- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488726010
作品紹介・あらすじ
一編の詩の魔術に、
運命を狂わされていく人々
――そこには読者も含まれる
――宮内悠介推薦
【日本SF大賞受賞】
1948年。戦後のパリで、シュルレアリスムの巨星アンドレ・ブルトンが再会を約した、名もない若き天才。彼の剏りだす詩は麻薬にも似て、人間を異界に導く途方もない力をそなえていた……。時を経て、その詩が昭和末期の日本で翻訳される。そして、ひとりまたひとりと、読む者たちは詩に冒されていく。言葉の持つ魔力を描いて読者を翻弄する、川又言語SFの粋。著者あとがき=川又千秋
感想・レビュー・書評
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「シュルレアリズム」と「アンドレ・ブルトン」共に始めて知りましたが、もう少し調べてみたいと感じました。
言葉が今以上の機能を将来発現させる可能性は、大いにあると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルに惹かれ手に取りました。シュルレアリスムの中心人物であるアンドレ・ブルトンが出会った天才詩人が書いた一遍の詩から物語が始まる。『時の黄金』と題されたその詩は麻薬のように読む者を異界へ誘い、狂わせる。やがて『時の黄金』は時を経て昭和末期の日本にも齎され、緊迫した事態へと展開してゆく――。様々なシュルレアリスト達が登場する場面がとても楽しかったです。言葉が持つ魔力に人が取り憑かれてゆく様はSFというよりは若干ホラーよりかもしれません。終盤は物語のスケールも大きくなり、ページを捲る手が止まりませんでした。物語の核となる『時の黄金』について、もう少し説明があっても良かったのかなとも感じました。
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飲みの席で、お酒を飲まずに場の空気で酔える人におすすめの作品だと思います。途中からページを捲る手が止まらず、のめり込み一気に読みました。そして最後には無に帰したというか、本を閉じた瞬間に、意図せず寝てしまった時に妙にリアルな夢から覚めて一瞬状況が掴めず「あれ、今この時間ここにいるのであってるっけ?こっちが現実だよな?」っていうあの感覚に近いものがありました。
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SFは普段あまり読まないけど、下北の古本屋でタイトルに惹かれて購入。
かなり衝撃的だった。面白かった。
言葉をこんなふうに使うという発想。
実在したらゾクゾクする。
SFだからなのかストーリーがメイン。
もっとストーリーどうこうというより、状況や文章のアンニュイな深さ、抽象的な表現の幅、みたいなものを感じる文章の方が好きだから、物語が佳境に差し掛かっていくほど、読者をコントロールさせているような感覚になるけど、
それでも所々にある状況を説明する文章がグサッと刺さったりして、読んでいてなかなか面白かった。
言葉の可能性を感じさせる物語は、本を読むってまだまだ新しい発見をくれるなぁと改めて思った。 -
詩によって破滅に導かれる。言語によって恐怖が起こされるのは「虐殺器官」を彷彿とさせた。
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SFはこれまで「アルジャーノンに花束を」ぐらいしか読んだことがないが、珍しく読んでみた。
結構恐い。SFとは分かっていても、本当にあり得ないことなんだろうか、と思ってしまう。普段から言葉の力は思い知っている訳で。
シュルレアリスムという言葉は聞いたことあるようなないような知識レベルだが、結局何が現実なのかは捉え方次第なんだろうな。
とはいえ文字や言葉は目の前にあるわけで、それを介する限り、現実はそう遠くないところにあるんだろう。
ちなみに構成が独特。起承転結という言葉を借りれば、起結承転という感じ。先に結論がある。このせいで先を読みたくなる。 -
SFというよりも幻想ホラーに近いかな…という印象。
麻薬のように中毒性を持ち拡散される詩、時間や鏡を文字で表現する、という設定は魅力的 -
著者は、読者に与える影響をコントロールすることはできない。今の時代に、こんな創作物があったとしたら、誰も止められないのだろうな。他人に、世界に向けて公表する前に、全ての創作者はよく考えなくてはいけないのかも。これに危険はないのかどうか。
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ブルトン以下、デュシャンやアシール・ゴーギーと言ったシュルレアリズム界の有名人がわらわらと出てくるパリ=アメリカ編が楽しい。日本編は作者の弁によると、媒体を意識したとのことだが、安手のバイオレンスノベルを思わせるところがあって、あまり買えない。メインのアイデアはポストモダン以降の言語観を考えると、ある意味で当たり前の発想で、今同じアイデアを扱うなら、もう少しソフィスティケートされるかな、という気がする。だけれども、それはオリジナルのすごみか。
著者プロフィール
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