司政官 全短編 (創元SF文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (727ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488729011

作品紹介・あらすじ

星々に進出した地球人類。だが連邦軍による植民惑星の統治が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構が新たに発足させたのが司政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた原住者種族を相手に単身挑む若き司政官たちの群像。著者を代表する、遠大な本格SF未来史の短編全7作を年代順に配し、初の一巻本として贈る。巻末には詳細な作品世界ガイドを収録した。

感想・レビュー・書評

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  • 眉村卓の司政官シリーズは、中短編7作と長編2作(「消滅の光輪」「引き潮のとき」)が書かれている。
    全中短編7作は、単行本「司政官」(1974)、文庫化(1975)、再単行本(1992)に4作が、単行本「長い暁」(1980)、文庫化(1982)に3作が納められたのち、本短編集に作中の年代順に配列して1冊にまとめられた。

    長編「消滅の光輪」は、早川書房の単行本(1979、全1冊)、ハヤカワ文庫(1981、3分冊)、ハルキ文庫(2000、3分冊)、創元SF文庫(2008、2分冊)という経緯で、現在では創元SF文庫で入手可能。

    長編「引き潮のとき」は、早川書房の単行本(1988-1995、5分冊)。黒田藩プレスからも新書版として2006に2冊出版されているらしいが詳細不明。

  • 古いSFを読み直している流れの1冊。これらの何作かはSFマガジン掲載時に読んでいるはずで、実際「これかな」と感じた作品もいくつかあるのだが、結局確信を持てたものは皆無。40年を超える時の流れは半端ではない。司政官シリーズの短編はこれで終了。『終末の光輪』は入手済み。『引き潮のとき』はどうしたものか思案中。

  •  「日本SFの第1世代」の眉村卓の代表作、司政官シリーズの全短編である。
     眉村卓は 『まぼろしのペンフレンド』や 『なぞの転校生』、それから『ねらわれた学園』といったジュヴナイルSFが現役としても、10年以上前に癌の奥さんを介護しつつ、彼女のために毎日ショートショートを書くという看病生活で、すっかり本格的な作家活動からは退いてしまったかのようだが、この司政官シリーズなどは上記のジュヴナイル以上に復活して欲しかったものだ。司政官シリーズは7短編と『消滅の光輪』『引き潮のとき』という長大な2長編からなる。

     遙か未来、宇宙進出を果たした人類。連邦軍が力で制した植民惑星に平時の体制を樹立し、その惑星の発展を図る行政官。担当世界の発展に尽くすという高い理想を掲げて任に当たる司政官は、しかし、植民者と先住種族、あるいは植民者と連邦政府といった立場の異なる集団の狭間で苦悩する運命にある。1971年に書かれた最初の司政官ものの短編は、次々に司政制度の時代を下った作品が連作され、4編を集めて『司政官』という題名の短編集としてハヤカワ文庫で出版されるが、司政制度の発足・発展・衰退という避けられない歴史が既にして描かれている。
     その後、さらに2つの短編が書かれるが、司政官シリーズはアイディア小説ではなく、行政専門家の思索と施策の細部が書かれれば書かれるほど面白くなっていくということが明らかとなったというべきか。1976年から2年半がかりで『SFマガジン』に連載された『消滅の光輪』では、司政官の権威が低下した時代で、惑星規模の待避計画を実行する司政官の行状がこれでもかというくらい克明に描かれる(もっとも連載開始時にはこんなに長くなるとは思っていなかった節がある)。
     次に、司政制度の黎明期を扱った「長い暁」──これは本文庫で200ページほどになるので、十分長編といっていいものだが──が書かれ、これを含む3短編が『長い暁』という短編集としてやはりハヤカワ文庫に入る。

     本書『司政官 全短編』はハヤカワ書房の『司政官』と『長い暁』を合本にして、さらに司政制度の歴史に沿って配列し直されたものである。司政官は惑星規模の行政官であるが、現代の「政治家」のようなものを思い浮かべてはいけない。中小企業の社長くらいを考えたほうがいい。持てる資源をいかに活用して最大限の得るかという仕事だからである。日ごろ、政治家を馬鹿にしたり、役人に文句を言ったりしているが、そうした仕事がいかに重要にして大変なものなのかといったことに思いを致すようになる。その司政制度の問題点はおよそこの短編集ですべて提示されるので、あとは解決編。是非とも2長編を読まねばならない。

     本書刊行時点で、奥さんを亡くして5年となる眉村氏は、しかし、「老人となった」自身の新たな視点から司政官物語に取り組んでくれそうな言質をあとがきに記してくれているのだが……

  • 遥か未来の話で理解しづらいが、異星人の設定が現実の何の比喩であるかが分かると、急に読みやすくなる。巻末解説の引用で、インサイダー文学に対するアウトサイダー文学を代表して語るのが、平井和正だった。確かに、司政官は、ウルフガイと対極にある。

  • いいSFは絵になるというが、なんと鮮やかに視覚に訴えてくることか。創元が日本SFに力を入れだしたのは本当にうれしい。

  • 照り返しの丘のロボットに対する疎外感がものすごく新鮮で面白かった!■追記■全短編集だけどあと2作が入ってない…。黎明期から崩壊間近まで。続きが気になる~!

  • 2008.1.31 .初、帯なし
    2012.11.14.鈴鹿白子BF

  • ひさしぶりに読んだ。やっぱり面白い。後の時代についてなるほど環境が複雑で矛盾に充ちてて、そんな中での司政官の苦悩がリアルで良い。

  •  眉村卓というとジュブナイルという印象を持っていた。これは小学時代に見たテレビドラマや、中学時代に読んだ雑誌の連載などによるものに加えて、個人的な勝手な勘違いによるものであろう。
     最近、ふと古いSFを調べていて、自分のもっていた印象と違う作品があることに気がついた。何とかして古い作品を、と考えていた矢先にこの本が発行された。もちろん、即座に購入し読んでみた。
     内容としては、大きな宇宙史の中の一つである。「司政官」という立場から、宇宙の新しい惑星を地球連邦に組み込んでいくための苦労を描いている。
     「長い暁」「照り返しの丘」では、ロボットもアクティブに行動し、その面で楽しめる内容であった。
     しかし、それ以後においては次第にロボットの活躍は薄れ、SFと言うよりは社会構造(官僚制度?)への問題提起的な小説のような印象を受けてしまう。司政官の元に置かれるロボットは官僚としての役割を忠実に果たすのであるが、それは必ずしも司政官の考えに従うと言うことではなく、かといって司政官に反抗するというのでもない。さらに司政官の役割・立場という視点から巻き起こるさまざまな問題。そしてそれに頭を悩ます司政官。

  • もとは今から20~30年位前に書かれた小説である。今回、初の一巻本として出版された。植民地の星を統治する司政官という職を描いた(時代も場所も人も異なる)短編集である。これが面白い。2cm位の厚さがあるのだが苦にならないくらい面白い久々のヒットである。今読んでも全然古く無い本である。

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著者プロフィール

1934 - 2019。SF作家。1979年に『消滅の光輪』で泉鏡花文学賞および星雲賞を受賞。また1987年に『夕焼けの回転木馬』で日本文芸大賞を受賞。代表作にジュブナイルSFの名作といわれる『なぞの転校生』『ねらわれた学園』などがある。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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