時間衝突 (創元推理文庫 697-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488697013

感想・レビュー・書評

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  • 理論や理屈なんてどうでもいい。SFはやっぱこうじゃなくっちゃ!魅力的なキャラクターや練りこまれたストーリィも大切だけど、やっぱりアイデアが重要。「時間線と時間線が正面衝突?」なんて深く考えずに読むべし。久しぶりに楽しめるSFが読めた。

  • ハチャメチャなアイデアで知られるキング・オブ・バカSF、バリントン・J・ベイリーの初期の長編。時間が広大な非時間の中で生じる、局所的な現象というコアのアイデアは、今読むとわりとすんなり受け入れられる感じがする。スペオペとして読んでも、魅力的とまでは言わないが、人好きのするキャラクターが多くて、普通に読める方かな。

  • 謎の異星人との戦闘状態に突入している遠未来の地球。異星人が地球に残した遺跡を調査している考古学者のロンド・ヘシュケは、300年前に撮影された遺跡の写真が現在の遺跡より遥かに古びていることに気づく。まさか、遺跡は年を経るごとに新しくなっているというのか?折しも異星人の時間旅行機が捕獲され、ヘシュケは時間旅行機を使った極秘任務を命ぜられるが・・・

    わはははは、すげー!面白い!
    何がスゴいって、いきなりブルース・スターリングが序文を寄せてるってところからブッ飛んだんですがヽ( ´ー`)ノそんなのはまだ序の口で、ベイリーなのにちゃんとストーリーがまとまっているところに一番感動しました(笑)いや、だって「禅銃」がヒドかったんだもん(^_^;
    さてこのSF、ジャンル的には「時間SF」なわけでして、現代の最新理論物理学においてもその本質が解き明かされていない「時間」をネタに古今東西の大御所SF作家たちが腕をふるってきたジャンルでもあります。時間とは何か?空間とは何か?そんな哲学的ともいえる問いに、奇才・ベイリーが「こんなこと考えちゃったんですけど〜」と答えたのがこの作品。ストーリーはタイトルそのもの、時間衝突。これが比喩でもなんでもなくて、何と異なる時間線を持つ世界が正面衝突しちゃうという実にそのままな話なんですねー。・・・どこからそういう発想が出てくるんだろうな、この人は・・・(^_^;
    そんなわけで、作中には奇妙奇天烈な時間理論が登場し、これが重要なファクターとなって物語が進んでいきますが、この理論が理解できなくてもハッキリ言って読み進めるのに何ら支障はありません。つーか、理解できる方がおかしい(笑)時間が衝突する瞬間の描写も出てくるんですが、理論と全然噛み合ってないし。この作品の楽しみ方は、そんなトンデモ理論に気持ちよく振り回されつつ、それをネタに展開される一大スペクタクル(ドタバタ劇といった方が正確かもしれないヽ( ´ー`)ノ)で手に汗握る、といったところではないかと思います。絢爛豪華で何でもありのベイリー節は本作でも健在。

    それに、「禅銃」でもそうでしたが、この人はユニークな社会構造を描かせたら超一流ですね。とんでもないんだけど妙に説得力があるベイリー流未来社会は、実は人間の現実の歴史を極端にカリカチュアライズして未来に置き換えたもの、と言ってもいいでしょう。本作において未来の地球を支配している軍事政権「タイタン」は、誰がどう見ても某第三帝国以外の何物でもないですしヽ( ´ー`)ノ突き抜けた共産主義的コロニー国家を維持しているのが中国人の末裔という設定は本気なのかシャレなのかヽ( ´ー`)ノこの二つが絡んだら大変なことになるんじゃないの、と思ったら何だかよくわからん自己チューな「超知性」が登場して無理矢理話を纏めちゃう、というヽ( ´ー`)ノよくこんなヤバいネタ使えるよなぁ。と妙なところで感心しつつも、決してハッピーエンドとは言い切れないほろ苦い結末を読むと、ベイリーはちゃんと「わかって書いてる」ということがしみじみ理解できます。現実の歴史の汚点をもネタの一つに昇華してしまうベイリーの力技、恐るべし。

    しかも、巻末の解説において、ベイリーのトンデモ理論は最新理論物理学の世界ではあながちトンデモとは言い切れないらしい、ということが明かされ、最後の最後で鮮やかに背負い投げを決められた感じです。大森望氏のあとがきも超名文。ワイドスクリーン・バロックへの愛が溢れています。序文から解説まで丸ごと一冊、無駄なところが全くありません!(笑)やっぱりベイリー面白い!本気で「カエアンの聖衣」も探します、ハイ。

  • 時間というのは過去から現在を経て未来に流れるだけでなく、(当事者の視点から観て)未来から過去に流れる時間設定もあるというのがこの物語の基本だ。地球という母星を支配する民族同士がタイムマシンを通じて互いを認識し、戦闘態勢に入る。これを文明の進んだ、(同じく地球を出自とする)チンク(中国系の人類の末裔)の人々が救おうとするものの、選民意識の塊である地球民族(タイタン族)はこれを拒むばかりか、相手を征服しようとする。これに手を貸したのがスームンというチンク。父の敵討ちのために地球人に手を貸すが見事に裏切られてしまう。しかし時間を操ることにかけては一日の長があるチンク民族はタイタン族を制圧する。
    一方、タイタン族の下層市民であるアスカーはチンクの科学者から<斜行存在>なる神のような存在からヒントを得てその存在に会うための機械を発明し、時間衝突を避けるひとつの知恵を授かる。これによって地球のなかで差別待遇を受けていた異分子(奇形民族)たちはそれぞれの単独世界を得るという道筋を見せるところで物語りは終わる。
    発想はユニークで面白いが、それ以外はステレオタイプとしか言えない。B級映画にありそうな展開と言うと辛口評価になるが、それを超える全体的なブラッシュアップが欲しかった。

  • 面白くなりそうな所で場面が変わり、結局よくわからない作品である

  • 過去のものであるはずの遺跡が、300年後には現在より新しくなっているという話から調査を始めた。すると、200年後には地球は滅亡し、それより後には何もなかった…?時間を自在に操る中国人の子孫の力を得て、破滅の回避を試みる。

    タイトルの「時間衝突」を軸としながら、白人のみの優成思想や、異文化との交流、エイリアンとの戦争など、これ以上無いくらい盛り込まれた内容で、正直なところ散漫。

    第2章で、中国人のコロニーの話がなんともわかったようなわからないような状況で差し込まれているあたりから、読書ペースが乱れたような気がする。

    そのコロニーでの特殊な家族の考え方や、地球にあるタイタンの異常な思想、エイリアンに衝突する時間軸など、なかなか全部をフォローしきれていないとは思う。しかし結局、みんな敵というまま終わりきらずに終わってしまったのは、納得しきらないままである。

    複数の時間軸が衝突することで、時間という概念自体が失われるというコンセプトは斬新であり、それは良いのだが、その衝突するのは地球だけ?という規模の小ささは、最初にエクスキューズで「理系の知識を持ち合わさない」と書かれている部分を汲んで無視すべきなのであろうか。

    スペースオペラ物を読み慣れていないため、理解が追いついておらず、評価が低いのは勘弁いただきたい。

  • 「ワイドスクリーンバロック」という
    日本語ではだからか良くわからない分野付けされているが
    『禅銃』同様「スぺオペ」の一種
    もちろんここでいうスぺオペはソープホースの
    日本で言うヤングジャンプに載っているような
    再読率の低さが特徴のものでなく
    ハリイ・ハリスン作品のようなその形式のパロディを指す
    よってそこに「バカミス」と言うのに同じ「バカ」さが
    既に含まれている
    というわけでベイリー作品もSF風味与太話としてなかなかに面白いが
    背景となる時代と文化を知っていないと
    パロディは本当には楽しめないと思うのは変わらない

  • ベストSF90年代年8位

    mmsn01-

    【要約】


    【ノート】

  • 時間衝突 (創元推理文庫)

  • 物語出だしのつかみはOK、でも面白い構想にもかかわらず、提示された謎とその種明かしがアンバランス。個人的には、ストーリーの展開によっては傑作の香りもしていただけに残念な作品。

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