ひとめあなたに… (創元SF文庫) (創元SF文庫 あ 1-2)

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  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488728021

感想・レビュー・書評

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  • 一年一年がとても長くて、恋にしろ失恋にしろ十分した気がしている。失敗や成功もくっきりとしていて、諦めたり喜んだり、行動的ですぐ立ち直り、絶望もやってくるが、希望がすぐ取って代わる。

    だから、はたちの頃って、もう人生を味わいつくしたような気がしているのよね。
    本当はそれからが人生長く、機微に溢れ、苦しけれ、楽しいのだけれど。

    そのみずみずしさがここには書かれている。新井素子さんの20歳の作品だそうだから、そのまま生のまま。

    恋しい夫を食べてしまったり、バイクでひき殺したり、いや、地球に隕石がぶつかって破壊されてしまうなどと涼しい顔でいわれてもねぇと思うが、そんなことも有りと平気に思う若さがわからないでもない。

    現実味が無いとなじることなかれ、了解していることと飛躍は共存する。若さはどんな不自然をも凌駕するのだ。

    「ひとめあなたに…」逢いたかった!
    それがすべての「その時」を惜しむ。

    誰かが夢みているわけでもなく、夢がさめるわけでも消えるわけでもないのだ。
    隕石がぶつかって地球がなくなるのではなく、新たな地球が登場するということ。

    何を隠そう私も23歳、恋が実って結婚したらば人生、後は平坦と思った口である。思いたかった口である。

  • 同級生に薦められて読みました。最後に食べるなら何を食べるかとふと考えることはあっても所詮は想像の範疇であって、地球がなくなるとすれば果たして自分は何をするのだろうか…100年ほど前にハレー彗星が地球に接近するときに地球上の空気が消滅してしまうので浮き輪やタイヤのチューブに空気を入れて備蓄したという話を何かの資料で読んだ事がある。この本が刊行された昭和60年といえばパソコンも携帯電話もないアナログな時代なので、情報も乏しい世の中だけどその反面、想像、空想、妄想がふくらむ本が多かったように感じた一冊でした。

  • 初めて読んだのは40年近く前ですが、何年経っても何度読んでも大好きな作品です。
    あまりにこの本が好きすぎて、練馬から本と同じルートで鎌倉に連れて行ってもらったことがあるくらいです。バイクではなく車ででしたけど。
    SFかと問われると返答に困りますが、ラブストーリーとしても人間ドラマとしてもおすすめできる本です。

  • 読んだのはこの版じゃなかったけど、これを登録しておこう。
    昔、従兄から何冊か借りて読んだ新井素子の本のうち、
    唯一ちゃんとストーリーを記憶している作品。
    人類滅亡の日が間近に迫って、最後に何をしたいかといったら、
    ヒロインは鎌倉にいる元恋人に逢いたい一心で、練馬から歩いて行こうと決意。
    途次、やはり世界の終わりを前に
    心の箍が外れてしまった女性たちと接触する。
    どうしても「チャイニーズスープ事件」が話題になりがちだけど(笑)
    私はさほど猟奇的とも恐ろしいとも思わなかった。
    もう後がないってわかっていたら、
    そのくらいやらかしちゃう人ってのも、いるかも……なんて、
    変にリアリティを感じたものだった。
    むしろ、一番まともそうなヒロインが、
    相手に受け入れてもらえる確証もないのに、
    ひたすら目的地に向かって突き進んでいくっていうのが怖かったなぁ。

  • 初新井素子作品読了。
    独特な文体で最後までテンション落とさずに書き切るのはすごい。1Q84だ、これ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    女子大生の圭子は最愛の恋人から突然の別れを告げられる。自分は癌で余命いくばくもないのだと。茫然自失する圭子の耳にさらにこんな報道が―“地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない”。彼女は決意した。もう一度だけ彼に会いに行こう。練馬から鎌倉をめざして徒歩で旅に出た彼女が遭遇する4つの物語。来週地球が滅びるとしたら、あなたはどうやって過ごしますか。



    来週地球が滅びるとしたら、私は圭子の行動が1番理解出来るかも...お互いに幸せな気持ちで死ねるのなら それは理想な終わり方だと思いました。
    いざその時になったら 死にたくない!とジタバタするのかもしれませんが 人間はいづれ死ぬものだと言う事は歳とともに強く思う事でもあります。
    幸せなだったと感じながら死にたいです。

  • なかなか独特な文章で、入りにくかったけど、クレイジーな奥様の話が面白くてそこからは一気に読めた。
    世界の終わりって設定だから、自分ならどうするだろう、人類はどんな行動をするんだろうとか考えた。暴動、虐殺、理性を捨てて本能をむき出しにするのか、大切な人とゆっくり過ごすのか。日本人は最後まで仕事してそうだな、警察とか。でも単身赴任とか遠距離の人はつらいな〜。交通機関だけは動かして欲しいなとか、考えだすと止まらなくなる。

    ただ、出来れば途中で彼氏と出会うようにして欲しかった!

  • 不治の病にかかった恋人に振られた圭子は、
    一週間後に隕石が衝突し人類は滅亡することを知り、
    練馬から鎌倉の恋人宅まで歩いて向かうことを決意する。

    圭子が元恋人と再会するときに着る服とハイヒールだけを持って出発したときは、道中に出会うあれこれのお話かと思った。
    が、章が変わると、人形のように主体性のない妻が夫を殺して解体し、夫の肉を使って料理をしはじめるすごい展開。

    圭子が交錯した人類滅亡を迎える4人の女の話が、圭子の道中に挿入される形。
    圭子は主人公というほどに物語の大きな役割は背負っていない。
    彼女はひたすら恋人に会いたい一心で前進する。
    途中でバイクに乗って一気に鎌倉へ着いてしまうし大きなアクシデントにはほとんど合わない。
    ただただ鎌倉を目指す。

    各挿話の主人公達は、パニックになりその衝動が外へ向かう、というありがちな図式ではなく、それぞれに事実を受け入れて進んでいくのが新しい。


    コテコテの新井素子作品であるから、文体がキライ、合わない、という気持ちもよくわかるけれど、やはり新井素子は天才だなと思う。
    1981年に刊行された作品の改訂版。
    二十歳のとき書いたなんてね。
    『チグリスとユーフラテス』といい、何て嗅覚の鋭い人なんだろうと感心する。

  • あなたのためにチャイニーズスープ…と歌う彼女。
    どれだけ経っても忘れられない小説です。

  • 「滅びの前のシャングリラ」の対談で知ってから読みたいと思ってました。
    古い本だから本屋では見つからないかなーと思ってたら、重版かかったみたいでよかった。
    ストーリーは無理よりの無理だろ、みたいなとこあるけど、大事なのはそこではない。
    独特の文体が苦手でなければ、ぜひ読んでください。

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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