遠き神々の炎〈上〉 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 168
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488705015

作品紹介・あらすじ

銀河の片隅で人類が発見した太古のアーカイヴ。だがそこに眠っていたのは人知を超えた強大な邪悪意識だった。解き放たれたそれは恐怖と混沌を巻き起こし、恐るべき規模で銀河文明を蝕んでゆく。一方この悪魔の星から、最後の希望となる手掛かりを積んで脱出した一隻の船があった。だが不時着した先の緑の星で、彼らは犬型の集合知性体が繰りひろげる抗争に巻き込まれてしまった。ヒューゴー賞受賞最新SF。

感想・レビュー・書評

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  •  話の大枠は簡単、おおむね『ロード・オヴ・ザ・リング』。銀河の片隅で邪悪意識が復活する。だが、邪悪意識はまだ完全ではない。その欠損部分を持って逃れた者がおり、まだ勝機はある。さあ、どうやってこの強大な邪悪意識を倒すのか。

     現代のわれわれはいまだ知らないことだが、宇宙空間の性質は均質ではない。つまり、銀河の中心に行くと知的生命が思考が困難となり、人工知性すらも働かなくなる、低速圏、さらには無思考領域となる。そこから銀河の外周に向かうに従って、高度な知性が可能な空間となり、ついに進化の行き着く先は神仙と呼ばれる超越的な生命体となる。同時に銀河の外周に行くにしたがって超光速航行も可能となるのだ。格差宇宙というか、格差銀河である。
     際涯圏と呼ばれる領域はいまだ神仙には進化していない知的生命の領域であり、人類の子孫もいくつかの世界を作っている。そのひとつストリョーム圏の人々はある惑星の太古のアーカイヴを探査して、邪悪意識を復活させてしまう。探検隊はソフトウェア生命である邪悪意識の重要な一部分を盗み出して、神仙の一種である邪悪意識の手の届かない、無思考領域に近い後進的な惑星に逃れようとする。しかし邪悪意識に妨害に遭い、辛くも逃れたのは冷凍冬眠の子どもたちと、1家族を乗せた1隻の宇宙船。
     たどり着いた惑星は後に鉄爪族と名付けられる知的生命のいる星。着陸した宇宙船はすぐに鉄爪族の攻撃に遭い、両親は殺され、姉ヨハンナと弟イェフリのきょうだいが生き残る。しかも2人は敵対する2つの陣営に別々に連れ去られるのだ。

     種々の知的生命が暮らす際涯圏のネットワーク世界では情報の通信が重要な産業である。それを担っているのがヴリニミ機構。ストリョーム圏より下位の人類世界からはじめてヴリニミ機構に就職したラヴナも主役級のひとり。彼女はストリョーム圏の惨事に気付き、イェフリからの通信も傍受する。邪悪意識に関心を持った“ご老体”と呼ばれる神仙は邪悪意識に殺され、ヴリニミ機構も一緒に破壊されるなか、“ご老体”のエージェントとして使われていた低位際涯圏出身の人間ファムとともに彼女は鉄爪族の惑星に向かう。

     幾多のアイディアが投入された本書でもとりわけ興味深いのは、鉄爪族である。彼らは犬に似た生物だが、数個体がひとまとまりとなる集合知性の生き物である。発声器官は2種類あり、1種類は他者とのコミュニケーション用。もうひとつは集合知性を形作る個体間での思考のための「思考音」用である。4〜6個体でひとつの意識を形作り、人間の手のような精妙な器官を有しないながらも、数個体が前足や口を協働することでそれなりに精妙な操作が可能となっている。
     さらに面白いのは、集団の中の1個体が死んでも、別の個体を加えることで、意識体としては個体の寿命以上の生命の持続が可能となることである。そして、意識体を構成する個体の編成を慎重に操作することで、強靱な意識を生み出す、これが斬伐主義者の方法で、彼らは力による世界征服を目指している。こちらがこの惑星における邪悪なものであり、弟イェフリはこちらに懐柔されている。
     他方、より自由な政体で技術革新を続けている木彫師市が、恐らくこの物語の希望を担うのだが、両親を殺されたヨハンナはそこの鉄爪族と馴染もうとしない。

     中世的な世界にハイテクノロジーを持って落ちてきた人類の子どもたち、邪悪医誌に対抗する手段を求めてそこに向かうネットワーク世界の人々。物語は辺境の惑星の陰謀劇になだれ込んでいく。つまり大銀河の『ロード・オヴ・ザ・リング』が、『ロード・オヴ・ザ・リング』的中世世界に展開していくという趣向だ。
     本書の直接の続編『星の涯の空』が翻訳されたのを機に、重版された。

  • 若林泉

  • ヴァーナー・ヴィンジ"遠き神々の炎"を読む。

    雑誌クーリエ・ジャポンの読書特集でザッカーバーグやラリー・ペイジがSFを挙げて話題になっていますが、ハードSFに限らず未知の技術、世界に迫るSFには少年の心を捕らえてやまぬ何かがあります。


    これは壮大な、超越的、宇宙SF。恒星間文明の時代、人類は3つの大きな居住星域を中心に活動。

    3つのストーリーラインが展開しつつ、相互に絡み合っていく。

    辺境から首都にやってきたアーカイブ司書、未開の惑星に不時着し離れ離れになった姉弟。やがて三人の行動が絡み合い…

    濃厚で読むとかなり疲れますが、それだけ人を惹きつけるものがあります。

    厨二心をくすぐる要素も豊富で、星域間ネットワークを取り仕切る「ヴリミニ機構」、人類の出身地地球を含む低層圏、星域間文明が展開する際涯圏、超高速思考が可能となり神仙の住まう超越圏などゾクゾクする用語がてんこ盛りです。アラサー世代懐かしの「ゼノギアス」的ななにか。

  • [ 内容 ]
    <上>
    銀河の片隅で人類が発見した太古のアーカイヴ。
    だがそこに眠っていたのは人知を超えた強大な邪悪意識だった。
    解き放たれたそれは恐怖と混沌を巻き起こし、恐るべき規模で銀河文明を蝕んでゆく。
    一方この悪魔の星から、最後の希望となる手掛かりを積んで脱出した一隻の船があった。
    だが不時着した先の緑の星で、彼らは犬型の集合知性体が繰りひろげる抗争に巻き込まれてしまった。
    ヒューゴー賞受賞最新SF。

    <下>
    奇妙な犬型集合知性体の星にとり残された人間の子供ふたり。
    対立勢力に別々に捕われ、人類のテクノロジーをめぐって抗争は激化する。
    一方大銀河では、強大な力をふるう邪悪意識が数多の文明を崩壊させ、機構の中枢まで壊滅させていた。
    虚偽と悪意の情報が乱れとぶ宇宙を、姉弟の救出にむかう人類=エイリアン共同船。
    だがそこにも魔の手が。
    絶賛を博したヒューゴー賞受賞巨篇。

    [ 目次 ]
    <上>


    <下>


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 宇宙規模の大災厄から中世異世界の戦争・陰謀劇までをひとつながりに連結して、そのいずれも面白くよませてくれる。スペースオペラの醍醐味を満喫できた。そのうち読もうと後回しにしていたのがもったいない。

  • 世界設定や犬型のエイリアンが秀逸。アイディアが面白く、登場人物もいきいきとしているが、まだヒューゴー賞らしき、ぐっとくるものは出てこない。なんだろう、まだちょっと物足りない。

  • 広大な宇宙には種々なる民族が生息し、自身所属の風俗や歴史などのハイカルチャーを所有している。互いに接することで多大な可能性の順列における確率論を超越し膨大な数量と未体験領域へ移行することもできる。それぞれの危機を援助することで次元をストップさせずに宇宙の歩みを進めさせ、神すら侮蔑するほどの科学力・言語力を得る。遠くで揺らめく焔をふっと消すように、音楽を奏でるように世界は巡礼するのだ。

  • 在庫状況:全巻(上下)

  • IN 08/08/22
    out 08/09/06

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