時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488706036

作品紹介・あらすじ

ある夜、空から星々が消え、月も消えた。翌朝、太陽は昇ったが、それは贋物だった……。周回軌道上にいた宇宙船が帰還し、乗組員は証言した。地球が一瞬にして暗黒の界面に包まれたあと、彼らは1週間すごしたのだ、と。だがその宇宙船が再突入したのは異変発生の直後だった――地球の時間だけが1億分の1の速度になっていたのだ! ヒューゴー賞受賞、ゼロ年代最高の本格SF。

感想・レビュー・書評

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  • 読了。Kindle版がないので紙で。地球だけが何らかの存在によって時間の流れを1億分の1にされてしまったという異常事態が発生したら…というぶっ飛んだ設定ながら、それによって起きるであろう事柄がリアリティを持って描かれる。これぞSFというところだが、ハードSFかというと、その現象を実現するメカニズムが地球外の技術であるということ以外最後まで全く説明されないのが逆にすごいと思った。作中では出てこなかったけど、これが現実に起きたら、「ちょっとタイムトラベルしてくるわ」とか言ってスピン膜の外に数時間だけ滞在して帰ってくる実験をするヤツはでてくるだろう。
    ストーリーは、ラストシーンにつながる流れと、そもそもの発端から順に起きたこと描く流れを交互にならべる手法で先がどんどん気になる設計になっているので一気に読んでしまった。そして大団円と思わせて三部作の1作目だったとは…。

  • 面白いです!これぞSFですね。地球を覆う謎の膜スピン、三人の少年少女の成長物語。葛藤、難病との戦い。そして火星のテラフォーミング。迫り来る終末にどう立ち向かうのか?そして結末は・・・・少年の日々はその後の人生のそこそこで顔をだして、生まれの身分の格差を埋める。人類の存亡の影に、個々人の生活が描かれていて読ませます。下巻いきます。

  • SF

  • 「実をいうと、ああいう小説を読む最大の楽しみは、描写される風景にあるんです。そう思いませんか?にもかかわらずえ、すべての風景は自在に変化してしまう。砂丘をひとつ越えるたび、新たな運命が待っている、といった感じで」(下巻47ページ)これはある火星人の言葉だが、まさにそれこそ小説を読む楽しみだと思うし、作者自身がそうした小説を愛してやまないのだろうと想像させられた。

    文庫版の文字サイズが微妙に小さいが、一気に読んでしまう面白さ。

  • ベストSF2008年1位


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    【要約】


    【ノート】

  • 読みだしたら、なんだか読んだような感じがした。いくつかの場面の記憶はあるが、再読でも面白かったからいいや。タイラーはダイアンとジェイスン姉弟と小さい頃から一緒に遊んでいた。彼らの家は大きくお金持ちで私立学校に通い、タイラーは公立学校に通っていた。それにタイラーの家は彼らの家の庭の隅に立ったプレハブだ。母親が彼らの家の家政婦をしているから。それでも彼らはいつの一緒だった。あの日、夜空から星々が消えてしまった時も。地球の周りを膜のようなものが取り巻いて、地球から星々を隠し、太陽の光の代わりの光を提供する。ただそれだけではなかったのだ。

  • 地球が正体不明の膜に覆われ、地球内外で時間の進み方が極端に変わる世界。地球での1秒が、膜外では数年になる。異星人の仕業だと思えるが、正体を見せないし、目的を明かす行動もない。地球だけで時間がほぼ進まなくなり、邦題の「時間封鎖」という表現がものすごくしっくりくる。時間の流れの差を利用して、火星をテラフォーミングするプロジェクトが動き、成功したかに思える。だが火星も時間封鎖の目に遭ってしまう。ここまでが上巻の出来事。火星と地球の関係はどうなるのか、時間封鎖は解けるのか、解けた場合に地球に起きることは何か、疑問ばかりが出てくる。これをどうまとめるのか、下巻に期待する。

  • 翻訳と思えない自然な文体で読みやすい。ミステリーっぽい構成と展開も良し。下巻も期待。

  •  物語の起点となる現在は、なんと西暦40億年。

     大きな物語。突然地球のまわりに障壁ができ、星も月も見えなくなり、偽物の太陽が天を回り出した。その障壁とは時間の勾配であり、地球上の時間経過は1億分の1に減速され、地球からみると宇宙は1億倍のもの凄い速度でスピンしているような状態になった。よってこの障壁を人々はスピンと呼び、それが本書のタイトルとなっている。それを訳者は「時間封鎖」と訳したわけだが。
     時間の勾配により地球上には1億倍のエネルギーが降り注ぐことになるはずだが、スピンがフィルターを掛けており、地球上には従前と変わらぬ生活があった。しかし、地球上で1年のあいだに太陽は1億年の年をとり、太陽が巨星化して地球を飲み込むのは、地球上からしたら文字通り数十年という時間の問題である。さあ、人類はどう生き残りをかけるのか。人類にこのような仕打ちをした存在は何者か。

     小さな物語。ぼく、タイラー・デュプリーの父親はE. D. ロートンの親友だった。E. D. は成功をつかんで富豪となるが、〈ぼく〉の父は夭折してしまう。ロートンは〈ぼく〉の母親を家政婦として雇い、〈ぼく〉はロートン家の双子の姉弟、ダイアンとジェイスンとともに育つ。E. D. の期待を担ったジェイスンは天才。やがて、人類を救う科学者の枢軸を担うようになる。〈ぼく〉と彼との友情。〈ぼく〉はE. D.の援助で医学の道を進む。他方、E. D. にとってダイアンは添え物。彼女はスピンの恐怖に目を背け、新興宗教団体にはいっていく。〈ぼく〉とダイアンのもどかしい恋愛感情。姉弟の母キャロルは酒に溺れ現実逃避している。

     ジェイスンの属する政府組織は、宇宙と地球との時間差を利用して、火星に人類の種をまく計画に取り込むが、医務官の〈ぼく〉は、病魔に冒されたジェイスンを秘密裏に治療する。
     人類とロートン家の危機。それを語るのは、地球外の時間として西暦40億年の現在にいる〈ぼく〉。もうジェイスンはいない。ダイアンと行を共にする〈ぼく〉は何かから逃げ、そして何やら危険な薬を使おうとしている。そして現在の〈ぼく〉たちにも危機が迫る。

     人類レベルの話をどの視点から記述するかというのは、読者がどのように感情移入できるかという点からして重要であるが、人類とロートン家と現在の〈ぼく〉たちの直面する危機、スピンの物語とジェイスンの物語と〈ぼく〉の物語、こうした重層的叙述が見事に成功している。イーガンの『宇宙消失』と設定が似ていることが指摘されるが、まったくタイプの違う小説である。
     上巻だけでも相当に面白い。この三層の物語が後半でよりあわされていく。そしてだんだんと感じてくるのは、数十年後に地球の終わりを設定された世界にあって、諦念と自暴自棄のあいだで揺れながら日常を送る人々の物語とは、政治・経済・環境、あらゆるところで閉塞している現代社会のアリュージョンではないかということである。ウィルスンは希望を描くことができるのか。

  • どんだけ頭が良いんだこの作者は。終末を目の前にした時人間は何かしらの拠り所を求める。それは”科学”か”宗教”のどちらかだ。これは何も物語の中だけの話ではなく大なり小なりこれまでの歴史の中でもそうだったのではないだろうか。SF的な要素だけではなく、タイラー・デュプリーの視点とその二人の親友の行動を通して人類の終末を描いた壮大な作品。その計算され尽くした緻密な構成には本当に舌を巻く。むしろその点だけをとっても感動すら覚える。実に面白い作品だ。

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