銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

著者 :
制作 : 星野 之宣 
  • 東京創元社
4.27
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本棚登録 : 1757
レビュー : 231
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488725013

作品紹介・あらすじ

銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将"常勝の天才"ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家"不敗の魔術師"ヤン・ウェンリーは相まみえた。この二人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。日本SF史に名を刻む壮大な宇宙叙事詩、星雲賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の頃、好きな場面は暗唱できるほど繰り返し読んでいた。それまで漫画しか読まなかった私に小説の魅力を教えてくれるとともに、その後の価値観の形成に多大な影響を与えてくれた作品。

    当時、同級生の間ではライトノベルが流行していたが、その多くは内容が貧困で興味が持てず、さりとて純文学を味わうには人生経験が足りず、私は「小説なんてつまらない」と思い込んで、漫画ばかり読んでいた。そんな私が、某アニメ情報誌に特集されていたことがきっかけで興味を持ち、軽い気持ちで手に取ったのがこの作品だった。

    そしてまず、序章で大きな衝撃を受けた。自分の知らない世界がそこにあった。漫画では到底不可能な、空間的時間的に壮大なスケール。さらに読み進めていくうちに、完全にその世界観の虜になっていた。宇宙艦隊の戦術戦略、国家規模の権謀術数、主要登場人物はもとより、脇役たちにまで及ぶ生き生きとした愛すべき人物造形。そして、あの独特の文体…。「華麗な文章」というものが存在するのだと、読書子として未熟な私はそのとき初めて知った。

    当時の私には難解な表現が多く、当初は単語の解読にかなりの時間を要した。国語辞書を片手に、ぶっとおしで8時間かけて第1巻を読破したのは、今では良い思い出だ。巻を重ねるにつれ辞書は必要なくなり、いくらか短時間で読めるようになった。こうして全く副次的な効果として語彙が増え、その後は読書が容易になり、結果的に読書が好きになった。ある意味で人生を変えてくれた、思い入れの深い作品なのである。

    それから、歴史の面白さを教えてくれた点も忘れられない。架空の物語とはいえ、作者の歴史に対する造詣の深さゆえに、歴史のダイナミズムが圧倒的なリアリティをもって迫ってくるのが、この作品の大きな魅力だ。歴史の流れの中で、大局的な視野で物事を把握するのが如何に重要であるか、「後世の歴史家による記述」という独特のスタイルを採ることで、言外に教えてくれるのだ。

    さらに、「賢明な君主による専制君主制と、衆愚と化した大衆による民主共和制では、どちらが好ましいか?」という思考実験も試みられている。歴史の中で人々がどのようにして「自由」を勝ち取ってきたのか、そして、どのような場合にそれを自ら放棄するのか。自由には常に責任が伴う。「煩わしい責任と共に自由を放棄する権利」は、認められるべきか否か。作者の答えは限りなく「否」に近いが、自分ならどう思うか、読みながら考えてみるのも一興だろう。

    全巻あわせると相当なボリュームなので、忙しい社会人には薦めにくいのだが、時間にゆとりのある学生さんには、頭の柔らかいうちに是非とも読んでもらいたいと思う作品である。

  • 超有名小説なので今更語る部分はないのだけれども、やっぱり私がこの小説に中学生のころに出会えたのは幸運だったかな~と思う。今読むと、また違った感想があるかもしれないけれども、思い出補正をつけてレビューをしたい。

    私は帝国と同盟のどっちが好きかというと、断然同盟のほうで、正直言えばラインハルトの魅力があんまり分からない人間だった。なんというか、絵に描いた天才キャラなので、発展性がないというか、自己完結しているというか。で、帝国はラインハルトという太陽が中心にあって、周囲を凡人(と言っても超優秀だけれど)な将軍たちが固めるという要素は、今であれば、もっと洗練されたかたちで表現できたのではないかと思う。

    で、その「洗練されたかたち」になっているのは、実はヤン・ウェンリーを中心としている同盟側で、こちらはヤンという全能感のあるキャラと、周囲の人々との対比が帝国側よりも上手くいっている。たぶん、ユリアンという存在が大きかったのだろうし、君臣の関係で語られる帝国よりも、仲間の関係で語られる同盟のほうが、チームとしての魅力があるのだと思う。

    ラインハルトは天才ではあるけれど、全能感はないんだよね~。あれだけのことをやっておきながら、「上手くいってる」感があまりない。キルヒアイスも2巻で突発的に死んじゃうし、ことあるごとにヤンが立ち塞がるし、ロイエンタールに裏切られるし、オーベルシュタインはいけ好かない。

    最終巻の後書きに、キルヒアイスの死が早すぎたということを作者自身が問題点として書いている。でも、あそこでキルヒアイスが死ぬのは妥当だったと思う。そこから物語は、ラインハルトが「余のことを理解してくれるのは、もうお前だけやねん!」とヤンににじり寄っていく構造になるけれど、それが果たされないままヤンが死に、ヒルダとやっちゃうという流れは、欠落を抱えた人間が満たされたときに死ぬという話の完成形のように思うのだ。

    逆に、キルヒアイスが5巻辺りまで生きていたら、それ以降の展開があまり上手くいかなかったのではないかと思ったりもする。誰がキルヒアイスを殺すの? とか、ヤンとラインハルトの関係が薄まるのでは? とか。

    まあ、歴史にifがないように、完結した小説もifはないよね、と後世の歴史家が言ったとか言わなかったとか……そんなオチをつけたいと思う。

  • 上司に勧められて読み始めた『銀河英雄伝説』、全10巻をようやく読み終えた…
    チープなタイトルに似合わず内容は凄まじく濃ゆいので、読み始めると止まらなくなる徹夜本でござい。

    遙か未来、銀河系では帝国軍と同盟軍が勢力を二分し、惰性的な戦いを繰り返していた。永遠に続くと思われた争いは、両陣営に2人の天才が現れたことにより急激に展開する。
    「宇宙を手に入れる」という野望を持つ帝国軍の英雄ラインハルトと、歴史学者を志すも不本意ながら軍人となった同盟軍の軍略家ヤン・ウェンリー。この2人の智将の対決を軸に、数多くの英雄達が人類の歴史を動かしていく…

    登場人物がこれでもかというほど出てくるけど、どのキャラクターもキャラが際立っていてとても魅力的。その魅力的なキャラクター達が宇宙を背景に繰り出す壮大な群像劇は、まさにスペースオペラやで…!
    (何言ってんだと思った奴、読めば分かる。笑)

    そして登場人物のセリフがこれまた一々格好良い!!

    「ことばでは伝わらないものが、確かにある。でもそれは、ことばを使いつくした人だけが言えることだ」
    「かかっているものは、たかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べたら大した価値のあるものじゃない」
    「人間の社会には、二つの思想の潮流があるんだ。生命以上の価値が存在する、という説と生命に勝るものはない、という説とだ。人は戦いを始めるとき前者を口実にし、戦いをやめるとき後者を理由にする。それを何百年、何千年と続けて来た…」

    面白いだけでなく、中々示唆に富んでる小説です。全部で10巻とかなり長いけど、最後までたっぷり面白さが詰まってますお(^^)

  • 思わず読んでしまった。



    アニメを放映していると思わず見てしまうこのシリーズ。まぁ登場人物の多いこと多いこと、名前のややこしいこと、加えてドイツ名の面倒なこと、これは小説だと大変だな。
    原作を読むことはまぁないだろう、と考えていたがたまたま手に入ったので思わず読んでしまった。
    スペースオペラと分類がされている本作だが、読んでみてこんなにも文章が綺麗だとは思わなかった。いや想像していたものと現実の文章を比較してみると、目から鱗とも言える程に文章表現が綺麗で読みやすい上に粋だ。とても20年以上も前の作品とは思えない。
    さらっと読めそうなので、シリーズ制覇したいなんて思ってしまうが、漫画的な魔力があるのでちょっとペンデングにしておこう。


    やっぱりヤンはかっこいいな。
    幼き頃の私にとって『三銃士』のアトスとヤンは憧れの人物であったのだが、やはり今も変わらないと見える。

  • 壮大な銀河の物語、これはその序章。

    大河が好きだ。歴史モノが好きだ。外国モノが好きだ。これまでSF文庫というだけで、敬遠していたことを強烈に後悔した。どこまでも私の好みの小説だ。帝国と陰謀、腐敗した貴族と美形の天才、素敵な女性、陽気で個性的な仲間たち。30年前に書かれたなんて! ライトノベルなんてことば、まだなかった頃。本気で構築された世界にくらくらしながら読みました。建国から腐敗した今へと、そして革命を経て未来へと続く熱気が、淡々とした文章でつづられているのが、本当にいい。手にとってよかったです。

    歴史を愛するヤンが好きだ。歴史を研究する意味を、このようにしっかりと語られているのが嬉しい。過去を検証することで、今を考えるために、歴史学があるのだ。

  • 人生で2番目に好きな小説。
    1982年に刊行されて以来、現在も多くのファンが愛してやまず、2018年の再アニメ化でますます多くのファンを虜にするであろう作品。

    序章で合わないと感じた人は飛ばしていいので次の章から読み進めて欲しい。とまらなくなるほど面白い。

  • ラインハルトが颯爽としていてかっこいい。ヤンとは1巻からこんなに凄い戦いをしていたら、この後はどうなっていくんだろうと気になります。
    個人的にはローエングラム侯よりローエングラム伯の方が響が好きですね。

  • 銀河系の一大帝国の若き“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラム。
    民主主義を掲げる自由惑星同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェリー。
    二人の智将の邂逅と銀河系の命運を描く壮大な宇宙叙情詩。

    読み終えてまず思ったのは、これが20年以上も前の作品なのか、ということ。
    そして文章の緩急がとても上手であること。
    ヤン・ウェリーの皮肉すぎる運命には、争うことの虚しさを覚える。

    ミステリ :☆
    ストーリー :☆☆☆☆☆
    人物 :☆☆☆☆☆
    読みやすさ:☆☆☆☆☆

  • 最初に銀河帝国・自由惑星同盟それぞれのおこりが説明され、
    以降は帝国軍のラインハルト、自由惑星同盟のヤンという若くして才能溢れる2人の軍人を中心に両軍の戦争の様子が描かれる。
    双方の視点から緻密に練られた戦略が絡み合うのが面白い、スペース・オペラ作品第1巻。

  • 銀英伝第一巻。
    理想的専制君主vs腐敗した民主主義。その絶望的にも見える究極の選択が提示されることにこそ、この作品の醍醐味があると思います。そして、戦争の時代を舞台にして、英雄を描きながらも、他方で戦争に一貫して否定的であり、そして、これだけ人類を愛してる小説も珍しいと思うんです。けれど、どうもこの辺りは誰に言っても理解されなくて寂しい限りです(笑)

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著者プロフィール

田中 芳樹(たなか よしき)
1952年、熊本県本渡市(現・天草市)生まれ。学習院大学文学部・国文学科卒業、同大学大学院博士課程(国文学)修了。1978年に李家豊(りのいえ ゆたか)名義で雑誌『幻影城』に応募し、『緑の草原に…』で第三回幻影城新人賞(小説部門)を受賞、作家デビュー。
1982年、田中芳樹名義で、『銀河英雄伝説』シリーズを発表。アニメ化、コミック化、ゲーム化された大人気作品となる。ほか、2017年に完結した『アルスラーン戦記』もアニメ・ゲーム・コミックなど様々なジャンルミックスがなされており、非常に人気が高い。ほか、『創竜伝』などの人気シリーズがある。

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