でした

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